「――うん、直也君。私と『デュエル』しなさい!」
あれから赤坂の『D・ホイール』に乗って『教会』まで戻り、解散していつもの喫茶店――裏メニュー的な日替わり定食があるとは中々侮れない――で夕食を取っている最中、柚葉はそんな事を言った。
「……え? いきなりどうしたんだ……?」
今日の晩飯はとろとろでプルプルの半熟卵のオムレツカレーだぁっと、現実逃避したい処だが、聞き逃すには危険過ぎる一言である。
……まさか、『遊戯王』次元の侵食が柚葉にも訪れたのか、と真面目に驚愕する中、柚葉は物凄く不満そうにぷんぷん膨れている。
「ほら、直也君も言ったじゃない。実際に回してみない事には『デッキ』を理解出来ないって。私も実際に回せば理解出来ると思うの! 直也君も本来の『デッキ』を回せるし両得でしょ?」
確かに試運転してみたい気持ちは山々だが、もう日が暮れて暗いぞ、夜の時間だぞ?
……ちなみに結構遅くなって、母に対する言い訳を考えていたらメールで「事情は先生から聞いてるから解決するまで帰って来なくて良い」と意訳出来る有り難い返事が事前に届いていた。
……いや、物分りが良すぎるというか、都合良すぎるというか――あの、一応オレ達、まだ9歳だぞ? 親としてそんなんで良いのか……?
「……もう今日は遅いし、明日にしねぇか? 今日は一日中『デュエル』ばっかりだったから疲れたし、その上、この『異変』の黒幕に対する手掛かりが0という徒労の後じゃなぁ……」
全く、あの『代行者』一人にどれだけ引っ掻き回されたか、解ったもんじゃない。
……あれ、今気づいたが、もし『遊戯王』次元の『異変』起きてなかったら、完全武装の『代行者』に物理的に寝込み襲われるという愉快じゃないイベントが発生していたのか? それ普通に死ねる類の脅威だよな……? うん、最近平和過ぎて若干気を抜きすぎていたようだ……。
――あれこれ考えていると、柚葉が横にいるオレの顔を覗き込んで無言で睨みつけていらっしゃる。……近い、近いって! あ、あれぇー? 酷くご機嫌斜めのようだが……?
「……なぁに? このまま私に一日中お預けして眠れない夜を過ごさせて悶々とさせる気なの? 新手の放置プレイ? 直也君が楽しそうに『デュエル』していたのを指咥えて見ているだけだった私に対する当て付けぇ!?」
柚葉の並ならぬ気迫に圧倒されるものの、ああ、と腑に落ちる。
ポケモン勝負を傍目から見ていた時のオレと同じ気分だったんだなぁ。思わず共感してしまう。
「解った解った! 飯食った後になっ!」
「ふふんっ、覚悟してなさい。私だって、やれば手助け出来るようになるぐらい……」
最後の方は正確には聞こえなかったが――本音を言えばオレ自身も、オレの本来の『デッキ』を回してみたくてうずうずしていた処だ。
――しかし、柚葉のデッキという事は『あれ』が相手かぁ。
……うん、出来る事なら二度と見たくない『奴等』だが、頑張ろう。凄く頑張ろう……。あ、オムレツカレーうめぇ。
『――『デュエル』!』
そしてオレと柚葉は夜の街を背景に向き合った。
最も近い処に最強の敵がいた!的な少年漫画の展開だろうか? しかし、あの『デッキ』を、『遊戯王』にあんまり詳しくない柚葉は扱えるのだろうか……?
