転生者の魔都『海鳴市』   作:咲夜泪

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37/ちなみにドロップ品はアダマンの杖(A.E.製)

 

 

 

「……うん。凄く、凄かったなぁ……」

「……直也君、語彙力死んでるよ? いやまぁ、それ以外言いようが無かったけど」

 

 ――『深遠なる闇(『セイバー/ビースト』)』と『アークス(『アサシン/セイヴァー』)の戦闘は、まさしく神話の類であり、圧倒的な数の暴力で蹂躙した『アサシン/セイヴァー』は、現地民のダーカー汚染の被害(実は浄化出来なかったら永続デバフだった)を解消した後、即座に元の自分の世界に帰還したのだった。

 

「……『殺したかっただけで死んで欲しくなかった』とか、一体何を食っていればこんなパワーワード思いつくんだ?」

「……『魔術師』、それの元ネタは……あー、いや、何でもない」

「?」

 

 『魔術師』の独り言に対し、ブラッドは敢えてスルーする。『魔術師』にとってネタバレは万死に値する罪である。……尤も、魔都『海鳴市』に生きる『転生者』達に、今更原典を知る方法など無いが――。

 

「――それで『魔術師』、此度の『聖杯戦争』について、どう収拾付ける気かしら? 管理者として貴方の責任を追及させて貰うわ。――貴方の誠意次第では、このまま袋叩きになると思うけど?」

 

 物凄く悪どい笑顔を浮かべながら、豊海柚葉は『魔術師』を咎める。

 「んな、何を巫山戯た事を……!」と、余りの言いがかりに食って出ようとしたディアーチェを無言で静止し、『魔術師』は考える素振りを見せる。……柚葉の背中に背負われている秋瀬直也は二人の間に形成されるいつもの険悪な空気に胃を痛めていたが、今の自分では何も出来ないので静観の構えを取る。

 

 現在の状況は、3回に渡る『レイドボス』戦が終了し、此度の『聖杯戦争』で現界しているサーヴァントは『魔術師』陣営の『アーチャー/ルーラー』と『教会』陣営の『ライダー/アヴェンジャー』のみである。

 この段階で『聖杯』の魔力を盛大に使い切っている為、もう『聖杯戦争』の御題目すら破綻して久しいが――。

 

「そうだな、管理者としての不手際は全面的に認めよう。――これはこれは、命乞いの算段が必要かな?」

「へぇ、全員を納得出来る、素晴らしい提案でもあるのかしら?」

「勿論用意しているとも。久方振りに『本業』に戻るとしよう」

 

 此処にいる全員が『魔術師』を警戒する。――ただでさえ戦力過剰な紫天一家に加え、前回の『聖杯戦争』で現界したままの『ランサー』に、今回の『アーチャー/ルーラー』まで健在となっては戦力バランスが著しく崩れている。

 今回の『聖杯戦争』で最も被害を被った陣営が『魔術師』だが、それでも何かしらの譲歩を引き出さなければ、間違いなく勝ち逃げされると危惧し――。

 

「此度の『聖杯戦争』において、私の副次目的は既に果たされている。『聖杯』の完成など二の次であり、これの再生産の為に『聖杯』は使い潰される予定だったと言っても過言じゃない」

 

 そう言って、『魔術師』の懐から取り出されたのは、宝石の如き刃を持つ短剣であり――。

 

「――宝石剣『ゼルレッチ』!?」

「此度の『聖杯戦争』の余剰リソースで完成出来たのは不幸中の幸いだったと言えよう」

 

 遠坂家に与えられた魔法使いの宿題を、ついでと言わんばかりに披露し――当人としては2回目の作成だからリソースさえあれば幾らでも再現可能の扱いである。

 ……しかも『魔術師』の宝石剣は七色に光り輝いており、起動可能状態である事が見て取れた。――本来は宝石翁の系譜でなければ起動不可能なのだが、『魔術師』当人も知らない事だが、別の世界線の縁で、実は『直系』の弟子だったりする。

 

「……ふーん、純粋な暴力に訴えるとか、貴方にしてはお粗末な選択肢ね……!」

「――? おいおい、余り見損なわせるなよ豊海柚葉。『第二魔法』を限定的に再現出来る、破格極まる魔術礼装を戦闘に用いるなんて勿体無いにも程があるぞ。もっと頭の良い悪用方法があるじゃないか」

 

 原典である『Fate/stay night』での活躍(小カリバー連発)が印象深いだけあって、『シスの暗黒卿』である豊海柚葉も警戒する魔術礼装だが――別世界線で無限魔力供給源として悪用されて死因となっていたのは彼女とて知る由も無いだろうが――『魔術師』は鼻で笑う。

 

「――隣り合う『並行世界』の中には、我々の生まれた『根幹世界』に類似したものもあるかもしれないし、時間軸だって多少未来に進んでいるかもしれない。まさしく無限の可能性だとも」

「宝石剣で穿てる極小の孔程度で何を悪用出来るのかしら?」

 

 ジト目になりながら「話が長い」と、柚葉は切って捨てる。余裕満々で勿体振る『魔術師』に苛立つのは、まぁ仕方ない。

 

「そろそろ我々も最新の価値観にアップデートするべきだと思うのだよ、ただでさえ記憶の劣化も激しいのだから――十数年待つか、今すぐ私と契約するか、此処に居る全員に特別に選ばせてやろう」

「はぁ? 貴方と契約するなんて、悪魔と契約するよりも馬鹿馬鹿しい自殺行為でしょ――」

 

 『魔術師』は自身の懐から『板状の電子端末』を取り出し、全員に見せつけるように掲げる。

 それが何なのか、まるで理解出来なかった柚葉は内心困惑し――。

 

「あ、契約します。柚葉と2人で!」

「はい、毎度あり。契約書類は後日配送で」

「直也君!? ちょっと正気!?」

 

 それが何なのか、即座に気づいた秋瀬直也は、全身の気怠さが吹っ飛ぶ勢いで飛びついた。

 あの『魔術師』に対して、余りにも無用心で危険すぎる行為に、柚葉は一瞬、『魔術師』から洗脳魔術でも施されたかと真面目に疑ったが――。

 

「俺、シスター、紅朔にはやて及びヴォルケンリッター全員分でお願いします『魔術師』様! ああ、靴舐めます!?」

「ク、クロウちゃん一体何で其処まで卑屈に謙って!?「あ、『魔術師』さん。私の分は『シスター(もう一人の私)』とは別枠でお願いしますね!」セラも何を!?」

 

 クロウ・タイタスがもう本当に靴を舐め回す勢いで謙り、シスターの中で静観していた本来の人格であるセラすらも口に出して『魔術師』との契約を求める始末。

 

「こんな便利なものが生えてくるなんて、もっと長生きしたかったものだ。……もしや、文明の利器たる『スマートフォン』をご存知でない?」

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