サイキョーお兄さん   作:鈴木遥

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太く短く生きてる男が皆から好かれるとは限らない

・前川航平、西海健人、東山タケルの三名は、山手線の

旧座駅を降り、あるバーに向かっていた。

 

「航平、この町で合ってるんだろうな。」

 

「間違いないよタケル。 情報屋の中に週刊誌の編集者がいる。あの人は信用できるからね。」

 

「ふぁ〜、何でもいいから早く宿取ろーぜ?昨日から電車旅の連続でもうヘトヘトだよ……。」

 

彼らは、若さゆえの、しかし確かな野望を持ってこの町にやって来たのだ。冬場とは思えない眩しくも優しい日差しに照らされ、ある探偵が足しげく通うバーに向かっていた。

 

 

 

 

青葉良人(あおばゆきひと)は、旧座の一角にある小さな探偵事務所で、珍しく大勢の客の対応に追われていた。

回転イスに座り、 黄土色のコートに白いソフト帽、なぜだか真っ白い髪で、ペンを回しながら応対するその姿は、 どことなく洋画ミステリーに出てくる

 

「え〜、皆さん落ち着いて……つまり、その団体にご家族を家に返す様に交渉したんですね?」

 

「 ところが責任者の方がでてこないばかりか、受付の人間すら知らぬ存ぜぬの一点張り……しまいには信教の自由と主張しだして……。」

 

近くのマンションに住む主婦が口をこぼした。

 

『世界一族』。 ここ数年突然に勢力を伸ばし始めている 新興宗教団体である。 旧座に本拠地を構え、環境へのダメージとなる活動を徹底的に問題視し、 人はみんな地球と共にあるべきと説いている。

が、その主張はともかくとして、その少々過激な活動方針はしばしば問題視されてきた。今日ここに来た依頼人たちは、セミナーや合宿に参加した子供達が家に戻らなくなったと言う事だった。

 

弁護士や警察が取り合う事はなく、もはや泣き寝入り寸前だった。

 

「お願いします青葉さん!こども達を…… どうか取り戻してくださいお金ならいくらでも……。」

 

「 ベストを尽くしましょう。報酬についてはまぁ、ウチの助手と……オイ、お客様!」

 

「あ、は〜い、ただいま……。」

 

奥から、赤いベレー帽にメガネの長髪、街を歩けば間違い無くナンパされるであろう女性探偵が現れた。

 

「助手の長巫優奈(ながみゆうな)です。まずは、依頼について具体的な定義と言いますか、達成条件みたいなモノを……。」

 

それから数10分ほどの事務的なやり取りを済ませ、依頼者たちは帰って行った。

 

「所長……今回の件、かなりハードですよね……。」

 

「バカヤロー長巫…… ハードなクエストほど報酬はでかいモンさ。それに、恐らくこの件にはカドマキが絡んでる。オレが穴蔵に引っ込む訳にゃいかねーな。」

 

長巫は不安を覚えた。良人が、 今まで通常の探偵の 業務を逸した功績を立てているのを、彼女はずっとそばで見てきたが、与党有力議員門真木耕助(かどまきこうすけ)が絡む 事件は、やたらと必死に解決しようとしてきた。

 

自堕落 ながらも穏やかな雰囲気を持つ、普段の彼とは違う、まるで修羅のような男を垣間見ていたのだ。

 

彼の過去にいったい何があったのか、長巫はまだ知り得ていない。

だが、少なくとも彼女は願っていた。

彼が、自分の知っているだらしなくも穏やかで、どこか人を惹きつける素質を持った彼のままでいてくれることを。

 

「よし、行くか……!」

 

「はい!」

 

 

 

ふたりは事務所から歩いて2分、旧座最強のオカマ店主が出迎える不思議なバーにやってきた。

 

 

「いらっしゃい……アンタか、溜まったツケ払いに来たのかィ?」

 

「いや、ちとヤボ用がな……。」

 

「所長……行くか!って、お茶目さんのバーじゃないですか!」

 

「ファミレスに行くと誰が言ったよ。」

 

「仕事に行くと思ったんですよ仕事に!」

 

「バカヤロー仕事の一環だ、 ここが家の情報屋の溜まり場だって忘れたわけじゃあるめーな?」

 

