――転生者の魔都『海鳴市』における第二次聖杯戦争は、本来ならば一行で完結する『前日譚』に過ぎなかった。
『聖杯(アインツベルンのホムンクルス生まれという産まれガチャ大失敗の『3回目』の転生者、死亡済みで『小聖杯の器』遺し)』の提供者『魔術師』、霊地の提供者『魔術師』、『事の発端』の墓穴までの脚本を完璧に用意した黒幕『魔術師』による、完全なる予定調和。
儀式によって完成した『聖杯』を無意味に使い潰すまでの茶番劇が本筋であり、正真正銘、『次の物語』の為の、贅沢な『前日譚』だったのだ。
『魔術師』が最初から管理・運営するからには、通常の『聖杯戦争』にあるまじき『例外』が一切発生しない、正規の『聖杯戦争』という物語にならない三文劇に成り下がる、筈だった。
――『外』からの悪意によって、この『聖杯戦争』の根幹システムが歪みに歪むまでは。
「――この世界の舞台装置『補正』ちゃんの力は理不尽で絶大だけど、本体の豊海柚葉が『正義の味方』に救われてしまった事で『悪』として損なわれており、事前に脅威を取り除く検閲能力には若干以上の隙が生じている」
豊海柚葉が『悪』である限り、宇宙規模の改変すら可能とする無意識化の力の渦『補正』は摂理すら覆す存在だが、能動的に力を振るえるタイプではなく、半ば法則じみたもの。
本体の豊海柚葉を殺害可能な存在に対しては『箱庭』に誕生しないように自動的に検閲するが、手動ではないので付け入れる隙は大きい。
「――其処で、『補正』ちゃんに表向き提出したのが通常時の『聖杯戦争』の配役。従来通りのオーソドックスなクラス編成の、例外が発生し得ない編成。サーヴァントという規格に縛られる以上、元になった存在が幾ら規格外でも発揮出来る力の規模は極めて限定される」
それに加えて「『セイバー』としてのクラスに押し込まれた『私』なんて、勘が鋭いだけの『一般人』ですよ? 宝具(『アナハイム・エレクトロニクス社』と『■■■■■ー■』)の持ち込み、全却下されたので。何でかなー?」と、TRPGで提出した探索者の持ち物まで徹底的に検閲された形なので、無力も良い処だ。――思い出参戦という理由付けにはぴったりな構成である。
「――これでは面白味が欠けるので、『聖杯戦争』が始まる寸前に配役の二重提出。つまりは、全騎二重クラスという『特大爆弾』を直前に差し込みましたとさ! クラス制限の枠が外れると、自由度が格段と増すんだよねぇ!」
此度の『聖杯戦争』を歪ませた黒幕である『■■』は笑いながら「いやぁ『補正』ちゃんガチ切れして超怖かったなぁ! あっはっは! あとついでに『魔法使い』も意外と人間性あるんだね? 凄く意外」と――後に『補正』と『魔法使い』に再会した時に両者がブチ切れて超険悪な雰囲気だったのは『この前科(宇宙規模のやらかし)』があったからである。
「それで『私』自身に差し込んだもう一つのクラスが『■ー■■』なんだけど――ああ、『数字』は無いよ。これも一種の偽装クラスだし。確定させてしまうと定まっていないという便利な余白が使えなくなってしまうしね?」
そもそも『■ー■■』はサーヴァントの通常規格に存在しないクラスなのだが、それをツッコめる者は不幸な事に此処には存在しない。……何処ぞの『赤い皇帝幼女(■ー■■Ⅵ)』? それは公式の例外枠だから……。
「此処まで大掛かりで面倒な仕掛けを用いても、『補正』ちゃんの検閲で数億分の一に希釈された『私』には、人一人の願望を叶えるぐらいの力しかありません。人の願いを叶える対価に稼働する人形という本質は変わらないんですよねー!」
『他の最重要案件(『Q.これはガンダムか? A.ガンダムです』本編)』を抱えている最中、うっかり気まぐれで(宇宙滅亡単位の)悪意を発露させないよう、他の案件で(宇宙滅亡単位の)悪意を発散(宇宙規模での『負の感情(再利用不能の産業廃棄物)』の不法投棄)させようとしたのが今回の事件の全貌であり、歴代で最たる傍迷惑さを誇っている。
