――物語には、無数の選択肢が存在する。
人の視点からは一本道に見えても、『神の視点』からは無限に枝分かれしており――その『視座』を持ってしても、いや、逆に持ち得たからこそ、無限に増え続ける分岐から望んだ結末に辿り着けないという皮肉に陥る
あちらを選べば、こちらを失い、こちらを選べば、あちらを失い――二律背反。更には周回毎に発生する変数も不確定要素を強め、蜘蛛の糸口は未だに見つからない。
――私の望んだ結末など、最初から存在しないのでは?
否、間違い無く存在する。絶対に何処かにある筈。一歩ずつ探し続ければいつかは正解に辿り着ける筈――。
「いやはや、何処かで見たような喜劇ですねぇ? 最初の記念すべき第一歩目で、自分自身の手で物語を台無しにしてるのに!」
「……はぁ、『令呪』、ねぇ?」
「珍しく興味無さそうだな? オレ的には超ド級の厄介事でしかないが、紅朔的には琴線に触れなかったか?」
此処は『教会』、『HELLSING』世界出身の『十三課(イスカリオテ)』と『型月』世界出身の『埋葬機関』と『とある魔術の禁書目録』世界出身の『必要悪の教会(ネセサリウス)』が悪魔合体した、転生者の魔都『海鳴市』の三大勢力の一つ。
その左手に『令呪』を宿した人物は、血のような鮮やかな真紅色の髪と瞳、そしてすけすけで際どすぎる真紅のドレスを纏うネクロノミコン血液言語版――『教会』に身を寄せる『デモンベイン』世界出身の転生者クロウ・タイタスの魔導書として使役される大十字紅朔だった。
「クロウとお母様の『聖杯戦争』は私の血の物語に刻まれてるし、その二番煎じを演じるのもねぇ? 猿真似なんて芸が無いわぁ。――何よりも、あの『魔術師』殿の掌で踊るのが、一番気に食わないわぁ……!」
非常に甲高い声で、大十字紅朔は高々と『魔術師』に対する不満を口にする。
そのヘイトの高さに、クロウは「だよなぁ」と呆れ顔で納得し、隣で煎餅を口にする『歩く教会』装備の銀髪美少女の後天的二重人格腹黒司祭(今日はセラがお休みの日)『シスター』はジト目で「100%悠陽の仕業だろうね。大方、偶然手に入った『聖杯の器(不良債権)』を再利用して『不穏分子』をついでに潰そうとしてるんじゃないかな?」と自身の所感を述べる。
「私としては『魔術師』殿の思惑を破綻させて『ざまぁ!』したい欲求が無限に湧き出て――嗚呼、初恋のように煮え滾る情動に胸が高鳴るわぁ!」
大十字紅朔がこの転生者の魔都『海鳴市』にいる経緯は複雑だが、まぁその過程で『魔術師』に完膚無きまでにハメ殺されそうになったとだけ注釈しよう。
それからは意趣返しの機会を虎視眈々と狙っており、所有者のクロウとしては気が抜けない日々である。……実際、鬼械神『デモンベイン・ブラッド』を所有しているので、『魔術工房』に引き籠もっている『魔術師』を上から殴りつける事が可能ではある。……流石に人道的にどうなの?とクロウが全力で止めているが――。
「多分それ純度100%の悪意と害意だよな!?」
「『魔術師』殿に純真な心を弄ばれた事、根に持ってるの。身も心も魂も徹底的に弄ばれて調教された『シスター』も同じ境遇で同じ気持ちよねぇ!」
「なななな何言ってやがりますのこのエロ本娘!? 悠陽とはそんな関係じゃ……!?」
「あらあら、それじゃどんな関係なのかしら? 淫らで爛れてるわぁ、妬けるねクロウ?」
「ノーコメントで! オレに振るな!?」
『シスター』唯一の弱点で弄びつつも、食べやすい獲物を見る肉食獣のような目で自身と『シスター』を眺めている紅朔に気づき、クロウは内心冷や汗を流す。この不良娘は、本当にもう――。
「クロウ兄ちゃんとアルちゃんの時は勝手に召喚されちゃったけど――この『聖杯戦争』って、そもそも『マスター』がサーヴァントを召喚しなければ儀式が成立しないんじゃ?」
同じく煎餅を齧る茶髪の美少女、転生者だらけのこの魔都で珍しく転生者じゃない現地出身の魔法少女、事実上最後の『夜天の主』となる八神はやては、率直な疑問をぶつける。
――七人七騎による『聖杯戦争』は、彼女にとって衝撃的展開の連続であり――その末に出遭った、クロさんという愛称で呼んだ『過剰速写(オーバークロッキー)』との日々が胸を燻り、同じ顔で話に参加せずに無気力で机に突っ伏している、『うちは一族の転生者』の穢土転生もどきで魔都に召喚された『とある魔術の禁書目録』世界出身の学園都市の第八位の超能力者『時間暴走(オーバークロック)』赤坂悠樹の姿に苦笑しつつ――極めて凄惨な殺し合いに発展する事態など出来る限り回避するべきだ。