「……えーと、あっ、私の方が先行……私のターン!」
自分の方が先行である事に気づいた柚葉は自身の手札を睨めっこし、目が泳いでいる? 大丈夫かなぁと心配する。
「――私は《焔征竜-ブラスター》を召喚! ……え? あれ? 何で召喚出来ないの? まさか『デュエルディスク』の故障……!?」
柚葉は自信満々に『デュエルディスク』にモンスターカードを置いて――『ブー』と機械的なエラー音が鳴り響き、召喚の処理を行わない。
「違う違う、正常だ。それは《焔征竜-ブラスター》のレベルが7だからだ」
……すっごい懐かしい気持ちになった。昔というか、漫画の頃の最初期は最上級モンスターを出すのにも、そのまま出せたなぁ。
「基本的に1~4レベルのモンスターは『下級モンスター』で、特別な効果が無い限りそのまま出せるレベル帯で、5~6レベルは『上級モンスター』という区分、通常召喚するのにモンスターの『生け贄(リリース)』が1体必要なレベル帯で、7レベル以上は『最上級モンスター』、此処からは『生け贄』要因が2体必要だ。ちなみにモンスターをリリースして通常召喚する事を『アドバンス召喚』という」
そうだよなぁ、『アドバンス召喚』なんて『帝』を使ったアリアしか使ってなかった。……いや、もうあの『帝』はかつての『帝』とは別物だけど。
「……え? それじゃこのモンスターは『下級モンスター』を2体出さないと『アドバンス召喚』出来ない……?」
「まぁ『アドバンス召喚』はな。その『征竜』は自身の効果で特殊召喚出来るぞ。特殊召喚は通常召喚とは違って何回でも出来る召喚と考えてくれ」
……そう、もうお解りだと思うが、柚葉のデッキは『征竜』なのである。あの『征竜』なのだ。近年で最凶最悪のカテゴリー、『魔術師』の持つ『魔導』に唯一匹敵する最強のぶっ壊れテーマだ……!
――かつての『魔都』は、柚葉の『征竜』と『魔術師』の『魔導』の炎に包まれていた!とか、核戦争を凌駕するぐらいの世紀末環境だよな。
「……えーと、あ、これね。……ふむふむ、えーと、それじゃ私は手札の《地征竜-リアクタン》と《水征竜-ストリーム》を除外して《焔征竜-ブラスター》を特殊召喚っ!」
「あ」
豊海柚葉
LP8000
手札5→3→2
《焔征竜-ブラスター》星7/炎属性/ドラゴン族/攻2800/守1800
魔法・罠カード
無し
のりのりな感じで柚葉は、環境を荒らし回り、全てを道連れにして崩壊させた『征竜』の一つ、赤き焔の化身たる至高のドラゴン、《焔征竜-ブラスター》をフィールドに君臨させる……!
「――わぁっ、ちゃんと特殊召喚できたぁ……! 何これカッコいいね、このドラゴン!」
……うん、今も多くの『決闘者』の一生癒えぬトラウマになっているが、確かにデザインはカッコイイよなぁ。
はしゃぐ柚葉に水を差すようで悪いが、ちゃんと言わないといけない。
「……あー、柚葉、非常に言い難いんだが、その《焔征竜-ブラスター》、というか『最上級モンスター』の『征竜』は共通効果で、特殊召喚したら相手のエンドフェイズ時に手札に戻るぞ?」
まぁその手札に戻る効果、嫌がらせ以外の何物でも無いんだけどな。使うプレイヤーにではなく、相手プレイヤーにとって。
「……え? あ、ホントだ、そう書いてる……何これ、相手が何もしなくても手札に戻っちゃうの? 弱くない?」
「基本的に『征竜』はランク7のエクシーズ召喚に繋げたり、チューナーモンスターを出してシンクロ召喚に繋げたりして、毎ターン、他のデッキの切り札級モンスターを大量展開していくぶっ壊れテーマなんだ。……その手札に戻るという点すら厄介極まるんだよなぁ」
容易に特殊召喚が行える以上、『征竜』デッキにとって通常召喚権は余るモノ扱いである。
その余った召喚権で《光と闇の竜》出したり、《オベリスクの巨神兵》出したり、当時の『決闘者』達の遊び心が光っていたよなぁ……。
「え? でも手札にチューナーモンスターいないし、エクシーズするにも特殊召喚するのにドラゴン族モンスター2枚除外するなら、初期手札の5枚で2体出すなんて出来ないじゃない?」
同じレベルのモンスター2体以上を重ねてエクシーズ召喚する事は大丈夫だったか。
まぁシンクロ召喚以上にエクシーズ召喚見てきたから、其処は理解していると見える。
