転生者の魔都『海鳴市』   作:咲夜泪

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22/未完の大器

 

 

 

 

「――はぁ? 自分の『スタンド』に『名前』付けてないの?」

 

 それは自身の傍に立つ幽霊を見る事の出来る、『初めての同類(『スタンド使い』)』と出逢って当初の話。

 

「わー、そういう無自覚なマウント取り、マジ苛つくー」

「近距離パワー型の全力で殴ってくるな!? 殺す気か!?」

 

 じゃれ合い気分の拳打は彼のスタンドにあっさり防がれ「えー? 当たらないから良いじゃん?」「馬鹿野郎、必死に防いでいるからだ! ただでさえ『星の白金(スタープラチナ)』に匹敵するパワーとスピードなのに……!?」と、徐々に押し込められている貧弱なスタンドに少し同情しちゃう。

 

「その『星の白金』もスタンド名? 直也のは『蒼の亡霊(ファントム・ブルー)』だっけ? 何か由来でも?」

「好きなバンドから取っているぞ。そういうのがお決まりだからな。あとは直感? フィーリング的な」

 

 ……割と素敵な由来があったんだなぁ、と素直に思う。地味な見た目に寄らず、そういう趣味もあるんだ、と同時に関心する。――後で、こっそり調べておこうっと。

 

「ふーん、へー」

「……何だよ。言いたい事があるならはっきり言え」

「別にー。それじゃ私のスタンド名も決めてくれない? 素敵な名前をよろしくね」

 

 直也は猛烈に焦った表情で「お前はいつも無茶振りしか出来ないのか!?」と悲鳴を上げる。

 ……失礼な。出来ると思ったから押し付けているだけで、そんな事をするのは現状君一人しかいない。こんな美少女から特別扱いだぞ、泣いて喜ぶべきだと思う。

 

「……そうだなぁ、『JOJO』たる者、鉱石系から肖るのが常道だろうし――赤系の宝石と言えば、ルビー、ガーネット、コーラル、アレキサンドライト、……うーむ、どれもしっくり来ないなぁ」

 

 どうして其処でいきなり鉱石系が来るのか、疑問符を浮かべ「どういう法則性?」「世界のルール的な何かだ」「……直也は時々、意味不明な事を言うよね?」と、遠い目をする。

 

「――あ、思いついた」

「人に考えろと言っておいてその始末かよ!?」

「まぁまぁ、閃きに必要なヒントを貰えたという事で、貢献度1扱い?」

 

 「人の徒労を貢献度1扱いかよ!?」と怒る直也の反応は面白く、うん、今後も何度もからかってしまうのは秘密だ。

 

「――それじゃ、今日から私のスタンドの名前は『レット・イット・ビー』で!」

「――物凄い有名処から持ってきたな。『Red(レッド)』じゃなくて『Let(レット)』という点がお前らしい捻くれ具合を感じさせるな」

 

 あ、これは『構わないでくれ』という傍若無人ぶりな語訳されている? この誤解を私は華麗にスルーする。

 ――本当は『あるがまま』の私を世界で唯一人見つけてくれた、君に対する無自覚な告白だったのにね?

 

 

 

 

 ――空を飛ぶ方法? お前のスタンドなら簡単だろ。殴るor蹴るで加速し続ければ良い。

 

 それを聞いた当時は脳筋極まり過ぎて呆れたけど、慣れたら能力使用中の君にも追い付く事が出来て――言った張本人が「え? マジで承太郎やDIOの真似出来るの? 怖っ」って心底驚いた顔を浮かべていたっけ。本当に酷い反応だ。

 

「――こんなに小さくなっちゃって。可愛らしい時期もあったんだね?」

 

 片手で抱えられるほど小さな君を愛おしげに想い――自業自得とは言え、君の意識が無い事だけが悔やまれる。

 ……『あれ』を庇う君の姿なんて、絶対に見たくない。文句は受け付けない。けれど、文句を言えないのはまた格別な味わいだ。……完全に自業自得だけど。

 

 

 ――生前よりも格段に向上した身体能力に、スタンドの瞬発力が加わり、中世風の町並みを飛ぶように移動していく。

 

 

