剣の世界を佐々木小次郎(偽)が行く   作:折れたサンティの槍

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オリ主・オリキャラ(オリ主の弟)の名前は割と適当。
オリ主の見た目は髪色と瞳色が黒い以外は、ほぼFateの佐々木小次郎。
そんな感じです。

11/24 少し修正、ちょっとだけ変えてみました。


原作前・笹木家にて

side なし

 

その少年の名前は笹木小太郎、現在15歳である。生まれた時に普通の赤子よりも小さかったことが名前の理由だ。

 

彼の現在までを大雑把に振り返ろう。

 

生まれ育った場所は、畑が遠くまで広く続くような田舎であった。

赤子から始まり、4歳の時に自我が芽生え、前世を思い出した。幸い、それが全くの他人のものではなく、自分の昔の記憶、経験であると感じられたため、混乱したりパニックに陥ることはなかった。

前世の記憶がある事は、10歳の頃に今の家族に話した。自分に前世かの記憶があること、どんな前世であったか、どんな人間であったかを、全てではないが、今の家族である父・母・祖父に。

あんな前世を持っていれば、普通の子供の様に振る舞うことはできるはずもなく、それ故に、周囲の人間に不気味な子供だと思われていたことがあったからである。

もし拒絶されたとしてもそれを受け入れて、どうにかして1人ででも生きていこう、などと思いながら。

 

自分たちの息子に、知らない誰かの記憶が宿っていると知っても拒絶されることは無く、それを受け入れた。お前も笹木家の一員だと笑いながら。

 

その時、小太郎は思った。

ああ、自分は何と幸せ者なのだろうかと、この家族に生まれて良かったと、笑い合う家族に抱かれながら涙を流したのは、今でも小太郎にとって良い思い出だ。

 

次の日からは、弟に「勉強教えて!」とねだられる様になったり、昔から剣を振るっていた祖父と、弟が剣道で通っている道場で木刀の打ち合いをする様になったりはしたが、家族との仲は悪くなることはなかった。

そうして、父と母の畑仕事を手伝ったり、昔の記憶をどうにか振り絞りながら勉強したり、身体を鍛えながら剣を振るって過ごした5年後、

 

 

祖父の命は、寿命によって蝕まれ、あとわずかとなっていた。

 

 

 

 

 

side 弟(健次郎)

 

じいちゃんが布団で寝ながら、父さんの顔を、母さんの顔を、兄さんの顔を、そして僕の顔を順に見回しながら笑っていた。

父さんは、泣いている母さんを抱きしめてながら、目に涙を溜めている。

兄さんは、そんなじいちゃんの顔を見て、涙を流しながら、穏やかに笑っていた。

じいちゃんを慕っていた、沢山の人たちが顔を覆ったり、下を向いたりしながら泣いていた。

僕の視界は、そんな光景がかろうじて見える、というぐらいにボヤけて見えていた。

ここにいる全員が、もう分かってしまっていた。

もうじいちゃんの命は、数日ももたないということに。

 

「お父さん、俺たちに何かしてほしいことはないか?」

 

父さんが、じいちゃんにそう言った。

残りわずかな命のじいちゃんのために、出来るかぎりじいちゃんの望みを叶えてあげたいと、ここにいる全ての人間がそう思っていた。

じいちゃんが、口を開く。

 

「……小太郎」

「なんだい、じいさん」

「私に、見せてほしい。お前がかつて話した、前世の最期に振るうことのできた、人の域を超えた、神域の技を

…………出来るか?」

 

驚いた様な顔をした兄さんは、また穏やかな笑みを浮かべ、

 

「……最期までそんなことを言うなんて、じいさんはじいさんなんだな……ああ、もちろん、出来るとも」

 

ニヤリと笑いながら立ち上がり、部屋を出た。

 

 

 

 

 

「いいぞ、じいさん」

 

数分後、兄さんはそう言って襖を開け放ち、そのまま広い庭に降りていく。剣道着に着替えていたその背中には、身長165センチの兄さんの頭の天辺から足首までもある、(つば)のない太刀が背負われていた。

 

「あの刀は……」

 

