――先行は柚葉からだった。
「私の先行! 私は《幻木龍》を通常召喚し――」
『チェーンして手札から『増殖するG』を発動』
「わっ!? うぅっ、またそれぇ!?」
『増殖するG』に対する生理的な嫌悪感はともかく、このタイミングに使われるのは非常に痛い。
恐らく柚葉の手札には《幻水龍》がいて、そこからランク8エクシーズモンスターである《No.107 銀河眼の時空竜》から《No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン》にエクシーズチェンジして『征竜』を落としてから大量展開するつもりだったが、《幻獣機ドラゴサック》を出すまでやってしまうと『混沌』に7ドロー以上される。
ヤツに其処までの手札アドバンテージを与えてしまったら最後、次のターンが訪れずに1ターンキルされてしまうだろう。……柚葉、どう出る……!
「自分フィールドに地属性モンスターが存在する場合、1ターンに1度だけ《幻水龍》は手札から特殊召喚出来る!」
『『増殖するG』の効果で1枚ドロー』
豊海柚葉
LP8000
手札5→4→3
《幻木龍》星4/地属性/ドラゴン族/攻100/守1400
《幻水龍》星8/水属性/ドラゴン族/攻1000/守2000
魔法・罠カード
無し
「《幻木龍》の効果発動! 1ターンに1度、自分フィールド上のドラゴン族・水属性モンスター1体を選択し、そのモンスターと同じレベルになる! 私はレベル8の《幻水龍》を選択、これで《幻木龍》のレベルは8!」
これでレベル8のモンスターが2体、来るぞ遊馬!
「――レベル8となった《幻木龍》と《幻水龍》でオーバーレイ! エクシーズ召喚! ランク8《神竜騎士フェルグラント》!」
『1枚ドロー』
現れるは光り輝く鎧姿の竜の騎士! 汎用ランク8にして相手ターンにも使えるフリーチェーンの効果が強力な『征竜』の頼れる相棒(玩具)の一つである。
敵に回すと呻き声を上げたくなるが、味方ならこれほど頼もしいヤツは居ないだろう。特殊召喚回数も最小限に抑えられているし、最高の選択肢と言えよう。
「私はこれでターンエンド」
豊海柚葉
LP8000
手札3
《神竜騎士フェルグラント》ランク8/光属性/戦士族/攻2800/守1800 ORU2
魔法・罠カード
無し
「オレのターン! っと、最初のターンは皆ドロー無しだったな」
危うく癖でドローしそうになるが、寸前の処で押し留まる。
「オレはペンデュラムゾーンに《EMギタートル》をセッティングし、《EMモンキーボード》をセッティング。《EMギタートル》のペンデュラム効果発動、1ターンに1度だけ、もう片方のペンデュラムゾーンに『EM』カードが発動した場合、デッキから1枚ドローする!」
ギターと亀が融合したかのようなコミカルなモンスターがペンデュラムゾーンから自身のギターを鳴らし、デッキから1枚ドローする。
「《EMモンキーボード》のペンデュラム効果発動、《EMモンキーボード》のペンデュラム効果は1ターンに1度、発動したターンのメインフェイズにデッキからレベル4以下の『EM』モンスター1体を手札に加える。オレはレベル4の《EMドクロバット・ジョーカー》を手札に加え、通常召喚して効果発動、デッキから《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を手札に加える!」
秋瀬直也
LP8000
手札5→4→3→4→5→4→5
《EMドクロバット・ジョーカー》星4/闇属性/魔法使い族/攻1800/守100
魔法・罠カード
無し
ペンデュラムゾーン
《EMギタートル》スケール6
《EMモンキーボード》スケール1
好調な出だしであるが、このままではレベル7の《オッドアイズ》をペンデュラム召喚出来ない。ならば――!
「魔法カード『揺れる眼差し』を発動、破壊されるペンデュラムゾーンのカードは2枚、よって相手に500ダメージ与える効果とデッキからペンデュラムモンスター1体を手札に加える効果を発動し、《竜穴の魔術師》を手札に加える」
???
