――掠るだけで即死の触腕を乱雑に振り回してた『初代魔王ククルククル』の動きがぴたりと止まり、その存在が徐々に薄れていく。
この『ルドラサウム大陸』全体が徐々に解けて、粒子の光と化して行き――。
『――ふむ、彼等は無事、『ランサー/プリテンダー』を討ち取ったようだな。まぁ成否については疑う余地すら無かったが』
『――当然だろ。アイツ等が雁首揃えて突入しといてしくじる訳がねぇ。……この奇妙極まる共闘も、これで終わりだな……!』
仲良く共闘していたデモンベイン・ブラッドとリベル・レギスが距離を取り、一触即発の雰囲気を醸し出す。
デモンベイン・トゥーソードを駆る『ライダー/アヴェンジャー』もまた、突入した勇者達を無言で称賛すると共にリベル・レギスに仕掛けんと隙を窺っていたが――。
『……クロウ・タイタス? 流石の我も其処の『邪悪』は許容出来ない。それぐらいの分別はあるつもりだ』
『……あー、うん。そうしたいのは山々なんだが――』
――何故、クロウ・タイタスが駆るデモンベイン・ブラッドは、自身の事を、リベル・レギスと同程度かそれ以上に警戒しているのだろうか?
今更、歴戦の戦士たる彼の戦闘感を疑う余地は無い。自分よりも1枚も2枚も上手の戦闘巧者である事は認めざるを得ないが――この場に置ける最善択は『共通の敵(リベル・レギス)』の袋叩きの筈。それを、彼ほどの男が解っていない筈が無い。
『……あー、いえね、構図が違うの。一対二の構図なのは変わりないのだけど、その一が私達なの。非常に困ったものねぇ……!』
『……我を馬鹿にしているのか? 貴様との決着はリベル・レギスを片付けてからだ!』
『大十字紅朔(アナザーブラッド)』の歯切れの悪い言葉に疑問符を浮かべる。
彼女からの発言というだけで理性が沸騰しそうになるが――何を躊躇う必要があるのか、『ライダー/アヴェンジャー』には検討も付かない。
『――話が進まぬな。僭越ながら憎まれ役を買って出よう。『ライダー/アヴェンジャー』、我々は貴殿の乗るデモンベインが『デモンベインじゃない』前提で動いている』
『――は? 戯言を。一体何の根拠があって――』
『……『我が神』の脚本、クロウ・タイタスの大根役者っぷりで事前に破綻してしまった『血の怪異(カラー・ミー・ブラッド・レッド)』における舞台装置なのだよ、貴殿がデモンベインだと勘違いしている存在は』
『大導師』が一体何を言っているのか、まるで理解出来ない。
普段ならば狂人の戯言として無視していた処だが――クロウ・タイタスが否定せずに無言で肯定している事実が、『ライダー/アヴェンジャー』の心に突き刺さる。
――数多の魔人と同列かそれ以上の悪である『大導師』が完全な敵対者である自身を助けた理由がまさにそれであり、疑いようのない状況証拠の数々が『ライダー/アヴェンジャー』のひび割れた心を追い詰めていく。
『単刀直入に――それは『我が神』だ。外なる神『ナイアルラトホテップ』、千の無貌の化身の一つ。身も蓋も無い事を言えば、次の『レイドボス』は貴殿なのだよ』
その残酷な宣言と同時に、デモンベイン・トゥーソードの操作権が『ライダー/アヴェンジャー』の手から奪われる。彼等の言葉が真実であると、裏付けるが如く――。
『――な!? デモンベイン? 何故動かない!?』
デモンベイン・トゥーソードの頭部バイザーが、勝手にパージされる。此れ見よがしに隠された真の姿を露呈するかの如く――。
『――とくと見よ、『我が神』の証たる燃ゆる三眼……ん? ――んん? ……すまないが、クロウ・タイタス。私の目の錯覚なのか、違う物に見えるのだが……?』
それはもう、物凄く自身の眼を擦って錯覚であると信じたいが如く、那由多の果ての狂人が滅茶苦茶困惑している珍しい光景であり――。
『あ、あれ? 『V字アンテナ』に『ツインアイ』? え、ちょ、まっ!?』
『何を言っているのクロウ。そんなデモンベイン・トゥーソードが……え? ぇー? 嘘でしょ?』
『あわ、あわわ!? ククククロウちゃん、あれデモンベインじゃない!? いや、最初からデモンベインじゃないのは解っていたんだけど……!?』
更にはクロウ・タイタスに『大十字紅朔(アナザーブラッド)』にシスターまで混乱の極みに達する。
頭部バイザーを剥いで出てきた『フェイス』は、デモンベインの物とは全く異なる代物であり、外なる神『這い寄る混沌(ナイアルラトホテップ)』の象徴たる燃ゆる三眼でも無く――。
『『『『――『ガンダム』だこれぇっ!?』』』』
その言葉と同時に、デモンベイン・トゥーソードの右肩に特徴的なエンブレムが浮かび出る。
『私』がやりました!と言わんばかりの犯行声明として『A.E.』――ガンダム世界の本堂『宇宙世紀』において死の商人として名高い『アナハイム・エレクトロニクス』社のロゴがデカデカと表示されたのだった。