転生者の魔都『海鳴市』   作:咲夜泪

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--/舞台裏の一幕

 

 

 

 

「――おっかしいなぁ、大人気無かったけど『グッドゲーム!』と称賛しに行ったら『宇宙終焉級のフォース・チョーク』と『こんにちは無限に死ね(『全知全能基準の直死の魔眼・開眼』)』されたんだけど!」

「至極当たり前の対応だが、良く生きて戻れたな……」

「? 悪性因子を全部切り離しただけで、『私』の存在規模は一切損なわれてませんので」

 

 其処は物語の舞台裏、『迷子』が統べる多元宇宙の果ての果て、『彼』は悪びれもせず、顔を顰める『先輩』にケタケタ嘲笑う。

 

「……しかし、良くもまぁあの次元の生きている住民に犠牲者が出なかったな。これも全て計算済みという訳か?」

「え?」

「は?」

 

 何言ってんの、という『迷子』の反応に、『先輩』は心底信じられないという表情になる。

 

「とりあえず正座だ、このバカ『後輩』」

「この行為に何かしらの意味を感じられないのですが、『先輩』」

 

 座る地面すら無い超空間で正座する『迷子』は、色々とシュールな姿だった。

 

「当初の演算では、半数ほどが犠牲者になりかねない予定でしたよ!」

「……その半数は、何に対しての半数だ?」

「あの地球に住まう全人類の」

 

 ……やっぱり、『迷子』の裡に濃縮された『悪意』の半分の破棄は、全然何とか許容出来るレベルじゃなかったようだ。

 

「いやまぁ『神咲神那(マスター)』の英断のせいで、最低限の魔力供給だったお陰で『ランサー/プリテンダー』の1回目のレイドボス戦、殆ど介入出来なかった(唯一の介入が『武帝』を丸ごと『桃源郷』に御招待)んですよね。――戦争慣れしていない人が何人か脱落すると思ったんですけど、『アーチャー/ルーラー』もとい『キャスター/グランド』の干渉のせいで予想以上に早く『魔術師』殿に暗躍され――尊い犠牲者枠だった高町なのはとフェイト・テスタロッサの両名回収されちゃったんですよね! マルチタスクで自身の『穢土転生』も同時に動かすとは過労死枠ですね?」

 

 ――これが『迷子』と『元となった彼』の最大の違い、初めから超越存在として生まれた『迷子』の中に特別執着する特定枠など存在しないのだ。

 『神』なる存在の無慈悲さはある意味平等だった。等しく価値を持たないという意味合いの。

 

「『魔術師』殿の初動が遅れれば、孤立無援で参戦して魔軍の物量に潰されるか、初見殺し枠の『魔人』と遭遇して――18禁指定間違い無しの後味の悪い後日談になる予定でしたね! 特に魔人メディウサに遭遇したパターンは最悪ですね!」

 

 だから主人公枠という特別な駒さえ些末な捨て駒同然に扱ってしまう。

 今回、そうならなかったのは、純粋に巡り合わせ、運が良かったからに過ぎない。

 

「無敵結界持ちの『魔人』を的確に全対処されたのも意外でしたね。特に危険度が著しく高かった魔人ワーグが『アーチャー/アルターエゴ』にさっくり遠距離で処理されたのが響きました。あれで予備知識持っていない『転生者』がかなりの数、狩れる予定だったのになぁ」

「つくづく干渉出来なかった『例外枠(2騎)』に引っ掻き回されていたのだな。……難易度調整の匙加減、間違えてないか?」

「そのテコ入れは現地で行う予定だったのに御破算しましたからね。――尤も、干渉出来たとしても今回の場合は『転生者』側に大幅なデバフ加えたでしょうけど」

 

 性根が最悪の『脚本家』による即興劇を阻止した点では、『迷子』のマスターは大手柄だろう。余計な餌を与えなかっただけでも英断だったが――。

 

「――『ランサー/プリテンダー』の『レイドボス戦』には、隠されたタイムリミットが存在しています。なんと、『彼女』が飽きた瞬間、あの『ルドラサウム大陸』を現実の地球に落下・激突させて強制終了だったんですよね! いやぁ地球に小惑星落とそうとした何処かの『赤い彗星』を思い起こさせる悪逆非道ですね!」