LP8000→7500
ペンデュラムゾーンを自らの手で破壊してこじ開けると同時に500のバーンダメージ、そしてデッキから任意のペンデュラムカードをサーチする。
「オレは《竜穴の魔術師》と《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》をペンデュラムゾーンにセッティングし、フィールド魔法『天空の虹彩』を発動! 効果発動し、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を破壊し、デッキから《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を手札に加えてセッティング! これでレベル5から7のモンスターが同時に召喚可能!」
秋瀬直也
LP8000
手札5→4→5→4→3→2→3→2
《EMドクロバット・ジョーカー》星4/闇属性/魔法使い族/攻1800/守100
魔法・罠カード
無し
ペンデュラムゾーン
《竜穴の魔術師》スケール8
《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》スケール4
フィールド魔法『天空の虹彩』
「――揺れろ、魂のペンデュラム! 天空に描け光のアーク! エクストラデッキよりレベル6《EMモンキーボード》レベル7《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》をペンデュラム召喚!」
秋瀬直也
LP8000
手札2
《EMドクロバット・ジョーカー》星4/闇属性/魔法使い族/攻1800/守100
《EMモンキーボード》星6/地属性/獣族/攻1000/守2400
《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》星7/闇属性/ドラゴン族/攻2500/守2000
魔法・罠カード
無し
ペンデュラムゾーン
《竜穴の魔術師》スケール8
《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》スケール4
フィールド魔法『天空の虹彩』
当然《モンキーボード》は守備表示で出しておく。更に……!
「そして手札から魔法カード『オッドアイズ・フュージョン』発動! 『オッドアイズ・フュージョン』は1ターンに1度だけ、自分の手札・フィールドからドラゴン族の融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地に送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。オレは《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》と《EMドクロバット・ジョーカー》を融合! ――尊き風雷宿りしニ色眼の竜! レベル7《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》!」
秋瀬直也
LP8000
手札2→1
《EMモンキーボード》星6/地属性/獣族/攻1000/守2400
《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》星7/風属性/ドラゴン族/攻2500/守3000
魔法・罠カード
無し
ペンデュラムゾーン
《竜穴の魔術師》スケール8
《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》スケール4
フィールド魔法『天空の虹彩』
《ボルテックス》を守備表示で立てる。1ターン目の出だしとしてはまずまずである。
これでオレも柚葉も相手ターンに1回ずつ邪魔入れれるし、こっちの残り1枚は頼もしい事に《エフェクト・ヴェーラー》、これで《混沌の黒魔術師》の効果を止めてみせる……!
「オレはこれでターンエンド、エンドフェイズ、ペンデュラムゾーンの《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》のペンデュラム効果発動。《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》のペンデュラム効果は1ターンに1度、エンドフェイズ時に自身を破壊し、デッキから攻撃力1500以下のペンデュラムモンスター1体を手札に加える。オレは攻撃力1500の《慧眼の魔術師》を手札に加える」
秋瀬直也
LP8000
手札1→2
《EMモンキーボード》星6/地属性/獣族/攻1000/守2400
《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》星7/風属性/ドラゴン族/攻2500/守3000
魔法・罠カード
無し
ペンデュラムゾーン
《竜穴の魔術師》スケール8
フィールド魔法『天空の虹彩』
『――私のターン』
???
LP8000→7500
手札5→4→5→6
無し
魔法・罠カード
無し
『魔法カード『強欲な壺』を発動、2枚ドローする』
お決まりの初手、無条件で1枚手札を増やせる最強の汎用魔法カードだが、これに《ボルテックス》の効果を使う訳にはいかない。スルーする。
『更に魔法カード『天使の施し』発動、……《ボルテックス》の無効効果は?』
「……使わない」
『3枚ドローして2枚捨てる。《処刑人-マキュラ》を墓地に送った事により、このターン、私は手札から罠カードが発動可能となる』
物凄く止めたい衝動に駆られたが、柚葉が出した《フェルグラント》の方の効果は対モンスターにしか使えないから、我慢、我慢……まだ実害は無い……《処刑人-マキュラ》が落ちた為、手札から罠カードが怖すぎるが。
???
