転生者の魔都『海鳴市』   作:咲夜泪

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06/『ファイナルファンタジータクティクス 獅子戦争』-静寂なる空(から)の魔女-

 

 

 

 

 ――私は貴方の物語を知っている。

 

 全ての虚栄を拭い去り、唯一無二の真実に至る旅路の果てに、貴方が永遠に報われない事を私は知っている。

 貴方は貴方の思うままに正しい選択をし、『異端者』の汚名を被せられて世界から拒絶された。

 人知れずに世界の脅威と戦い、無意味な戦争を終わらせようと歴史という大きな流れに抗い続け――古の災禍を打ち滅ぼして消え果てた。

 

 ――もっと上手く立ち回れば、或いは。

 貴方は無意味な戦争を終結させ、新たな時代を切り開いた若き英雄として皆から愛されたでしょう。

 

 でも、こんな仮定は無意味なのです。

 例え貴方は御自身の末路を知っても、躊躇わずに同じ道を選ぶでしょう。

 その気高き意志と尊き強さは私には眩しくて、臆病な私には正視出来ません。

 見えている破滅を前にして勇敢に立ち向かえるほど、私は強くありません。

 

 ――泣きながら蹲る私に、貴方は手を差し伸べました。 

 

 私にその手を握り資格があるのか、改めて問い詰め――私は彼に質問しました。

 例えその生涯が全て無意味だと解っていても、立ち向かう事が出来るか、と。

 彼は小難しそうに眉を顰め、それでも真摯に悩みながら、こう答えました。

 

 ――それでも自分は、真実に至る為に戦い続けるだろう。

 

 その笑顔は、私にとって太陽でした。

 眩しすぎて、また涙が流れ落ちました。

 

 ――恐らくこの時に。

 私はこの人と運命を共にし、誰もが見捨てても私だけは傍らで支え続けようと決意したのです――。

 

 

 

 

 ――次に出た、2007年5月10日発売のPSP版『ファイナルファンタジータクティクス 獅子戦争』は賛否両論の移植作である。

 

 オリジナル版には無かった戦闘中の異常な処理落ちは多大なマイナス要素であり、諸々の追加要素については多くの意見が交わされた。

 『原作から手を加える必要が無い』『原作から何かしらの追加要素を!』という2つの対極の意見は、永遠に平行線になるのは当然の事だが、原作絵を忠実に再現したムービーシーンは高く評価された。

 

 ――PS版『ファイナルファンタジータクティクス』における最大の謎、それは最終決戦において『全魔法使い』シャルロットだけ何故、帰還出来なかったのか?

 

 そもそも、『全魔法使い』シャルロットは最初から加入している初心者救済用の『ぶっ壊れ性能キャラ(バランスブレイカー)』であり、比較対象が四章から加入する『雷神シド(『剣聖』)』の時点で察して余る事だろう。

 ゲームの難易度を著しく下げる本キャラは、最初から最後まで使える専用職持ちユニットであり、主人公ラムザと同じく除名出来ない存在であり、Braveの低下によるパーティ離脱もFaithの向上によるパーディ離脱も無い。

 

 ……ただ、Braveの低下による会話イベントはちゃんと存在しており、この時の彼女は「……やだ、駄目。もう泣かないと、あの時決めたのに……!」と、珍しく感情を露わにしたりする。

 

 話が若干ズレてしまったが……ゲームをプレイするプレイヤーにとっても公式にとっても特別扱いで、最初から最後まで一緒に戦えるのに謎の多い彼女だったが――『ファイナルファンタジータクティクス 獅子戦争』における最大の功罪はシャルロット関連のエピソードの深堀りがされた点である。

 

 ――公式から『無感情で無表情の少女』だと語られているが、その実は、表現の仕方が下手なだけで、割と感情豊かである事は周知の事実である。

 ……ゲーム中でも、些細な身振りや仕草で考えている事が大体解る、小動物じみた愛らしさはとにかく魅力的で――無言&無表情ながらもドット絵でかなり動く事は有名である。

 

 

 ――其処からお出しされた最初の不発弾、それはシャルロットが――非常に曖昧で大雑把であるものの、主人公ラムザ・ベオルブが辿る生涯の残酷さを、『異端者』として歴史の影に埋もれる最期をほぼ把握していた事である。

 

 

 予知能力か、或いは――数年越しに判明した新事実に大多数のプレイヤーは阿鼻叫喚に陥ったが、だからこそ幼年期のシャルロットが口にした「その生涯の行いが全部無意味だったとしても、貴方は立ち向かえる――?」という質問の、真の理由がそれだった。

 

 ――シャルロットがゲーム中で無双したように、その精神的内面も『無敵の全魔法使い』だったのならば幾分かは救いがあっただろうが……彼女は何処にでもいる、普通の少女であった事が赤裸々に綴られる。

 

 

 ――そして次なる不発弾は、『ルカヴィ』との戦闘後、シャルロットが意図的に、独断で、ラムザには内緒で、彼等の悪しき魂のクリスタルを継承していた事が判明する。

 

 

 これは旧作の『ファイナルファンタジータクティクス』の時点で考察されていた事である。

 『ルカヴィ』との戦闘後に、シャルロットが勝手に習得するアビリティがある事は周知の事実であり、敵専用の魔法も習得する事で彼女の公式チートっぷりを加速させていたが――その裏で、精神に著しい不調を負い、二重人格じみた精神的障害を抱えていた事も後々判明する。

 ……この時点で、シャルロットに関する裏事情が旧来から存在した公式設定である事がほぼ確定し、従来のプレイヤー達を更なる地獄に叩き込む事となる。

 

 

 ――そして最後に判明する真相は、ラスボスである『聖天使アルテマ』を撃破した後のムービーシーンによって彩られる。

 

 

 『聖天使アルテマ』の死に間際の大暴走によって崩壊する飛空艇の墓場にて、『聖天使アルテマ』のクリスタルすら継承したシャルロットは、今まで一度も見せた事の無い笑顔を浮かべて――魔法『デジョン』を唱えてラムザ達全員を通常空間に帰還させて、全ての力を使い果たして消滅する一部始終をこれでもかと言わんばかりに見せつけられるのである。

 

 

 

 

 

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