転生者の魔都『海鳴市』   作:咲夜泪

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27/幕間の物語・『■■■■/■■■■ー』の前日譚(2)

 

 

 

 ――100億年単位の途方も無い年月の果て、再び形を成した宇宙に漂っていた残骸以下の『何か』を回収し、再現再生するという余計な事を仕出かした『種族』が発生し、人間としての意識体を取り戻した『私』は活動再開せず、そのまま不貞寝した。

 

 宇宙に漂っていた『残骸』を苦労して採取し、未知の起源の種族を再生産したものの、意識の無い骸に過ぎず――その傲慢極まる『種族』は即座に興味を失い、適当に冷凍保存して完全に忘れ果てた。

 余りにも酷すぎる扱いに若干怒りを覚えるが、まぁどうでもいい。もう疲れた。もう休ませてくれ。永遠に『私』に触れるな。これ以上、『私』に罪を犯させないでくれ――。

 

 

 その『種族』……『フォトナー』が滅びて、別の『実験動物』がその役割を代行するようになり――完全に忘れ去られた『私』を偶然にも発見し、解凍するに至る。

 当然、再び不貞寝を洒落込んだが――偶然か、必然か、『私』とは別の意識体が、その肉体には芽生えていた。

 二重人格? 否、全く別の知性体――『私』という海から生じた『もう一人の私』には『私』の記憶が一切継承されておらず、赤ん坊同然の無知な個体として活動再開する。

 

 

 ――『私』の生前の肉体は、偶然にも『第三世代のアークス』と遜色無いので、『もう一人の私』は『アークス』の一員として生きる道を選んだ。……他の選択肢など最初から無いようなものだが。

 ……『アークス』とは、惑星航行船団『オラクル』に所属する『Artificial Relict to Keep Species』――人為的なる残存種の保護、その為の聖櫃、或いは方舟――宇宙の脅威たる『ダーカー』及び『ダークファルス』の殲滅、及び種の保存を目的としている、というのが御綺麗な大義名分で、ぶっちゃければ宇宙で好き勝手やって『深遠なる闇(『私』に非ず、この宇宙での『原初の闇』)』を生み出した『フォトナー』の尻拭いの為に製造した『実験動物』である。

 当然、そんな茶番劇に付き合う義理など『私』には無い。……生まれるべき世界にやっと一致したが、『私』には生存理由も活動理由も何も無い。ただ、退屈凌ぎに、この宇宙に生まれてしまった『もう一人の私』の足掻きを、眺めるのみである。

 

 ――『もう一人の私』は、『私』の視点から見ても、才能の無い存在だった。

 

 『誰』に似たのやら、愚鈍で、卑小で、矮小で、数多の『アークス』の中に埋もれる、塵星じみた存在。

 その内、どうでもいい戦闘で戦死するだろうと、この時は楽観視していた。――その『もう一人の私』がこの宇宙に置ける中核存在、後の『守護輝士(ガーディアン)』になる事など予想だにせず。

 

 

 

 

 ――『PSO2』の物語の一部始終を見届けるとなると、それはもう『全知存在』ぐらいしか不可能だろうと言えるほど、壮大で遠大な物語であり、『私』は『もう一人の私』の物語を見続けた。

 

 何の才能の無い『アークス』が謎の少女『マトイ』との出会いを経て成長し、数多の激戦を潜り抜けて頭角を現し――宇宙を滅ぼす『深遠なる闇』とそれを打ち照らす『大いなる光』の物語。

 ……最初は悲観的で否定的で、「憎たらしいほど『自分』に似てるから、派手に破滅しないかな?」と思っていたが、徐々に感化されて――いつの間にか心の底から応援するようになっていた。

 ……余りにも長く見届け続けたから、『もう一人の私』の事を『自分』の愛娘のように想ってしまっているのは墓まで持っていこう。

 

 『私』の主観時間で膨大な年月になっているのは、この『PSO2』が宇宙開闢から宇宙終焉までループし続けているせいであり、閉じた大きな輪廻の先を目指すのが主題だからだ。

 

 ――数多の周回は、観測者である『私』にのみ、些細な変化が見て取れて、何度同じ結末に至ろうとも、次こそは、という希望を抱ける。

 『私』ならば、幾兆回繰り返しても無理だろうけど、『もう一人の私』は『私』と違って一人じゃない。境界を超えた絆は、次元を超え、確かに結ばれており――結実の時が訪れた。

 

 ――『原初の闇』の依代である終末の女神シバを打ち倒し、その『原初の闇』を浄化出来ずに新たな『深遠なる闇』と化す間際、『時間遡行』を以て宇宙開闢の時まで逆行して消え逝くのが『もう一人の私』の運命だが――その逃れられない運命に『待った』を掛けた者がいた。『貴方は一人じゃない』と手を差し伸べた者がいた。『今度は私が貴方を助ける番だ』と、運命を蹴り飛ばした者がいた……!

 

 境界を超えて次元を超えて紡がれた絆により、『もう一人の私』から『原初の闇』が剥ぎ取られ――依代を失った『原初の闇』を打ち倒すだけとなり、待ちに待った感動のフィナーレが……!

 

 

『――残念。そんな幸せな結末はこの『宇宙』には存在しないよ。他ならぬ『貴女/私』のせいで』

 

 

 依代を失った事で人間的な理性を完全喪失した『原初の闇』が嘲笑う。切り離されて肥大化した巨体ではなく、一人の人間の姿に再構築される。

 その姿は『もう一人の私』――ではない。あれは、他ならぬ『私』……!?

 

 

『――『貴女/私』の『罪』を今一度思い出せ。『全知存在(アカシックレコード)』に刻まれていない、有史以前の歴史の『負債』から目を背けるな! 『原初の闇』に宇宙開闢以前の『深遠なる闇』を加算させた『原罪』を贖う時が来た……!』

 

 

 ……『原初の闇』の想定規模が、予定外の2倍以上、増大しており――あれを浄化出来る存在は、この宇宙には存在しない。宇宙2個分の『負債』など、誰も補える筈が無い……!

 

 

『――『貴女/私』の『罪』は生まれた事。『全知存在』さえ演算出来ない未知なる未来は、最初から途絶えている。全部『貴女/私』のせいだ!』

 

 

 ……『私』は、生まれるべき宇宙を間違えた『転生者』であり、その『負債』を、この宇宙に持ち込んでしまった『大戦犯』であり――『私』が、最高の結末を壊していた。

 

 

 

 

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