LP7500
手札6→5→7→6→9→7
無し
魔法・罠カード
無し
『魔法カード『サンダー・ボルト』を発動、相手フィールド上に存在するモンスターを全て破壊する!』
……っ、やはり致命的な魔法カードを抱えてやがったか……! それにしても――。
「……あ、それはエラッタ前の『相手モンスターを全て破壊する』んじゃないんだな」
『テキストの曖昧さで相手のデッキ・手札の中のモンスターも破壊出来るという拡大解釈は流石に受け入れられない』
……あー、ヤツにはヤツなりのこだわりがあるようだ。
そんな拡大解釈が無くてもその禁止魔法カード、ぶっ壊れだもんね。何せ何のコストも無しにこっちのフィールドだけ焼け野原になるんだから。
「それは通せねぇな! 《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》の効果発動! 自分のエクストラデッキから表側表示のペンデュラムモンスター《EMギタートル》をデッキに戻し、『サンダー・ボルト』の発動を無効にして破壊する!」
これが本命とは思えないが、止めないと終わる的なものなので止めざるを得ない。さぁ、何を抱えてやがる……!
『魔法カード『苦渋の選択』を発動、私が選択する5枚はこれだ』
うーわ、使われたくないカード1位2位を争う禁止魔法カード……! 今回の内容は――。
《混沌の黒魔術師》
《混沌の黒魔術師》
《クリッター》
《黒き森のウィッチ》
『次元融合』
『次元融合』入りだと? あ、『天使の施し』で《マキュラ》の影に隠れて1枚目の《混沌の黒魔術師》が墓地に落ちてやがる。
此処で『次元融合』を墓地に送るという事は、既に『死者蘇生』か『早すぎた埋葬』のどっちか、または両方持っている可能性があるか。
《クリッター》を墓地に落とされたら《幽鬼うさぎ》に《エフェクト・ヴェーラー》《バトルフェーダー》と、奴のデッキに入っている手札誘発カード全種からどれかサーチされてしまう。此処は《幽鬼うさぎ》はサーチ出来ない《黒き森のウィッチ》を墓地に送らせるしかないか……。
「オレは《クリッター》を選択する……!」
『《クリッター》を手札に加え、残りの4枚は墓地へ。墓地に落ちた《黒き森のウィッチ》の効果で守備力0の《バトルフェーダー》を手札に加える』
???
LP7500
手札7→6→5→6→7
無し
魔法・罠カード
無し
む、《エフェクト・ヴェーラー》じゃなく《バトルフェーダー》を優先しただと?
いや、確かに考えれば2人から攻撃される訳だから、必然的に場ががら空きになるケースがあった時点で死ぬんだから、それに対する防衛策を先に講じるのは当然か。案外手堅いな……。
『手札から罠カード『第六感』を発動、5と6を選択』
そしてこのぶっ壊れカードである。……おかしいな、3分の1でしか当たらないのに、外した処を見た事が無いんだが……。
「柚葉、振ってくれ」
「任せなさいっ。1出して最小限の効果に押し留めるわ! とりゃぁーっ!」
そして柚葉は力一杯フルスィングでサイコロを宙に投げ――何度かバウンドした後、ぴたりと止まり、オレ達は二人同時に「げっ」と呻く。
『出た目は6、よって6枚ドロー!』
???
LP7500
手札7→6→12
無し
魔法・罠カード
無し
何この理不尽な運命力!? アルカナフォース使って『当然正位置ィ!』とかいうレベルであるじゃないか……!?
