――魔都『海鳴市』における最強級の『転生者』が参戦したからと言って、形成が逆転する訳でもない。
この『深遠なる闇(偽)』は恒星級の霊基まで自己拡張・自己進化・自己変異しており、『セイバー/ビースト』が遊んでなければ問答無用で宇宙に終焉を齎せる存在と化している。
『――天座失墜・小彗星(フォーリンダウン・レイディバグ)』
陰義・重力制御による超高速急降下の踵落としは、『深遠なる闇』の巨体を穿ち貫いて貫通し――。
『気軽に人の身体ぶち抜くの、やめて貰えません? 『私』はピッコロ大魔王でもブロリーでもないんですよ?』
即座に貫通箇所が復元し、無数の光弾をばら撒いて追撃――『銀星号』、二世村正の重力無視の挙動で全て回避される。
魔剣と呼ぶに相応しい必殺の機構であるが、あくまでも対人の域を出ず、超巨大敵性体に繰り出す業ではない。
『――まぁ言うまでもないですけど、『飢餓虚空・魔王星(ブラックホール・フェアリーズ)』は通用しませんよ。そもそも惑星単位で質量が違いますからねぇ!』
全ての花弁から触手を展開し、此処に居る全員に無差別に襲撃し――全員がそれぞれの迎撃手段で応戦しようとした刹那、新たに乱入してきた第三者の斬撃によって引き裂かれる。
「おや、これは大分出遅れてしまったようですね」
「どうせならもうちょっと大遅刻して後日談と洒落込みたかったですねー!」
オリハルコン(元・真魔剛竜剣の剣先)の銃剣を二丁構えた、『第十三課(イスカリオテ)』のトレードマークたる素敵な眼鏡をかけた『神父』が床扱いの飛翔体に飛び乗り、続いて――。
「『神父』に『代行者』の野郎も!? 『神父』はともかく、何処をほっつき歩いていたんだよ!? ……つーか、それ何?」
いつものカソック姿ではなく――人を小馬鹿にしたような笑顔を張り付けている『代行者』は、やけに露出的な戦闘服に着替えている挙げ句、ドラムじみた金属体を背負い、余りにも超巨大な銃身を抱えていた。
一瞬、デンドロビウム(ガンダム)の巨大ビーム砲みたいだとクロウは思ったが、そんなのを生身で装備しているのは、うん、多分有り得ないだろう。
「クロウの分際で良くぞ聞いてくれました!」
「あ、最初から喧嘩売られてる?」
「これは『超能力者一党』の遺産、『ファイブオーバー』シリーズの『超電磁砲(レールガン)』モデル、ガトリングレールガン――を、モデルに魔改造した『第七聖典』です」
この『代行者』は『教会』の3幹部の1人でありながら獅子身中の虫、不倶戴天の敵対勢力である『時空管理局』のダブルクロス――正確にはその首魁だった『シスの暗黒卿』豊海柚葉のみに仕えており、『管理局』の下位組織だった『超能力者一党』の成果を持ち得ているのは不自然な話ではない。
そして当人は型月世界出身の『転生者』であり、あのシエルの前任者の、『埋葬機関』所属の『第七司教』である。その切り札と言えば『第七聖典』なのは当然と言えば当然なのだが――。
「はいちょっと待て。それを『第七聖典』と言い張る気か!?」
「シエルなどよりも洗練したフォルムであると自負しますが?」
「いや、外見の問題か!? 其処が重要なのか!?」
『代行者』からは「何言ってるんだコイツ?」的な視線で見られ、クロウは無言でブチ切れる。
『随分と派手な『玩具』を引っ張り出してきたねぇ。――此処に『君』の『主』の心を奪った『正義の味方』は不在だけど? 今回も真っ先に駆け付けられずに残念ですねぇ、必要な時に傍にいないとか、従者失格では?』
ケタケタと『セイバー/ビースト』は煽りに煽る。その魔改造した『第七聖典』は『深遠なる闇』用ではなく、秋瀬直也用であるのは中々に笑える冗談だが――。
