――思い出深い惑星『ナベリウス』を宙から眺める。
何処と無く惑星『ラグオル』を連想させるも――いや、あの酷い物語とは違って、此処には救いがある。
『二人』の出会いと約束の惑星を砕くのは正直申し訳無いが、取り込む星の選り好みぐらいはさせて貰おう。
――惑星『ナベリウス』を侵食捕食する事で、『深遠なる闇』の器は完成し、『私』は『私』の目的を完遂させる。
露払いとして生産した、無数の『ダークファルス・ダブル』と『アークス』との前哨戦は開始されるも、あの程度の粗悪な複製品を相手に存外苦戦しているようであり――まぁ一分足らずで撃破して本戦に突入出来る方がおかしい話か……。
開始から数分、漸く一箇所、『ダークファルス・ダブル』が撃破された地点が生じる――誰が来るかは、演算するまでもない。
「……どうして此処まで来ちゃったのかな? 『もう一人の私』に『マトイ』に『仮面(ペルソナ)』」
真体の『深遠なる闇』を背後に待機させながら、「まぁ此処まで来れるとしたら君達3人だけだよね」と、彼女達3人が乗る足場に人間形態で着地する。
「――止めに来た」
「――代案も無いのに? 『私』一人を犠牲にするだけで、この宇宙は永遠に救われるのに」
この宇宙の最後に待ち受けるのは、二倍以上の規模になってしまった『原初の闇』であり、それを打ち倒す手段は、この宇宙には存在しない。
万が一、削り倒した処で、倒した張本人が次の『深遠なる闇』になるだけの本末転倒――なので『私』の結論は、『原初の闇』の依代である終末の女神シバを此方の宇宙に帰還させずに、『EP3』の内に全ての因縁に決着を付ける事。
――即ち、『私』自身を『深遠なる闇』の依代とし、この宇宙を内に取り込んで永劫隔離する。……まぁ永続的発狂は免れないが、維持するだけなら何とかなるだろう。
『巨躯(エルダー)』『敗者(ルーサー)』『若人(アプレンティス)』『双子(ダブル)』の因子をその身に宿し、許容限界に陥った『もう一人の私』のダーカー因子を全部引き継いで仮初めの器を形成し、今に至る。
「――『もう一人の貴女』を、永遠に犠牲にするなんて、絶対に出来ない……!」
白錫クラリッサを振るう、もう一人の『守護輝士』になる白い少女――彼女が、赤い輪のリコと同じ運命を辿らずに済んだ時点で勝利も同然なので、我ながら誇らしい。
「……マトイ。これは『私』の責任だ。『私』の罪過は、『私』自身の手で償わなければならない。『私』が全ての元凶なのだから、犠牲になるのは『私』だけで良い」
変わらぬ結論に「分からず屋っ!」と怒られるが、「君も似た者同士だろうに」と苦笑する。
君のそんな表情を見るのは大変心苦しい、が――だからこそ、元々存在しない『私』が犠牲になるべきなのだ。
「――それで、結果である『仮面(きみ)』は、今更何を語るのかな?」
『――言葉は不要だ。――『お前』に、新たな『道』を指し示す……!』
……全く、『誰』に似たのか、諦めが悪いにも程がある。ダークファルスになってでも『時間遡行』して止めに来るなんて。
しかし、その力の本家本元は『私』であり、『私』が健在な限り、他の『時間遡行』など許しはしない。――それでも通すなら、『私』と『未来のもう一人の私』&『未来のマトイ・ヒツギ・ハリエット』でフルボッコにして、『永劫回帰』分のフォトンを吐き出させた『原初の闇(貴女/私)』みたいにしないと。
――桁外れのフォトンの奔流が3人に集まる。……外部、オラクル船団からの直接供給? 規模が尋常ではないが――。
「一体何を? 現段階でオラクルの全フォトンを『君達』に集結させた処で、『深遠なる闇』と化している『私』には届かないよ?」
力の差を埋めた処で、戦闘経験と技術の差は埋められない。
それは『深遠なる闇』と化した時に、人間形態での戦闘を行っているので、誰よりも痛感している筈だが――。
「――私達は、『貴女』を倒しに来たんじゃない! 『貴女』が投げ捨てた『可能性』を、指し示しに来た!」
……『私』が投げ捨てた『可能性』? 『もう一人の私』……一体何を?
彼女達3人を中心に、超巨大な『陣』が惑星ナベリウスの宙域に形成される。……何だこれは。今までに経験した事の無い、余りにも複雑で特異過ぎる術式に困惑する。
「――『マトイ(過去)』、『もう一人の私(現在)』、『仮面(未来)』が交わり、特異点級の次元歪曲を生じさせている? 『何』をするつもりだ!? 『何処』に繋ぐつもり!?」
「――『もう一人の私』には、沢山の『仲間』が居た……! 全員が全員、『貴女』と同じ! 『守護輝士(ガーディアン)』になれる『器』が!」
「もしも、『守護輝士』に到れるアークスが沢山いたのなら――」
『――『もう一人の私』が不可能だと断じた『原初の闇』だって、皆で打ち払える……!』
――、――――、―――――、―――――――――――――――。
涙が、自然と零れ落ちる。……嗚呼、絶望で流れる涙は、止める手段が無い。
「……やめて、よ。『彼等』は何処にもいない。最初から存在しない。この『宇宙』に生まれたのは『私』だけで――『彼等』は、もう『私』の記憶の中にしかいない……」
以前、夢を見ている状態の『もう一人の私』が『私』の領域に迷い込んで、『私』の記憶の一部を閲覧した時の光景――前々世での、『友(フレンド)』と語らう記憶。
破損が激しくて、補修を施しても、どんな『友』だったか、どんな『顔』だったか、どんな『性格』だったか、何を話したのか、何一つ思い出せなかった、摩耗して色褪せた、彼方の記憶――。
「その記憶すら、朧気で霞んで、もう思い起こせないっ! 大切な『友』の名前すら思い浮かばないっ! ――この宇宙には『私』しか居ない! 天涯孤独の、一人ぼっちの『星』! 『彼等』が存在した軌跡など、この宇宙の何処にも無い……!」