転生者の魔都『海鳴市』   作:咲夜泪

165 / 168
25/決着 vs『ラスボス』(7)

 

 ???

 LP250

 手札7→6→8→5

 《オシリスの天空竜》星10/神属性/幻神獣族/攻7000→5000/守7000→5000

 《オベリスクの巨神兵》星10/神属性/幻神獣族/攻4000/守4000

 《ラーの翼神竜》星10/神属性/幻神獣族/攻4000/守4000

 《神竜騎士フェルグラント》ランク8/光属性/戦士族/攻2800/守1800 ORU2

 魔法・罠カード

  永続罠『血の代償』

  永続魔法『魔力倹約術』

  伏せカード3枚

 フィールド魔法『神縛りの塚』

 

 魔法・罠カードの残り3枠にガン伏せか……!

 だが、ヤツの残りライフは250! もはや風前の灯だ! ……あれ、『揺れる眼差し』以外でオレ達が与えたダメージ無いような……? というか、アニメだとこのライフ3桁の状態は鉄壁状態で、最高なまでに削りにくかったような……?

 ちなみにオレのデッキにランク4《ガガガガンマン》は入ってない!

 

「私のターン、ドロー!」

 

 豊海柚葉

 LP8000

 手札1→0→1→2

  無し

 魔法・罠カード

  無し

 

 ま、まぁそれはともかく、これで2ターンの間、オレ達の魔法・罠カードの発動を封じてきた《邪神アバター》の効果が切れて使用可能となり、やっと存分に動ける……!

 

「柚葉! このターンからは魔法・罠カードの発動が可能だぞ!」

「――! よし、それなら……! 魔法カード『七星の宝刀』発動! 手札のレベル7モンスター《巌征竜-レドックス》を除外し、2枚ドロー! 除外した《巌征竜-レドックス》の効果発動、デッキからドラゴン族・地属性モンスター《地征竜-リアクタン》を手札に加える!」

 

 豊海柚葉

 LP8000

 手札2→1→0→2→3

  無し

 魔法・罠カード

  無し

 

 ああ、そうか。手札1枚の《青眼の白龍》は『混沌』の『手札抹殺』で墓地に行っていたか。

 ならばこの手札は勝ちを焦った『混沌』自身が招いた自業自得である。更には前のターンに『次元融合』を使ったせいで征竜のコストで使ったドラゴン族モンスターがフィールドを経由して墓地に戻ってしまってるから――。

 

「手札の《地征竜-リアクタン》の効果発動、このカードと手札のドラゴン族モンスター《瀑征竜-タイダル》を墓地に捨て、デッキから《巌征竜-レドックス》を特殊召喚する!」

 

 豊海柚葉

 LP8000

 手札3→1

 《巌征竜-レドックス》星7/地属性/ドラゴン族/攻1600/守3000

 魔法・罠カード

  無し

 

「墓地の《嵐征竜-テンペスト》の効果発動、墓地の風属性《幻獣機ドラゴサック》と《伝説の白石》を除外し、《嵐征竜-テンペスト》を守備表示で特殊召喚!」

 

 手札1枚の状態からの怒涛の大量展開、敵としてやられたらたまったもんじゃないが、味方としてならこれ以上頼もしいものはないだろう!

 

 豊海柚葉

 LP8000

 手札1

 《巌征竜-レドックス》星7/地属性/ドラゴン族/攻1600/守3000

 《嵐征竜-テンペスト》星7/風属性/ドラゴン族/攻2400/守2200

 魔法・罠カード

  無し

 

「更に墓地の《瀑征竜-タイダル》の効果発動、墓地の《幻水龍》《幻木龍》を除外し、《瀑征竜-タイダル》を特殊召喚! 更に更に墓地の《焔征竜-ブラスター》の効果発動! 《伝説の白石》と《青眼の白龍》を除外し、フィールドに特殊召喚!」

 