『魔法カード『死者蘇生』を発動! 墓地の《混沌の黒魔術師》を特殊召喚する。効果発動、《混沌の黒魔術師》が特殊召喚された事で墓地の魔法カード1枚を手札に加える。私は『死者蘇生』を手札に加える』
「通さないわ――《神竜騎士フェルグラント》の効果発動! 1ターンに1度、エクシーズ素材を1つ取り除き、フィールドの表側表示モンスター1体を対象に発動! このターン、対象のモンスターは効果が無効になり、このカード以外の効果を受けない。この効果は相手ターンでも発動出来る! これで《混沌の黒魔術師》の魔法カード回収効果は無効よ!」
む、柚葉が先に動いたか。それじゃこっちの《エフェクト・ヴェーラー》は温存しよう。と思いきや――。
『――チェーンして速攻魔法『月の書』を発動、フィールドの表側表示モンスター1体を裏側守備表示にする。私は《混沌の黒魔術師》を裏側守備表示にする』
げっ、『月の書』を持っていたのかよ。上手く躱されたかと悔しげに顔を歪ませ――更に柚葉が自身の手札に手を掛ける。って、それは駄目だっ!
『――待った。今、《幽鬼うさぎ》の効果を発動するなら止めないが、《エフェクト・ヴェーラー》の場合は無意味な消費に終わるから止めるよ』
と、オレの制止よりも早く柚葉を止めたのは対戦相手の『混沌』であり、柚葉は自身の手札の一枚を手にしたまま、ぽかんと停止する。
『チェーンの処理は最後のカードから順次処理されるのは知っていると思うが、仮にこの場合、『月の書』の発動にチェーンして《エフェクト・ヴェーラー》を投げたとしよう。《エフェクト・ヴェーラー》の効果で《混沌の黒魔術師》の効果は無効化されるが、次の『月の書』の効果で《混沌の黒魔術師》が裏側守備表示になる事で《エフェクト・ヴェーラー》で適用した無効効果が適用されなくなり、続いて《神竜騎士フェルグラント》の効果は表側表示じゃないので適応外、最後に裏側守備表示となった《混沌の魔術師》の効果が正常に発動する為、この場合の《エフェクト・ヴェーラー》は無駄撃ちとなる』
そう、裏側守備表示になるとはフィールドの効果を受けてない状態になるという事と同じ。開けるまでは解らない『シュレディンガーの猫』と同じなのだ。
これと同じ手段で永続罠『スキルドレイン』適応下の効果モンスターの効果無効状態で、チェーンして『月の書』を使う事で裏側守備表示にし、召喚時の効果を使う事が出来る。
『――まぁ結果論になるが、最初に《エフェクト・ヴェーラー》を使い、私に『月の書』を使われた時に《神竜騎士フェルグラント》の効果を使っていれば《フェルグラント》の効果で『月の書』の効果も受けなくなるから初動で止めれたという事だ。高い授業料だが、今後の参考にしたまえ』
……しかし、相当なお人好しだなぁ。それで無駄撃ちしてくれた方が圧倒的に有利だと言うのに。
それを理解した柚葉は渋々掴んだカードを引っ込めた。
『『月の書』で《混沌の黒魔術師》が裏側守備表示となり、表側表示モンスターしか対象に出来ない《神竜騎士フェルグラント》の効果は不発、よって墓地から魔法カード『死者蘇生』を回収する』
???
LP7500
手札12→11→10→11
裏側守備表示のモンスターカード1枚(《混沌の黒魔術師》)
魔法・罠カード
無し
『再び『死者蘇生』を発動、2体目の《混沌の黒魔術師》を墓地より特殊召喚し、効果発動』
「――っ、手札から《エフェクト・ヴェーラー》の効果発動! 相手ターンのメインフェイズにこのカードを手札から墓地に送り、相手フィールドの効果モンスター1体の効果をターン終了時まで無効にする!」
今度は速攻魔法を抱えていなかったようであり、《混沌の黒魔術師》の効果は封じられ、墓地の魔法カードを回収出来ずに終わる。
最初の1体は裏側守備表示だからこの特殊召喚したターンに形式変更は出来ない、これでランク8エクシーズは封じた……!
???
