転生者の魔都『海鳴市』   作:咲夜泪

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 『全魔法使い』シャルロット

 両親すら不明の、平民出身の孤児。
 天騎士バルバネスにその才覚を見出され、ベオルブ家に引き取られ、彼の計らいで特例で王立魔法院に通い――僅か一年でやる事が無くなり、飛び級で首席卒業、王立士官アカデミーに通ってラムザ達と合流する。

 その魔法の才能は当代一、五十年戦争中期の英雄、大魔道士エリディブスに匹敵すると目されるも――『平民階級』である、この一点がある限り評価される事は無い。
 ある意味、この評価は彼女にとってプラスに働いてしまっている。彼女の『異端』の才を実際に目にしてしまえば、彼女を正当に評価してしまえば――教会関係者の目に映らなかったのは幸運と言えよう。




03/『理を超えし者』

 

 

 

 

「なぁ、覚えているか? ラムザ、シャル。親父さんに教えて貰った、草笛を――」

 

 ――夕日が沈む黄昏時、3人で草原に座りながら、思い出の草笛を試みる。

 

 『持つ者』と『持たざる者』――その運命は生まれた瞬間に決まっていて、貴族として生まれた『親友』は全てを『持つ者』として望むものを全て手に入れて、平民として生まれた自分は最初から『持たざる者』で何も変える事が出来ず――されども、この『少女』は『持たざる者』でありながら、生まれ持った才覚だけであらゆる境界を超越する『異端者』で――。

 

 自分の草笛は今の心境を現すようにくすんでいて、『親友』の草笛は高く鳴り響き――『少女』の草笛は全然音が鳴らなかった。

 

「相変わらず下手だなぁ、シャルは」

「こうだよ、シャル」

 

 昔から魔法以外の全般が不器用で、無表情ながらも不満気に口元を尖らせている。

 その度にコツを教えようとするが、成功した試しがなく――『少女』は諦めたように目を閉じ、草を手放して風に委ねる。

 

「――別に、出来なくてもいい。人によって出来る事は異なるし……私に出来ない事は、ラムザ、ディリータに任せる」

 

 ――どんなに頑張っても、覆せないものがある。それに関する返歌を、『少女』は無表情で口ずさむ。

 

 この『少女』にも、自分と同じ葛藤があるのを知りながらも――当時の自分は、他と隔絶した魔法の才覚に嫉妬し、見向きもしなかった。

 生まれ持った天賦の才のみで自らの運命を切り開く、ある種の『超越者』である『少女』の心の内など知る由も無く――。

 

「『適材適所』って、そういう事でしょ? 私には『魔法』しかないから、他の事は2人に任せる――」

 

 

 

 

「……仮に、私があの『魔術師』のように振る舞えたのなら、思うままに物語を破壊出来て、英雄王ディリータは誕生しなかった。……私には、何も変えられなかった。彼等の結末を、最初から全部知っていたのに――そう思うのは、傲慢かな?」

 

 激動のチャプター1の終盤、主人公ラムザとディリータとの印象的なやりとりの後、シャルロットは気落ちした顔で『if(もしも)』を呟く。

 個として規格外の力を持ちながらも、物語の流れに一切逆らえなかった、無力な『持たざる者』としての自嘲であり――。

 

「ああ、その感想は傲慢そのものだな。誰も『魔術師』みたいな真似なんか出来ねぇからな」

 

 あの『魔術師』なら、生まれ持った身分という絶対的な介入権が無くとも、手段を選ばなければ物語の流れを大筋から壊す事は可能であろう。――身分も剣術も魔法も謀略の才も持ち得たダイスダーグ・ベオルブさえ及ばぬ、悪辣な邪智謀略をもって。

 その手の暗躍力に関しては、残念ながらシャルロットには一切適性が無い。自身1人で完結した突出した個であるが故に、他の人を動かす事に長けていない。

 

「――でも、私は傲慢なの。そういう『人間』だから」

 

 ……現時点で、クロウはシャルロットの意味深な言葉の真意を敢えて尋ねず、彼女が居る事で変化した物語をありのまま楽しむ事とする。

 この歴史という大きな流れに逆らえずに何もかも諦めてしまえるほど、このシャルロットという少女は物分かりが良い方ではないのだから――。

 

「……ところで、空気読めない発言するんやけど――戦闘開幕に『ディリータさんやアルガス(NPC)』を戦闘不能にしたり、味方で味方を殴ったりするのは常識なん?」

 

 一緒に観戦していた八神はやてからの純粋な疑問に対し、クロウとシャルロットは疑問符を浮かべて首を傾げて――余りにも常識的過ぎて、他のゲームをプレイした事の無い人にとって常識じゃない事に改めて気づく。

 

「ああ、はやて。『FFT』においては常識的な稼ぎプレイだぞ! 勝手に戦闘を終わらせようとする『NPC』は邪魔だからな! あとアルガスは殴れる内に殴らないとなぁ!」

「常に行動してジョブポイントを稼ぐ。『FFT』における常套手段――アルガスは、アルガスだから」

 

 一般的な人にとっての非常識を常識とのたまうクロウとシャルロットに戦々恐々しつつ――特定個人に対するヘイトの高さに、はやては思わず戦慄する。

 確かに、そのアルガスというキャラクターには問題発言が多く、物語が進む毎に本性を発露させるが如く、言動が酷くなる一方で――。

 

「……『家畜に神はいない』、かぁ」

「没落貴族の身分で、平民に一際近い位置だからこそ、あの主張は皮肉でしかないのがな。この『イヴァリース』の無常なる世界観を端的に表した名言でもある」

 

 未だに暗闇の状態異常で視界が閉ざされているブラッド・レイからの注釈に、はやては内心で思わず唸る。

 同じ人間同士なのに、生まれ一つで差別し、虐げる。世界観の違いを、何も知らないユーザーに知らしめてくる。

 

「まぁ実際は人を救う神など存在しない、だけどなー」

 

 ……普段から人を玩弄する事に長けている『邪神』に抗っているクロウ・タイタスが言うと、余計に重みが感じられる。

 

「……生き辛い世界やわぁ。皆、平等に不幸になってへん?」

「おっ、鋭いな、はやて」

「え? ……え?」

 

 まさにはやてが思わず口走った言葉通りの世界である事を、今後の展開で強く思い知らせてくるのだった――。

 

 

 

 

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