――『セイバー/ビースト』、『迷子』の最終形態に『深遠なる闇』を模した最大の理由は、本家本元の『守護輝士(ガーディアン)』を招き入れる為である。
原種の『深遠なる闇』との最大の差異は、ダーカー因子による侵食能力が若干損なわれている代わりに、討伐された際の汚染力が原種の数十倍以上悪化している事。
初めから『自身』が討伐される事を前提とし、許容不可能の闇を引き継がせる事で『守護輝士』を真の『深遠なる闇』を変異させる、まさに悪意しかない二段構えの墓穴となっていた。
『……『アサシン/セイヴァー』?』
だが、しかし、『迷子』は困惑する。聞き間違いか、単なる詐称か――冠位級の霊基で召喚された事は確かだが、何故当初の予定通りの『アサシン/グランド』ではない? 何故宇宙を滅ぼした分際で『救世主(セイヴァー)』を名乗れる?
何かが致命的におかしい。歯車が食い違っている。式に不純物が紛れ込んだのか――。
――通常の『聖杯戦争』に別の『聖杯戦争』を重ねた大暴挙、『迷子』が織り成す『二重螺旋虚構』には一つだけ縛りがある。
それはサーヴァントのクラス被りが不可能である事。これは『聖杯戦争』の仕組み的に必然であり、二重に重ねた事でより補強された絶対的な制約とも言える。
破ろうものなら『聖杯戦争』の進行すらままならずに破綻するので、こればかりは『迷子』とて改竄出来ない点であり――不意に、『迷子』は自称『アーチャー/ルーラー』を名乗る英雄王ギルガメッシュを神の視座から覗き込む。正確には、そのクラスを――その視線に気づいた『アーチャー』は静かに嘲笑う。
『――『キャスター/グランド』……!?』
『アーチャー』も『ルーラー』も別世界線で該当していただけに、余りにも当然過ぎて見落としていた要素。
『迷子』の支配下に無い『例外』枠が、クラスを先取りしていたなど――否、英雄王ギルガメッシュは元々『千里眼:EX』、平行世界を含めた全ての未来を見通すレベル。キャスターの冠位の有資格者であり、此方の冠位枠が空位である事を良い事に、意図的にそれを選択して召喚されたのだろう。
――ならば、必然的に解は導き出される。この『アサシン/セイヴァー』は、『迷子』が直々に選定した、運命に敗れて『深遠なる闇』に成り果てた『守護輝士』ではない……!?
「――随分と笑える結末ね。この宇宙に生まれた『転生者』は『貴女/私』一人なのに、無い存在を召喚しようなんて」
此処は多元宇宙の果ての果ての果て、遥か彼方に位置する超次元の位相空間――この『PSO2』宇宙の神の座に君臨するは『原初の闇』として眠っている『彼女』であり、退屈そうに事の顛末を見届けていた。
「――惨めで滑稽な破滅。『貴女/私』が其処で『深遠なる闇』を肩代わりした処で、終の女神シバは必ず帰還するだろうし、結局は発狂した『貴女/私』自身が宇宙を滅ぼすだけ」
本末転倒の結末過ぎて演算するまでもない。『自分』を限界まで殴り削って『永劫回帰』を果たしたのに、お粗末な結果過ぎて文句を言いたくなる。
もう見処も無いし、『原初の闇』が観察を打ち切ろうとした刹那――唯一人しか存在出来ない至高の座に揺らぎが生じる。
――宇宙開闢以来の異変、有り得ざる『同格』の来訪。それも、『2柱』――。
「――初めまして、『御同輩』さん。少しお邪魔するよ?」
それは少女の姿をしているだけの『負の特異点』、存在するだけであらゆる法則を改変する『舞台装置(デウス・エクス・マキナ)』――特定領域支配型の神格、能動的に行動出来る類ではないが、此方の宇宙に著しく干渉している……!?