 豊海柚葉

 LP8000

 手札1

 《巌征竜-レドックス》星7/地属性/ドラゴン族/攻1600/守3000

 《嵐征竜-テンペスト》星7/風属性/ドラゴン族/攻2400/守2200

 《瀑征竜-タイダル》星7/水属性/ドラゴン族/攻2600/守2000

 《焔征竜-ブラスター》星7/炎属性/ドラゴン族/攻2800/守1800

 魔法・罠カード

  無し

 

 わぁお、環境を破壊し尽くした『四征竜』揃い踏みだー! あ、これならオレの出番は無いかも――。

 

「――レベル7の《瀑征竜-タイダル》と《焔征竜-ブラスター》でオーバーレイ! ランク7《No.11 ビッグ・アイ》を守備表示でエクシーズ召喚!」

 

 豊海柚葉

 LP8000

 手札1

 《巌征竜-レドックス》星7/地属性/ドラゴン族/攻1600/守3000

 《嵐征竜-テンペスト》星7/風属性/ドラゴン族/攻2400/守2200

 《No.11 ビッグ・アイ》ランク7/闇属性/魔法使い族/攻2600/守2000 ORU2

 魔法・罠カード

  無し

 

 出た! 本家本元からの『眼征竜』だ! 

 

「《No.11 ビッグ・アイ》の効果発動! エクシーズ素材を1つ取り除き、相手モンスターのコントロールを得る! 私が選択するのは《神竜騎士フェルグラント》!」

『《神竜騎士フェルグラント》の効果発動、1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使い、《No.11 ビッグ・アイ》の効果を無効にし、このカード以外の効果を受けなくする』

 

 まぁ使わざるを得ないだろう。これで《フェルグラント》の厄介な効果はこのターンは使えなくなり――。

 

「レベル7の《巌征竜-レドックス》と《嵐征竜-テンペスト》でオーバーレイ! ランク7《真紅眼の鋼炎竜》を攻撃表示でエクシーズ召喚! 攻撃表示で特殊召喚した以上、《オシリスの天空竜》の誘発効果が強制的に発動して《真紅眼の鋼炎竜》の攻撃力が2000下がり、相手の魔法・罠・モンスター効果が発動する度に《真紅眼の鋼炎竜》は相手に500ポイントのダメージを与える――さぁ、自らの効果で自滅しなさいっ!」

 

 おお、相手の効果を逆利用して自滅させる、これは《オシリスの天空竜》が『ドジリス』ったか……!?

 

 

『――カウンター罠『神の宣告』発動、ライフを半分払ってモンスターの特殊召喚を無効にし、破壊する』

「……あっ。こ、この場合、《真紅眼の鋼炎竜》のバーンダメージ効果は……?」

『そもそも召喚に成功してないから発動する余地も無いね』

 

 

 ???

 LP250→125

 手札5

 《オシリスの天空竜》星10/神属性/幻神獣族/攻5000/守5000

 《オベリスクの巨神兵》星10/神属性/幻神獣族/攻4000/守4000

 《ラーの翼神竜》星10/神属性/幻神獣族/攻4000/守4000

 《神竜騎士フェルグラント》ランク8/光属性/戦士族/攻2800/守1800 ORU2→1

 魔法・罠カード

  永続罠『血の代償』

  永続魔法『魔力倹約術』

  伏せカード2枚

 フィールド魔法『神縛りの塚』

 

 豊海柚葉

 LP8000

 手札1

 《No.11 ビッグ・アイ》ランク7/闇属性/魔法使い族/攻2600/守2000 ORU2→1

 魔法・罠カード

  無し

 

 ぐっ……前半に使えばライフコスト4000と膨大な数値だが、デュエル終盤で使えば少ないライフコストで問答無用に無効にして破壊するカウンター罠『神の宣告』を伏せていたか……!

 切り抜けられたかぁ。残念……あれ、柚葉の方がぷるぷると震えて……?

