転生者の魔都『海鳴市』   作:咲夜泪

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05/『愛に全てを――』

 

 

 

 

『――こうして、ラムザ・ベオルブ御一行は無事、飛空艇の墓場にて『聖天使アルテマ』を討滅出来たのでした。めでたしめでたし――』

 

 ――現存する最後の『異形者』の魂を喰らい尽くし、このイヴァリース世界の全てを俯瞰出来る至高の座にて『私』は産声を上げる。

 

『――うふ、ふふふふ! さぁ万物よ祝福せよ! 新たなる『神』の誕生を……!』

 

 『私』はまつろわぬ神、永遠に咲かぬ徒花。永久の水子が異世界の極上の魂を喰らう事で――永らく空席の『神』の座に君臨するに至る。

 『私』は自らの誕生を祝福しよう。『私』を産み落とすに至った、数多の英雄達の報われぬ物語の結末を狂気喝采しよう。それだけの業を積み重ねた『人間』の愚かしさを愛しく想う。

 

 ――邪悪なる『理を超えし者(ルカヴィ)』達を餌に成長した『神』が、生まれながらの『邪神/悪神』であるのは当然の理であり、『私』は『私』の誕生祝いに世界終焉を奏でよう。

 

 残念な事に、産まれたばかりの『私』は非常に空腹で、更なる栄養を欲している。

 とどのつまり、次の捕食対象は『私』を産み落とした『世界』そのモノであり、既存世界にお住まいの全存在に関しては『私』の養分になる事を光栄に思って『神』の世界に来訪する事を許しましょう――!

 

 

「――渦なす生命の色、七つの扉開き、力の塔の天に至らん。アルテマ」

 

 

 星を穿つ無の極光が、溢れんばかりの破滅の大光が、『神』に至った『私』の神体を呆気無く穿ち貫いた。

 完全なる初見殺しにしてこれ以上無い過剰殺傷――それを成したのは、他ならぬ、『人間』を装い続けて全てを騙し抜いた私だった。

 

『……は? ――は? 何、故?』

「――? 何故、そんなに困惑するのかが解らないのだけど」

 

 『私』は私による『神殺し』の理由が解らずに問うが、私は心底不思議そうに首を傾げる。

 ――そんな、目の前の蟻を踏み潰したかの如き感慨で『神殺し』を成したと、私自身の手で行われた世紀の大悪行を心底信じられずに――。

 

『――自分が何をしたのか、理解しているの!? 『私』をその手で殺すなんて、盛大な自殺でしかないのに……!?』

「――? 貴女は『自分』の事を『神』と自称している。それなら私と『お前』は赤の他人。私は強欲で傲慢な『人間』だから――」

 

 ――この私は、一体何を言っている?

 この至高の座に自身の存在を一切損なわずに存在している時点で『人間』程度の存在などとうに超越している証明なのに、それなのに『人間』であると自称する? 何の冗談だこれは――!

 

『――世迷言を! 私の何処が『人間』だ! 他を隔絶する絶対的な『異端者』の才能、全てを喰らい尽くす奈落の魂! 私の何処に『人間』足り得る要素がある!? 世の万人が私を『化物』と称したのを、忘れたとは言わせない……!』

「それは認めるけど――そんなの、どうでもよくない?」

 

 万人から指差されて『異端者』と罵られ、戦場に莫大な死を齎す『魔女』と恐れられ、化物からも正体不明の『化物』と畏怖される私に向けられた、世界の憎悪を一心に煮込んだそれを、心底どうでもいいと一言で切って捨てた。――『私』にすら、もうその『化物』じみた精神性が、理解出来なくて拒絶反応を引き起こす。

 

 

「――空っぽだった魔女を、一人の『人間』として『愛』してくれた人がいた。虚ろだったその心を『愛』で満たしてくれた人がいた。この世界における私の日常は彼と隣にいる時だけで――その『愛』に全てを賭すのは、『人間』として当然でしょ?」

 

 

 ――『愛に全てを』。この悍ましいまでの感情の渦を、『私』は識らない。未来永劫、過去永劫、永遠に知り得ない……!

 

「――ファイナルファンタジータクティクスという物語において、私が唯一気に食わないのはその結末。全滅ENDで『その後、彼等を目撃した者は誰もいない』なんて冗談じゃない。――という訳で『私』、奇跡の生還を引き起こす為の『人柱』になれ。――震えろ、命繋ぎ止める光、力の塔となれ。完全アルテマ!」

 

 

 

 

「――皆、無事か!?」

「――おう、ラムザ! 何が何だか良く解らないが、とにかく生きてるッ!」

 

 飛空艇の墓場にて『聖天使アルテマ』を打ち倒したラムザ一行は、最後の悪足掻きと言うべき魔力の大暴走に巻き込まれるも――いつの間にか死都ミュロンドから脱出し、オーボンヌ修道院の地下書庫に帰還していた。

 

「一体何が……シャル? シャル――?」

 

 一行はほぼ全員無事だった。

 最終決戦での負傷はあるものの、誰一人欠ける事無く――攫われた妹・アルマの無事を真っ先に確認したラムザは、唯一此処にいない、欠けている人物に誰よりも早く気づいたのだった。

 

 最初に世に出た『ファイナルファンタジータクティクス』において、『全魔法使い』シャルロットは――最初からラストバトルまで付き添い、数多のプレイヤーに感情移入させるだけさせて、最後に勝手に居なくなる女、と評される事となる。

 

 

 

 

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