天動瑠璃は真の勇者である(完結)   作:ファルメール

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第15話 勇者が守ってきたもの

 既に端末のアプリを起動させ、勇者の装束に身を包んだ瑠璃は迷いの無い強い足取りで樹海を進んでいく。

 

 歩いて行く先には、変身を済ませている須美と園子が居た。

 

 二人の勇者装束は、以前と違っていた。勇者システムに満開と精霊が実装されるに伴って、基本装備にも更新が行われたのだ。

 

「天さーん!!」

 

 手を振って、園子が走り寄ってくる。

 

 ぱぁっと園子の頭の上が光って、精霊・烏天狗が姿を見せた。烏天狗はふわりと宙を進むと、ペコリと瑠璃に頭を下げた。

 

「セバスチャン、勝手に出てきちゃ駄目だよ!!」

 

「……セバスチャン?」

 

 さしもの瑠璃も、首を傾げた。

 

「烏=セバスチャン=天狗!! ミドルネーム付けてみたんです」

 

「ふぅ、ん……」

 

 と、瑠璃の左右の空間が光って、精霊二体が姿を見せた。

 

「わぁ……」

 

「先々代には、二匹居るんですね」

 

「えぇ、浄玻璃と巴御前よ」

 

「あの、天さん。これを」

 

「?」

 

 園子の差し出した物を、瑠璃は受け取る。

 

 ストラップに使えそうな、小さなネコのぬいぐるみだった。

 

「これは……」

 

「天さんと、ミノさんの分だよ。ミノさんのは、天さんが預かってて」

 

 見れば、須美と園子の端末にも同じぬいぐるみが付けられていた。

 

「……ありがとう。でも……話はここまでのようね……」

 

 瑠璃の視線は、既に彼方を見据えていた。

 

「「!!」」

 

 二人が視線を追うと、その先には3体のバーテックスが展開していた。

 

 宙を動くイカの出来損ないのようなもの。

 

 深海魚の様に歪なフォルムで樹海を泳ぐように進んでくるもの。

 

 そして太陽を模したエムブレムのような形状をした物。

 

「3体……銀の時と同じ……!!」

 

「……っ!!」

 

 思わず、園子の槍を握り締める力が強くなる。だが、瑠璃の手がそっとそこに添えられた。

 

「大丈夫。私達がついている。ねぇ、浄玻璃、巴?」

 

 二体の精霊に、それぞれ語り掛けるように瑠璃が言う。精霊達は、それぞれ頷くような動作を見せた。

 

「では……今回は私が前衛を務めるわ。園子は遊撃、須美は援護を」

 

「了解!!」

 

「任せてください!!」

 

 瑠璃は、両手に剣を実体化させる。園子と須美はそれぞれ槍と狙撃銃を構えた。

 

「……先々代、軍勢は使われないのですか?」

 

「必要無いわ。今回はね。さぁ……後に続け!!」

 

 風のように、瑠璃が駆け出した。二体の精霊も、それに続く。

 

「わわっ、早いよ~天さん!!」

 

 園子が慌てて後を追って、須美は指示通りその場に膝立てで狙撃姿勢を取る。

 

『……? 気のせいかしら……? 何か、おかしい? いつもの先々代らしくない……? 勝負を焦っているような……?』

 

 いつもの瑠璃なら、軍勢を召喚して自分は本陣にて全体の指揮を行いそうな所だが……

 

 そんな考えがよぎったが、しかし今は戦闘中だと頭を切り換えてスコープを覗き込んだ。

 

 突進してくる勇者の姿が、バーテックスからも見えたようだ。あからさまに迎撃態勢を取った。

 

 泳いでくるバーテックスの頭を、須美の狙撃銃『白銀』から発射された光弾が押さえた。

 

 そこを空間に影を残す程の速度で接近した瑠璃が、両手の太刀で数カ所の斬撃を与える。

 

「でやあっ!!」

 

 そうして怯んだ所を園子が槍を伸ばして、突きを食らわせた。

 

 だがバーテックスの方もやられっ放しではなかった。空中の個体が、光線を撃ち出してくる。

 

 しかしこの攻撃は、浄玻璃が発生させたバリアによって阻まれ、瑠璃に届かなかった。背中のルドベキアの紋章に、一つ光が点る。

 

 続いて、この隙に持ち直した魚型のバーテックスが、全身から黒煙を放出。勇者3名の視界が塞がれる。

 

「何、これ……? 何も見えない……!!」」

 

「ガス……まさか……」

 

「これだけでも致死性の物ね……」

 

 巴御前がバリアを張って攻撃を防いでいる事から、素通しなら命に関わる攻撃なのだと瑠璃は見て取る。

 

 バーテックスの攻撃にはまだ続きがあった。空中に居る個体が砲撃を放ち、その熱エネルギーがガスに引火。爆炎が上がって一帯が火炎地獄と化した。

 

 しかし、一切の生物の生存を許さないようなそんな中でも、勇者3名は健在だった。

 

 精霊達の力が、守っていたからだ。

 

「ありがとう、セバスチャン!!」

 

「……よし」

 

 瑠璃は頷いた。

 

 この防御で、ルドベキアの紋章の花びら全てに光が宿った。満開の準備は、整った。

 