 

「――ええい、死なば諸共! 魔法カード『手札抹殺』を発動! 手札を全部捨て、デッキから捨てた枚数分だけドローする! 私の手札は0枚!」

 

 ――あ。え? 嘘。このタイミングで……!?

 

『――! 私の手札は5枚、5枚捨てて5枚ドロー』

「……あっ! 直也君、アイツのデッキの残り枚数……!」

『……今ので残り4枚だ』

 

 『混沌』は律儀に答えるが、その声の響きに苦渋の色が滲み出ている。

 ヤツの『全盛期カオス』は驚異的な殺意を誇るが、どんなデッキにも弱点はある。

 ――それはデッキ消費が極めて激しいのだ。1ターンで20枚以上使う事もある以上、長期戦になればなるほどその弱点は露呈する。

 

「デッキからドロー出来なくなれば勝ちなんだよね!? それじゃ直也君が前のデッキから入れていた『手札抹殺』を発動できれば――!」

「……ああ、それなんだがな、柚葉……」

 

 違う勝ち筋に光明を見出した柚葉と違って、オレは――。

 

「……お前の『手札抹殺』で捨てる1枚のカードが、オレのデッキに1枚しか入ってない『手札抹殺』なんだ……」

「え゛?」

 

 これから捨てるカードを柚葉に見せて、心底落胆する……何で、よりによってこんなタイミング悪くぅ!?

 

「……あ、あああ、わ、私はこれでターンエンド……」

 

 豊海柚葉

 LP8000

 手札1→0

 《No.11 ビッグ・アイ》ランク7/闇属性/魔法使い族/攻2600/守2000 ORU1

 魔法・罠カード

  無し

 

「オ、オレのターン、ドロー!」

 

 ぐっ、気を取り直すんだ! デッキアウトという勝ち筋が消え去った以上、何とかなるカード来い……!

 

 秋瀬直也

 LP8000

 手札2→1→2

  無し

 魔法・罠カード

  無し

 ペンデュラムゾーン

  無し

 

「――来た! オレは魔法カード『貪欲な壺』を発動! 自分の墓地のモンスター5体を選択してデッキに加えてシャッフルし、その後、自分はデッキから2枚ドローする!」

 

 ペンデュラムの状態ならば墓地に行かずにエクストラデッキに行くが、オレのデッキだとエクシーズ召喚して破壊されたら息切れが激しくなり、立て直しが困難――これはそれを少しだけ緩和させる苦し紛れのカードだったが、此処で役立つとは……!

 

「オレは《竜穴の魔術師》《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》《エフェクト・ヴェーラー》《慧眼の魔術師》をデッキに戻して2枚ドロー!」

 

 来い、起死回生のカードよ! 引いた2枚は魔法カード『ペンデュラム・コール』に《貴竜の魔術師》――そして元からある1枚は――!

 

「魔法カード『ペンデュラム・コール』発動! 『ペンデュラム・コール』は1ターンに1枚しか発動出来ず、『魔術師』ペンデュラムモンスターのペンデュラム効果を発動したターンには発動出来ない。――手札を1枚捨てて発動、カード名が異なる『魔術師』ペンデュラムモンスター2体をデッキから手札に加える! この効果の発動後、次の相手ターン終了時まで自分のペンデュラムゾーンの『魔術師』カードは効果では破壊されない。オレが選択するのは《賤竜の魔術師》と《竜穴の魔術師》だ!」

 

 手札の《貴竜の魔術師》をコストに墓地に送り、2つの『魔術師』を呼び込む……!