「まぁマスターの英断で、第一プランはほぼ破綻しちゃったんだよね! あそこまで値切られるとは『私』も予想外! 下界の未知って楽しいねぇ!」
人の業の集大成である『■■』は、『この世全ての悪』に汚染された『黒聖杯』よりも数億倍悪辣極まる『万能の願望機/全知存在』、自らの意思とは関係無しに其処にあるだけで宇宙を滅ぼす終末機構であり、願いの対価による本末転倒は宇宙規模の大火として燃え広がる筈だったが――これは『神の視点』を持っていたマスターを素直に称賛すべきだろう。
「ああ、当然、第一プランが破綻した時用の第二プランも事前に用意してますよ! 破綻した『二番煎じ』の劇場を劇的ビフォーアフターにアレンジしてあげましたとも! これにはナイアさんもにっこり! ――その千の無貌で笑えよ『這い寄る混沌』」
『第二の舞台』は既に用意しており、其処で『ご都合主義の寵児(デウス・エクス・マキナ)』達には劇から退場して貰おう。
……問題は、そもそも『第一の舞台』を乗り越えられるか否かだが、転生者の魔都『海鳴市』の転生者は『■■』が思いつかない方法で何とか切り抜けてくれるだろう!
「――転生者の魔都『海鳴市』で事を起こすに当たって、最大の問題点が2つ。1つは後出しジャンケン最強の『魔術師』殿。この駒は何を仕出かすか解らないのではなく、むしろ何でも仕出かす駒で、時間を与えてしまっては問答無用の解決要素で殴ってくる。どんな悲劇も台無しにしてくれる大根役者さ!」
物語の黒幕をする上で、一番邪魔な駒が『魔術師』である。物語を紡ぐ上での影響度は、人の身でありながら『魔法使い』以上だと算出する。……『魔法使い』は『魔法使い』で、登場するだけで物語のジャンルを根本から改変させる『歩く災厄』だが――。
何せ舞台から退場させても舞台裏で暗躍して復帰果たすような大番狂わせの達人だ。この駒に如何に仕事をさせないか、物語の成否に関わる問題である。
「単純な解決策としては『魔術師』に時間を与えないに尽きる。一日未満で完結する超特急の『聖杯戦争』で暗躍出来るものならやってみて欲しいね!」
初手で確実に『見』に回る以上、即興劇への対応力は掛けた時間に比例する。対応される前に畳み掛ける。それが『魔術師』に対する単純明快にして最上の攻略法である。
「もう1つの問題点が『正義の味方』、スタンド『蒼の亡霊(ファントム・ブルー)』を持つ秋瀬直也――本当に『亡霊』殿には困るね! 拳一つで一切合切全部『解放』してしまうから! この『聖杯戦争』の黒幕としては『魔術師』以上のクソゲー要素だよ!」
この転生者の魔都『海鳴市』における最大の『例外』、完全無欠の『悪』で無敵だった豊海柚葉を下した、この世界で成長して花開き、超越者の位階に踏み込んだ『正義の味方』――『本体』同士の戦いならまだしも、サーヴァントという『端末』だと拳一発で解決されかねない。
なので、此方の解決法も至極単純だ。戦ったら全て台無しにされるのであれば、戦わなければいい。他の些事で退場して貰おう。
「『彼』に動かれると片っ端からプランが崩壊し、最後に立ち塞がったらもうそれで終わりなので――『私』の善意で、前世の『彼女』を『君』のサーヴァントに指定しておいたよ! 仲良く乳繰り合って豊海柚葉と修羅場っててね!」
――『自身』を除けば、残りの6騎中、4騎が『■■』の仕込みである。
この物語の題材は『聖杯戦争』だけど――マスター側に『聖杯』に抱く大望が欠片も無い以上、物語を動かすのはサーヴァント側の『エゴ』であり、その点にかけては今回召喚されるサーヴァント達は選りすぐりの存在だと『■■』は自負する。
なんせほぼ全陣営が『聖杯』なんて、最初から求めてないのだから――。
それはつまり、この『聖杯戦争』は『聖杯』を手に入れるという共通目的でマスターとサーヴァントが協力するという大前提が、そもそも存在しないという事となる。