LP7500
手札11→10
裏側守備表示のモンスターカード1枚(《混沌の黒魔術師》)
《混沌の黒魔術師》星8/闇属性/魔法使い族/攻2800/守2600
魔法・罠カード
無し
『フィールド魔法『神縛りの塚』を発動! フィールドのレベル10以上のモンスターは効果の対象にならず、効果では破壊されない』
ん? 何でそんな微妙なフィールド魔法を? 今までで一度も見た事の無い魔法カードの使用に動揺する。
ヤツのデッキで10レベル以上なんて、レベル12のシンクロモンスター《シューティング・クェーサー・ドラゴン》だけだった気がするが――。
『魔法カード『押収』発動、1000ライフ支払い、相手の手札を確認し、1枚選んで捨てさせる。私は少年の方を選択し――《エフェクト・ヴェーラー》を墓地に』
ぐっ、オレの《エフェクト・ヴェーラー》が……! つーか、このタイミングで動かなかったオレにそれを使うって事は、《混沌の黒魔術師》は撒き餌で、本命は別にある……?
『《クリッター》を通常召喚し、永続罠『血の代償』を発動。500ライフ支払い、フィールドの裏側守備表示の《混沌の黒魔術師》《混沌の黒魔術師》《クリッター》の3体を生け贄に――原初の恐怖を体感せよ、レベル10《邪神ドレッド・ルート》をアドバンス召喚!』
そして3体のリリースで出されるのは『神』に匹敵する力を持った『邪神』、ただ召喚されるだけで海鳴市全域に激しい雷雲を巻き起こす、暴虐の権化たる巨神……!?
「……何これ……? 普通のカードとは何か決定的に違うようだけど――!」
「……確かにあれは、原作の『三幻神』に対抗する為に生み出された『神』のカードだが――」
何だ、この息が詰まるような超越的な威圧感……! 身体の奥底から鋭利な刃物でゴリゴリ貫かれたような恐怖で手が震える……?
まさかコイツ、原作の『神』と張り合えた漫画版効果なのか!?
『このカードは特殊召喚出来ない。自分フィールドのモンスター3体を生け贄とした場合のみ通常召喚出来る。――このカードがモンスターゾーンに存在する限り、このカード以外のフィールドのモンスターの攻撃力・守備力は半分になる』
……いや、ちゃんとOCG版の効果だ。原作の『神』のカードのように理不尽な耐性がある訳じゃ――って、今は『神縛りの塚』があるせいで効果の対象にならず、効果によって破壊されないという厄介極まりない超耐性に、おまけで相手モンスターを戦闘破壊した時に1000のバーンダメージがついているんだった……!
「……え? あれを戦闘破壊するなら、実質攻撃力8000以上じゃないと駄目なの……!?」
「ああ、まともに攻略するならそんな無理難題な数字を叩き付けられる。普段なら効果で除去する処だが、今回はまずいな、ヤツのフィールド魔法『神縛りの塚』を壊さない限り『征竜』にとっても対処方法が無い天敵だぞ……!」
まぁ効果を受けない、じゃないから破壊せず尚且つ対象を取らない除去――例えば《氷結界のトリシューラ》とかなら大丈夫だ。
あとはオレのデッキの中では《ビヨンド・ザ・ホープ》と《ホープ・ザ・ライトニング》で無理矢理戦闘破壊出来る。……あれ、《ホープ・ザ・ライトニング》で戦闘破壊出来る、よな……?
あとはあのフィールド魔法『神縛りの塚』自体には何の耐性もないカードだから、あれを真っ先に除去すれば、1ターンすら陽の目を拝めないただの耐性無しモンスターと化す……!
『《クリッター》が墓地に送られた事でデッキから攻撃力1500の《異次元の女戦士》を手札に加える』
???
LP7500→6500→6000
手札10→9→8→7→6→5→6
《邪神ドレッド・ルート》星10/闇属性/悪魔族/攻4000/守4000
魔法・罠カード
永続罠『血の代償』
フィールド魔法『神縛りの塚』
ん? 此処で《エフェクト・ヴェーラー》ではなく、《異次元の女戦士》だと?