「……『彼女』の招致のタイミングに悪意しか感じられないのだが?」

 

 精神状態が最悪な時(シィルが殺害され、魔王ランスで詰んだと錯覚した状態)に何度も何度も召喚の招致を行えば、ブチ切れ状態の『彼女』が分霊を派遣して八つ当たりに来るのは当然の成り行きだろう。

 

「実は詰む一歩手前だったんですよ。魔軍を一方的に駆逐し過ぎて、ドラゴンの群れ&天界勢力の大軍勢で蹂躙する直前でして――それを実行すると一方的に『転生者』サイドが虐殺されるので、終わりが見えた『ランサー/プリテンダー』が速攻飽きて終わります」

 

 幼く可愛らしい見た目に反して、『彼女』には非人間的な部分が酷く目立ち「興味関心の無い事に関してはあの大陸の『創造神』より酷いですからね、『彼女』」と『迷子』に評される程である。

 

「ですが、そうはならなかった。――いやぁ、『正義の味方(秋瀬直也)』はマジ運命に愛されてますね? 『バーサーカー/フォーリナー』が強制召喚されるタイミングも完璧です。あれで『悪の魔王(豊海柚葉)』が全盛期に戻ってしまったせいで、『ランサー/プリテンダー』が自身の盤面を覆せる脅威認定し、自身の余力を初代魔王ククルククルの再現に回しちゃいましたから」

 

 神の視座から見ても見事という他無く「能動的に全ギミックを台無しにする『亡霊』殿の直接干渉は防げましたが、あの状態の『シスの暗黒卿』がある限り、『補正』ちゃんはあらゆる理不尽を可能としますからねー」と、踏んだり蹴ったりと『迷子』は愚痴る。

 

「……? 仲良くじゃれあう2体のデモンベイン対策じゃなかったのか、あれ」

「足止めされただけです。そもそもあんな巨体に人間ぐらいの豆粒を探知する能力なんてありませんからね。――『運命レベルの強固な偶然(当時のケイブリスを魔人に)』ぐらいないと」

 

 明らかに人選ミス――魔王ミスだったが、まぁそれは『ランサー/プリテンダー』の杜撰さが原因である。

 

「初代魔王ククルククルに余計な指向性を持たせた事で『ランサー/プリテンダー』が居座る本拠地『空飛ぶランス城』が発覚、全員突撃という美しい流れ。……『アーチャー/アルターエゴ』が『ライダー/アヴェンジャー』の援護などしなければ、此処で第二の『レイドボス』戦を同時進行出来たのになぁ」

 

 つくづく『例外枠』は致命的な邪魔ばかりしてくれると、『迷子』は喜々と嘲笑う。

 盤面支配者としては、想定外&予想外の出来事は大歓迎なのだろう。当初の目的は最初から達成させているので、遊興として面白さを最優先し――『自身』の勝利すら度外視しているのは中々に読み辛い。

 

 ――『空飛ぶランス城』に突入し、『ランサー/プリテンダー』の仕分けでメンバーが隔離され――。

 

「合流ルートは魔人ケイブリスで詰みます。原作知識を持っている『竜』の騎士ブラッド単騎による全身全霊の遅延戦闘じゃなければ犠牲者続出でしたし、ここでクー・フーリン、ギルガメッシュの魔力を浪費すると、最終盤面で『魔術師』殿の魔力切れ、という洒落にならない事態に陥りますね」

 

 RPG的には分断されたら合流が正道だが、道中に配置した魔人四天王は無視した方が良い強敵揃いなので「よくまぁ夜天一家全員脱落程度で済みましたねぇ」と『迷子』は感心する。

 此処に時間を掛けたら、確実に犠牲者が多数出ていたので、長年の戦闘経験で即座に玉座への特攻を選択したティセを素直に褒め称えよう。

 

「――なお、『ランサー/プリテンダー』の戦闘力は初代魔王ククルククルを優に上回っているので、単純な戦闘になった時点で問答無用でゲームオーバーです。『彼女』の記憶を垣間見たとは言え、令呪3画で対話に持っていった白さんは大手柄ですね!」

 