そう、あれは確か僕が10歳ぐらいの時、じいちゃんの友人さんが「なんか作ってみたくなったから」というそれだけの理由で本当に作ってウチ持ってきたものだ。

その刀について調べてみたらかなり驚いて、つい「とんでもねーもん作りやがったなあのオッサン」と呟いてしまったのを覚えている。

じいちゃんが「いや渡されても使わねーから」と言って物置小屋の奥に放り込み、友人さんは四つん這いになって落ち込んでいたが。

 

しゃりん___と、静かな音と共に、兄さんの手によって、その刀は抜かれた。

 

「あれは、俺が作った……」

その友人さんが、呆然とした顔で言う。

 

この太刀は、ある刀の贋作だ。

その刀の正式名称は、備前長船長光(びぜんおさふねながみつ)

 

 

 

 

そして___

 

 

 

 

 

 

 

 

 

___物干し竿、と呼ばれている。

 

 

その物干し竿を、兄さんは慣れているかの様に扱い、振るっている……いや、実際に慣れているのだろう。

兄さんがで剣、というか木刀を振り始めたのは10歳の頃だったけど、その時から既に大人用の長いものを使っていた。

 

「……どちらも贋作故、少しは異なるが……この刀も、久方ぶりに振るうなぁ……」

 

兄さんはずっと、ずっと昔から物干し竿を振るっていたんだな。

何度か試しに振るっていた兄さんは、僕たちに背中を向けたまま、言った。

 

「いくよ……じいさん」

 

その直後、

 

「……!?駄目よお義父さん!立ち上がったら!」

 

そんな、母さんの叫び声に釣られて、そちらに振り返ると、

そこには、掛け布団が肩に掛かったまま立ち上がっているじいちゃんがいた。

思わず声を上げようとして、

 

「……邪魔を、しないでくれ」

 

凄まじい威圧を放っていた。

それは、燃え尽きようとしている蝋燭の火が、最期に一瞬大きくなるかのような、そんな風に見えた。

ゆっくり、ゆっくりと歩きだしたじいちゃんは、やがて縁側にたどり着くと、そこに腰掛け、兄さんをひたすらに凝視している。

 

絶対に見逃すものか、と。

首だけ振り返っていた兄さんは「ふっ」と笑い、また正面を向いた。

 

 

石火春雷(せっかしゅんらい)……一刀にて、証を示す」

 

 

その声音には、

 

前世の記憶なんてものを持って生まれてしまった自分を、家族だと言ってくれた恩人のために、

 

今から見せるこの技に、前世と今世、数十年という長い年月を歩んできた、今の自分が出せる全てを込めるかのような、

 

そんな、覚悟が感じられた。

 

兄さんが動きだす。

右足を後ろに引き、物干し竿を顔の横まで持ち上げ、刃を空に向け、右手と左手は持ち替えず、右手は空に向けられた刃側を握り、左手は添えるように持ち、そうして……

 

 

 

 

 

 

構えた(・・・)

 

 

 

……構えた(・・・)

 

その違和感に、ずっと兄さんの剣を見てきた僕とじいちゃんだけが気づいた。

僕も、じいちゃんも、息を呑む。

兄さんがじいちゃんと、割と本気で打ち合う時も、1人で木刀を振るう時も、兄さんは構えることは無い。そんな無形を旨とした兄さんが構えを取った(・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

そして、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「秘剣______」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛する家族(じいちゃん)に見せる為だけに、全てを込めた神技は、

 

 

 

放たれた___。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「______燕返し」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明るく輝く満月が、そこにいた全ての人間に、神技を魅せた。

じいちゃんは、

 

 

 

 

 

穏やかに、満足そうに笑いながら、目を閉じて、眠って、

 

目覚めることは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side 無し

 

 

それから十数年後。

 

遠い遠い、どこかの世界で。

 

記憶に無い、しかし確かに魂の内に刻まれた『誰か』に追いつこうと。

 

刀を振るう青年がいたとか。

 

 




熱が入ってすんごいのを書いてしまった。
いつの日か黒歴史になるかも知れないが、まぁ今は満足してるからいいか。

オリ主弟の健次郎は、自分の中では髪色と瞳色が黒い衛宮士郎ですが、好きな様に想像してみてください。

オリ主の小太郎は15歳、弟の健次郎は14歳。
次は、1年ぐらい飛んで、オリ主がリンクスタートします。
そんな感じ。

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