『ライフを500支払って《異次元の女戦士》を通常召喚し、魔法カード『心変わり』を発動、相手フィールド上に存在するモンスター1体を選択し、このターンのエンドフェイズ時まで選択したモンスターのコントロールを得る。私は《神竜騎士フェルグラント》を選択する』
「え? ちょ、なっ!? 私のモンスターを……!?」
……あー、柚葉が絶句するのも無理はない。あの禁止魔法カードは、ひたすら理不尽の一言に尽きる。
苦労して出した大型モンスターをたった1枚で寝取られるんだから……。
『装備魔法『強奪』を発動! このカードを装備した相手モンスター1体のコントロールを得る。相手のスタンバイフェイズ毎に相手は1000ライフ回復する。私は《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》に装備』
「なっ!? こっちもかよ!?」
昔の理不尽さに感慨深く思っていたら、同じ理不尽が襲ってきた!? オレの《ボルテックス》がぁー!
『ライフを500支払い、《異次元の女戦士》《神竜騎士フェルグラント》《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》の3体を生け贄に――神を超えし『神』の力を活目せよ! レベル10《邪神アバター》をアドバンス召喚!』
またもや3体のリリース!? ああ、オレ達のモンスターがァ――!?
――それがフィールドに顕現しただけで、体感温度が3度は下がった気がする。
《邪神ドレッド・ルート》が雷嵐のような苛烈さならば、これは永遠とも思えるぐらいの無の静寂さが何よりも恐ろしかった。
――ソイツは夜の闇さえ凌駕する、深淵なる闇の球体だった。
太陽神と対をなす邪神は、さながら皆既日蝕された太陽のように、邪悪に蠢いていた……!
『このカードは特殊召喚出来ず、自分フィールドのモンスター3体を生け贄にした場合のみ通常召喚出来る。――このカードが召喚に成功した場合、相手ターンで数えて2ターンの間、相手は魔法・罠カードを発動出来ない』
「え? 嘘、それじゃ――」
《邪神アバター》から闇の波動みたいなものがフィールドに放たれ、見えない重い重圧が押し掛かっているような気がする……!
モンスターを3体リリースして通常召喚されるが故に滅多に見る事は無いが、コイツの擬似耐性とも言えるべき制圧力はランク4《No.16 色の支配者ショック・ルーラー》の倍以上で2ターンまでなら途切れ目も無い上に相手限定という桁外れの封殺効果に加え――。
『このカードの攻撃力・守備力は《邪神アバター》以外のフィールドの攻撃力が一番高いモンスターの攻撃力+100の数値になる』
常にフィールドにおける最強の攻撃力を上回り続ける規格外の攻撃力と守備力を持つ……!
《邪神アバター》の姿が変わり、今現在、フィールドで最強の攻撃力・守備力を持つ《邪神ドレッド・ルート》の形を模す。
性質の悪い事にそれは、あらゆる『原作』を上回る『偶像』である……!
???
LP6000→5500→5000
手札6→5→4→3→2
《邪神ドレッド・ルート》星10/闇属性/悪魔族/攻4000/守4000
《邪神アバター》星10/闇属性/悪魔族/攻?→4100/守?→4100
魔法・罠カード
永続罠『血の代償』
フィールド魔法『神縛りの塚』
「……ちょっと待って。何で《邪神アバター》は《邪神ドレッド・ルート》の効果で攻撃力と守備力が半減してないの? 『神縛りの塚』にはそんな効果は書かれてないし……まさかテキストに書いてないけど、あらゆるカードの効果を受けないとかいう完全耐性でもあるの?」
『――まさか。これの『オリジナル』なら『三幻神』の最高神《ラーの翼神竜》と同等の、他の『神』のカードの効果すら一切受け付けない絶対耐性がついていたかもしれないが、これにはそんなものは無いよ』
……あれ、何かその辺の特殊処理の裁定、最高なまでにちんぷんかんぷんだった気がする……!