「いや、多分だが、お前の手札、最上級征竜、余裕で2体以上出せたぞ? 除外した下級征竜の効果を読んでみるんだ。まずは《地征竜-リアクタン》の方だ」
《地征竜-リアクタン》
効果モンスター
星4/地属性/ドラゴン族/攻1800/守1200
ドラゴン族または地属性のモンスター1体と
このカードを手札から捨てて発動できる。
デッキから「巌征竜-レドックス」1体を特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン攻撃できない。
「地征竜-リアクタン」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
……ああ、また『親征竜』と『子征竜』が一緒のデッキと禁止制限無しの世紀末決闘をする事になるとはなぁ。
「《巌征竜-レドックス》……?」
「その下級征竜と同じ属性の最上級征竜さ。面倒だから下級征竜を『子征竜』、最上級征竜を『親征竜』と呼称するぞ。『子征竜』の効果は自身と同じ属性のモンスターまたはドラゴン族モンスター1体と一緒に手札から捨てて『親征竜』をデッキから特殊召喚する効果だ。ちなみにこの効果で特殊召喚した『親征竜』はそのターン攻撃出来ないから注意な」
『征竜』使いに『征竜』の説明をするとか、これ、どう考えても自殺志願者だよな……。
自分から十三階段を登っていくような気分に陥り、物凄く憂鬱な気持ちになるが、ちゃんと説明せねばなるまい。
「……それって結局相手ターンのエンドフェイズに手札に戻っちゃうから、意味無いんじゃ? それにこっちも手札消費2枚かぁ……」
「『親征竜』の効果をもう1度読んでみるんだ。自分の手札・墓地からこのカード以外のドラゴン族または同じ属性のモンスターを合計2体除外して特殊召喚って書いてあるだろ。しかも手札・墓地から」
何で墓地からも特殊召喚出来るんかねぇ……。
「……あ、これって『子征竜』の効果で墓地に送ったカードを除外コストに出来るって事?」
「そういう事。『征竜』にとって墓地は第二の手札同然だ。……除外ゾーンさえ第三の手札だけど。――さっきのだと勿体無い使い方だが、《地征竜-リアクタン》と《水征竜-ストリーム》を墓地に送ってデッキから《巌征竜-レドックス》を特殊召喚、そして墓地の2体のドラゴン族モンスターを除外して《焔征竜-ブラスター》を特殊召喚してランク7エクシーズに繋げれたって訳だ。同じ手札消費3枚でも雲泥の差だろ?」
毎ターン、墓地コストが尽きない限りランク7エクシーズを大量に行えるとか、今考えても頭おかしいデッキである。
例えるなら、他のデッキにとって切り札級のカードによるボスラッシュがずっと途絶えないボスデッキである。
「なるほど……それと勿体無いというのは?」
「『子征竜』は墓地にドラゴン族モンスターを送りながら『親征竜』を展開出来るから、なるべく手札からの効果は使って墓地に送りたい。『親征竜』は墓地からも特殊召喚出来るから、なるべく手札コストとして使ってから墓地から特殊召喚したいって訳だ」
そう、『征竜』は手札コスト管理、墓地コスト管理、除外コスト管理、その全ての領域を緻密に計算しながら制圧していくが故に、非常にプレイングの難しいデッキなのだ。
――まぁ余りにも地力がありすぎて、適当にプレイしていても制圧出来るんだけどな……。
「考えなしに除外しまくっていたら、簡単に墓地コストが尽きて動けなくなるぞ。あと難しいのは『親征竜』の効果は3つあるが、どれも1ターンに1つの効果しか使えない事だ。1つ使うと他の2つの効果が使えないから注意が必要だ」
この段階で柚葉はちんぷんかんぷんと言った感じだが、まぁデッキを回していれば自ずと理解するだろう。
「ちなみに同じ属性またはドラゴン族モンスター2体を除外して特殊召喚する効果は全ての『親征竜』の共通効果で、2つ目は手札にある時に自身と同じ属性を墓地に送って固有効果、地属性の《巌征竜-レドックス》なら墓地のモンスター1体を特殊召喚する『死者蘇生』効果、水属性の《瀑征竜-タイダル》ならデッキからモンスター1体を墓地に送る『おろかな埋葬』効果、炎属性の《焔征竜-ブラスター》ならフィールド上のカードを1枚選択して破壊する万能破壊効果、風属性の《嵐征竜-テンペスト》にはデッキからドラゴン族モンスターを手札に加える万能サーチ効果だ」
