転生者の魔都『海鳴市』   作:咲夜泪

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25/幕間の物語・『迷子』

 

 

 

 

 ――消え逝く世界を融合侵食し、『癒えぬ災禍(『対人殺戮機構(バグ)』量産による間引き)』を撒き散らす予定だった『ELS融合侵食型デビルガンダム』は予想よりも呆気無く退場し――。

 

『――ではな、クロウ・タイタス。有り得ざる共闘、楽しかったぞ』

 

 役目を見事果たしたリベル・レギスの巨躯は幻の如く消失し――『アーチャー/アルターエゴ』……クロウ達視点では『キャスター/アルターエゴ』として召喚された『大導師』は一足先に退場する。

 

『……『大導師』、あの野郎……』

 

 様々な感情が去来するが、その余韻を噛み締める間も無く――『不明なユニットが接続されました、システムに深刻な障害が発生しています』という懐かしすぎる警告音が敵MSから鳴り響いており――。

 

『飛んで火に入る夏の虫――アトラック=ナチャ!』

 

 このタイミングで仕掛けてくるであろうと予測していた紅朔は予め用意していた拘束術式を発動して、早いだけが取り柄のジェガンを捕殺しようとし――。

 

『――!? 紅朔、駄目だ回避回避回避!?』

『え?!』

『あ、やば。クロウちゃん無理、間に合わない!?』

 

 『転生者』として識っている者と、そうでない者の意識のズレは、この一瞬に限って言えば致命的だった。

 

 

『――はい、残念賞! 役目を終えた役者は疾く退場してね!』

 

 

 ――MSの左腕を丸ごとパージし、膨大な火花を散らしながら超駆動する6連チェーンソーを展開、業炎を撒き散らしながらドリルの如く大回転し――『全てを黒く焼き尽くす暴力』がアトラック=ナチャの蜘蛛の糸を一瞬にして全て引き千切り、デモンベイン・ブラッドに大炸裂――独特な甲高い金属音の絶叫を撒き散らし、神話と同義語の『巨人殺し(ジャイアント・キリング)』を呆気無く果たした。

 

『――デモンベイン!? 嘘だろ……!?』

 

 デモンベイン・トゥーソードの『大十字九朔』の驚愕も当然だろう。

 今まで馬鹿げた速度で翻弄するだけで――14m級と50m級のサイズ差故に当然なのだが――痛打になれども通用する兵装を使用してなかった小型ジェガンがいきなり必殺級の規格外兵装を用いて一撃必殺してしまったのだから――。

 

『あ、『ライダー/アヴェンジャー(君)』もだよ。――『規格外兵装(オーバード・ウェポン)』、相手は死ぬ!』

 

 有無を言わさずに返す刃で、呆然とするデモンベイン・トゥーソードもついでに『対警備組織規格外六連超振動突撃剣(グラインドブレード)』で穿ち貫き――使用限界を迎えたジェガンもまた自壊し、第二の『レイドボス』戦が終了したのだった。

 

 

 

 

「……マジふざけんなよテメェ! 『ガンダム』系の転生者じゃなかったのかよ!? 何平然と『オーバード・ウェポン』ぶちかましてきてるんだっ!?」

 

 デモンベイン2体とジェガンの墜落現場、煤けながらデモンベインのコクピットから何とか這い出てきたクロウ・タイタスは――無傷で嘲笑う『セイバー/ビースト』に文句を吐き捨てる。

 

「ちゃんとMSの規格に合うように『私』が再設計しましたよ! いや、まぁ最初から文字通りの規格外品ですけど!」

「そういう問題じゃねぇよ!? あとテメェ、常に『舐めプ』してやがったな!?」

「やだなぁ、クロウ・タイタスさん! 本気を出したらMS戦でクロウ・タイタスさんが勝てる訳無いじゃないですかー。『私』、宇宙で『2番目』に強いパイロットを自称してますので!」

 

 『1番強いパイロット』は一体誰なんだよ、というツッコミはガノタ特有の拗れた個人的感想が面倒なので「コイツ、まじムカつく!?」「『私』は大好きですよ、からかい甲斐がありますし!」と、『迷子』は思考盗聴を常に行っているのでケタケタ嗤う。

 

 ――2体のデモンベインの破損状況は絶望的、今回の戦場での復帰はまず見込めないレベルの破壊具合であり、3画の令呪を使い果たした事で予備魔力源も尽きている。

 

 ただし、此処には『セイバー/ビースト』の他に、クロウ・タイタス、『禁書目録』のシスター、大十字紅朔、そして『大十字九朔(『ライダー/アヴェンジャー』)』がいずれも健在であり、『セイバー/ビースト』を囲い込むように、それぞれ己が武器を構えて臨戦態勢になっていた。

