転生者の魔都『海鳴市』   作:咲夜泪

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 新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

 地獄の11連勤を乗り切り、1日2日休日でダウン、3~6日の間に同僚が仕事中に2回倒れててんやわんやで更新が遅れました。地獄続行中じゃないか!
 まだまだ更新は不定期になりますので、気長にお待ちくださいまし。


15/各陣営集結(マスター不在)

 

 

 

 

 ――その都市は、未曾有の大災害に見舞われていた。

 

 夜の暗闇に燃ゆる炎、炎、炎――生存者は極限まで見込めず、というよりも人の気配が異様なほど皆無であり、まるで違う『御伽噺(テクスチャ)』を貼り付けられたかの如く現実味が薄かった。

 その『炎上汚染都市』を遠目から物味遊山する存在が2人。一人は魔性の領域に達している美貌の――『黄金』の少年。もう一人は頑なに両眼を瞑っている、御伽草子から飛び出てきたかの如き時代錯誤の――燃え滾る業炎よりも色鮮やかな『真紅』の、黒い着物の青年。

 

「此処まで盤面を滅茶苦茶にされると、一周回って逆に爽快だ。……やはりというか、『聖杯戦争』の運営などするべきではないな」

「その結論、150年ほど遅いのでは?」

「残念、前世から出ていた結論なんだよなぁ。『例外』だらけを集めたら当初の枠組みなんて簡単に破綻するのは目に見えているか。まぁ常に眼瞑ってる私には元々見えないのだがね」

 

 『黄金』の少年はわざとらしく溜息付いて「ユウヒのジョークは相変わらず詰まらないですねー」「この手のセンスは年月では磨けないらしい」と、『真紅』の青年は道化じみた仕草で残念そうに呟く。

 

「初期案は遺憾ながら破棄だな。……なるほど、この『世界線』でアインツベルン・マキリ・遠坂の御三家が『聖杯戦争』の儀式構築を行っていなかったのは、穢れ無き『聖杯』を『天体科の君主』が握る為の初期条件だったからか」

 

 1世紀半に渡る大事業が木っ端微塵に粉砕された挙げ句、横合いから全て掻っ攫われたにも関わらず、『真紅』の青年は愉快極まると言わんばかりに愉悦の笑みを浮かべる。

 あらゆる意味で激動の若年期ならいざ知らず、老境を軽く超えて魔境に至っている現在の『彼』の精神は人並み外れており、自身の辛苦すらも愉悦の一要素に過ぎない。

 

「それで、これからどうするんです? 『封印指定の冠位魔術師』さん?」

「その称号、該当者が私以外にもいる上に、三原色を賜った『当代最高の人形師』とは違い、最低ランクの『黒』を押し付けられた身としては見劣り感が半端無いのだがね?」

 

 わざとらしく戯けて見せる『真紅』の青年に「自分から三原色の『赤』を辞退しておいて、酷い言い草ですね?」「蒼崎橙子に贈られる色を私が先取りするのは色々憚れる。尚、当人の心境は知らん」と、『黄金』の少年もまた楽しげに笑う。

 

 

「――何をするか、そんなの決まっている。私さえ知らない『未知の物語』を最後まで見届けてやるさ」

 

 

 ――『彼』の呼び名は非常に多い。その悪名と功罪は魔術界隈に轟いて鳴り止まない。

 

 『封印指定執行者殺し』『生き残った『魔法使い』の弟子』『最も『魔法使い』に近い大魔術師』『千枚舌』『万能の魔術適性者』『神眼保持者』『東洋の狂気』『最低最悪の大根役者』――この『世界線』において最も重要な事項は『英霊召喚を成す『聖杯戦争』の成立者にして発端』である事。

 

 

 

 

 ――初代魔王ククルククルの巨体から、無量無数の触腕が蠢動する。

 

 全長4,7kmの巨体に合う長大なサイズで、尚且つその単純動作の時点で音速を超えるそれは、鬼械神の魔術防御陣の上からも掠っただけで全壊させる超威力を秘めており――。

 

『――!?』

 

 怨敵である『大十字紅朔(アナザーブラッド)』を無視して回避優先せざるを得ないほどの脅威であると断定し、『ライダー/アヴェンジャー』の駆るデモンベインは回避しながら二丁拳銃で迎撃する。

 クトゥグアの炎弾とイタクァの氷弾は巨大な触腕を簡単に貫き――ほんの一瞬で完全に復元して無傷の状態に戻る。

 