 

 秋瀬直也

 LP8000

 手札2→3→2→1→3

  無し

 魔法・罠カード

  無し

 ペンデュラムゾーン

  無し

 

「そしてオレはペンデュラムゾーンにスケール8の《竜穴の魔術師》とスケール2《賤竜の魔術師》をセッティング! そして《賤竜の魔術師》のペンデュラム効果発動! もう片方の自分のペンデュラムゾーンに『魔術師』カードが存在する場合、自分のエクストラデッキの表側表示の《賤竜の魔術師》以外の『魔術師』ペンデュラムモンスターまたは『オッドアイズ』ペンデュラムモンスター1体を手札に加える! オレは《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を手札に加える! 《賤竜の魔術師》のペンデュラム効果は1ターンに1度しか使用出来ない!」

 

 秋瀬直也

 LP8000

 手札3→2→1→2

  無し

 魔法・罠カード

  無し

 ペンデュラムゾーン

 《竜穴の魔術師》スケール8

 《賤竜の魔術師》スケール2

 

「更に《竜穴の魔術師》のペンデュラム効果発動! 1ターンに1度、もう片方の自分のペンデュラムゾーンに『魔術師』カードが存在する場合、手札のペンデュラムモンスターを捨て、フィールドの魔法・罠カード1枚を破壊する。オレは右側の伏せカードを破壊!」

『――破壊されたのはカウンター罠『神の通告』だ』

「……え?」

 

 ……あれ、あれはライフ1500払ってモンスターの特殊召喚とモンスター効果を無効にして破壊する無慈悲なカウンター罠。ブラフで伏せていた?

 いや、あの『混沌』の事だ、使える算段を用意して待っていたに違いない。という事は、伏せられたもう1枚は――まさかライフを回復出来る速攻魔法か……!?

 

 

(……オレの勝ち筋はペンデュラム召喚で手札のレベル6《賤竜の魔術師》とエクストラデッキのレベル6《EMモンキーボード》で《希望皇ビヨンド・ザ・ホープ》をエクシーズ召喚し、エクシーズ召喚成功時に相手のフィールドのモンスター全ての攻撃力が0になる効果を《フェルグラント》に止めて貰い、墓地から特殊召喚する《貴竜の魔術師》の効果で《オッドアイズ》のレベルを4にし、同じくペンデュラム召喚で特殊召喚したレベル4の《EMドクロバット・ジョーカー》とエクシーズ召喚で《希望皇ホープ》からの《希望皇ホープ・ザ・ライトニング》で攻撃力5000になってトドメを刺す予定だったが――)

 

 

 速攻魔法の『非常食』なら、魔法・罠カードを3枚墓地に送られると殺し切れなくなるし、速攻魔法『神秘の中華なべ』だったら《オシリスの天空竜》を捧げられた時点で削りきれなくなる……!?

 

「……!」

 

 どうする? あの伏せカードがライフ回復系の速攻魔法と確定した訳じゃない。案外通るかもしれない。いや、通らなくても次のターンさえ訪れれば――いや、内心解っている。いや、確信さえしている。

 ――次のターンなど無い。アイツにターンを渡せば、絶対引き当てる。残り4枚の自身のデッキに眠っている《光の創造神 ホルアクティ》を……!

 

(――何か、他に方法は無いのか……? ……あ、『貪欲な壺』で《ビッグ・アイ》を戻しておけば……! いや、《ビッグ・アイ》を後に出しても先に出しても、あれが『神秘の中華なべ』なら《フェルグラント》を料理されてライフを2800回復されて仕留めれずに終わってしまう。完璧にしくじった……? 詰んだか……?)

 

 此処まで来て――あと一歩届かない事実に絶望し、無きに等しい微かな可能性に縋ろうとした瞬間――自暴自棄とも言えるオレの手を止めたのは、半透明の《調律の魔術師》だった。

 

 

「――え?」

 

 

 《調律の魔術師》は首を振り、何かを訴えるような眼でオレを見る……? 一体何を――そういえば墓地に《調律の魔術師》が居て――瞬時に、オレの脳裏に電流が走るかのように、光差す一つの道が示される……!