……それでもクロウが大十字紅朔に協力するのであれば、今回は自分達も彼の力になれるだろう。『夜天の主』としての全力を尽くしてでも――。
「――そうですね、八神はやて。全員が全員、その思考に辿り着いたのならば『聖杯戦争』を平和的に取り止める事が出来るでしょう。ですが――」
いつもの調子に戻った『シスター』は無感情に溜息を吐く。
「『サーヴァント』という規格外の駒を7騎も召喚する『聖杯戦争』は、『魔術師』神咲悠陽としてもリスクが極めて高いのです。神秘のルール上、自らが絶対に敵わない天敵を複数体招き入れるなど到底許容出来ない事態です。――悠陽がいて、『海鳴市』に再び『聖杯戦争』が起こる事態になるという事は、『他の誰か』の思惑に相乗りし、運営を乗っ取っているとしか考えられません」
あの『魔術師』の事を――本当にろくでもない思い出(殺されかけたり謀殺されかけたり利用されたり共謀したり)と共に――思い出し、はやては「あの『魔術師』さんならやりかねないなぁ」と素直に納得する。
いや、もう確実にそうなっているだろうという信頼感がある。だってあの『魔術師』だし(前科凄くいっぱい)。
「『聖杯戦争』を何が何でも完遂させたい、超好戦的な『マスター』が少なくとも一人、存在してるって事かぁ。自衛の為に召喚しておくのも一つの選択肢って訳だが――」
そう行って紅朔の方に視線を送れば、彼女にしては珍しく苦汁を舐めたような表情になっている。さもありなん、彼女が英霊召喚を行えばほぼ間違いなく、自身が触媒扱いとなって『2騎』の内の何方かが確実に召喚されるのだから――。
「もし召喚するとしても縁召喚だけはやめとくわぁ。……あの『虚構に堕ちた英雄様(ドン・キホーテ)』は確実に空気読まないしぃ?」
「……いやまぁ拗れた責任はオレにあるけど、兄妹喧嘩は回避する方向性で良いとして――」
流石に大暗黒時代であり大混乱時代であり大黄金時代のアーカムシティじゃないのだから、50メートル大の『鬼械神(デウス・マキナ)』同士の戦闘は極力回避したい。神秘の秘匿もへったくれも無くなるし。
……なお、魔都『海鳴市』において過去何度も起こっている出来事ではある。その度に『魔術師』は無理難題な隠蔽工作でブチ切れしていた。巨大ロボットの目撃情報は流石にガス会社のせいには出来ない。いや、集団幻覚で誤魔化そうとすればワンチャン?
「英霊召喚になる触媒なんて――いや、出来そうな物はこの『教会』に幾らでもありそうで怖いな」
「クロウちゃん、『聖四文字』の人とかはやめてね? 現代宗教観が悉く引っ繰り返っちゃうよ」
「恐れ多くて試そうとすらしないわそんな厄ネタに厄ネタを乗算したような事!? そんな暴挙が許される世界観は『聖☆おにいさん』ぐらいだよ!?」
『■■■ー/■■■■■■ー』 マスター大十字紅朔
未召喚の為、事前情報無し。ただし、実質一択。仲良く兄妹喧嘩してね!
マスターの基本方針は暗躍・嫌がらせ。煮え湯を飲ませ続けている『魔術師』に対する軽い報復程度は所有者兼保護者(クロウ・タイタス)も許してくれるよねぇ?
『聖杯』に対する願望、特に無し。『万能の願望機』に縋る願いなど既に無いし、叶えるべき野望は自らの手で織り成す。――そうよねぇ、クロウ?
「――召喚に従い、参上しました。此度は『アーチャー/ルーラー』クラスで現界しましたので宜しくお願いしますね、ユウヒ」
「……は? は――?」
『■■■■ー/■■■■』 マスター神咲悠陽
最古の英雄王。若返りの薬を飲み、幼年体となった姿。通称『子ギル』くん。
何処かの世界線の縁を辿り、何処ぞの『聖女』を押し退けて召喚された。
マスターの基本方針は静観のち暗躍のち全取り、つまりはいつもの。
……が、英雄王が幼年体で召喚された時点で、もうこの『聖杯戦争』が通常じゃない事を悟り、『管理者』として阿鼻叫喚となる。
『聖杯』に対する願望、開示拒否。最終的に無意味に使い潰す運命にある。
クラス 『■■■■ー/■■■■』
マスター 神咲悠陽
真名 『ギルガメッシュ』
性別 男性
属性 混沌・善
筋力■■■■□ B 魔力■■■■■ A
敏捷■■■■□ B 幸運■■■■■ A
耐久■■■■□ B 宝具■■■■■ EX