『生半可な攻撃では即座に再生されるだけか……!』

 

 防御力は然程無いが、圧倒的な戦闘能力に尋常ならぬ再生能力を目の当たりにし、戦略を一から練り直す。

 この馬鹿げた触腕を全回避しつつ、あの馬鹿げたサイズの本体を『最大火力』にて一発昇華させる――。

 

『――あ、それ却下で。レムリア・インパクトでも多分無駄撃ちになる。このまま回避&遅延戦闘でよろしく!』

『なっ、何を消極的な……!? クロウ・タイタス、このまま座して削り殺されろと!?』

 

 同じく回避行動を取りつつ二丁拳銃で迎撃するデモンベイン・ブラッドの方から――『大十字紅朔(アナザーブラッド)』のマスターであるクロウ・タイタスから通信が入る。

 だが、その提案は消極的な死と同義語であり、才覚は欠如しているが、歴戦の鬼械神乗りからの判断を『ライダー/アヴェンジャー』は真っ先に疑う。

 

『コイツの撃破は俺達の役目じゃないって事さ。――コイツを俺達に派遣した『野郎』はどうやら俺達を近寄せたくないらしい。――ほれ、見てみろ』

 

 巨大な触腕を背部ユニットのシャンタクを吹かしつつ回避し、クロウ・タイタスが駆るデモンベイン・ブラッドは明後日の方向に二丁拳銃の魔弾を放つ。

 一体何故、という疑問は――機械的に此方を駆除しようと煽動していた巨大な触腕が挙って集結して自発的に防御行動を取った疑問に上書きされる。

 

『自発的に防いだ……?』

『鈍いわねぇ、その遥か先にこの『固有結界』の主がいるって事。――『天空の城』なんて中々洒落てるじゃない?』

 

 デモンベインの望遠機能を限界まで酷使して見れば――その射線上に、空中に浮かぶ奇抜な城が確認出来る。

 こんな短い時間で、自分と同じ回避行動を取っていたのに関わらず、その法則性を見破った歴戦の戦闘経験は、流石の『ライダー/アヴェンジャー』も持ち得ておらず――素直に称賛すると同時に、どす黒い感情が湧く。

 

 ――どうして、才が無くても吐き気を催す邪悪と戦い続けた貴方が、『大十字紅朔(アナザーブラッド)』の手を……!

 

『っ、ならば、強引に突破して――!』

『それは他の『奴等』に任せて、俺達はこの『クトゥルフもどき』に専念だ。自由にさせたら地上の奴等皆殺しにされかねないしな!』

 

 クロウ・タイタスと共に駆る紅朔が『こう、ハエ叩きの如くぺちゃんこ?』『流石に後味悪すぎだ!』と夫婦漫才の如く呼応し――自分を上回る戦闘経験から導き出された結論がそれなのは納得がいかなかった。

 

『っ、我等の他に誰が本命を――!』

『此処の『連中』を余り見損なってくれるな『ライダー』。ドイツもコイツも曲者揃いの『規格外』で、俺達の想像出来ないような方法で何とかしてくれるさ!』

 

 それこそ『ライダー/アヴェンジャー』にとっては青天の霹靂、眼中に無かったとさえ言って良い。

 『ライダー/アヴェンジャー』にとって『聖杯戦争』なんてどうでも良い。自身の存在を奪った『大十字紅朔(アナザーブラッド)』との決着を付ける為だけに召喚され――他の参加者など、毛ほども意識していなかった。

 鬼械神でなければ対抗出来ない強大無比なる敵に対し、生身の人間達に何を期待出来るか――。

 

『クロウちゃん、シャマルから念話! 『天空城』に突入するから援護しろってさ!』

『ほい来た! という訳であわせろ『ライダー』!』

 

 クロウ・タイタスほどの男が全服の信頼を置けるほどに、此処の住民が異常極まるのかと『ライダー/アヴェンジャー』は著しく混乱する。

 

『――足、引っ張らないでよね? 『騎士殿』?』

『誰が貴様の手助けなど……!』

 

 巨大な触腕の猛攻を前に忙殺されているからこそデモンベイン・ブラッドに攻撃出来てないが、少しでも余裕があれば背後からでも……!