……まぁ説明するオレ自身も、『征竜』デッキを回した事は無いので、どうやりくりするのかは解らないがね。
「……ねぇねぇ、一つのカードに効果詰め込みすぎじゃない?」
「……ちなみにその『征竜』、『遊戯王』史上でも類を見ないほどの最強最悪のデッキテーマだからな? 四肢をもぎ、翼を剥がし、牙を抜いても強かった。首を落としたら首だけになって他のドラゴンに寄生して暴れ、巣を焼き払ったら胴体を暗黒物質で再構築したと謳われるほどだからなぁ……」
同時代に台頭して暗黒期を齎した『魔導』もとい『魔導書の神判』は歴代最速級の速さで『子征竜』達と共に一発禁止されたが、『征竜』の方は子がいなくても親は強いを地で行き(むしろ対抗馬がいなくなっただけ)、大量のデッキパーツを制限行きにした上で『親征竜』全部を準制限にしても止まらず、『親征竜』全部を制限にして死に絶えたと思ったら宇宙の大いなる闇の力を得て返り咲き、遂には『親征竜』全部を禁止にして『子征竜』だけ釈放された……言うまでもないが、親がいない『子征竜』などただのバニラモンスターである。
「そして3つ目の効果、除外された時に同じ属性のドラゴン族モンスターをデッキから手札に加える効果だ。他の効果を使ってなければ、除外してアドを稼げる――上手くやり取りすれば凄ぇ事になるぞ」
この効果で『子征竜』を持ってきたり、他のドラゴン族モンスターをサーチして展開していき、相手の息の根を止める。
……あの時代に生きた『決闘者』は、『魔導』・『征竜』を使う者以外、安寧と安息は無かったんだろうなぁ。
「それじゃ最初からやり直して――」
「こ、このままで良いわ!」
「ぇー? 大丈夫か? 無理しなくて良いんだぞ……?」
あの、柚葉? 其処は強情を張る処じゃ無いと思うが……?
「な、直也君の癖に生意気よ! だだ、大丈夫、此処から奇跡の大逆転が……!」
「1ターン目から奇跡の大逆転頼りにしてどうすんだよ?」
……正直、そんな無駄使いしたら、幾ら『征竜』でも巻き返せないぞ?
「え、えーと……私はこれでターンエンド……」
「……だから言わんこっちゃない。やり直そうぜ?」
「つ、つべこべ言わずかかってきなさいっ!」
あーあ、何も伏せずにターンエンドしちゃったか。
うーむ、幾らこの『遊戯王』次元への『世界改変』の影響を受けていないとは言っても、やはり『決闘者』に言葉は通じな――不要か。
「オレのターン、ドロー……あ」
……あー、これは酷い手札だ。うん、凄い酷い。オレの本来の『デッキ』よ、オレに何をさせたいんだ……?
「オレはペンデュラムゾーンにスケール1の《EMモンキーボード》をセッティング! このカードはもう片方のペンデュラムゾーンに『EM』カードが存在しない場合、このカードのペンデュラムスケールは1から4になる」
秋瀬直也
LP8000
手札5→6→5
無し
魔法・罠カード
無し
ペンデュラムゾーン
《EMモンキーボード》スケール1→4
スケールが最小の1から4へ――ペンデュラム召喚で特殊召喚出来るモンスターのレベルはスケールの間の数字、変化している限り4という事は、一番使いやすい4レベルのモンスターを出せないという、結構致命的なデメリットである。
だが、コイツのペンデュラム効果は――。
「《EMモンキーボード》のペンデュラム効果発動、このカードが発動したターンの自分メインフェイズ時、デッキからレベル4以下の『EM』モンスター1体を手札に加える。オレはレベル4の《EMドクロバット・ジョーカー》を手札に加える」
この通り、1枚でペンデュラム召喚に必要なカードをサーチして用意出来るカードなのだ。
「そしてオレは《EMドクロバット・ジョーカー》を通常召喚し、効果発動。このカードが召喚に成功した時、デッキから《EMドクロバット・ジョーカー》以外の『EM』モンスター、『魔術師』ペンデュラムモンスター、『オッドアイズ』モンスターの内、いずれか1体を手札に加える。オレはレベル7のペンデュラムモンスター《竜穴の魔術師》を手札に加える!」
『魔術師』のデッキでも見た、愉快に笑う道化師が軽快に召喚され、そのハットから飛び出した鳩達と共に、サーチしたモンスターカードを受け取る。
しかしこの《EMドクロバット・ジョーカー》、通常召喚した時限定とは言え、物凄い範囲の万能サーチ効果である。
秋瀬直也