 

 

「――ペンデュラム召喚! 手札よりレベル6《賤竜の魔術師》、エクストラデッキよりレベル6《EMモンキーボード》レベル4《EMドクロバット・ジョーカー》レベル7《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!」

『攻撃表示でペンデュラム召喚した《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》は《オシリスの天空竜》の召雷弾を受けて貰うぞ――!』

 

 秋瀬直也

 LP8000

 手札2→1→0

 《賤竜の魔術師》星6/風属性/魔法使い族/攻2100/守1400

 《EMモンキーボード》星6/地属性/獣族/攻1000/守2400

 《EMドクロバット・ジョーカー》星4/闇属性/魔法使い族/攻1800/守100

 《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》星7/闇属性/ドラゴン族/攻2500→500/守2000

 魔法・罠カード

  無し

 ペンデュラムゾーン

 《竜穴の魔術師》スケール8

 《賤竜の魔術師》スケール2

 

 《オシリスの天空竜》の上顎から自動的に放たれた召雷弾が直撃し、《オッドアイズ》は苦悶の声を上げるも、耐え切る……!

 

「そしてレベル6の《賤竜の魔術師》と《EMモンキーボード》でオーバーレイ! エクシーズ召喚! ――人が希望を越え、夢を抱く時、遙かなる彼方に新たな未来が現れる! 限界を超え、その手に掴め! ランク6《No.39 希望皇ビヨンド・ザ・ホープ》!」

 

 これも攻撃表示でエクシーズ召喚だ!

 

「《No.39 希望皇ビヨンド・ザ・ホープ》の効果発動! このカードがエクシーズ召喚に成功した時、相手フィールド上の全てのモンスターの攻撃力は0となる!」

『攻撃表示で特殊召喚された事で《オシリスの天空竜》の召雷弾を受けるが、当然その効果は通さない。《神竜騎士フェルグラント》の効果発動! オーバーレイユニットを1つ使い、《No.39 希望皇ビヨンド・ザ・ホープ》を無効にし、このカード以外の効果を受けなくする。よって《オシリスの天空竜》の誘発効果で《No.39 希望皇ビヨンド・ザ・ホープ》の攻撃力は下がらない』

 

 秋瀬直也

 LP8000

 手札0

 《EMドクロバット・ジョーカー》星4/闇属性/魔法使い族/攻1800/守100

 《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》星7/闇属性/ドラゴン族/攻500/守2000

 《No.39 希望皇ビヨンド・ザ・ホープ》ランク6/光属性/戦士族/攻3000/守2500 ORU2

 魔法・罠カード

  無し

 ペンデュラムゾーン

 《竜穴の魔術師》スケール8

 《賤竜の魔術師》スケール2

 

「――あっ、また自分の効果が仇となったみたいね! 《希望皇ビヨンド・ザ・ホープ》の攻撃力は3000のまま! 攻撃力2800の《フェルグラント》を攻撃すれば200ダメージ! これで私達の勝利だねっ!」

 

 ???

 LP125

 手札5

 《オシリスの天空竜》星10/神属性/幻神獣族/攻5000/守5000

 《オベリスクの巨神兵》星10/神属性/幻神獣族/攻4000/守4000

 《ラーの翼神竜》星10/神属性/幻神獣族/攻4000/守4000

 《神竜騎士フェルグラント》ランク8/光属性/戦士族/攻2800/守1800 ORU1→0

 魔法・罠カード

  永続罠『血の代償』

  永続魔法『魔力倹約術』

  伏せカード1枚

 フィールド魔法『神縛りの塚』

 

 自分達の勝利を確信して微笑む柚葉に対し、オレは首を横に振る。

 

「――いや、違う。それじゃ負ける」

「え? ……あの最後の伏せカード? でもそれって、今、『ペンデュラム・コール』で墓地に送った《貴竜の魔術師》を特殊召喚して、レベル4となった《オッドアイズ》と《ドクロバット》でランク4の《希望皇ホープ》作って《ホープ・ザ・ライトニング》を出しちゃえば――」

「《竜穴の魔術師》の効果で破壊したカウンター罠『神の通告』はライフ1500ポイント必要だ。今残っているもう1枚は、そのライフを補う為の算段だと考えてまず間違い無いだろう……!」

 

 柚葉もその可能性に気づき、一気に顔が険しくなる。

 ――だが、このターンで勝つ手段は他にある……! ――お前の出番だっ!