 あの見た目で初代魔王ククルククルよりも超耐久なので「戦闘したら勝敗は別として、白さんが『魔女』堕ちして大惨事でしたねー」と二重の罠の不発に『迷子』は残念と嗤う。

 

「……対話が最適解とは、何とも耳に痛い攻略法だな」

「はて、何の事やら。『本体』のやらかしは、基本的には『私』には関係無い事です」

 

 惚けて見せるが、『迷子』は思いっきり顔を背けている。

 奇跡的なやり取りで、『ランサー/プリテンダー』の自主退場で決着し――。

 

「……はぁ、まさか俺がこの台詞を言う時が来るとはな。――あれはガンダムか?」

「はい、デモンベイン・トゥーソード風のガンダムですよ! 一応、元のほぼ全機能は再現出来てますよ。『第零封神昇華呪法(シャイニング・トラペゾヘドロン)』以外は」

 

 諸々の機能を完全再現している病的なまでの凝り性は、元の『彼』に通じる処があるが――。

 

「まぁ元の仕様で来るよりはマシでは? 二番煎じで代わり映えの無い上に『這い寄る混沌』の介入なんて御免被りますが」

「その代役が『ELS侵食融合型デビルガンダム』か……結果的には、普通のデビルガンダムと何一つ遜色無い気がするが?」

 

 ELSという劇物を加えた割には、従来のデビルガンダムと同程度の脅威で終わった事に『先輩』は指摘するが――『迷子』は首を横に振る。

 

「『アーチャー/アルターエゴ』にギミック無視されたからですよ。初手『第零封神昇華呪法』とか想定していても対策なんて無理ですよ。あれのせいで自己再生ならぬ自己復元にリソース全ツッパせざるを得なかったので、自己進化出来なかったんですよ」

 

 誰もが唸る(クソ)ギミックを用意しても想定通りに活躍しない事の多さに、流石の『迷子』も勿体無いと嘆く。

 

「……ちなみに予定通り自己進化していたら、どうなっていたんだ?」

「デビルガンダムが分離侵食融合を繰り返して、消えかけの固有結界を完全に乗っ取って大惨事コースですね! その頃には侵食融合するバグも大量生産して生身の人間特攻兵器として大活躍の予定でした!」

 

 積極的に舞台を台無しにし、機会がある毎に皆殺ししようとするから、外部からの修正力(『補正』の改変・干渉)で的確に防がれているのではないだろうか?

 

「まぁコアという明確な弱点をそのままにしていたのは偏に『私』の慈悲ですね! まさか『機神飛翔デモンベイン』の時と同じように自力脱出されるとは思ってませんでしたが」

 

 「こればかりはナイアさんを笑えませんねぇ!」と『迷子』は豪快に嘲笑う。

 『迷子』としては、クロウ・タイタス&大十字紅朔に苦渋の決断としてコアを破壊して貰いたかったのだろう。『正義の味方』に永遠に癒えぬ傷を、自らの手で――。

 

「……『バーサーカー/フォーリナー』への趣向は、本当に趣味が悪いな」

「『彼女』は元々『正義の味方』側の人間ですから、あれぐらい弄らないと『悪の魔王』の足止めにならないのです。……『スティール・ボール・ラン』100周近くとか、まぁ精神崩壊級の苦行ですけど」

 

 これは『迷子』の悪辣な趣向で気が向いたからではなく、必要に迫られたからという面が大きい。

 

「これで漸く『狂化ランク:EX(バーサーカー)』付与ですよ。――ああ、ちなみにこのギミックは『空想樹』の内部演算領域をモデルにしてますね! キリシュタリア・ヴォーダイムが踏破した人理修復の旅の再演、着想はFGO世界線でサーヴァントとして召喚された『魔術師』殿からですよ!」

 

 さり気なく『次の物語』の要素を暴露するが――読者としては未来の話、『迷子』からは過去の話である。

 

「不発の『フォーリナー』要素は何を仕込んだんだ?」

「時間稼ぎしたかったので、外なる神『ヨグ=ソトース』ですよ。宇宙の彼方に飛んでくれれば御の字でしたが、まぁ必要とあらば時間無視して瞬間移動して来そうですし、結局は無駄ギミックでしたね」

 

 残念無念また来週、と『迷子』は不発に終わったギミックを切って捨てる。

 