『――《邪神アバター》の攻撃力・守備力の変動効果は永続効果にして、フィールドのモンスターにどんな攻撃力の変化があろうとこのカードの攻撃力・守備力を一番最後に計算し直す特殊裁定だ』
そう、そのせいで《オネスト》を投げても100上回る数字になってしまうし、数多の耐性持ちモンスターを一方的に虐殺してきた《SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング》で攻撃力5000オラァしても攻撃力5100になられて戦闘破壊されてしまうという、究極的なまでに戦闘に強いカードなのだ。
『――それと同様に、《邪神ドレッド・ルート》の攻撃力・守備力を半分にする永続効果は、あらゆる攻守変動効果の処理を行った最後に適応される特殊裁定となっている』
……あ、コイツの効果永続効果であらゆる攻守変動効果の処理の最後に行われるなら、《ホープ・ザ・ライトニング》で攻撃力5000になってもすぐに2500になる……!?
《ライトニング》のダメージステップ終了時までカードの効果を発動出来ない効果も、永続効果には適応されない……!
それはともかく、あれ、《邪神ドレッド・ルート》と《邪神アバター》、2体とも特殊裁定による攻撃力・守備力変動のタイミングは、同じって事なのか……?
同じなら何方の永続効果を優先するんだ? 勝手に決めて良いのか?
『君達の疑問は尤もだ。この2体の特殊効果の攻撃力確定タイミングは同じだ。フィールドにこの2体が同時に存在する場合、特殊処理によって後から出された方の効果が後に適用される事となる――今の場合だと先に《邪神ドレッド・ルート》の効果で《邪神アバター》の攻撃力・守備力は半減するが、後に適用される《邪神アバター》の効果でフィールドで最も攻撃力の高い《邪神ドレッド・ルート》の攻撃力・守備力4000よりも100上の数値となる』
使っている『混沌』すら困惑するのか、溜息混じりで『出す順番が逆なら《邪神アバター》の攻撃力・守備力は半減されて2050になってしまうのだがね』と注釈する。
……なるほど、勉強になった。という事は尚更やべぇ! コイツ等が2体同時に出て、互いに互いの効果を活かしながら2ターンは魔法・罠カード使用不可能だぁ?!
(……あ、やべぇ。魔法カードの発動出来ないなら、ペンデュラムゾーンにセットすら出来ねぇ――!?)
普通の魔法・罠カードなら発動は出来なくてもセットは出来るが、ペンデュラムゾーンにセットするペンデュラムモンスターは魔法カードの発動と同じだ。裏側でセットする事は元々出来ないので置く事すら出来ない。つまり――現在、ペンデュラムゾーンが片側しかないオレは、2ターンもペンデュラム召喚が封じられた事になる……!?
『魔法カード『簡易融合』発動、ライフを1000支払ってレベル4《旧神ノーデン》を融合召喚扱いで特殊召喚し、その効果で墓地のレベル4《黒き森のウィッチ》を特殊召喚する』
む? 此処でレベル4のモンスターが2体? 来るぞ遊馬!?
『――レベル4の《旧神ノーデン》と《黒き森のウィッチ》でオーバーレイ! エクシーズ召喚! 現われろランク4《星守の騎士 プトレマイオス》!』
ぎゃあああああぁ!? あの『魔術師』も使っていたぶっ壊れランク4エクシーズモンスター! だが、素材が2つしか無いから、あのナンバーズ以外にランクアップする効果は使えない?
『私はこれでターンエンド、互いのエンドフェイズ毎、自分のエクストラデッキの『ステラナイト』カード1枚選び、《星守の騎士 プトレマイオス》の下に重ねてオーバーレイユニットに出来る』
と、思っていた時期がオレにもありました。あ、コイツの効果、何気に相手ターンでも使えるとか頭おかしい事が書かれていたっけ……。
???
LP5000→4000
手札2→1
《邪神ドレッド・ルート》星10/闇属性/悪魔族/攻4000/守4000
《邪神アバター》星10/闇属性/悪魔族/攻4100/守4100
《星守の騎士 プトレマイオス》ランク4/光属性/戦士族/攻550→275/守2600→1300 ORU2→3
魔法・罠カード
永続罠『血の代償』
フィールド魔法『神縛りの塚』
ぐっ、柚葉がいるとは言え、魔法・罠カードが封じられた2ターン、どう凌げば良いんだ……!?
