変わらず、俺は速水奏にからかわれる。   作:花道

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タイトルは仮です。
良いのが思いついたら変更するかもしれないです。
物語は中学生からスタートです。


プロローグ 夏の始まり。
♯1 二人の関係。


 

 

 

 窓の外では女子達がグラウンドで汗を流していた。

 俺はその様子をなんとなく眺めていた。外の女子達が一年か三年かは分からないが、野球をしている事だけは分かった。窓は締め切っているので外の声は聞こえないが、女子達の様子を見る限りでは盛り上がっているようだ。

 その様子をしばらく眺める。

 教卓に視線を戻せば190センチ近い巨体の先生が少しかがんで黒板に数式を書き込んでいた。その数式をノートに書き写して、俺は再び窓の外に視線を向けた。

 パサーーーと俺の机に紙の切れ端が投げ込まれる。それはノートの紙だった。それをつまみ上げ、飛んできた方向を見る。ロングヘアーの女子はまっすぐ黒板を見つめているが、飛んできた方向からしてこいつ以外ありえない。

 俺は折られた紙切れを開いて中を確認する。中には『ジロジロ見過ぎ』とただ一言だけそう書き込まれていた。その紙切れには俺が書き込める分のスペースがなかったから、鞄から新しいルーズリーフを一枚取り出して、一行目に『何が?』と返信を書き、折りたたんで隣の女子へ投げる。

 「今日は15日だから……」と出席番号15番の男子が先生に指名される。彼は黒板前に移動する。窓の外に再び視線を向けると塁は全て埋まって満塁となっていた。

 再び投げ返されたルーズリーフを手に取って開く。二行目に『体育してる女子のことジロジロ見てるでしょ。変態』と書かれていた。まさかそんな事で変態扱いされるとは思わなかった。三行目に『見てたけど野球を観戦してただけだから。変態じゃないから』と書き込み、もう一度投げる。

 15番の男子はその間に問題を解き、自身の席に戻っていた。気づけば攻守交代していて満塁は結局どうなったのか分からなかった。

 また帰ってきたルーズリーフを確認するの、『どうだか。鼻の下伸びてるわよ?』

 

「伸びてねーよ!」

 

 思わず声に出してしまった為、クラスメイトが俺の方へ一斉に視線を向ける。

 くそ、やられた。

 

「どうした(たい)()?」

 

「いえ、なんでもないです。大丈夫です」

 

「そうか。授業中だ、静かにしろよ」

 

「はい」

 

「じゃあこの公式を……大河、お前やってみろ」

 

「え?」

 

 予想外の矛先に変な声を出してしまった。

 

「え? じゃない。この公式を解いてみろと言ったんだ」

 

 どうやら先生は見逃してくれそうにない。

 

「あー、えー」

 

 考えるが、全く分からない。

 

「……」

 

「すいません分かりません」

 

 俺がそう言うと先生はため息を吐いて頭に手を当てる。

 

「……お前な、ちゃんと授業訊いてたのか?」

 

「すいません」

 

「もういい、野球も良いが授業にもちゃんと集中しろ。じゃあ(はや)()お前解いてみろ」

 

「はい」

 

 俺が椅子に座るのと同時に隣の女子ーーー(はや)()(かなで)が立ち上がり、黒板まで一直線に進むと黒板にスラスラと数式を書き込んでいく。なんでお前は俺と遊んでたのに解けるんだよ。

 

「うん、うん。よし、正解だ。よく勉強してるな」

 

「ありがとうございます」

 

 そう言ってこっちに戻ってくる速水の口元は僅かに笑っていた。

 口元の笑みを隠す事なく、速水は自身の席へ戻る際に新しい紙切れを俺の机に落としていく。開いて確認すると『覗きなんてしてるから解けないのよ』と書かれていた。余計なお世話だ。隣を見ると顎に手を当てて笑みを浮かべながら俺の方を見ている速水と眼が合った。

 

「恥かいた?」

 

 笑顔で速水は言う。

 なんでお前はそんなに嬉しそうなんだよ。

 

「かいてない」

 

 その問いに俺は無駄な強がりを見せる。

 

「嘘言いなさいよ。恥ずかしかったって素直になっても良いのよ」

 

「別に恥ずかしくねーから!」

 

「大河……?」

 

 先生が額に青筋を浮かべながら、今にもブチ切れそうな表情で、俺の方をジロリと見る。その顔怖えよ。あとクラスメイトもその『またか』って目線止めろ。男子どもシャーペン投げようとすんな。投げ返すぞ。女子どもヒソヒソ話すな。お前らが考えてるような事は何もないから。

 

「すいません」

 

 隣には机に突っ伏し、笑いを我慢する速水。

 

「く、……くく! 駄目……死にそう」

 

 楽しそうで良いなお前は。

 

「駄目……! ふふ」

 

 いつまで笑ってんだよお前は。

 

「笑いすぎたから」

 

「……あー、死ぬかと思った」

 

 そう言って胸元を撫で下ろす速水。

 速水奏とこのような関係になったのはいつの頃だっただろうか。今ではそんな事も思い出せない。というよりは思い出したくない。あの出来事さえ無かったら今の関係にはなってなかっただろうな。今からでもやり直せるなら過去に戻って全力で自分を止めてやりたい。

 こいつと関わってからいつも遊ばれてるような気がするのは俺の気のせいじゃない筈だ。絶対、うん。

 

 

 ここで、チャイムが鳴り響く。

 

 

 先生はチョークなどを片付け、黒板を消し終わると俺に「昼休みに職員室に来い」とだけ告げて教室を出て言った。

 また俺だけかよ。なんでいつも速水は無事なんだよ。

 ぽん、と速水が俺の肩に手を置く。

 

「ご愁傷様」

 

 くそ。殴りてえ。めちゃくちゃいい笑顔しやがって。無駄に可愛いんだよいつも。

 

「半分くらいお前のせいだからな」

 

「あら、心外だわ。授業中に女子の体育を見て鼻の下伸ばしてたのは、一体どこの誰かしら」

 

「だから伸ばしてねーって」

 

「わたしから見たら伸びてたのよ」

 

「なにその理不尽」

 

「理不尽じゃないわよ。女子だからこそわかる事があるのよ」

 

「なんだよそれ」

 

「あなたには一生わからないかもね」

 

 そう言うと速水は手をひらひらと振りながらウィンクを残して教室から出て言った。

 俺はため息をこぼす。

 ルーズリーフをくしゃくしゃに丸めてゴミ箱に捨てて俺も教室を出ていく。

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

  変わらず俺は速水にからかわれる。

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

 二人が居ない教室にてーーー。

 

 

「今日も仲良いなあの二人」

「やっぱり付き合ってるのかな」

「いや、それはねえだろ」

「そうかな。側から見たらイチャイチャしてるカップルにしか見えないよあの二人?」

「ペットで遊んでるだけだろアレは」

「ペットかー。じゃあ俺が速水に告ってもチャンスあるかな」

「ねーんじゃねえか?」

「即答かよ」

「いや今のままで良いよ。速水可愛いし。このまま大河には犠牲? になってもらおう」

「そうだな。速水の笑顔見れたらそれでいいか」

 

 

 

 

 そんな会話がいつも行われている事を二人はまだ知らない。

 

 

 

 プロローグ 夏の始まり

 

 

 ♯1 二人の関係。

 

 

 




大河翔平のウワサ①
「最速135キロのストレートを投げれるらしい」
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