「最終形態となった『深遠なる闇』だが、前回のものとは仕様が若干異なるようだが?」

「今回は『本体(ユニコーンガンダム4号機)』に至った時点で問答無用でゲームオーバーでしたので、最終形態である前提の『深遠なる闇』は前回と異なり、オミットされていた侵食汚染機能がマシマシになっております。原種の性能だとゲームになりませんので、撃破された際の侵食汚染に全振りした状態ですね」

 

 『聖杯戦争』という御題目でありながら、『迷子』は『万能の願望機』など求めていないので、死して祟るという最悪の置き土産を密かに用意していた。性質の悪いったらありゃしない――。

 

「――まぁその目論見も、『アサシン/セイヴァー』に全部崩されるんですけどね! 本当に大人気無い! 全員が全員『守護輝士(ガーディアン)』ですよ? あの数百万人のアークスが全員中身ありのプレイヤー、『転生者』とかふざけてるんです?」

 

 「正規のルート(『根幹世界』で巷の『吸血鬼』に殺されて異界送り)ではなく、PSO2風に言うなら幻創体として再現された姿ですかねー?」と分析しつつも、それでも余りにも理不尽で不条理な宇宙改変である。

 PSO2宇宙の『守護輝士』は、宇宙の元となった『全知存在』であり、唯一無二の存在だというのに、『元のゲームの仕様(オンラインゲーム)』で実装されては目も当てられない。

 

「……まぁやらかした事の大きさを考えるのならば、それぐらいされても何一つ文句言えないだろう?」

「此処まで介入して良いという一例として、今後の参考として受け止めますよ」

 

 ぶーぶーと文句垂れながら、『迷子』は『次』の機会の参考とする。『次』など一体いつ訪れるか、不明だが――。

 

「さぁて、数兆回分の厄落としも終えた事ですし――最新の『友人』達とのお茶会と洒落込みますか!」

「……お手柔らかにな。『お前』はいつもやり過ぎる」

「何事もやるからには全力で、というのは『貴方』の『後輩』の美点だと思いますよ?」

 

 『フラスコの外』に強制拉致された2人の若者達の安否を気遣いつつも、最後に残った疑問が脳裏に過る。

 

「――ああ、そうそう。何で『セイバー』だったんだ? 『お前』に剣や騎士要素、皆無だろう?」

「純粋に枠潰しですよ。『セイバー』クラスを自由枠にしちゃうと、人類の脅威特攻持ちの『聖剣使い』が確定枠で召喚されてしまうのです」

 

 『迷子』は苦虫を百匹噛み抜いたかの如く「『私』とて全拘束解除した『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』で問答無用に一刀両断されるの、流石に嫌です」と、幾度演算し直しても変わらなかった無慈悲な未来予測を吐露したのだった。

 

 

 

 




 これにて第『二』次聖杯戦争編 二重螺旋虚構 アナハイム 『幻想の星』は終了です。
 三ヶ月近くお付き合い頂き、誠にありがとうございます。

 八年ぶりの更新という事で、皆様の記憶から忘れ去られてないか、戦々恐々でしたが、皆様は作者以上に覚えている様子で。

 本来、この『聖杯戦争』は一行で終わる前日譚であり、『次の物語』の為の「こんな事が実はあったんだよ!」的な話でした。
 構想を練っていた『次の物語』の方が書く予定だった物語であり、其処を何処からか迷い込んだ『迷子』とかいう傍迷惑な超越存在が乱入してきて破綻し尽くした『聖杯戦争』を書く羽目になりました。
 『Q.これはガンダムか? A.ガンダムです』の方で割とまともだったのは、徹底的に毒抜きしていたからで、元々の害悪度はこれの二倍です。最悪かな?

 個人的には久しぶりに『混沌』さんを登場させる事が出来てご満悦です。
 ちなみに魔法カード『次元融合』の発動を邪魔しようとしたら、事前に召喚していた《コズミック・ブレイザー・ドラゴン》《超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ》《サイバー・ドラゴン・インフィニティ》+神シリーズの罠3種の6妨害が飛んできます。鬼畜かな!

 次の物語がいつになるかは未定ですが、首を長くしてお待ち頂ければ、忘れた頃に更新しているかもしれないです。ではでは~!
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