基本的に短めのお話で、更新は不定期になるよ!
01/実は『例外』側だった『転生者』その2
「――ファイナルファンタジータクティクス - イヴァリース クロニクルズ? おお、懐かしい。あの『FFT』のリメイクか、これ?」
転生者の魔都『海鳴市』における『転生者』の三大勢力の一つ、『教会』――その本拠地である教会にて、居候するクロウ・タイタスは『魔術師』から購入したタブレット(『とある』世界の科学技術と『なのは』次元世界の科学技術のハイブリット)を片手に(『宝石剣』の孔を通した根幹世界に最も近い現実世界の現地時間)2025年9月30日に発売した、思い出深きゲームのリメイクに興奮を隠し切れずにいた。
「クロウ兄ちゃん、その『FFT』ってシャルロットさんの出身世界の?」
隣に座っている八神はやては、その世界出身の『全魔法使い(ソーサラー)』シャルロットの口から聞かされた寝物語を思い出す。
普段は表情の変化が非常に乏しく、無感情で物静かな少女だが、その時にシャルロットが浮かべていた穏やかな表情が印象的だった。
「そそ、正直転生したくない世界ランキング上位になるほど厳しい世界だなぁ! オレも『FF7』からシリーズやり始めた新参者だが、その次にお出しされた『FFT』にはドハマリしてなぁ。……何処までも救われない物語だけど、何故か余韻として残り続けて――シリーズの中で1番印象深い作品だなぁ」
何せ最後は無常の全滅エンド、彼等の真実の旅路を書き記した『デュライ白書』の著者は教会から『異端者』の烙印を押されて火刑、禁書指定されて400年後に――主人公達に感情移入するほど、受け入れ難い歴史の流れに、年甲斐も無く物悲しくなる。
――かつての感傷に浸っていると、来客を告げる鐘の音が鳴り響き――。
「邪魔するぞ、クロウ」
「おっ、ブラッドとシャルロット、特にシャルロット、ちょうどいいところに!」
「?」
偶然訪れた、黒髪短髪で獣が如き獰猛な目付きが特徴的な『竜の騎士』ブラッド・レイと、ショートの水色の髪に金飾り(沈黙対策)&リボン(全状態異常対策)でお洒落する無表情な『全魔法使い』シャルロットに、クロウは自身がプレイするゲームのタイトルを堂々と見せつける。
「ファイナルファンタジータクティクス・リメイク!? ……嘘、あんな極一部のにっちなユーザーしか目向きされない過疎ジャンルの何処にそんな需要が……!?」
「いや、その酷評、酷くね? 確かにファイナルファンタジーとしては文字通り異端の物語だったが、SRPGとしては日本国内史上最高数だった気がするぞ?」
無感情で淡白な少女からの、珍しく熱の籠もった反応に「仮にも自分の出身世界なのに酷ぇ反応だなぁ」とクロウはツッコむ。
シャルロットは百面相の如き表情を変え、タブレットの画面と隣にいるブラッドの顔を何度も往復で覗き込んだ後、自身の眉間を顰める。――此処の、複雑な乙女心をスルーする気遣いは、鈍感なクロウにもあった。
「……正直、余り見たくないかも。スクエニの悪名高きリメイク商法には、何度も失望したから」
「まぁその気持ちは痛いほど解る。好きだった作品なほど、変に改悪されていた時の精神的苦痛は半端無いからな。オレも『FFT』には深い思い入れがあったから事前に警戒して調べてみたが――今のところ割と良感触、かな? フルボイスは正直どうなんだと思うが」
話のテンポが悪くなったりしないか、若干心配になるが――。
「……クロウ、実際に彼等の生の声を聞いた私に、それは痛恨のマイナス要素では?」
「いやまぁそうなんだが。……序盤だけでも見ていかないか? 実際に『イヴァリース』で生き抜いたシャルロットの感想が聞きたいし」
その翠眼でジト目で睨みつけるシャルロットにたじたじになりながらも、強い拒否感を持っているシャルロットを説得するには若干要素が足りないと感じ――。
「という事は、このファイナルファンタジータクティクスに、シャルロットさんが語ってくれた冒険譚が!?」
「……いや、私の存在が無い、『正史』の物語。多くの『転生者』達の生きた物語が、当人の中にしか存在しない、夢幻同然であるように――」
はやてからの混じり気無しの憧憬の声に、シャルロットは色々思い悩み――やっと決心したのか、大きなため息を吐いた後、無言でゲームのプレイを催促する。
こういう前……前世である『2回目』の世界が関わる事は面倒事が多いので、クロウは敢えて静観し「いやぁ、直也『さん』の『ジョジョの奇妙な冒険』は涙無しでは見れなかったなぁ!」「『さん』付けしたい気持ちは解らなくもないが……どういう法則かは不明だが、『正史』に刻まれている方が『例外(イレギュラー)』だろうな。あの『魔術師』や、『秋瀬直也(彼)』とその『豊海柚葉(彼女)』しかり」とブラッドと駄弁っていた。
さて、ファイナルファンタジータクティクス、この物語の始まりの地である『オーボンヌ修道院』にて、敬虔に祈りを捧げる王女、オヴェリア・アトカーシャの姿が描写され――。
「――あ、オヴェリア様の声だ……!」
「おっ、実際に聞いた事のある当事者お墨付きとは、こりゃ期待出来るな!」
ファイナルファンタジータクティクスの世界を生き抜いたシャルロットからのお墨付き、それに懐かしき物語に新たな色をつける声優達の名演に心躍る。
最近は毎度の事ながら世界の存亡に関わるような荒唐無稽な大事件に巻き込まれてSAN値を著しく減らしてきたが、こういう癒やしの時間は貴重であり――。
「おー、アグリアス! 想像したまんまだな! すっごい『セイバー』っぽい!」
「……いや、その感想、正直どうなの? クロウ、大丈夫? エクスカリバーで『無双稲妻突き』されるよ?」
「ガフガリオンも、まじ本人! あのだみ声、ベストマッチだなぁ!」
予定の出発時刻を過ぎても祈り続ける王女に対して、護衛を引き受けた傭兵達は口々に文句を言いに訪れ――その中には、主人公であるラムザ・ベオルブの姿と。
「……え?」
――彼の後ろに付き添う、ショートの水色の髪に青の魔導師風のローブを纏った、見慣れた少女の姿が新規にあり――。
「……え? わ、私? 何で!?」
「……あー、おめでとう、と言って良いのか? シャルも『例外』側だったようだな」
転生者の魔都『海鳴市』 ファイナルファンタジータクティクス - イヴァリース クロニクルズ『静寂なる空の魔女』