転生者の魔都『海鳴市』   作:咲夜泪

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10/本当は20000年+50000年

 

 

 

 

 ――全身の感覚が喪失し、深い深い微睡みの中、『夢』を見る。誰かの『記憶』を見続ける――。

 

「――あっはっは! 五万年も寝過ごすなんてやっぱり超大物だわー! あ、サテラちゃんは山より高く海より深く反省して?」

「なっ、新参者の癖に急に先輩面して何を――んゆっ!?」

 

 赤髪ポニーテールでボンテージ姿のへっぽこ魔人を背中から生える6本の触手で手籠めにしながら、その内面は地獄の業火よりも荒れ狂いつつも、それを上回る歓喜の渦に支配されていた。

 

 七万年に渡る徒労が一瞬の夢の如く駆け巡り――何もかも諦めて、大反逆の準備が全て整った今現在に漸く発見するという奇跡の中の奇跡に、彼女自身の感情のキャパオーバーが無限発生し、外面の表層に出力出来てない状態で無限に熱暴走していた。

 

「先輩面も何も大先輩だもの。『最古の魔人筆頭』とはこの私の事さ! 生き証人ならそこにいるしー。ねー、ドラゴンカラー時代よりも美味しそうな見た目になっているイカンティくん? じゅるりっ」

「……お摘み感覚でドラゴンを食い荒らしていたアンタが言うと洒落になってないんだよね……」

 

 頂点捕食者の熱い眼差しを向けられた――黒いイカに人間のような足が2本生えたモンスターは自身の触腕を震わせながら「今日は本当に厄日かね?」と呻く。

 

 自分の事を実際に知る生き証人というレアな存在だが、すぐに眼中からいなくなる。

 彼女の眼から離れないのは、『茶髪で口の大きいギザギザ歯の男性』であり、その『彼』は、彼女の事を様々な角度から眺めており――。

 

「うーん、うーーーーーむ。……小さすぎる!?」

「一応可変式ではあるけど、生殖器官無いよ? 元々は単なる土塊だし」

 

 まるで世界の損失だと言わんばかりに「がーーーーーーん!?」と驚愕を浮かべる『彼』に対し、「許可が貰えるなら、シィルちゃんさまのを参考にするよ?」「えぇっ!?」とピンク髪のぽやぽや魔法使い少女は頬を赤く染める。

 

 『彼』の『正妻(奴隷)』の初々しい姿を眼福眼福と言わんばかりに脳裏に焼き付けながら――最初でありながら究極の脇道エンドに行ってしまった『彼』に、彼女は笑いかける。――世界を潰さんばかりの、悍ましいまでの重い希望を勝手に抱いて。

 

「人類が天使に滅ぼされ、メインプレイヤーがイカマンに変わった時代だけど、それでも『貴方』は何かやらかしてくれるんでしょ?」

「当たり前だ。この俺様を誰だと思ってやがる!」

 

 そして『彼』と彼女の「「がーっはっはっはっ!」」と喧しい馬鹿笑いが重なり――『創造神』への大反逆までの隙間を永遠の色彩で彩ったのだった。

 

 

 

 

 ――大平原を地平の彼方まで埋め尽くす、魔物魔物魔物の群れ。

 

 屈強な得体の1つ目の赤・緑・青の巨人達が軍をなして隊列している。

 此処に集結しているだけでも数万規模の軍勢は、哀れにも迷い込んだ人間達を殺戮し凌辱する為に進軍を開始し――「ハイト3ホーリー」……たった今、一匹一匹の頭上に過剰殺傷間違い無しの『聖なる極光』が降り注ぎ、一匹残らず全滅した。

 

「……もう少し、こう、手心をな――」

 

 あんまりにもあんまりな、相方の集団戦における最適解に、『ドラゴンクエスト』――それも『ダイの大冒険』世界出身の正統な『竜(ドラゴン)』の騎士である黒髪短髪の青年ブラッドは全力でドン引きし――。

 

「他に誰もいない事は事前に確認していた」

 

 『ファイナルファンタジー』――『タクティクス』世界出身の『全魔法使い(ソーサラー)』青髪の少女シャルロットは、無表情ながらも得意気に答える。

 味方がいない事が前提の無差別集団戦において、彼女以上の殲滅力を誇る『転生者』は他にいないだろう。

 

 ……尚、『スクエニ夫妻(彼と彼女)』は『聖杯戦争』参加者ではなく、純粋に『固有結界』に巻き込まれた枠の『転生者』である。

 

「……事情は解らないけど、『魔術師』やらかした?」

「何かしらの関わりがある事は確かだろうな。……この『固有結界』、まさか『ランス』世界の再現か? だとしたら――」

 

 あの赤・緑・青の『魔物スーツ』はまさしく『ランス10』での魔軍そのものであり――「『ランス』?」「あ、いや、うん、シャルはやはり知らないよな」「???」マイナーとかそういう理由ではなく、年齢的な意味でシャルロットは知らなかったのだろう、多分、めいびー。

 

「じゃあ、無傷のあれ、知ってる?」

 

 『うちは一族の転生者事件』にて、『穢土転生』した大魔王バーンさえも通用した聖魔法ホーリーの直撃を受けながらも、無傷で現れた存在に、シャルロットは強敵だと察して身構え、ブラッドの眉間が歪みに歪む。

 

「……再現して欲しくない要素こそ忠実に、か。――ルドラサウム大陸の地上最強の生命体『魔王』の血を与えられし24体の『魔人』の一体」

 

 現れた魔人は鋼の肉体を眼前に晒した格闘家風の男だった。

 人型でありながらも鋼鉄の如く鍛え上げられて膨張した筋肉は、それだけで脅威の一言であり――。

 

「特筆すべきは、どんな攻撃も問答無用に無効化する『無敵結界』を持つ……!」

 

 

 

 

 

 

 

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