 生前に嗜んだ3次元的な移動方法で、建物の屋根を軽快に飛び乗っていき――それでも付かず離れずに追跡してくる『相手』の異常さに舌打ちする。

 一応は生身の人間で12歳程度の身体能力しか持たない筈なのに、どうしてこの超速移動に付いてこれるのやら。更には――。

 

 ――目前に立ち塞がっていた巨大な時計塔が内部から崩壊し、此方に向かって倒壊する。余りにも不自然な現象故に、これが誰の仕業かは逆に明確であり――こっちには直也がいるのに、平然と巻き込む真似に反吐が出る。

 

「――『あるがままに委ねる(レット・イット・ビー)』」

 

 これまで限定的にしか出してなかったスタンドの像を完全展開し、赤い女性人型スタンド――彼が言うには古き良き正統派スタンド――は超高速の拳打ラッシュを繰り出し、レンガ造りの時計台を正面から粉砕し、遅延無く強行突破する。

 そして意趣返しに、回し蹴りの要領で大きな破片を『アイツ』に向かって蹴り飛ばし――赤い剣閃が無数に走る。未来予知しているかの如き予定調和で切り捌いた、恐ろしいほど『邪悪』に輝く黄金の瞳をしている『彼女』と一瞬だけ目が合う。

 

 

 ――12歳の少女の形をしているだけの『大災害』、性質が悪い事にそれは高度な自己意識を持っていて、今までに出遭った誰よりも『邪悪』である。

 

 

 女を見る目だけは昔から無かったなぁ、と気絶する秋瀬直也に文句を言いたくなる。こんなのに惚れられて/惚れるなんて、無限に文句が出てくる。

 ……神秘の塊であるサーヴァントに対して、神秘の薄い現代の人間が敵う道理は無い、という絶対の法則は、この異常極まる『魔都』に限っては鼻で笑われる事だろう。

 現に『あれ』は、サーヴァントである自身を簡単に駆逐出来る類の絶対的脅威だった。

 

 

 ――不意に、第三者からの介入が生じる。2人の修羅場に突如乱入してきた胸元を開いた扇情的な巫女姿の女魔人――女性であるならば絶対に遭遇したくない魔人ランキング第1位&真っ先に殺害すべき魔人ランキング第1位の魔人メディウサ――は、真っ先に『バーサーカー/フォーリナー』の方に襲いかかり――。

 

 

『――オラァッ! オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ――!』

 

 

 最強を打倒した無敵のスタンド『星の白金』に匹敵すると秋瀬直也に評価された『レット・イット・ビー』は、魔人メディウサに手加減抜きの超高速拳打のラッシュをぶちかまし――『無敵結界』に遮られ、手応えがおかしいと即座に判断した『バーサーカー/フォーリナー』は最後に全力で蹴り上げて『豊海柚葉(恋敵)』目掛けて突き飛ばす。

 

「――! ――!」

 

 ――吹き飛ばされた、あれだけの攻撃を受けても無傷の魔人メディウサは――理性ある時もそうだが、見目麗しい女性なら誰でも良いのか――即座に標的を豊海柚葉に変えて、股間から生えている白蛇を疾駆させ――再び赤い剣閃が無数に走る。『無敵結界』という別世界の神の法則さえ意を関せずに斬り伏せ、呆然とする魔人メディウサの宙に浮いた生首に赤いライトセイバーを乱雑に突き刺し、完全に消滅させる。……ありとあらゆる法則を捻じ曲げる『異世界の魔王』を前に『魔血魂』すら残らなかった。

 

「……うわぁ、マジ『化け物』。ホントにもう――」

 

 どうしてこんな那由多の果ての『邪悪』を、一人の恋する少女にしてしまえるのか、その顛末を一から全部観覧した『バーサーカー/フォーリナー』すら理解出来ない事象だった。――『彼』が関わらない物語なら良かったのに。

 

 

 

 

 




A-超スゴイ B-スゴイ C-人間並 D-ニガテ E-超ニガテ

『あるがままに委ねる(レット・イット・ビー)』 本体:『バーサーカー/フォーリナー』
 破壊力-A スピード-A 射程距離-D(2m)
 持続力-B 精密動作性-A 成長性-A(未完成)
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