「――『宝具』を破壊したら弱体化するとか、そういうボスらしいギミックはお有りで!?」
「――今の『私』より堅牢な『サイコ・フレーム』を破壊出来るのなら、『私』を問題無く撃破出来ますね! つまりは本末転倒な話過ぎて腹筋大激痛!」
「クソがッ! クソギミックでなく純粋なステータスの暴力かよ!? 生身の人間で『レムリア・インパクト』ぶち込みたいと思ったの、2人目だよ畜生!」
『代行者』からパチったままの、偽物の『第七聖典』――対物ライフルによる即死級の射撃を、『セイバー/ビースト』は避ける素振りすらせずに無傷で受け流す。
神秘だとか伝承防御だとか、そういう複雑なルールではなく、単純な質量差の違いで通用しないという理不尽の極みに、流石に文句を言いたくなる。
「流石に『レムリア・インパクト』は痛いですよ!」「痛いで済むのかよ!? つーか、実体験!?」と、嘘か冗談かはさておき、デモンベインが真に必要な相手は『セイバー/ビースト』だったのでは、と冷や汗を流す。
「ああ、気を付けて下さいね。『私』、普段から手加減を心掛けていますが、人間の柔らかさなどは計算外ですし――『私』自身の気まぐれは制御出来ませんので!」
『セイバー/ビースト』は片腕を天高く掲げ、掌から赤黒い粒子が収束・凝縮し――通用しない攻撃を続けていたクロウ・タイタス及び『ライダー/アヴェンジャー』は即座にバックステップして退避行動を取り――適当に地面に叩きつける。それだけで銀色に染まる地が断裂/破裂するほどの、『正体不明の粒子』による大爆発が生じる。
……生身の人間が直撃したら、跡形無く吹っ飛ぶであろう即死攻撃にクロウはドン引きする。
「気まぐれで初見殺しの即死攻撃ぶっぱとか、どういう神経してるんだ!?」
「そういう物として扱って下さいな。『私』は常時、誰でも良いから殺したくて殺したくて殺したくてたまらないのですが、健気にも我慢してるんですよ?」
邪悪に嘲笑う『セイバー/ビースト』の瞳には奈落の如き闇が渦巻いており、人間味の欠片も無い眼には純粋な殺意が燃え滾っていた。
「シスター! 何か、こう、搦手で何とかならない!?」
「割と無理ゲーだね! 術式は片っ端から『侵食』されるし、状態異常全無効とかそんなレベル。ほぼほぼ通らない上に――精神面&頭脳面も人外だよ、あれ」
そういえば、自称『ニュータイプ』で、かなりの精度――ぶっちゃけ『サトリ』レベルの――の読心能力を持っていると推測出来る。
……なるほど、あのシスターにすら人外扱いされる訳だ。当然、自分の思考が筒抜けならば、シスターの中身も読み取っている筈で――。
「ふむふむ、『魔術』は専門外なのですが、正直興味深い。10万3000冊の邪本悪書は読み応えありますね! まぁ『私』としては『ネクロノミコン血液言語版』の方が好みですが!」
『禁書目録』を盗み見して無事な時点で人外確定であるし、処理能力も桁外れと来た。
『プライバシーの侵害で訴えるわよ?』
「これはこれは申し訳ございませんね! 他人の全思考が筒抜けなのがデフォでして!」
マギウススタイルで小さくなっている大十字紅朔すらジト目で睨みつけるが、『セイバー/ビースト』は何処吹く風が如く笑い飛ばす。
「……あー、SAN値元々0でいらっしゃる?」
「やだなぁ、クロウ・タイタスさん。『神話生物』にSAN値という概念は最初からありませんが?」
「やっぱりそっち系にカテゴライズされてますよねぇ!?」
『コイツ』、やっぱり『外なる神(アウター・ゴッド)』の系列じゃね?
