「……ねぇ、クロウ兄ちゃん。あの『バランスブレイカー(お爺ちゃん)』、全ての敵を単騎で薙ぎ払ってるんやけど?」
ゲーム画面には、力ある声で『――大気満たす力震え、我が腕をして閃光とならん! 無双稲妻突き!』の一撃で、複数の断末魔が同時に奏でられ――ただの1ユニットが、もうアイツ1人で良いんじゃないか?という具合の無双劇を繰り広げていた。
「そりゃ『雷神シド』だしな!」
「うん、『全剣技』使える『剣聖』様だし、当然」
「……あかん、2人とも感覚麻痺しとる!?」
余りにも『日常茶飯事の光景(永久ヘイストのエクスカリバーで『全剣技』、相手は死ぬ)』に、何の疑問も抱かないクロウとシャルロットの2人にはやては全力でツッコむ。
……一応、『聖剣技』で同じ『無双稲妻突き』を使えるアグリアスとの火力比較は、むごいの一言に尽きる。
これが普通にチート極まる『全魔法使い』すら凌駕する公式チート、『剣聖』シドルファス・オルランドゥ、『雷神シド』の本領発揮である。長いゲーム史でも有数のバランスブレイカーの姿である。
「余りにも強すぎてナーフされてると思ったが、香水やリボンも装備出来るようになって完全無欠になっていた。何を言っているが解らないと思うが、オレにも解らねぇ!」
「『ルカヴィ』になった方が弱体化になるような、世の理の外にいる存在に理解は不要」
とりあえず、味方ユニットに対する評価じゃないのは、はやてにも理解出来た。
「……実際のオルランドゥ卿はどうだったんだ? 『デュライ白書』の筆者の身内補正で無双しているという穿った意見もあったが。……初期案はレベル上がる毎に衰えていく感じだったらしいが――」
「全盛期が過ぎても『世界』全てが追いつけなかった御仁。……オルランドゥ伯を擁しているのに北天騎士団に勝ち切れないゴルターナ公の無能さは筆舌に尽くし難い」
作中でもちょくちょく暗君であると評されていたが、同じ時代に生きたシャルロットに此処まで断言されるあたり、余程だろう。
「……しかし、終盤に来ると、どうもストーリーを進める手が遅くなるなぁ――」
「……クロウの気持ちは解る。……私も憂鬱だったもの」
「ファイナルファンタジータクティクスはFFの中で1番好きなんだが、最後だけはなぁ――」
(RTAじみた速度で)チャプター4に入ってから、寄り道がやけに多いなぁと感じていたが、どうやら意図的だったらしく、2人の顔から憂鬱具合が察せられる。
はやて自身も、シャルロット当人の口から『結末』は知らされてるので――3人の顔を順々に見たブラッド・レイは、1人だけ、訝しむように首を傾げる。
「……? クロウ、ファイナルファンタジータクティクスの最後、ラムザ達は『全員』生きてるぞ?」
「「は?」」
その声はクロウと――シャルロットのものであり、信じがたいものを見る目で、2人はブラッドの眼を覗き込む。
「いやいや、あれで生きてるとか無理があるだろ? オーラン達が最後に見かけたの、ただの幻影だろ?」
「いや、当人達らしいぞ? ツイッターで『聖石』で何やかんやして帰還したって説明あったし、何処かのクロスオーバーではクリア後のラムザ達が隣国で盛大にやらかしていたぞ?」
衝撃の新事実を前に、クロウの顔は宇宙猫状態となり――それよりも衝撃が強かったシャルロットはと言うと……。
「え? ――え? ぇ? ――っ、……ぇ? ――あ、あばばばばばっ!?」
「シャ、シャルロット!? ブラッド、どうしよう!? シャルロットが壊れた!?」
「え? シャル!? まさか、とうの本人が知らなんだ、だとぉ……!?」