LP8000
手札5→6→5→6
《EMドクロバット・ジョーカー》星4/闇属性/魔法使い族/攻1800/守100
魔法・罠カード
無し
ペンデュラムゾーン
《EMモンキーボード》スケール4
初めて触る筈の『デッキ』なのに、何だか凄く馴染むような気がする。
自然と『デッキ』の動かし方が浮かんでくるような錯覚すら感じる。
「フィールド魔法『天空の虹彩』を発動!」
「フィールド魔法?」
「ああ! 専用のフィールドゾーンに置かれる魔法で、フィールドに1枚しか――あれ? それはマスタールール2までで、今は自分と相手のフィールド上に1ヶ所ずつ置き場所があるんだっけ? 自分のフィールドに1枚までしか置けない永続魔法カードみたいなもんで、新しく置き換えるなら古い方は墓地に置かれるって認識で良いぞ」
……あれ? 何か物凄い違和感。知る筈のない知識を何故か知っていた的な……まぁいいや。
フィールド魔法『天空の虹彩』が発動すると同時に夜空が淡い虹色に光り輝き、天空から揺れる振り子によって豪華絢爛な幾何学模様が描かれる。
「このカードがフィールドゾーンに存在する限り、自分のペンデュラムゾーンの『魔術師』カード、『EM』カード、『オッドアイズ』カードは相手の効果の対象にならない。――効果発動! 『天空の虹彩』の効果は1ターンに1度、このカード以外の自分フィールドの表側表示のカード1枚を破壊し、デッキから『オッドアイズ』カード1枚を手札に加える。オレはペンデュラムゾーンの《EMモンキーボード》を破壊し、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を手札に加える」
展開に邪魔なペンデュラムゾーンの《EMモンキーボード》を破壊し、この『デッキ』のエースモンスターをサーチする。
にしても凄く便利なサーチ効果だなぁ。『ワイト・アンデシンクロ』の不自由っぷりとは天と地の差である。これが時代の差か……。
秋瀬直也
LP8000
手札6→5→6
《EMドクロバット・ジョーカー》星4/闇属性/魔法使い族/攻1800/守100
魔法・罠カード
無し
ペンデュラムゾーン
無し
フィールド魔法『天空の虹彩』
「――さて、これで準備は整った。オレはペンデュラムゾーンにスケール1の《竜脈の魔術師》とスケール8の《竜穴の魔術師》をセッティング! これでレベル2からレベル7のモンスターを同時に召喚可能!」
「え? そ、そんなに幅広く召喚出来るの!?」
『魔術師』の『EMEm』だとレベル4のモンスターを出す事だけを突き詰めたような感じでスケールも3or5(または6)と小さい数字だったが、こっちはレベル7のモンスターを出す事が主眼のようで、スケール8とかが普通にある。
「――ペンデュラム召喚! 揺れろ、魂のペンデュラム! 天空に描け光のアーク! エクストラデッキからレベル6《EMモンキーボード》、手札からレベル6《賤竜の魔術師》、そして真打ち登場! 雄々しくも美しく輝く二色の眼(まなこ)! レベル7《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が2体!」
秋瀬直也
LP8000
手札6→5→4→1
《EMドクロバット・ジョーカー》星4/闇属性/魔法使い族/攻1800/守100
《EMモンキーボード》星6/地属性/獣族/攻1000/守2400
《賤竜の魔術師》星6/風属性/魔法使い族/攻2100/守1400
《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》星7/闇属性/ドラゴン族/攻2500/守2000
《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》星7/闇属性/ドラゴン族/攻2500/守2000
魔法・罠カード
無し
ペンデュラムゾーン
《竜脈の魔術師》スケール1
《竜穴の魔術師》スケール8
フィールド魔法『天空の虹彩』
「そ、そんなっ、4体のモンスターを同時に……!? で、でも、どのモンスターの攻撃力も私の《ブラスター》より低いよ!」
「ああ、今の処はな」
ふふふ、これで止まる訳が無いじゃないかー! 今は『決闘者』として向き合っている以上――この秋瀬直也、容赦せんッッ!
