転生者の魔都『海鳴市』   作:咲夜泪

172 / 227
04/自称最古の魔人/創造神を喰らう土塊

 

 

 

 

『――さぁ、新たな冒険を始めよう。きっと『君』を飽きさせない無限の未知が、其処にはあるのだから!』

 

 

 『貴方』は未来永劫に煌めく一等星。無限の未来を照らす『幻想の星』――誰にも気づかれずに消え果てる屑星に過ぎない私とは、何もかも違う存在だと思っていた。

 

 『貴方』は強い。才覚が違う。経験が違う。規格が違う。誰よりも先にいて、誰よりも速い。銀河に輝く『星』に手が届かないように、誰も『貴方』に追いつけない。

 

 ――私は弱い。才能など無く、救いようの無いほど臆病だ。未知を切り開く勇気なんて湧かない。そんな弱くて醜い自分が嫌いで、自己嫌悪で死にたくなる。

 

 

『――わー、『■■■』行使で全員が『敵』かぁ。うんうん、割と余裕余裕。私と『君』と『貴女』でお釣りが来るよ! 私達こそが■■を超えし『■■■■(■ー■■■■)』だからねっ!』

 

 

 『貴方』は見捨てない。誰彼構わずに手を差し伸べて、無理矢理でも引っ張り上げる。お節介で世話焼きで諦め知らず。挫折なんて言葉は無縁で、何もかも成功に導いて来た偉大な『英雄』だ。

 

 ――『貴方』は眩しすぎて、目が潰れそうだ。その鮮烈な『光』を見せつけないで。永遠に届かぬ『幻想の星』と見比べたら、余りにも卑小過ぎる自身が惨めになって自殺したくなるから。

 

 

『――実を言うとね、大分無理してた。虚勢と虚言のみで此処まで来たようなものだし』

 

 

 でも、本当は違った。――見ないふりをしていた。本当は気づいていた。――気づかないふりをしていた。『貴方』が私と同じだったなんて、絶対に認めたくなかった。

 

 

『――お別れだよ、『君』に『貴女』。先史文明の骸が勝手に動いたんだ、儲け物だね!』

 

 

 本当の『貴方』は弱気で臆病だ。誰よりも孤独を恐れ、誰よりもボロボロな心の傷を隠して、声を押し殺して泣いている。――ごめんなさい、と、誰かに何度も何度も許しを請う。

 

 

『――万事は是にて終わり、此処より始まる。……謝っても謝り切れない。この宇宙開闢以前の『原罪』に対して、私は少しも贖う事が出来てない。――自ら犯した罪は自ら償わなければならないのに』

 

 

 本当の『貴方』は既に心折れた落伍者だ。根底が再起不能なぐらいぐちゃぐちゃに壊されて、儚い希望一つも抱けずにいる。無限の諦観に沈んだ『貴方』は、本来ならば指一つ動かせないほど絶望しているのに――まだ大丈夫、なんて嘘をついて走り続けている。

 本当の『貴方』は鏡だ。『過去の鏡像』を真似て、『英雄』を装っている。壊れかけの機械人形に等しいのに、誰かを模してようやく人並みに笑う。――本当の笑い方を忘れて久しいのに、自信満々に不敵に笑う『英雄』という虚勢を張り続け、その虚像に相応しい大言壮語を吐く。

 

 

『――さようなら、未来永劫輝く『幻想の星』。私は『君』達の物語に救われたんだ――』

 

 

 どうしてそれに苛立ったのか、答えは至極簡単だった。

 ――『貴方』の鏡が、『未来の私』だったなんて、永遠に知りたくなかった。私は『貴方』のような『幻想の星』になどなれないのに……!

 

 

 

 

「……えーと、アリアさん、ティセさん。生きていてごめんなさい。御二人に迷惑を掛ける前に手早く自害しますので――あいたっ!?」

 

 その左手の甲に刻まれた3角の赤い痣は確かに『令呪』であり――外見が14歳程度の赤眼銀髪ツインテール美少女は、手の平サイズの白い宝石――『魔法少女まどか☆マギカ』でお馴染み、キュゥべえと契約してしまった少女の魂の成れの果てである『ソウルジェム』を真面目に砕こうとする刹那、何処から取り出したハリセンで『すこーん』と頭を叩かれ、本日何度目か解らない自殺未遂に終わる。

 

「はいはい、白ちゃん。いつものネガティブ思考なんて銀河の遥か彼方に投げ捨てちゃって。もっとはっぴー・やっぴー・らっぴーに、ポジティブに考えようぜ。――おめでとう、『聖杯戦争』における主役の配役だよ!」

 

 ノリと軽い勢いだけで自殺阻止した元管理局中将の金髪少女アリアは笑顔でぱちぱちと拍手する。

 「超弩級の死亡フラグですけどね!」「しー、辛い現実からは暫く目を背けさせてやろうぜ、ティセちゃん」という魔都でも一蓮托生となった名コンビのやり取りは、当人の見えない処でやって欲しいと白は切に思う。

