今回の話についてですが、前回の続きではありません。
では何かと言いますと、ほとんど活動報告のコピペになりますが。
最後に更新したのが第1層フロアボス《イルファング・ザ・コボルドロード》戦の直前で、その続きの戦闘シーンを書いていこう……と、数ヶ月前までそう思っていたのですが、僕がいろいろと忙しくなってしまい、更に"僕が本来書きたいと思っていた話"を書けるのが当分先の事になってしまう、という事もあってこの小説を書くやる気がドンドン失われていってしまったのです。
そしてとうとう吹っ切れて「このまま失踪するぐらいなら、もうストーリーとかすっ飛ばして、書きたい話だけ書いていくわ」という考えに至り、そう決めつけると途端に精神的に楽になってしまい、書いたのがこの話です。
ここからが重要なのですが、ストーリーを楽しみにして下さっている読者様(がいるのかどうかはともかく)には大変申し訳ありませんが、ストーリーはこれより当分、或いは一切更新される事は無いと思います。
……ぶっちゃけ言ってしまえば「とっととカッコイイ佐々木小次郎もどきの戦闘シーンが書きたかったんだよッ!!」ということです。
これからはこの小説は『なんとなく僕が書きたいと思っていた話を、文才が無いなりに、スローペースで、割と頻繁に別小説執筆という名の寄り道をしながら頑張って書いていく』という、そんな感じの動きになっていくと思います。
全力で控えめに言っても自分がクソ野郎であると、自分で思いますが、何とぞご理解の程よろしくお願いいたします。
長いので三行でまとめますと、
前回の続き執筆は絶望的、
僕の都合で執筆方針変更、
とりあえず僕はクソ。
です。
そんな感じですが、小説をどうぞ。
『コタロウ vs ヒースクリフ』前編
side キリト
無限にも思えた激闘の果てに、ついに第75層フロアボスモンスター……《ザ・スカルリーパー》がその巨体を四散させた後も、誰一人として歓声を上げる余裕のある者はいなかった。
皆、倒れるように黒曜石の床に座り込み、或いは
「終わった……の……?」
「ああ……終わった……」
アスナとのそんなやりとりの直後、不意に全身を重い疲労感が襲い、堪らず床に膝をつき、アスナと背中合わせに座り込む。
もう、しばらくは動く事は出来そうになかった。
「………………ふぅ…………」
コタロウは俺の右側の少し離れた場所で、彼自身の身の丈程もあるという脅威の長さを持つ太刀__《物干し竿》を鞘に収めた後、それを抱えながら座り込んだ。
それ程耐久値の高くない武器にも関わらず、周囲のプレイヤーを巻き込まない為に、フロアボスの攻撃を逸らす事無く度々受け止めていたので、耐久値もう限界に近いだろう。
『恋人と、仲間たちと共に生き残れた』と、そう思っても、手放しで喜べる状況ではない。
あまりにも犠牲者が多過ぎた。
開始直後に三人が散った後も、確実なペースで禍々しい
「何人、やられた……?」
俺の左の方でぐったりと座り込んでいたクラインが、掠れた声で聞いてきた。
その隣で仰向けに寝転がって手足を投げ出していたエギルも、顔だけをこちらに向けてくる。
俺は右手を振ってマップを呼び出し、表示された緑の光点……ボス戦に参加していたプレイヤーの数を数える。
出発時の人数から犠牲者の数を逆算して___
「___十四人、死んだ」
……自分で数えておきながら、信じる事が出来ない。
皆、トップレベルの、歴戦のプレイヤーだった筈だ。
たとえ離脱や、結晶アイテム無効化空間による瞬間回復不可の状況とはいえ、生き残る事を優先した戦い方をしていれば、おいそれと死ぬ様な事は無い。
……そう、思っていたのに……。
「……嘘だろ……」
エギルの声にも普段の張りは全くなかった。
これで漸く四分の三……まだこの上に二十五層もあるのだ。
数千人ものプレイヤーがいる、と言っても、最前線で真剣にクリアを目指しているのは数百人、といったところだろう。
一層ごとにこれだけの犠牲を出していってしまえば、最後にラスボスと対面できるのはたった一人……などという様な事態にもなりかねない。
恐らくそうなった場合、残るのは間違いなく"あの男"だろう。
俺は視線を部屋の奥に向ける。
そこには、他の者達が全員床に伏す中、背筋を伸ばし立つ紅衣の男……ヒースクリフがいた。
無論、彼も無傷ではなかった。
ヒースクリフに視線を合わせてカーソルを表示させると、HPバーが五割近くまで減少しているのが見て取れた。
俺とアスナが二人がかりでどうにか防ぎ続けたあの巨大な骨鎌を、一人で捌ききっていたのだ。
数値的なダメージに留まらず、疲労困憊して倒れても不思議ではない……筈なのだが、悠揚迫らぬその立ち姿には、精神的な消耗など皆無と思わせるものがあった。
まったく、信じられないタフさだ。
俺は疲労で座り込みながらぼんやりとヒースクリフの横顔を見つめ続けた。
その男の表情はあくまで穏やかだ。
無言で、床にうずくまる《血盟騎士団》のメンバーや他のプレイヤー達を見下ろしている。
暖かい、
言わば___
言わば、ゲーム画面の向こう側で動くキャラクター達を見るような。
その刹那、俺の全身を恐ろしい程の戦慄が貫いた。
意識が一気に覚醒する。
指先から脳の中心までが急速に冷えていく。
俺の中に生まれたある予感、微かな発想の種がみるみる膨らみ、疑念と言う名の芽を伸ばしていく。
ヒースクリフのあの視線と穏やかさ。
アレは傷付いた仲間を労わる表情では無い。
俺達と同じ場所立っているのでは無い。
アレは、遥かな高みから慈悲を垂れる……神の表情だ。
かつて彼とデュエルをした時の、恐るべき超反応を思い出す。
あれは人間の……否、
彼の日頃の態度……最強ギルドのリーダーでありながら、自ら命令を発すること無く、団員たちに万事を委ね、ただ見守り続けていた。
あれは自身の配下を信頼していたからでは無く……一般のプレイヤーたちには知り得ない事を知るが故の自制だったのか?