「人外の巨体の癖に人並みに囀りますねぇ――ちょうど試し撃ちをしたかった処ですよ。デカくて良い的が目の前にある事ですし、蜂の巣になっても囀る事が出来るか、試してみますか?」
『兆回以上転生している対象に『転生批判』とか今更過ぎて片腹が痛いですねぇ! その豆鉄砲が通用するかどうか、試しては如何? お代は御自身の生命で良いですよ』
煽り合いの果て、ガトリングレールガンという訳の解らない武器種が、本家本元の『超電磁砲』を超える軍用射撃を分間4000発の連射速度で暴威を撒き散らし――こんな過剰殺傷を『個人(秋瀬直也)』に打ち込もうとする当たり、かなりろくでもない人でなしである。
『――ああ、『神父』様。残念ながら此処には『吸血鬼』はございません。人生の最大目標を既に果たした事ですし、御隠居してさっさと病死なさっては?』
「御心配無く、『吸血鬼』でなくても『貴方』は最初から討滅対象です。――いつも通り、『そうあれかし』と叫んで斬れば、世界はするりと片付き申す」
『うーむ、アンデルセン神父の薫陶は偉大ですね!』
煽り甲斐が無いなぁ、と勇者ダイの剣閃に匹敵するオリハルコンの一閃をその身に喰らいつつ、超高速で飛翔して仕切り直しし――宙域にある足場全部破壊してしまおうと突貫モードで突撃し――それより速く、床代わりの飛翔体(宇宙船)の一つが限界を遥かに超過して飛翔し、突進してくる『深遠なる闇』に直撃、軌道がズレて足場破壊を阻止されてしまう。
――『何らかの力』によって、床代わりの飛翔体(宇宙船)を超加速させて即席の特攻質量兵器に変える手段には感嘆の息しか出ない。
『痛いなぁ、床扱いの宇宙船を投擲物扱いしてぶつけてくるとか大分無法過ぎません? ――ねぇ、『シスの暗黒卿』ちゃん!』
「ステージギミックをどう扱うかなんてプレイヤーの勝手だと思うけど? あとちゃん付けで呼ぶな気色悪い」
動けない秋瀬直也を背負ったままの豊海柚葉は床代わりの飛翔体に軽やかに着地し――自身の主の安否を確認して心底安堵する『代行者』、なお彼女が背負う秋瀬直也の存在を認知した瞬間、すっごい顔になる――彼女達の状態・経緯を察知した『セイバー/ビースト』は『あらあらうふふ、御二人はとても仲が宜しいようで!』と喜悦の笑みを浮かべる。
――さて、そろそろこの『聖杯戦争』の最終フェーズに移行するとしよう。物語のフィナーレを飾ろうではないか。
豊海柚葉&秋瀬直也の到着と同時に、宙域に新たな法則が展開される。
極めて限定的で元の性能を保持してないが――白い火花を撒き散らして超巨大な魔術陣が一瞬にして構築される。消去の中に退去、退去の陣を四つ刻んで召喚の陣を囲んだ、『聖杯戦争』においては見慣れた魔法陣を、複雑怪奇な後付術式が補強に次ぐ補強を幾重に織り成して――。
「やっと来やがったか」――『ランサー』は疲労感を漂わせ、やれやれと笑い。
「タイミング、見計らってました?」――『アーチャー/ルーラー』は不敵に笑い。
「――遅いぞ、『魔術師』!」――満身創痍のディアーチェは、『彼』の代行を見事果たしたぞ、と誇るように笑い。
『――おやおや、最後の役者が漸く出揃いましたか。人の疑似固有結界内に『固有結界』を展開するなんて、相変わらず無茶苦茶な所業をかましますねぇ『魔術師』殿!』
「――他人の領域に一から陣地を構築するよりは余程効率的だろうさ」
この転生者の魔都『海鳴市』における最大最悪の大番狂わせ、『魔術師』神咲悠陽がその姿を堂々と現したという事は、そういう事である――。