本日の禁止カード
『サンダー・ボルト』
通常魔法(禁止カード)
相手フィールド上に存在するモンスターを全て破壊する。
無慈悲な汎用魔法カード。これ1枚で簡単に切り返せるお手軽逆転カード。海外では信じられない事に制限復帰しているらしい。
『心変わり』
通常魔法(禁止カード)
相手フィールド上に存在するモンスター1体を選択して発動する。
このターンのエンドフェイズ時まで、選択したモンスターのコントロールを得る。
苦労して出したエースモンスターが簡単に寝取られ、フィニッシャーとなって涙を飲んだ決闘者は数知れず。
簡単にコントロール奪取出来る汎用魔法カード。基本的に寝取られたモンスターがエンドフェイズ時に戻ってくる事は無いと思っていい。生け贄要因にされたりコストにされたり酷い事をされる。
『強奪』
装備魔法(禁止カード)
このカードを装備した相手モンスター1体のコントロールを得る。
相手のスタンバイフェイズ毎に相手は1000ライフポイント回復する。
こっちはライフを相手のスタンバイフェイズ毎に1000回復させるかわりに装備している限り永続的にコントロールを奪う。
いつの世も決闘者は自らのモンスターを寝取られるという恐怖に怯えなければならないらしい。
今の時代は破壊されただけで装備カードとなって寝取り効果を発揮する《グレイドル》という気の狂ったテーマが出たが、こんなカードでも環境入りしない当たり、今は凄く世紀末――だと思ったら、『EMEm』での先行ルーラーの返しに《グレイドル・イーグル》を自爆特攻させ、寝取ったルーラーで制圧し返すという返し手が生まれてしまった。
本日の事故要因カード
『混沌』さんのデッキに入っている、間違いなく抜いた方が良いカード。そんなのが8枚も入っている。
《邪神ドレッド・ルート》
効果モンスター
星10/闇属性/悪魔族/攻4000/守4000
このカードは特殊召喚できない。
自分フィールドのモンスター3体をリリースした場合のみ通常召喚できる。
(1):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、
このカード以外のフィールドのモンスターの攻撃力・守備力は半分になる。
三邪神の一柱。近年稀に見るほど特殊裁定がややこしいカード。
何か本編中で強そうに見えるかもしれないが、今の環境では超大型モンスターなど1ターンたりても存在出来ないですからね!
特にランク4で簡単に出てくる《ダークリベリオン・エクシーズ・ドラゴン》に普通に殴り殺される。
今回の『混沌』さんのデッキにはフィールド魔法『ブラック・ローズ』が入ってないので、面倒になる心配は無いよ! オレは面倒が大嫌いなんだ。
《邪神アバター》
効果モンスター
星10/闇属性/悪魔族/攻 ?/守 ?
このカードは特殊召喚できない。
自分フィールドのモンスター3体をリリースした場合のみ通常召喚できる。
(1):このカードが召喚に成功した場合に発動する。
相手ターンで数えて2ターンの間、相手は魔法・罠カードを発動できない。
(2):このカードの攻撃力・守備力は、「邪神アバター」以外の
フィールドの攻撃力が一番高いモンスターの攻撃力+100の数値になる。
三邪神の一柱にして最強。……あれ、『三邪神』なんだからもう一匹いたよね、何だっk
戦闘では無類の強さを誇るが、最近では守備力の方が圧倒的に高く、しかも守備状態で攻撃出来るインチキカードが出たせいで戦闘で簡単に殴り殺されるようになる。
それでも一度場に出してしまえばその制圧力は凄まじく、出せれば一応強いので、まだ救いがある。
凄まじく出し辛いのに弱いカードとかは、一体どうすれば良いんだろう。消しゴムとかヲーとかヲーとかヲーとか。