「……!? 一体何を――!」
「ごめんね。とても申し訳無く思うけど、僕の一身上の都合により、あの『3人』の『無謀な挑戦』を成就させに来たんだ」
何一つ悪びれもせず、『補正』は笑顔で侵略宣言し――息を吸うのと同じ感覚で宇宙規模の改変を執り行おうとする。
「――ふざけるなッ! そんな都合の良い『奇跡』が許されてなるものかッ!」
対する『原初の闇』も宇宙を統べる神格としての神威を発揮、自身の宇宙に対する改変を徹底的に拒絶する。
「あれれ、邪魔しちゃうの?」
「当たり前だ、人の領域に無断侵入して無断介入してくるとか殺されても文句言えないと思うけど?」
「素直になれないんだね。――うーん、やっぱり調子が上がらないな。他次元に対する『悪』だからある程度は融通が効くけど」
見た限り、『補正』は『悪』である事が条件になるが、極めて強大な領域改変支配能力を持っており――今回の事は他次元への侵略である為、言うまでもなく『悪』ではあるが、最大倍率での補正は掛かってないようだ。
「何処ぞの神格かは知らないけど、元々無い可能性の改変など通る訳無いでしょ?」
「――それはつまり、かつてあった事にすればOKという事だよね? ――『魔法使い』、それは『君』の領域だよね?」
「はい、言質」と言わんばかりに『次』にバトンを渡し――。
「――『私』のスタンスが『宝石翁』と違って『1つ以外認めない』という事を識っていて頼るか。……まぁ今回は特別だ、お代は要らないがね――」
其処に居たのは、赤髪盲目の黒和服の青年――人の身でありながらこの超空間に何一つ損ねる事無く居座っている『超越者』であり、「人の愛娘に『悪い虫(『頭アナハイム』)』が寄り付いたら、払う以外の選択肢は無いよな?」と、『とあるサーヴァント(誰か)』に対する超越的な殺意を漲らせながら『魔法』を行使する。
――鏡のように隣り合う宇宙、合わせ鏡となって無限に反射して――無限の『並行世界』を紡ぐ。
「――『並行世界の運営』!? 通るかそんなものッ! 無限の可能性、無数に連なる『並行世界』を許容出来るリソースなど何処にある!?」
『原初の闇』の宇宙を一瞬にして熱的死にしかねない大暴挙に対し、『原初の闇』は全力を以て対処する。
『根幹世界』から無限に枝分かれした『並行世界』を片っ端から剪定し、有り得たかもしれない『if』を完全に潰していく。
「――そうだな、これは物語にならなかった物語。生まれる前に潰えた可能性の話。ただ、かつてあった、という事実は差し込める。『根幹世界』と『異聞帯』の関係として。――はい、これで『私』のお仕事は終わり。後は任せたよ『混沌』くん?」
慌てて対処する『原初の闇』を尻目に、『魔法使い』は嘲笑い、投げ渡されたバトンを『次』に繋ぐ。
『良くまぁ『私』に頼めたものだね。厚顔無恥とは『君』のような恥知らずを指す言葉だと思うよ。別に良いけど。――魔法カード『次元融合』発動、お互いに除外された存在を可能な限り特殊召喚する』
「――は?」
『『異聞帯』として切除されているのなら、除外されているという扱いも同然だよね? 除外ゾーンは第三の手札だから幾らでも悪用出来るぞ』
新たにこの領域に出現した『光と闇の極限を融合させた、人の形をしているだけの人型』は、永久除外されている禁止カードを平然と行使し――『宇宙は1枚のカードから始まった(自らの宇宙法則)』を問答無用で叩きつける。
「――宇宙から除外された可能性の具現? 本来ならばどの次元にも干渉出来ない筈。否、干渉した処で結果を残せないのに何故……!?」
それを言うならば、光と闇の極限たる『混沌』だけでなく、最初の『補正』からしておかしい。神格に至っても絶対破れない制限が何故『解放』されている――!?