 

「――それで『黒幕』さま、この状況、どう切り抜けるのかしら? 袋の鼠よぉ?」

「――卑怯とは言うまいな? 『セイバー/ビースト』」

 

 此処までの事を仕出かしたのだ。個人的感情を無視しても見逃す道理など無い。大十字紅朔と『大十字九朔』のコンビが殺意を剥き出しにしており――。

 

「おやおや、早速仲の良い事で! そうですね、大変宜しくない状況です。思った以上に『ELS融合侵食型デビルガンダム』が早く撃破されてしまったせいで、即興の幕間を熟す事になりそうですし。貴方達の頑張りは見事、私の予想を遥かに超えましたよ!」

 

 これ以上、コイツの口から紡がれる雑音は聞くに堪えない。

 

 ――クロウ・タイタスがバルザイの偃月刀を召喚して即座に投擲し、『ライダー/アヴェンジャー』の二丁拳銃の乱射が『セイバー/ビースト』の急所を的確に狙い撃ちし――必死の回避行動に対応する為に、大十字紅朔とシスターが見の姿勢で次の行動次第で致死の攻撃を差し込もうとし――『セイバー/ビースト』は回避行動すら取らずに全て受け切った。……それも、無傷で。

 

 

「……は?」

「――別に、種も仕掛けもありませんよ。単なる質量差ですとも。『恒星級』の霊基を前に通常霊基の蟻の一刺しなど通らないのは当然の理では?」

 

 

 いや、目の前の事実はともかく、経緯が解らない。先程までは、当たりさえすれば撃破可能な通常霊基だっただけに――。

 

「さて、早めのネタばらしと洒落込みましょうか。『ELS融合侵食型デビルガンダム』は『私』の持ち込めなかった宝具を作成する為の生産拠点です。『ちょっとした自衛能力』がついているだけの」

 

 その『ちょっとした自衛能力』が、消えかけの固有結界内でなければ地球規模での大災害だった時点で、『セイバー/ビースト』――『迷子』の感覚は人とは完全別離していると見て間違いないだろう。

 

「それで生成した宝具の現物がこれ――サイコミュの基礎機能を持つ金属粒子サイズのコンピュータ・チップを金属フレームに無数に鋳込んだMS用の構造材『サイコ・フレーム』です」

 

 『セイバー/ビースト』――『迷子』が取り出したのはT字型の超素材だった。

 『補正』の権能の全力阻害によって「この世界において、この掌サイズを生成するのに物凄く苦労しましたよ。お陰でフル・サイコフレームの『本体』には到底至らないですねー」――この箱庭世界を終わらせる可能性のある第一級危険物として完全処理されたのに関わらず、『迷子』の手に収まってしまったモノ。

 

「――『宇宙世紀』において突然変異で産まれたオーパーツ、本来ならば1万年先の未来文明レベルで初めて釣り合いが取れる『技術的特異点』。卵が先か、鶏が先かは置いておいて――『私』を構成する最大要素でしてね」

 

 ――『迷子』の掌の『サイコ・フレーム』は発光する。赤でも蒼でも虹色ではなく、毒々しいまでに邪悪な『純黒』に――。

 

「――! 幾ら『サイコ・フレーム』が星を動かすほどの特異現象を引き起こせる構造材でも、量が少ないし、卓越した『ニュータイプ』だったとしても人一人の思念程度ではたかが知れている筈! 『セイバー/ビースト』、テメェは一体……!?」

 

 初見からただならぬ経歴の『転生者』である事は見抜いていたが、ガンダム宇宙を複数渡り歩いていると考えても尚、説明の付かない異質さ――クロウは問い掛ける。

 一応は仮説らしい仮説は頭に思い浮かぶ。個人に見えるが、複数の魂を保有する群体系の類か――「いいえ、違いますとも」と当人からの否定が入る。

 

「――『私』にあるのは、その『人一人の思念』ですよ。ただし、数億・数兆回規模で繰り返して蓄積した、負の想念の総結晶。召喚された折に数万倍に希釈されても、『私』の悪意は『この世全ての悪』を最初から上回っている。数多の世界を渡り歩いたが故の結果ですからね」

 

 そう独白して嘲笑う様に人間味など欠片も無く――人を超越した『何か』が、人を装っていただけだから、随所に不自然さが滲み出ていたのだと確信する。

 

「――さて、他の皆様が出揃うまでの、軽い『前座』をお願いします。是非とも――捻り潰されないで下さいね?」

 

 

 

 

 

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