今年もぼちぼち書いていきたいと思います。完全に不定期ですが。
FGOの第二部が完結して胸にぽっかり穴が空いたような気分ですが、喪失感も原動力に、と言った具合です。
――『FGO』編への前振り的な話ですが、もうちょっとだけ、この他にもあるんじゃよ!
「――これが今回、私が被る『新しい顔』です」
『教会』の地下礼拝堂、様々な写真が乱雑に画鋲打ちされている暗室にて、『歩く教会』をいつも通り着用しているシスターはとある資料を大十字紅朔に手渡す。
そのトップには三十代前半の外人女性の写真が掲載されており――表の経歴と裏の経歴がびっしり記載されていた。
「……一見して、とんでもないマイナーどころの『記者』だけどぉ、その実は『魔都』に存在する『転生者』の内情を探りに来た某国の工作員とか、中々攻めた経歴ねぇ?」
紅朔は怪訝な表情で資料を流し見しながら「元になった人の末路がどうなっているかは、敢えて聞くまでもないわよねぇ」と、秘密裏に処理された工作員に対して0,1秒だけ黙祷する。「ご愁傷さまぁ~♪」と。
「……素性が『魔術師』殿に最初からバレているのが大前提だけど、これは中々に危ないのでは?」
「だからこそ、隠れ蓑としては優秀かと。こんな見るからに怪しい経歴の諜報員の皮を被っているとは、流石の悠陽も想像出来ないでしょう」
あの大十字紅朔さえも苦言を呈したくなるほど、シスターが被ろうとする『新しい顔』は危険極まるのだが――あの『魔術師』が、この手の『害虫』に対する慈悲など持ち合わせている訳がなく、無意識下の内に人としての尊厳を全て剥奪した上で最悪な形で再利用するだろう。
「そりゃ『魔術師』殿も、貴女がこんな『大蛮行』を仕出かすとは夢にも思ってないでしょうねぇ? もう一度聞くけどぉ、自分で言うのも何だけどぉ……人選ミスじゃ?」
「いいえ、貴女の助けが必要です、大十字紅朔。今回の作戦は貴女がいなければ成立しないでしょう」
『一部』の例外を除いて冷血&塩対応なシスターが、実質恋敵の一人である大十字紅朔に頼る事そのものが極めて稀なイレギュラーであり、何かと思って興味津々に聞いてみれば――。
「……まぁ私も『魔術師』殿に意趣返ししたいし、貴女に協力するのも吝かでないけどぉ――理由だけは聞いておきたいわぁ」
「――理由、理由ですか……!」
突如感情を荒げるシスターに対して「あ、やっぱりこれ、駄目な時のシスターの反応では? セラちゃん大丈夫? 本当に、大丈夫? ねぇ?」と大十字紅朔は必死に聞くも、シスターの中の主人格(セラ・オルトリッジ)は沈黙をもって答えた。多分致命的なまでに駄目なパターンである。
「それでは問題の映像を共にご覧入れましょう、劇場版『Fate/Grand Order -終局特異点 冠位時間神殿ソロモン-』を!」
「……あー、えー、うん、ツッコミ役のクロウは本日不在なのだけどぉ?」
「おや、一緒に行かなくて良かったのですか? ユウヒ」
「私としては既定路線なんだがね。――かの魔術王に対し、私は『第四特異点』で完膚無きまでに敗北している。役割を終えた端役の敗者復活戦など最早必要無かろう」
魔術王の固有結界『冠位時間神殿』に出陣する『カルデアのマスター』を見送らず、後ろ髪を一本の三つ編みに『しておらず』、一纏めに縛っただけで垂らす神咲悠陽とそのサーヴァントである幼き英雄王『アーチャー』は人知れず、カルデアにおける最終防衛地点――否、『最前線(フロントライン)』に立つ。
「――元々、此処での『役割』など無かったのに、今更な話ですね?」
「中々痛い処を突いてくる。『人理継続保障機関フィニス・カルデア』において、私の『役割』は空白だ。何かを成し遂げる義務もなければ責務も無い。こうしてこの場にいるのも単なる余興に過ぎない。居ても居なくても良い『傍観者(第三者)』、それが此処での私の立ち位置だ」
あくまでも『部外者』という立ち位置だからこそ、カルデアの者達に対する干渉は最低限で、物見遊山気分で眺めるだけで終始しているとは本人談だ。
