『――うわぁ、本末転倒、此処に極まれりですね! この『聖杯戦争』で獲得したリソース全てを費やして最後の『決戦存在』を召喚しようとするなんて!』
『ランサー/プリテンダー』一騎の時点で『聖杯』一つを満たして余る魔力量なので、『魔術師』としては本来の目的を果たした上で過剰分の魔力リソースを全部支払う形となる。
この短時間でエルヴィにかき集めさせた、貴重な魔術的素材を湯水の如く使い潰し、決戦魔術・冠位英霊召喚を形式だけでも整える手腕は驚嘆すべく即興力であり――。
『――さて、そう簡単にはやらせませんよ! 当然の権利として邪魔しますけど、どうします?』
「勿論、こうする。――なのは、フェイト、出番だ。締めは『アーチャー』に頼もう」
意識の外から「ディバイン・バスター!」「サンダースマッシャー!」戦艦級の砲撃が不意打ちで放たれ、大打撃――立て直す間を与えずにバインド系の魔法が幾重にも施される。
『……! 高町なのは、フェイト・テスタロッサ! 主人公格の御二人なのに見当たらないと思ったら『魔術師』殿の手で温存されてましたか! ですが、この程度の束縛など――』
その程度なら、『深遠なる闇』は一瞬にして全ての拘束を引き千切るのだが、「――天の鎖よ!」間髪入れず『アーチャー/ルーラー』の宝具によって全身に鎖が巻き付き、完全に拘束される。
『……むぅ、『私』って『天の鎖』の特攻対象になるのかぁ』
元の『深遠なる闇』に神属性があるかは定かではないが、ガンダム系列の多元宇宙を統べる『迷子』には神としての側面も確かにある為、『天の鎖』の対神特攻が見事に突き刺さる形となった。
――完全に動きを止めた為、他の生き残っている『転生者』達からの総攻撃が開始され――この分なら、最後のサーヴァントが召喚されるまで静観しても然程不思議じゃないだろう。
「さて、私のお膳立てはこれで全部終わった。――後は豊海柚葉、君の出番だ」
「……え、私? 何で? 直也君じゃなく?」
「此度の舞台の最後を飾るのは秋瀬直也ではなく、君だ。業腹だがな」
そう、何を隠そう、サーヴァントを召喚していない最後のマスターは豊海柚葉に他ならない。
『魔術師』は目を瞑ったまま、不機嫌そうに指先を鳴らし――瞬間、豊海柚葉の左腕に焼けるような痛みが生じる。眉を顰めながら自身の左手の甲を見れば、赤い痣もとい令呪3画が刻まれ――。
「――ちょっと。何からツッコめば良いの?」
「……大体察したが、『魔術師』、それは正直どうかと思うぞ?」
豊海柚葉は割と殺意を籠めた眼で『魔術師』を睨み、その背後に背負われている秋瀬直也もまたジト目で『魔術師』を睨む。
彼と彼女の想像通りの事態なら、『魔術師』の悪辣さを全力で罵りたくなるのも仕方あるまい。
「――『聖杯戦争』の運営者として、目に見える最大の『例外事項』を最初に対策して取り除くのは当然の義務だろう? 豊海柚葉、君を御三家枠扱いにして令呪を確定付与し、管理者権限で事前に令呪を剥奪する事で、『聖杯戦争』への参加を未然に防いでいただけだとも」
『魔術師』は悪びれもせず「秋瀬直也の方に令呪が刻まれてしまったのは完全に予想外だがね」と白状する。
主催者権限を持っている『魔術師』が、各マスターに配布する令呪に致命的な細工を施せなかった理由の大部分がその仕掛けにリソースを全賭けしたからであり――。
「――という訳で、必要分以上の魔力リソースは確保した。触媒とかは無いが、この事態を解決出来る、超凄いサーヴァントをさくっと召喚してくれ給え」
清々しいほど物凄く良い笑顔で、『魔術師』は豊海柚葉にキラーパスをかました。
この土壇場での責任放棄に等しい言い草に「はぁ!? 最後の最後で運否天賦、『不確定要素の極み(ガチャ)』!?」「一番良いのを頼む!」「コイツぅ!? 他人事だと思って……!?」「実際他人事だし。豊海柚葉、君の引きに全てが掛かってるぞ!」……最初から自分の手を離れた事態に発展していたので、割と『魔術師』も自棄っぱちだったりする。
「……あー、気休めだが、柚葉なら大丈夫だろ。あらゆる意味で随一の運命力の持ち主だし。今回の主役は柚葉みたいだから――さくっと召喚して終わらせようぜ? 駄目だったら、一緒に責任取ってやるから」
秋瀬直也の言う通り、豊海柚葉の引くサーヴァントは『超一級品の悲劇』である事を『迷子』が最初から保障している。
『迷子』渾身の最後の仕込み、是非とも堪能して欲しい。その上で最悪の運命を覆せるなら大絶賛するが、同じぐらい、最悪の運命に敗れて欲しいと思う気持ちも無いと言えば嘘になる。――どっちに転がっても『迷子』は構わないのだから。
「ああもう、やれば良いんでしょ!? ――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄る辺に従い、この意、この理に従うならば応えよ!」
そもそも決戦魔術・冠位英霊召喚は、『人類悪』に対するカウンターだ。
当然の事ながら、対処する『人類悪』に対する『特攻要素』を持つ存在が必然的に呼び寄せられる。触媒は無いと『魔術師』は断ずるが、この宇宙に顕現した『深遠なる闇』そのモノが触媒と化しているのだ。
「――誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ――!」
そして『深遠なる闇』を対処出来る存在など、宇宙広しと言えども限られている。
実質確定ガチャ扱いなので――『迷子』は用意した。最高の喜劇を、最悪の悲劇を。本末転倒の結末を!
――虹色の極光を放ち、膨大な魔力資源を大消費して、その『決戦存在』は『深遠なる闇』という縁を以て召喚されるに至る。
召喚されたのは、14~15歳程度の赤髪紅眼の少女だった。
『アリスブレイド(左右に二本の編み込みおさげ)』を揺らす、特徴的な長耳の――『マリーウィンド茜(長い袖が可愛らしい黒い戦闘服)』に『オニツキミコンマフラーB(二又のマフラー)』を翻す――。
「――我こそは銀河を駆ける『ARKS(アークス)』の輝ける一等星! 『原初の闇』を超えし亡霊、『守護輝士(ガーディアン)』! 此度の『聖杯戦争』では『アサシン/セイヴァー』として推参したよ!」
「……毎回の事だけど、その前口上、必要?」
「勿論、必要だとも『もう一人の私』! 遠からん者は音にも聞け、近くば寄って目にも見よ! だよ!」
クラス 『アサシン/セイヴァー』
マスター 豊海柚葉
真名 『守護輝士(ガーディアン)』
性別 女性
属性 秩序・善
筋力■■□□□ D 魔力■■■■■ EX
敏捷■■■■■ A 幸運■□□□□ E
耐久■□□□□ E 宝具■■■■■ EX