「更にレベル6の《EMモンキーボード》と《賤竜の魔術師》をオーバーレイ! エクシーズ召喚! 人が希望を越え、夢を抱く時、遙かなる彼方に新たな未来が現れる! 限界を超え、その手に掴め! ランク6《No.39 希望皇ビヨンド・ザ・ホープ》!」
雄々しい掛け声と共に、オレのフィールドにあのエクシーズモンスターが降誕する!
「――っ、そのエクシーズモンスターはフェイト・テスタロッサが使っていたものと同じカード……!?」
そう、あっちはレベル4のモンスター主体のデッキだから、出すなら同じ種族・同じ属性のランク4エクシーズモンスターに魔法カード『RUM-アストラル・フォース』が必要だが、レベル6のモンスターをある程度用意出来るこのデッキなら普通にエクシーズ召喚する事も可能なのだ!
「《No.39 希望皇ビヨンド・ザ・ホープ》の効果発動! このカードがエクシーズ召喚に成功した時、相手フィールド上の全てのモンスターの攻撃力は0となる!」
秋瀬直也
LP8000
手札1
《EMドクロバット・ジョーカー》星4/闇属性/魔法使い族/攻1800/守100
《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》星7/闇属性/ドラゴン族/攻2500/守2000
《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》星7/闇属性/ドラゴン族/攻2500/守2000
《No.39 希望皇ビヨンド・ザ・ホープ》ランク6/光属性/戦士族/攻3000/守2500 ORU2
魔法・罠カード
無し
ペンデュラムゾーン
《竜脈の魔術師》スケール1
《竜穴の魔術師》スケール8
フィールド魔法『天空の虹彩』
「あぁっ、《ブラスター》の攻撃力が0に……!?」
豊海柚葉
LP8000
手札2
《焔征竜-ブラスター》星7/炎属性/ドラゴン族/攻2800→0/守1800
魔法・罠カード
無し
うーむ、もうこのままバトルするだけで終わりそうだが、念には念を入れよう。手を抜くなんて柚葉に失礼だし――うん、悪く思うなよ!
「手札から《貴竜の魔術師》の効果発動、このカードが手札・墓地に存在する場合、自分フィールドのレベル7以上の『オッドアイズ』モンスター1体のレベルを3つ下げ、このカードを特殊召喚する!」
オレは敢えて攻撃力0となった《焔征竜-ブラスター》を《竜脈の魔術師》のペンデュラム効果を使って破壊せず――。
秋瀬直也
LP8000
手札1→0
《EMドクロバット・ジョーカー》星4/闇属性/魔法使い族/攻1800/守100
《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》星7→4/闇属性/ドラゴン族/攻2500/守2000
《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》星7/闇属性/ドラゴン族/攻2500/守2000
《No.39 希望皇ビヨンド・ザ・ホープ》ランク6/光属性/戦士族/攻3000/守2500 ORU2
《貴竜の魔術師》星3/炎属性/魔法使い族/攻700/守1400
魔法・罠カード
無し
ペンデュラムゾーン
《竜脈の魔術師》スケール1
《竜穴の魔術師》スケール8
フィールド魔法『天空の虹彩』
白い魔術師風の衣装を来た、ロリな幼女が颯爽と出現する。色々縛りがあるが、このカードはペンデュラムモンスターであり、チューナーでもあるのだ。
「レベル4の《EMドクロバット・ジョーカー》にレベル3のチューナーモンスター《貴竜の魔術師》をチューニング! シンクロ召喚! 誇り高き灼熱の調べ、今、二色の眼に宿らん! レベル7《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》!」
最早手慣れたシンクロ召喚によって現れるは灼熱の炎を取り込んだ、ペンデュラムモンスターではなく、シンクロモンスターの《オッドアイズ》であり、二色眼の竜は力強く咆哮する。
秋瀬直也
LP8000
手札0
《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》星4/闇属性/ドラゴン族/攻2500/守2000
《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》星7/闇属性/ドラゴン族/攻2500/守2000
《No.39 希望皇ビヨンド・ザ・ホープ》ランク6/光属性/戦士族/攻3000/守2500 ORU2
《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》星7/炎属性/ドラゴン族/攻2500/守2000
魔法・罠カード
無し