今のこの神咲悠陽にとって必要無いとは言え、『特異点F』から今日に至るまで不眠不休で活動し続けている事に、『アーチャー』の他に誰が気づこうか――。
「この人理修復の旅路を『傍観者』として『観測』するだけならば、カルデアの人達に接触して顔見せする必要すら無かった。――ユウヒ、敢えて実行した『意図的な無駄』を、何と呼称するかは御存知では?」
「さてはて、これが『愉悦』なのか、ただの『自己満足』なのかはさておき――『義理』はある。物凄く今更な話だがな」
神咲悠陽は感慨深く「『本命』は簡単に途切れたのに、こっちが逆に続いているとはね。世の中、解らないものだ」と呟く。
「――世界を救うのは『選ばれし者』の義務であり、何の才覚も無い凡人に背負わせて良い重責ではない。凡人は凡人らしく、陽だまりの日常の中で微睡んだまま死ぬのがお似合いだ」
「これまた誤解を招きそうな発言ですね? 素直になれない処は相変わらずですね、ユウヒ」
「己の心境をそのまま吐露出来るほど、もう若くは無いからね――」
くつくつと自嘲しながら、自身の魔術回路を最大限に隆起させる。
「――物語的にさ、事件を解決したのに帰る場所が無くなってました、では格好が付かないだろう?」
「わぁ、その『カルデアのマスター』とマシュ・キリエライトが絶対帰還する大前提が素敵ですね」
此方が『冠位時間神殿』を捕捉したのと同時に、魔神柱達も『カルデア』の座標を逆探知したのは明白であり――。
「私的にはこの機会は逃せられないな。舞台裏だとしても最後の見せ場だからね。最後ぐらいは、本気出すとも――」
『カルデアのマスター』に対する指導目的とは言え、突発的に生じた『特異点』一つ丸々悪用した『疑似聖杯戦争(限定イベント)』は神咲悠陽的には不完全燃焼だった。
『カルデアのマスター』を仕留めないように手加減するのは、精神的に重労働だったと内心愚痴る。
「……ああ、でも『アーチャー』、君はそのままで迎撃だ。本気を出されてはカルデアが保たない。絵的には大人状態に戻った方が盛り上がるのだがね?」
「死んでも嫌ですよ、僕は過労死する方じゃないので」
拗ねたような口調で言う『アーチャー』に対して「あれには大爆笑だ。流石は英雄王、無限に味がするガムか何かかね?」「ははは、殺しますよユウヒ」「可能ならやって欲しいぐらいだがな」と『カルデア』の召喚方式以外で成立した主従がじゃれ合う。
――カルデアの施設全体から鳴り響く警報と同時に、複数、否、計測不能という意味では無限に等しい数の魔神柱の侵入が確認され――。
「――『人理継続保障機関フィニス・カルデア』にようこそ、魔神柱諸君。招かれざる来客の相手は、外様の私が務めるとしよう。とりあえず駆け付け一杯、無限に死んでいけ」
『最前線』に立つ神咲悠陽は自身の神域の魔眼『バロール』を開眼し、英雄王が誇る『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』が所狭しと多重展開され、数多の宝具の原典が絶え間無く射出される――此処に、『最強のマスター』&『最強のサーヴァント』による魔神柱防衛戦が人知れずに開始したのだった。
「……ああ、FGO世界線の『魔術師』殿による、Fate/hollow ataraxiaの名シーン『ブロードブリッジ』再現戦ね? 当人としても、最高にノリノリで――」
「FGO第一部における悠陽の最大の見せ場ですが、問題は其処じゃありません」
FGO世界線の『魔術師』の渾身の活躍シーンを一言で切って捨てられ、さしもの紅朔も「ぇー?」と微妙な反応をする。
「――FGOの主人公である藤丸立香が、悠陽の直系の子孫である事に問題を提起します! 百歩譲って遠坂家の件については目を瞑るにしても、一体全体何やってるんですか悠陽ぃ!?」
「何って、ナニじゃない? 『魔術師』殿もヤる事はしっかりヤッてるのねぇ! 随分とお盛んで!」
「不埒で不貞で浮気者で最低の女誑しです! そんな子に育てた覚えはありませんッ!?」
「……今更手遅れだけど、シスター落ち着いて? 多分だけど、『魔術師』殿も育てられた覚えは無いだろうし、そもそも何目線なの、それ?」