皆はちゃんとこまめに保存しようね!
「……『ランサー/プリテンダー』? ランサーは解るけど、プリテンダー? ティセちゃん解る?」
「うーん? アヴェンジャーのようなエクストラクラスの一種ですかね? いや、二重クラスの時点でもうアウト寄りのアウトのような――」
『ランサー』――三騎士、槍兵のクラス。これに該当している理由は今一解らない。
自身に槍要素など皆無であるし……刺し穿つというメインの殺害方法でランサー扱いにされたのだろうか? こじつけが過ぎるし、本来の霊格をクラスという枠組みで弱小化させる目的なのだろう。
だが、その縛りは、二重クラスの2つ目『プリテンダー(役を羽織る者)』のせいで完全に形骸化している。――これを行った、真の『黒幕』の思惑は知らないが、この私から制限を全部取っ払うという事は、まぁそういう事なのだろう。
それにしても――自身という『神格』を召喚したのに、魔力欠乏で即死していない自身のマスターを無感情に眺める。
「……貴女が私のマスター?」
「は、はいっ! 白と申しましゅ!?」
銀髪赤眼の少女、白いゴシック服に着飾れ、常におどおどとしているが、その内在魔力は他の人間と比べて圧倒的――最低限、現界の依代の役割を果たせば構わないと思っていたが、魔力タンクとして十全に役目を果たせるとは望外の展開である。
「白ちゃん落ち着いて落ち着いて」
「サ、サーヴァントとの交流って一体何をすれば……!?」
「相変わらずコミュ障拗らせてるねー。とりあえず基本的な項目、『聖杯』に託す願望でも聞けば良いんじゃね?」
翠髪の女性と、金髪の少女の『魂』をその気なしに眺めて――自分と起源を同じとする『転生者』である事に気づいて若干驚く。私の世界では私一人しか存在しないのに。
自身のマスターである、白と名乗る少女は――良く解らない。どういう経緯でこんな形状の『魂』になっているのか、理解不能の域にある。それ以上は興味無いので観測・分析を打ち切る。
「え、えーと、すみません。『聖杯』にどのような願望をお持ちで……?」
「万能の願望機? そんなのに興味無いよ。たかが杯一つに託すような願いなんて無いし」
召喚されると同時に、この世界での常識と『聖杯戦争』関連の知識が自動的に刻まれている。
この『聖杯戦争』を勝ち抜いた際に入手出来るとされている『聖杯』の真贋については基本どうでも良い。私が召喚に応じた理由は別にあるのだから。
――『聖杯』に興味が無い事を知れて、マスターがほっと一息する刹那、背中に生えている六本の触手を操作し、一瞬でその小さな身体を穿ち貫く。「え?」と血反吐を撒き散らしながら驚愕するマスターに対し、私は優しく微笑みかける。
「――私が召喚に応じた理由はね、非通知からの受信がうざいから鏖殺しに来ただけだよ! メインの『本業』で忙しいのに鬱陶しい事この上無い」
殺すのは最後、それまでは現界の為の礎兼魔力タンクとして運用しよう。即座にマスターを丸ごと捕食する。
「――!? 白ちゃ」続いて、一瞬呆気にとられた他二人を即殺しようと触手で刺突し――瞬時に反応し、金髪の少女を確保して魔力的な防御をした緑髪の女性の離脱を許す事となる。
「……あれま、割と戦闘経験豊かな高レベル魔法使いだったか。単純な魔力障壁では防げないと判断し、爆発反応装甲じみた性質で自傷しながら即時離脱したか」
防ぐ前提でなく、破られる前提の魔力障壁とは実に器用なものだ。知人を捕食されたのに関わらず、一切の動揺無く冷静に正確な戦力分析を下して戦線離脱する戦上手に心から称賛する。
「――まぁ何処に逃げても意味が無いようだけど?」
最初から鏖殺する気で、此方に召喚されたので――しかし、単純な鬼ごっこでは今一興が乗らない。
折角、魔力に不足が無いのだから、もう少し趣向を凝らそう。ああ、そうだ。この世界の人達に、『私の世界の追体験』をして貰おう。そうしよう。
既存の物理法則を塗り潰し、自身に馴染み深い世界法則を展開する。テクスチャーを私色に塗り替える。
「――『聖杯戦争』に準えて名付けるなら、侵食固有結界『■■■■■■』ってところかな! 私の世界にようこそ、殺戮と凌辱の宴、存分に堪能してね!」