 

「墓地の《調律の魔術師》の効果発動! 《調律の魔術師》のこの効果は1ターンに1度、このカードが手札・墓地に存在し、自分のペンデュラムゾーンに『魔術師』カードが2枚存在する場合、このカードを特殊召喚する。この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールドから離れた場合に除外される!」

「――えっ!? 直也君何やって……!?」

 

 まさかだと思うが、コイツが勝利の鍵だァッ!

 墓地より《調律の魔術師》が特殊召喚され、凛々しい笑顔で音叉を模した杖を鳴らし、共鳴させる……!

 

「《調律の魔術師》が召喚・特殊召喚に成功した場合、相手は400ポイント回復し、その後、自分は400ポイントダメージを受ける!」

 

 秋瀬直也

 LP8000→7600

 手札0

 《EMドクロバット・ジョーカー》星4/闇属性/魔法使い族/攻1800/守100

 《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》星7/闇属性/ドラゴン族/攻500/守2000

 《No.39 希望皇ビヨンド・ザ・ホープ》ランク6/光属性/戦士族/攻3000/守2500 ORU2

 《調律の魔術師》星1/闇属性/魔法使い族/攻0/守0

 魔法・罠カード

  無し

 ペンデュラムゾーン

 《竜穴の魔術師》スケール8

 《賤竜の魔術師》スケール2

 

『……《調律の魔術師》を攻撃表示で特殊召喚した事で《オシリスの天空竜》の召雷弾が発動するが――』

「元々攻撃力0の《調律の魔術師》を破壊する事は出来ない!」

 

 《オシリスの天空竜》の上の顎から発射させれる召雷弾の洗礼を受けるも、《調律の魔術師》は全く怯んだ様子無く健在だ――!

 

 ???

 LP125→525

 手札5

 《オシリスの天空竜》星10/神属性/幻神獣族/攻5000/守5000

 《オベリスクの巨神兵》星10/神属性/幻神獣族/攻4000/守4000

 《ラーの翼神竜》星10/神属性/幻神獣族/攻4000/守4000

 《神竜騎士フェルグラント》ランク8/光属性/戦士族/攻2800/守1800 ORU0

 魔法・罠カード

  永続罠『血の代償』

  永続魔法『魔力倹約術』

  伏せカード1枚

 フィールド魔法『神縛りの塚』

 

 自分と比べて矮小過ぎる存在なのに、それなのに勇気を持って立ち向かう《調律の魔術師》に、《オシリスの天空竜》が一瞬だけ怯んだような気がする。

 

「何やってんの、何やってんの!? よ、よりによってこの局面で相手のライフ回復させてどうするのよ!?」

「――いや、勝利の布石は既にオレ達の手の中に収まっている! 更にオレは墓地の《貴竜の魔術師》の効果発動! フィールドの《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》のレベルを3下げて墓地の《貴竜の魔術師》を守備表示で特殊召喚する!」

 

 秋瀬直也

 LP7600

 手札0

 《EMドクロバット・ジョーカー》星4/闇属性/魔法使い族/攻1800/守100

 《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》星7→4/闇属性/ドラゴン族/攻500/守2000

 《No.39 希望皇ビヨンド・ザ・ホープ》ランク6/光属性/戦士族/攻3000/守2500 ORU2

 《調律の魔術師》星1/闇属性/魔法使い族/攻0/守0

 《貴竜の魔術師》星3/炎属性/魔法使い族/攻700/守1400

 魔法・罠カード

  無し

 ペンデュラムゾーン

 《竜穴の魔術師》スケール8

 《賤竜の魔術師》スケール2

 

「――オレはレベル4になった《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》にレベル3のチューナーモンスター《貴竜の魔術師》をチューニング! シンクロ召喚! レベル7《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》!」

 

 再度、フィールドに《メテオバースト》が登場し、目の前の『三幻神』に対して宣戦布告の咆哮を轟かせる!