 

『――『聖杯戦争』の鉄則その1! 『レイドボス』戦では仲良く結束! 終わったら仲良く喧嘩で!』

『最終的に殺し合う結論に至るあたり、どの道『聖杯戦争』は血腥いよねぇ』

 

 クロウ・タイタスのトンチキな台詞に遮られ、反意を挫かれる。

 彼と『大十字紅朔(アナザーブラッド)』のやり取りを見る度に、心の裡に暗い感情が沈殿する。

 どうして、と。嘆く子供の叫びは言葉にならず、戦場の喧騒に打ち消された。

 

 

 

 

 地上では魔軍を殲滅してきた各勢力、『ランサー/プリテンダー』陣営(サーヴァントに反逆済みのマスター・白不在、アリア・ティセの元管理局の二人組)、『アーチャー/ルーラー』陣営(マスターの『魔術師』不在、仮のマスター、ディアーチェ・シュテル・レヴィ・ユーリの紫天一家一行に前回の『聖杯戦争』の勝者『ランサー(クー・フーリン)』が付き添い、『ライダー/アヴェンジャー』陣営(マスター&サーヴァントはお空で仲良く私闘、八神はやて率いる夜天一家一行(ヴィータ・シャマル・シグナム・ザフィーラ・リインフォース)赤坂悠樹は逸れて不在)、陣営外の存在として『竜』の騎士のブラッド、『全魔法使い』のシャルロットが合流果たし、短時間で情報共有を成す。

 

「――以上が、『ランサー/プリテンダー』の推定戦力だ。正攻法での攻略はほぼ不可能だろう。……こういうのを想定外の搦手で打破するのは『魔術師』の役目だろう、何をやっている?」

「僕の本来のマスターであるユウヒは『3回目』の『レイドボス』攻略の為に全力を注いで暗躍してますよ」

 

 戦術的な視野ならまだしも、戦略的な視点は持ち合わせてないので――頭脳面を働かせるのは自分の役目ではないと断定し、自分の持つ必要情報だけ渡して『魔術師』に丸投げしたかったが、『彼』が今回召喚した超級のサーヴァントから直々に否定が入り――「大十字九朔が『ライダー/アヴェンジャー』として召喚された時点で『2回目』の『レイドボス』戦は覚悟していたが、『3回目』もあるのかぁ……」と、ブラッドはげんなりする。

 

「んー、『秋瀬直也(正義の味方)』くんも柚葉もいないから、別の厄介事に巻き込まれたかぁ。それじゃ今回の鍵は『全魔法使い』ちゃんだね。……問題は『空飛ぶランス城』への突入方法だけど――」

 

 大体の作戦案を纏めたアリアは、その最大の問題点について議題にあげる。

 他にこの場にいない連中――この状況でも遭遇したら厄介な事にしかならない『武帝』の連中が見当たらないのは幸運ではあるが不気味ではあるし、最大の不確定要素であるが――まぁ出遭ってから的確に状況判断すれば良いか、と丸投げする。

 

 

「オーソドックスに正面突破と行きましょう。時間的猶予も余りありませんし」

 

 

 そう提案したのは『アーチャー/ルーラー』であり、誰もが納得する。生前に全ての財を納めた『英雄王』ならば、あの触腕の群れを突破する手段を持ち得ている、と。

 

「……薄々勘付いていたが、『ランサー/プリテンダー』が飽きたら制限時間、的なアレか?」

「その通りですね。最終的にこの『侵食固有結界』を地球に衝突させて惑星崩壊・皆殺しENDですよ?」

 

 予想を上回る規模の駄目さ具合に「あの『クソ鯨』の腐りに腐った性根より最悪だな!?」とブラッドが悲鳴を上げる。

 

 

「さて、行きますよ。――『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』」

 

 

 斯くして『英雄王』の代名詞たる宝具が開帳される。

 黄金の都バビロニアの宝物庫に繋げるだけの鍵剣――されども、その宝物庫は神代において地上全ての財宝を収集したが故の全ての原点、人類の叡智の結晶。

 

「――わぁ、『Fate/zero』のあれですよあれ! 慢心号!」

「当人を前に不名誉過ぎる称号過ぎないティセちゃん!? 子ギルじゃなければ誅殺されてるよ!?」

 

 あらゆる宝具の原典を持つ『アーチャー/ルーラー』が今回展開したのは、宝剣や宝槍などではなく――『空中戦艦』だった。

 古代インド最古の古典『リグ・ヴェーダ』に伝承されし神々の空飛ぶ宮殿――ヴィマーナ、その原典である。

 

 

 

 

 

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