単なるプログラムには、あの様な慈悲に溢れた表情はできないのだから。
NPCでも無く、一般のプレイヤーでも無いのであれば、残る可能性は唯一つ。
だが、それをどうすれば確認できるのか。
方法は無いのか___
___いや、ある。
今この瞬間、この状況でのみ可能な方法が、たった一つだけ。
ヒースクリフのHPバーを見つめる。
過酷な戦いを経て大きく減少している……が、半分にまでは達していない。
辛うじて、本当にギリギリの所でグリーン表示に留まっている。
未だ
俺とのデュエルの時、そのHPが半分を割り込もうとしたその寸前、ヒースクリフの表情が険しさを表す様に動いたのを俺は見た。
あれはHPがイエロー表示になる事を恐れたのではない。
そうでは無く、恐らくは……。
俺は頭の中で情報を整理した後立ち上がり、一瞬だけ右側に……正確には、今現在アスナと同程度に信頼している親友に視線を向けてから、ゆっくりと右手の剣……《エリュシデータ》を握り直した。
極小さな動きで、徐々に右足を引いていき、僅かに腰を下げ、低空ダッシュの準備姿勢を取る。
ヒースクリフは俺の動きに気づいていない。
人を見下ろす神の如き視線は、打ちひしがれるギルド団員にのみ向けられている。
……仮に俺の予想が全くの的外れであったならば、俺は犯罪者プレイヤーへと転落し、容赦無い制裁を受ける事になるだろう。
(その時は……ゴメンな……)
俺は俺のすぐ後ろに腰を落としているアスナをちらりと見やった。
同時にアスナも顔を上げ、視線が交錯する。
「キリト君……?」
アスナが困惑している様な表情浮かべながら、微かにそう声を発した。
その直後、俺の右足は地面を蹴った。
俺はヒースクリフとの距離、約十メートルを床ギリギリの高さを保ちながら全速力で、一瞬にして駆け抜け、右手の剣を捻りながら突き上げた。
片手剣の基本突進ソードスキル《レイジスパイク》だ。
威力の弱い技故、これが命中してもヒースクリフを殺してしまうことは無い。
しかし、俺の予想通りなら、これが命中すれば___。
視界の端からペールブルーの閃光を引きながら迫る
(……今の不意打ちに対応出来るなんてな……流石、と言うべきか……)
剣と大盾が衝突した事で生まれた火花と、その向こうに見えるヒースクリフをぼんやりと眺めながら、俺は驚きを噛み締めていた。
……しかし、俺の攻撃が防がれる事は予想出来ていた事だ。
そう簡単にあの防御を突破する事は不可能だろう、と。
(……だから、___)
もしも、俺が失敗した時の為に。
心なしか、その表情が勝ち誇っているかの様に見えるヒースクリフには悪いが___
(___保険を用意しておいて良かった)
___犯罪者プレイヤーに堕ちる可能性があるにも関わらず、躊躇い無く走ってくれる親友がいてくれて、良かった。
「コタロウ___!!」
「___心得た」
俺が放った全速力での《レイジスパイク》……
そして…………俺の予想は的中した。
コタロウの刀がヒースクリフの斬り裂く……その寸前で、刀は目に見えない障壁に激突した。
ガキィィィィィン……という
そしてコタロウとヒースクリフの中間に紫色の……システムカラーのメッセージが表示された。
【Immortal Object】。
死に怯える有限の存在である俺たちプレイヤーにはあり得ない属性。
俺とのデュエルの時、ヒースクリフが恐れたのは、まさにこの神的加護が暴露されてしまう事だったのだ。
中途半端ですが今回はここまで。
スローペースで書いていきますので、読者様方は思う存分この小説の存在を忘れて、日々を過ごして下さいませ。