 

 この3人の来歴は、魔都『海鳴市』においても複雑怪奇、奇妙な道筋を辿った末の奇跡であり――まずは14歳程度の金髪少女、アリア・クロイツの説明から入ろう。

 

 この魔都『海鳴市』では極めて珍しい(とある事件でほぼ皆殺しにされたからの意味)『2回目』の、ミッドチルダ出身の転生者であり――かつては魔都『海鳴市』を面白半分で侵略しようとした最大の敵対勢力『次元世界・時空管理局』の元中将である。

 『魔法少女リリカルなのは』の原作とは違い、この世界での『次元世界・時空管理局』は何処かの『ラスボス系ヒロイン』のせいで正真正銘の『悪』の組織だった為、それはもうえげつないレベルの最大脅威であった。

 ただ、その不世出の『悪の魔王』を何処にでもいない、平凡じゃない『正義の味方』が救ってしまったせいで――裏のごたごたに紛れて『魔術師』の『不死身の使い魔』が暗殺しまくったお陰で――現体制が崩壊、無職放免となったアリアは魔都『海鳴市』に身を寄せる事となる。半分以上、未帰還兵扱いである。

 一見して『2回目』の転生者特有の軽いノリに、不真面目で飄々として掴み所が無い性格だが、魔導師ランクが低いのに関わらず14歳で中将の地位まで栄達していたのは伊達ではなく――あの豊海柚葉と友人関係であり続けている事からも色々伺える。

 

 続いて童顔の円縁眼鏡でぽやぽやしている――アリアと一緒に落ち延びた、緑髪翠眼の女性(24歳)、ティセ・シュトロハイムの説明に入ろう。

 

 彼女はかつての『次元世界・時空管理局』において唯一の魔導師ランクSSSに到達していた逸材であり、こんな見た目であの『三人娘(なのは・フェイト・はやて)』の戦力を遥かに凌駕する決戦存在である。

 ……ただし、『2回目』の転生者特有の軽さは彼女も例外ではなく、常識人が板についているせいで狂人犇めく魔都では貧乏籤を引きがちである。――持ち前のフィジカルで全てを簡単に解決するパワー全振り系ゴリラなので、貧乏籤を引いている事すら気づいてないが。

 

 そんな凸凹な2人が介護しているのが、本当に特異な経緯で魔都に流れ着いた『3回目』の転生者、『魔法少女まどか☆マギカ』出身の元魔法少女で元魔女で現・魔法少女という意味不明な来歴の、白と名乗る少女なのである。

 

「ぶっちゃけ白ちゃんならサーヴァント無しで無双出来るっしょ。目指せ、マスターの独力のみでの『聖杯戦争』勝利!」

「特殊実績解放ですか? 中々マニアックですねー」

 

 アリアとティセの冗談みたいな戯言は、性質が悪い事に割と簡単に実現可能な真実でもある。

 この白は『魔法少女まどか☆マギカ』の舞台装置である『ワルプルギスの夜(ついでに『救済の魔女』も)』を取り込んで発狂死しており、魔都に全魔女を解き放った――産まれた事がもう逃れられない罪の、戦犯の中の戦犯である。

 それが一体どういう法則・奇跡が働いたのか不明だが、『うちは一族の転生者事件』の折に反転し、摂理に至って女神になる鹿目まどかに匹敵する魔法少女として再誕してしまい――。

 

「……いやいや。そもそも私、『魔術師』さんに一切逆らえない身なんですけど」

 

 そんな白が浮かべる卑屈な笑顔は、その事実からは考えられないほどの自己評価の低さの現れであり――アリアとティセは深く溜息を零した。

 

「白ちゃん、そろそろ『魔術師』からの『首輪』を噛み千切って良い頃合いだと思うんだ! この支配からの卒業だよ!」

「そうですね、『キャスター』クラスを召喚すれば、『魔術師』の呪いもちょちょいのちょいと解呪出来ちゃうんじゃないですかね?」

 

 鹿目まどかに匹敵する最高の魔法少女である事は、イコールでいずれ『ワルプルギスの夜』を凌駕する最悪の魔女に成り果てる事を意味しており――その規格外のソウルジェムの穢れを浄化する唯一の手段を、よりによってあの『魔術師』に握られている上、ソウルジェムにも魔術的な細工を施されて(実際は何の細工も施してないが故に解除不能)、いつでも始末されると白は勘違いしている。

 

 ちなみに、『ワルプルギスの夜』を魔都に解き放った一件――正確には『救世の魔女』を撃破する為に冬木での第二次聖杯戦争で共に勝ち抜いた最愛のサーヴァントを犠牲にせざるを得なかった事で『魔術師』の憎悪を一身に買っているという恐怖で一睡すら出来ない立場であるが――。