 

「《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》の効果発動! 自分のペンデュラムゾーンの《竜穴の魔術師》を特殊召喚する!」

 

 秋瀬直也

 LP7600

 手札0

 《EMドクロバット・ジョーカー》星4/闇属性/魔法使い族/攻1800/守100

 《No.39 希望皇ビヨンド・ザ・ホープ》ランク6/光属性/戦士族/攻3000/守2500 ORU2

 《調律の魔術師》星1/闇属性/魔法使い族/攻0/守0

 《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》星7/炎属性/ドラゴン族/攻2500/守2000

 《竜穴の魔術師》星7/水属性/魔法使い族/攻900/守2700

 魔法・罠カード

  無し

 ペンデュラムゾーン

 《賤竜の魔術師》スケール2

 

「ペンデュラムゾーンの《竜穴の魔術師》を……!?」

「そうさ、コイツじゃなければ駄目だ……!」

 

 《メテオバースト》もレベル7だが、こっちはシンクロモンスターであり、ペンデュラムモンスターじゃなくなってしまっているからな……! ――さぁ最後の仕上げだッ!

 

「――そしてェッ! レベル7の《竜穴の魔術師》にレベル1のチューナーモンスター《調律の魔術師》をチューニング!」

 

 空を飛翔する《調律の魔術師》が光の輪となり、《竜穴の魔術師》がその中心を疾走する――!

 

 

「――剛毅の光を放つ勇者の剣、今此処に閃光と共に目覚めよ! シンクロ召喚! レベル8《覚醒の魔導剣士》!」

 

 

 そして此処からシンクロ召喚されるは二剣を操る魔導極めし騎士ッ!

 

 秋瀬直也

 LP7600

 手札0

 《EMドクロバット・ジョーカー》星4/闇属性/魔法使い族/攻1800/守100

 《No.39 希望皇ビヨンド・ザ・ホープ》ランク6/光属性/戦士族/攻3000/守2500 ORU2

 《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》星7/炎属性/ドラゴン族/攻2500/守2000

 《覚醒の魔導剣士》星8/闇属性/魔法使い族/攻2500/守2000

 魔法・罠カード

  無し

 ペンデュラムゾーン

 《賤竜の魔術師》スケール2

 

「《覚醒の魔導剣士》の効果発動! このカードが『魔術師』ペンデュラムモンスターを素材としてシンクロ召喚に成功した場合、自分の墓地の魔法カード1枚を手札に加える!」

 

 《覚醒の魔導剣士》の周囲に黄金色の時計が出現し――その時計の針は猛烈な速度で逆回転して時を逆巻き、この『決闘』を終わらせる魔法カードを、オレの掌から零れ落ちた勝利の鍵をオレの手に導く!

 

「オレが手札に加える魔法カードは『手札抹殺』! そして発動ォッ!」

 

 それを見届けた『混沌』は、驚くほど穏やかに笑ったような気がした。

 

『――手札を全て捨て、捨てた枚数分だけドローする。私の手札は残り5枚で、デッキは残り4枚――デッキが切れてカードをドロー出来なかった時、その『決闘者』は敗北となる』

 

 

 

 

 ――『決闘』の終了を告げるブザーが鳴り響き、ソリッドビジョンで実体化したモンスター達が静かに消えていく。

 あれほどの威容を誇った『三幻神』達が、静かに眠りにつく――。

 

「――勝った、のか……?」

 

 実感が湧かない。デッキアウトという珍しすぎる勝ち方をしたせいで、何というか、こう、勝った気がしないというか――。

 