ペンデュラムゾーン
《竜脈の魔術師》スケール1
《竜穴の魔術師》スケール8
フィールド魔法『天空の虹彩』
「《貴竜の魔術師》はシンクロ素材にする場合、ドラゴン族モンスターのシンクロ召喚にしか使用出来ず、他のシンクロ素材に『オッドアイズ』モンスター以外のモンスターを使用した場合、持ち主のデッキの一番下に戻す」
シンクロ素材に《オッドアイズ》ではなく《ドクロバット》を使用した為、《貴竜の魔術師》はエクストラデッキにいかず、デッキに戻ってしまう。
通常時なら自身の効果でレベルを下げた《オッドアイズ》とシンクロ召喚するのが一番だが、今は特に問題無いな。
「《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》の効果発動! 《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》の効果は1ターンに1度、このカードが特殊召喚に成功した時、自分のペンデュラムゾーンのカード1枚を特殊召喚する。このターン、このカードは攻撃出来ない。――オレはレベル7の《竜穴の魔術師》を守備表示で特殊召喚する!」
秋瀬直也
LP8000
手札0
《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》星4/闇属性/ドラゴン族/攻2500/守2000
《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》星7/闇属性/ドラゴン族/攻2500/守2000
《No.39 希望皇ビヨンド・ザ・ホープ》ランク6/光属性/戦士族/攻3000/守2500 ORU2
《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》星7/炎属性/ドラゴン族/攻2500/守2000
《竜穴の魔術師》星7/水属性/魔法使い族/攻900/守2700
魔法・罠カード
無し
ペンデュラムゾーン
《竜脈の魔術師》スケール1
フィールド魔法『天空の虹彩』
この効果を使うとペンデュラムゾーンのモンスターを特殊召喚してしまい、手札に補うカードが無い限り次のターンにペンデュラム召喚出来なくなる。
更には《メテオバースト》も攻撃出来なくなるが――このデメリット、割りと簡単に踏み倒せるのである。
「レベル7の《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》と《竜穴の魔術師》でオーバーレイ! エクシーズ召喚! 現われろ、不滅の絶対零度宿りし気高き龍! ランク7《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》!」
「シンクロからエクシーズ!?」
次に現れる《オッドアイズ》はエクシーズモンスター。
灼熱の炎を取り込んだニ色眼竜から、今度は絶対零度の取り込んだニ色眼竜に早変わりする。
秋瀬直也
LP8000
手札0
《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》星4/闇属性/ドラゴン族/攻2500/守2000
《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》星7/闇属性/ドラゴン族/攻2500/守2000
《No.39 希望皇ビヨンド・ザ・ホープ》ランク6/光属性/戦士族/攻3000/守2500 ORU2
《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》ランク7/水属性/ドラゴン族/攻2800/守2500 ORU2
魔法・罠カード
無し
ペンデュラムゾーン
《竜脈の魔術師》スケール1
フィールド魔法『天空の虹彩』
「――バトル! 《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》で《焔征竜-ブラスター》! この瞬間、《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》の効果発動! 自分または相手の攻撃宣言時にこのカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、その攻撃を無効にし、その後、自分の手札・墓地から『オッドアイズ』モンスター1体を特殊召喚する! オレが特殊召喚するのはエクシーズ素材として墓地に落ちた《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》だ!」
この通り、攻撃を一回無効化するだけで即座に墓地に落としたエクシーズ素材だった『オッドアイズ』モンスターを特殊召喚出来るのだ!