 

「……あの、アリアさん、ティセさん。私、『魔術師』さんに『ソウルジェム(命)』握られているの、別に問題無いのです。むしろ、私の事を容赦なく、無慈悲に裁いてくれる『人』ですので、こんな私を使い潰してくれる『魔術師』さんの事を逆に嬉しく――」

「あー、駄目駄目、却下却下。そういうDV被害者みたいな特殊性癖は良いから」

「特殊性癖!?」

 

 卑屈にねじ曲がった現状と相重なって、本当に意味不明な状態になっているのである。これには『魔術師』も全力でドン引きである。

 

「逆に考えるんだ。白ちゃんが『サーヴァント』を召喚しないと、『魔術師』に唯一味方するかもしれない陣営が皆無になっちゃうと」

「!?」

「『海鳴市』におけるヘイト稼ぎ第一位ですからねー、ダントツで」

 

 アリアの詭弁に一瞬心揺さぶられるものの――。

 

「で、で、でも、『魔術師』さんからしたら『サーヴァント』を召喚した時点で、敵対行動に取られる、のでは!?」

「大丈夫大丈夫、『令呪』がある時点で『サーヴァント』を召喚してようがしてまいが変わらないよ!」

 

 そもそも最初の心象の時点で最悪を通り越している(+-変動が起こらないほど不変)ので、完全なる杞憂である。

 

「はい、という訳で、例の召喚陣をさくっと作成!」

「わー、いつものあれですね! ……あれ、何処かに参考資料ありましたっけ? ……それとも、もしかして今の今まで記憶してたんですか?」

「HAHAHA、ティセちゃん、其処をツッコむと血を見るよ!」

 

 聞いてはならない事を聞いたティセを「ひっ」と慄かせつつ「はい、カンペ!」と白に渡す。他人の厨二病歴はツッコんだら火傷どころでは済まないので優しい目でスルーしてあげよう。

 

「……えーと、――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄る辺に従い、この意、この理に従うならば応えよ」

 

 棒読みに等しいが、外見だけは絶世の美少女が唱えるからには絵になるなぁとティセはほんわかと思う。

 その神秘的な外見に中身が追いつけば、と思いつつも、当分無理だろうなぁと少し憐れむ。

 

「――誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ――!」

 

 読んでる内にノッてきたのか、詠唱が様になっており――世界が反転する。召喚陣から放たれていた無色の極光が黒く堕ちる。

 

「え? 何この演出!?」

「ごごごごごめんなさい!? 私また何かやらかしました!?」

「……あー、これ明らかに駄目そうな雰囲気ですね! 皆さん戦闘準備、白ちゃんは『令呪』での自害準備して下さいねー!」

 

 ただならぬ異常事態にアリアは慌てふためき、白も動揺・錯乱しながら全力で謝り続けるが、不慮の事態に慣れ切っているティセは即座にバリアジャケットを纏い、悠然と戦闘態勢に入る。鉄火場における経験値の違いの現れであり――。

 

 

 黒い極光が砕け散り、境界を超えて現れたのは、特徴的な桃色髪の少女だった。 

 大抵の場合は全盛期で呼ばれるのに年頃は12歳程度で、透き通った瞳に色は無く、ガラスの如き伽藍洞さを携え――漆黒のドレスを身に纏い、背から6本の黒い触手を生やす、異形の美少女だった。

 

「――召喚に従い、超・参・上! サーヴァント『ランサー/プリテンダー』だってさ! 何で『ランサー』なんだろ? ……『ランス』繋がり?」

 

 

 『ランサー/プリテンダー』 マスター白

 此度の『聖杯戦争』における出禁枠その2。白は今回も戦犯確定。

 一つの世界を騙し通した実績を以って、詐称者のクラスで現界する。本来のクラスは『■ー■■』or『■■■■■■・■■■』の地獄の二択。

 本来ならば、どう足掻いてもサーヴァントの規格で全力など出せないのだが、よりによって摂理/女神に至った鹿目まどか級の『魔法少女』である白がマスターの為、本領発揮出来てしまう。

 マスターの基本方針は超消極的。心が最初からぼっきぼきに折れており、自分の行いで事態を悪化させる事を極端に恐れている。

 転生者の魔都『海鳴市』においても規格外/最強級の存在なのに、『魔術師』の(使い捨て前提の)使い魔程度の影響力しか持たないのは、当人の心の問題。

 『聖杯』に対する願望、特に無い。そんな危険物を自分なんかが握ったらどうなるか、想像すら恐ろしいと徹底的に拒絶する。

 

 






 クラス 『ランサー/プリテンダー』
 マスター 白
 真名 『■■■』
 性別 女性?
 属性 混沌・悪
 筋力■■■■■ A++ 魔力■■■■■ EX
 敏捷■■■■□ B  幸運■□□□□ E
 耐久■■■■■ EX 宝具■■■■■ EX
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。