「やったやった! 凄い凄いっ!」

「わっ、急に抱きつくな!?」

 

 柚葉が飛び跳ねる勢いで抱きついてきて、びっくりする。

 此処でやっと、あの『混沌』相手に勝つ事が出来たんだなという法外の充実感と今日一日だけで蓄積された桁外れの疲労感で胸が一杯になる。

 

『ああ、君達の勝利で私の敗北だ――やれやれ、デッキ切れで負けたのは『王様』達との『決闘』以来の快挙だよ。それからデッキの枚数は上限近く、尚且つデッキ切れにならないように心掛けていたんだがなぁ――やっぱり『今回』も引けなかったか。正確には引いたけど引けなくなっただが』

 

 目の前の『混沌』はそう感想を述べて、少しだけ未練を零し――それが可笑しかったのか、くすくすと笑う。

 

 

『――ああ、楽しかった。やっぱり『決闘』は最高だ、素敵だ――』

 

 

 我が事のように誇らしげに、自分に打ち勝った勝者を全身全霊で讃える。

 

 噛み締めるようにそう締め括り――目の前の『混沌』の存在が一気に薄れた。

 その超存在が知覚しにくいほどの半透明になり、細部から黒と白の粒子となって崩れていく。

 ……自らの意思で、この世界への顕現を止めた結果なのだろう。元より除外された存在、無理強いの干渉を止めれば世界からの修正力によって消え去るのみ――全ては無かった事になるという虚無感を、改めて実感する。

 

 

『――最後に、この私を倒した『決闘者』の名前を聞いても良いかな? 『少年』と『少女』では味気無さ過ぎるだろう?』

 

 

 なのに、もうコイツに与えられる救いなんて何一つ無いのに、コイツはそんな事を最後に聞いてきた。ったく、最後に聞く事がそれかよ……! 順序が逆だろ普通!

 

「オレは秋瀬直也だ……! そういう事は最初に聞けよな……!」

「豊海柚葉よ、もう二度と遭う事も無いと思うけど――」

 

 オレ達の最初で最後になる自己紹介を『混沌』は確かに聞き届け――あっという間に消え去った。

 ……現れる時も唐突なら、やっぱり去る時も唐突だった。ヤツらしい結末だと、勝手に納得する。

 

 

 ――こうして、オレの体験した中で最も『混沌』な『異変』は、誰の記憶に残る事無く、静かに幕切れたのだった。

 

 

 

 

「……あれ、いつの間に……?」

 

 ――見慣れた天井を見て、即座に自身の寝室である事に気づく。

 

 起き上がり、背筋を伸ばす。……全身が筋肉痛で凄く痛い。昨日だけで無茶と無理の連続を『かっとビングだ、オレェ!』で乗り越えたんだから、当然と言えば当然か。

 凄い長い夢を見た気がするが、携帯電話で日時を確認してみると一日分の日数経過はしてるので――オレにとっては夢じゃなかったようだ。

 ……多くの人にとっては、夢幻の一日なのが寂しいが――。

 

「って、おいおい……間違いなくアイツの仕業だよな?」

 

 ……どうやら残ったのは記憶だけでは無かったらしい。

 全く、最後にとんでもない置き土産を残して行くとはなぁ。

 

「そんなのしなくても簡単に忘れられるキャラじゃねぇよ、お前は――」

 

 オレの机の上には昨日まで無かった遊戯王デュエルモンスターズのカードの束が丁寧に置かれており――一番上のカードを引いてみると、そのカードは《調律の魔術師》だった。

 

「――とりあえずは」

 

 うん、一体何の材質で出来ているのか、激しく気になる処だが――まずはスリーブを買って、全てのカードにいれてあげないとな――。

 

 

 

 

 転生者の魔都『海鳴市』遊戯王編 ~海鳴決闘都市編~ 完

 

 

 

 

 


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