やっぱりデモンベイン、必須じゃね?と、『セイバー/ビースト』の手で破壊された為、この戦闘での復帰は絶望的だが――。
「これは助言ですけど、余り『私』に接近しない方が良いですよ? サーヴァントと言えども『侵食』されますから!」
それは背後からロイガー・ツァールの二振りの短剣で斬り掛かった『ライダー/アヴェンジャー』に対する言葉であり、二撃離脱した『大十字九朔』の眉間は歪み――『迷子』の言う『侵食』という名のデバフを受けている様子だった。
「デビル・ガンダムやELSの系統じゃねぇ、『この世全ての悪(アンリ・マユ)』みたいな、サーヴァント特攻の呪詛?」
「似たようなものですけど、規模と深度は段違いですよ。此処には耐性を持っている存在は皆無のようで――ああ、もっと下がった方が宜しいですよ? 巻き込まれますから」
『セイバー/ビースト』の言葉の真意を理解するまでもなく、クロウ、シスター、『ライダー/アヴェンジャー』の全員が全力で即時離脱する。天には、超巨大な次元断層の渦が3つ巻き起こっており――。
「――『天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)』!」
初手、対界宝具という油断も慢心も一切介在しない、最強至高の宝具が炸裂し――。
「クロウにシスターに紅朔、それと――『大十字九朔』か? 無事か?」
「ブラッドにシャルロット! あとははやてのそっくりさん達に『ランサー』に……小さい『英雄王』!? 誰が召喚したんだよ!? ……はやて達は?」
「一応無事だが、戦力にならない状態なので置いてきた。魔人ケイブリスや魔人カーミラ相手に犠牲者無しなら御の字だろう」
『竜』の騎士ブラッド、『全魔法使い』シャルロット、『紫天の書』の一家御一行(ディアーチェ・シュテル・レヴィ・ユーリ)に、前回聖杯戦争を勝ち抜いた『ランサー』に、子供の姿の『英雄王(『アーチャー/ルーラー』)』の、8名が新たに参戦する。
『無敵結界』を破れない状態で魔人四天王級と対峙した八神はやて及びヴォルケンリッター(シグナム・ヴィータ・シャマル・ザフィーラ・リィンフォース)は魔力切れ状態で一時脱落、白・アリサ・ティセも度重なる戦闘による疲労でダウン中の為、戦線復帰は叶わなかった。……どんな怪我をしても『全魔法使い』シャルロットの手で一瞬で回復するが、魔力切れと精神的疲労に対処する方法は無かったりする。……MP回復薬は、生前で全く必要としてなかった為、シャルロットの手元には無かった。
「駆け付けの一杯が如く対界宝具ぶっぱするの、やめてくれません? 『私』は貴方の『親友』ではないんですよ?」
対界宝具の直撃を受けた『セイバー/ビースト』も流石に無傷とはいかず、『赤黒い粒子』を身体中から撒き散らしている。……原型が残っている時点で、驚嘆すべき事態だが――。
「さて、役者は大体出揃ったみたいですし、そろそろ本気出しますかね! 第三の『レイドボス』戦にようこそ!」
『セイバー/ビースト』から『赤黒い粒子』の奔流が迸り、サイコ・シャードを形成しながら無限に肥大化していく。
同時に不安定だった固有結界も塗り替えていき――宇宙的な空間に飛ばされる。無重力に放り投げられたと思いきや、何処からか、重力発生装置付きの足場が現れ、此処にいる全員、その足場に着地する。……空気などは普通にあるようだ。
「――それが『テメェ』の正体か?」
『いえいえ、『私』の『本体』はクロウ・タイタスさんの活躍で無事阻止されましたので、これは『似たような存在』を真似ただけの疑似形態ですよ』
――それは宇宙に花開く純白の悪意だった。
美しくも悍ましい、開花した瞬間に宇宙に終焉を齎す、超巨大な『徒花』であり――クロウは舌打ちする。本当にデモンベインが必要な相手じゃねぇか、と。
『人類悪など偽りの冠位――其は世界を堕とす輪廻の徒花、宇宙を滅ぼす全知存在『深遠なる闇』なり!』