珍しくマジな上司の目を見て、おとなしく席に座った。

 

「そいじゃあ茶目、 ギガソース焼きそば二つ頼むわ。」

 

「 がっつり昼食とる気じゃないですか! てか私あれを一人で一皿は無理ですよ!? 絶対一皿を二人でシェアした方が……。」

 

「情けねー事言ってんじゃねぇよ。体力つかねーぞ、食わねーと」

 

二人が注文を渋っていたとき、店の来客ベルが鳴った。

 

「失礼する。」

 

ハタチ前後の青年が3人 、物々しげな雰囲気で良人たちを見つめていた。

一人は首からデジタルカメラを下げ、脇差をさし、

一人は赤い革ジャンパーにジージャンベルトに変な巻物のようなものを挟んでいる。

もう一人はスーツ姿で、こちらは青いレイピアのようなものを腰に差している。

 

「いらっしゃい、何にする?」

 

丁寧にお冷を出すお茶目を無視し、良人の席へ歩み寄った。

 

青葉良人(あおばゆきひと)殿とお見受けする。失礼ながら、その腰の物を抜いて頂きたい。」

 

「 店ン中で刀なんか抜けるか……第一、人に物言う時はまず最初に名乗るのが礼儀だろう?」

 

男は良人の背に、腰の青いレイピアを向けた。

 

「 いつの時代も、剣客とは剣で語り合う者たちのことを言うのでしょう?ならば、あなたにとっても俺にとっても、互いの名などどうでもいいはずだ。違いますか?」

 

静かに、音など 微塵も立てることなく、良人の首に向かって刃をまっすぐ振り落とした。 瞬間タケルは自分の行いを悔いた。

 

刃は当たる所か かすってもいなかった。

 

挙句、いつのまにか背後に立った良人は、タケルの首筋に手刀を構えていた。

 

「な……!?」

 

「あんちゃん、ドラゴンボール読んだことあるかい?日本人はスーパーサイヤ人みたいなことできないと思われてるらしいな。そりゃできなくて当然さ。だが……。」

 

「タケル!そのままガードしてな!青葉良人、お縄に入れや!」

 

健人は どこからが黒のチャクラムを取り出し良人に向かって思いっきり投げつけた。それは、右ほほに少しの切り傷こそ残したが、良人はそれを顎で捉え、即座に噛み砕いた。

 

「こりゃあもうお縄のレベルじゃねーだろ?なァ……あんちゃん。」

 

「う……うそ〜ん。」

 

健人は渾身の十八番が無効化され、ショックで気絶した

 

タケルは 横一文字斬りをかまそうとするが、刃が届く前に手刀を当てられ、あえなく気絶。

残った前川は、 震える全身を奮い立たせて、 剣をめちゃくちゃに降り回す。 無論、彼に一傷も与えられるはずもなく、 しまいには 無謀にもタコ殴りで攻め始めた。

 

「ぼぼぼ、僕だって、強くなるんだ〜!」

 

「格上としてなお果敢に挑むかその心意気や良し。でも

なぁ〜……店の中で 戦うには面倒くせータイプだな。」

 

何を思ったのか良人は、彼に思いっきり背負い投げを食らわせた。

真正面から攻め込んだ彼はなす術なく、 頭からビールケースに突っ込んだ。

 

「ちょっとお兄さん、大丈夫かい!?」

 

「所長! ダメじゃないですか 手加減しなきゃ!」

 

「そんなこの子らに恥かかすような真似できるか……茶目、 万札置いとくからこの子らに好きなもん飲ませてやれ。つけはまた今度な。行くぞ長巫。」

 

「すみませんお茶目さん……。」

 

「そんな事は良いんだよ、 バカな上司を持って大変だろうけど、あいつがこれ以上馬鹿やらかさないように見張っておいておくれ。 この子らの介抱は私がやっておくから……。」

 

二人が店を出た後 おちゃめは大変なことを思い出した。 良人に大事なことを言うの忘れていたのだ。

彼のたった一人の妹に 数ヶ月後の結婚式の仲人を頼まれたことを……。

 

「まぁ、 どうせ明日も来るんだろうし、その時でいいかねェ……それにしても、どうしようかこの子たち。」

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