「――お前の仕業か、『亡霊』!」
最初に現れた『補正』に寄り添っていた、存在感が希薄な新参者――左眼模様が上下に何個も並んだ独眼の仮面に蒼のローブを纏っている『亡霊』は、何も語らず、静かに佇むのみ。
「――ふざけるなよ、そんなご都合主義……!」
「大好きでしょ? そういうの。だから『原初の闇』は宇宙に終焉を齎さず、微睡みの中で揺蕩っている。いい加減、解りにくいツンデレとか今日日流行らないから」
『……うっわぁー、マジかぁ。其処までやるの? 何とも大人気無い!』
此処まで干渉して良いのか、という次の参考にするとして――『深遠なる闇』を模す『セイバー/ビースト』は、天敵である『アサシン/セイヴァー』、『守護輝士(ガーディアン)』と対峙する。
『――確かに、『君』は『今』のこの『私』を打倒出来る存在ですね。銀河を駆けるアークス、その最たる一等星である『守護輝士(ガーディアン)』ならば、『私』という『深遠なる闇』を祓える存在でしょう!』
「うーむ、やれるっちゃやれるけど、これ、原種の『深遠なる闇』より厄介極まるね。倒される事が前提とか性格悪いんじゃない?」
『あれま、バレちゃいました? 原種の数十倍以上の汚染、『守護輝士』と言えども浄化出来ますかな!』
結末までの演算は完了してしまったが、『迷子』はのりのりで演じる。
「――『私』1人では無理だね。倒しても『私』が次の『深遠なる闇』になっちゃう」
「――でも、私達は、『守護輝士』は1人じゃない」
『守護輝士』は自らの『宝具(創世器)』、宇宙の起源となる『光』を纏った長杖(『光纏杖クラースステッキ』)を上段に掲げて、莫大なフォトンの光が生じる。
『それはあの宇宙における『最初の全知存在』の空の器に生まれた『もう一人の君』を含めて2人扱いなのかな? それとも今此処に居ない『番(マトイ)の事かい?』
その願いが明日を紡ぎ出す――本来は、永遠に未完成に終わってしまった、思い出の最終武器。完成させる事無く終わった筈の至高の武器は、真の意味での完成を迎えていた。
「――『英雄』は一人じゃない」
「時空を超えて絆で紡いだ宇宙開闢の物語を、今紐解こう」
「『深遠なる闇』を払う『大いなる光』となりて――『遥か彼方に在りし幻想の星(ファンタシー・スター)』」
あらゆる境界を超えて、あらゆる摂理を硝子の如く砕いて、全長70kmを誇る恒星間航行宇宙船――1番艦フェオから10番艦ナウシズまでの『アークスシップ』が連続召喚され――次々と支援用の空挺が飛来し、戦闘宙域に『彼等』は現れた。
『――征服王の如き軍団召喚系の宝具? 否、これは――!』
『狩人(アークス)』『射撃手(アークス)』『魔法使い(アークス)』『戦士(アークス)』『支援士(アークス)』『武者(アークス)』『双銃使い(アークス)』『双剣士(アークス)』『召喚士(アークス)』『英雄(アークス)』『亡霊(アークス)』『希望(アークス)』『光輝(アークス)』!
――総勢数百万に及ぶ『アークス』が緊急クエストに駆け付ける。更に、驚嘆すべき事実は――。
『――此処に集いしアークス全員が『守護輝士(ガーディアン)』だと――!?』
そう、刹那に消え逝く屑星ではなく、全員が全員、唯一無二の極星――『守護輝士』だったのだ。『ああこれ絶対『処刑用BGM』流れてるわ盛大に』と『迷子』も苦笑いで確信する。
此処に召喚された『アサシン/セイヴァー』は――『超越存在(『補正』『亡霊』『魔法使い』『混沌』)』達の介入によって――嘗ての絆を取り戻し、全員で宇宙を救った『救世主(セイヴァー)』に他ならない。
「――それじゃ、良いレア落としてね!」
「……最後の決め台詞がそれで良いの?」
「良いの良いの! 皆レアに飢えている事だし!」