秋瀬直也
LP8000
手札0
《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》星4/闇属性/ドラゴン族/攻2500/守2000
《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》星7/闇属性/ドラゴン族/攻2500/守2000
《No.39 希望皇ビヨンド・ザ・ホープ》ランク6/光属性/戦士族/攻3000/守2500 ORU2
《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》ランク7/水属性/ドラゴン族/攻2800/守2500 ORU2→1
《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》星7/炎属性/ドラゴン族/攻2500/守2000
魔法・罠カード
無し
ペンデュラムゾーン
《竜脈の魔術師》スケール1
フィールド魔法『天空の虹彩』
「――続いて、2体目の《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》で《焔征竜-ブラスター》を攻撃! このカードが相手モンスターと戦闘を行う場合、このカードが相手に与える戦闘ダメージは倍になる!」
「きゃっ……!」
《ビヨンド・ザ・ホープ》の効果で攻撃力0となっている《焔征竜-ブラスター》を戦闘破壊し、2500の倍の戦闘ダメージ、5000ダメージが衝撃となって柚葉を襲う。
豊海柚葉
LP8000→3000
「――っ、一気に5000ダメージも……!」
「更に《No.39 希望皇ビヨンド・ザ・ホープ》、《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》、《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》でダイレクトアタック!」
勿論、最後まで油断せず攻撃宣言し、柚葉は慌ててとあるカードを手に取る。
「て、手札から《速攻のかかし》の効果発動! 相手モンスターの直接攻撃宣言時にこのカードを手札から捨てて攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了させ……って、またエラー!? ど、どうして……!?」
またもや不適切な処理をした際に生じる警告音が虚しく鳴り響く。やはり手札誘発効果のカードを握っていたか。
「あ、使うタイミング的には間違ってないが、その手札誘発カードはモンスター効果だろ? ――《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》がモンスターゾーンに存在する限り、相手はバトルフェイズ中にモンスターの効果を発動出来ない!」
戦闘は続行! 3体のモンスター達は容赦無く決闘者レベル1の初心者に襲いかかる!
「きゃああああああああぁ――っ!」
豊海柚葉
LP3000→0→-2500→-5300
と、柚葉が派手に吹っ飛んだ!? だ、大丈夫か!? 調子に乗ってやり過ぎた……!
「大丈夫か!? 柚葉!」
すぐに柚葉の下に駆け寄り、声を掛けると、大の字に倒れていた柚葉はむくりと起き上がり、涙目でこう言った。
「……もう一回」
「……え?」
「もう一回『デュエル』よ! 今度はあんなミス犯さないんだからねっ!」
うん、涙目の状態で全力で悔しがる柚葉を見て、なにこの可愛い生き物と思ってしまったのは永遠に秘密にしておこう。言ったら本気で殺されかねない。
本日の禁止カード
《焔征竜-ブラスター》
効果モンスター(禁止カード)
星7/炎属性/ドラゴン族/攻2800/守1800
自分の手札・墓地からこのカード以外のドラゴン族
または炎属性のモンスターを合計2体除外して発動できる。
このカードを手札・墓地から特殊召喚する。
特殊召喚したこのカードは相手のエンドフェイズ時に持ち主の手札に戻る。
また、このカードと炎属性モンスター1体を手札から墓地へ捨てる事で、
フィールド上のカード1枚を選択して破壊する。
このカードが除外された場合、
デッキからドラゴン族・炎属性モンスター1体を手札に加える事ができる。
「焔征竜-ブラスター」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
え? 奴等『征竜』の説明を、これを合わせて4回もしなきゃいけないの? 一決闘者として拒絶反応(セイリュウリアリティショック)が既に起きているのだが、と作者すら言わざるを得ない。
奴等『征竜』にとってのあらゆるメタカードを「手札からブラスターで」という絶望の呪文で屠り去った。特殊召喚されても相手のエンドフェイズに手札に戻る事が嫌がらせなの域にあるのはこの為である。
決闘者レベル1の決闘初心者のぽんこつ状態の柚葉が使ったせいで悲しい事になったが、次か次の次あたりでコイツ等の真価が存分に見れる事でしょう……(死んだ魚のような眼)
まさに生まれたのが間違い、どうしてこんな効果を4枚も作ったんだと言わざるを得ないが、最近の環境を見ていると普通に釈放しても大丈夫なのではと血迷うほど現環境は既にぶっ壊れている。
ペンデュラムと征竜、ゾンビよりもしぶとい事に定評のある両者の軍配が何方にあがるのか、時代の流れに置いて行かれた征竜はとっくの昔にペンデュラムすら凌駕していたのか、今、明らかとなる! 柚葉がぽんこつ状態から卒業すれば、の話である……。