 須美と園子は、まだ少し満開ゲージが足りていない。これは今回は瑠璃が前衛を担ったので、彼女が最もバーテックスの攻撃に晒された結果だった。必然、二人が攻撃・防御を行ってエネルギーをチャージする機会は少なくなる。

 

「満開」

 

 瑠璃の全身が光に包まれ、そして樹海全体を覆うような超大型城塞神殿複合構造体が姿を現す。

 

 基本的に、満開とはそれぞれの勇者の固有武器がよりその特徴を強化したものとして顕現する。軍勢を操る瑠璃の満開は、その軍勢の活動拠点である城塞基地という訳だ。

 

「おぉ~!! おっきなお城が出た~!!」

 

「これが、先々代の満開……!!」

 

 園子は目を丸くして驚き、須美は畏敬の念を見せる。二人は今、満開の発動に巻き込まれる形で城塞神殿の外周部にある城壁に立っている。

 

 空中のバーテックスが砲撃してくるが、光線は城塞神殿周囲に展開されていた障壁に阻まれて消滅霧散する。

 

 そして、お返しとばかりに城塞の対空砲が火を噴いた。

 

 十数の光条が放たれて、バーテックスの全体をバラバラに切り刻んだ。

 

 樹海を泳いでくるバーテックスは、城壁に体当たりを仕掛けようとするがこれは戦車とアリの対決だった。城塞神殿はその巨体それ自体を武器にバーテックスを樹海から押し出そうとするかのように前進し、石臼が豆に対してそうするかのように、バーテックスを挽き潰してしまった。

 

「凄いよ、天さん……!!」

 

「後、一体……!!」

 

 最後の一体は、その完全にシンメトリーの体が左右に分かれると、そこを門として無数の分霊が姿を現した。

 

「わわわっ……なんか、一杯来たぁ……!!」

 

「数が多すぎる……!!」

 

 須美が、迎撃すべく白銀を構える。

 

<問題無いわ>

 

 瑠璃の声が響いた。

 

 先程、空中のバーテックスを切り刻んだ対空砲が再びその恐るべき火力を発揮する。

 

 幾本もの光の柱が振り回され、百に達しようかという分霊を2秒で総滅させた。

 

 バーテックスは再び分霊を繰り出してくるが、しかし今度は周囲に展開しきる前に全て撃墜された。

 

「天さん、今度はおっきいのが来る!!」

 

 バーテックスは分霊では埒が開かないと見たらしい。次は全身から噴き出した炎を一点に押し固め、太陽と見まごうばかりの灼熱の炎弾として放ってきた。直撃はせずともその熱の余波だけで、樹海を壊しながら飛んでくる。

 

「大橋が……!!」

 

<……迎撃するわ>

 

 神殿上空に浮遊していた巨大な鏡の内8つまでが等間隔で円形に並び、それぞれが鏡面から発した熱光線を反射・増幅し合って一点へと収束させ、巨大な光の滝として解き放つ。

 

 炎弾と光の滝。

 

 二つの超エネルギーの激突は、一瞬で決着が付いた。

 

 要塞主砲の一撃は、バーテックスの攻撃を呑み込んでそのまま勢いを少しも減じずにバーテックスに襲い掛かって、巨体を光の中に包み込んでいく。十数秒後、光が治まった時にはバーテックスの姿はもう、その影さえも残っていなかった。桁外れの光と熱の前に、ひとたまりもなく消滅したのだ。

 

 侵攻してきた3体のバーテックスは、これで全て撃退。瑠璃が、圧倒的な実力で以て殲滅した。

 

「やったあっ!!」

 

「私達の出る幕はありませんでしたね……流石です、先々代……」

 

 槍を振り上げて勝ち鬨を上げる園子と、脱帽、という表情で銃を下ろす須美。

 

 その時、城塞神殿が光の砂となって崩れ始めた。エネルギーを消費して瑠璃の満開の、効果時間が経過したのだ。

 

 今までそこに巨大な構造物があったとは信じられないほどに、そこにはもう何も無くなって……そして、ふわりと瑠璃が樹海に降り立った。

 

「天さーん!!」

 

「先々代……お見事でし……えっ!?」

 

 先に、違和感に気付いたのは近くに居た須美だった。

 

「あ、あれっ!?」

 

 続いて、駆けてきた園子も顔を引き攣らせた。

 

「て、天さん……その……髪……」

 

「ん? あぁ……今度は、色素を持って行かれたか……」

 

 白髪交じりだった瑠璃の黒髪は、今は真っ白に変わっていた。良く見れば肌の色も病的に白くなっているし、瞳も紅く染まっていた。

 

 瑠璃はいつも通りの無表情で、まるで他人事のように振る舞っている。

 

「せ、先々代……その体は……?」

 

「……追々、説明するわ……それより、二人ともついてきなさい。樹海が解ける前に、見せておきたいものがあるの」

 

 壊れてしまった大橋へと、歩き始める瑠璃。

 

「「……」」

 

 須美と園子は顔を見合わせるが、しかし瑠璃の体の変化について聞きたいのもそうだし、彼女にも何らかの意図があるのだろうと結論して、取り敢えずは後を付いて行く。

 

 瑠璃は大橋の残骸を渡って、壁の方へと進んでいく。

 

 その道すがらで、説明が行われた。

 

 自分の体に起きた異常は、満開の後に起こる散華という現象で、体機能の一部を神樹様に捧げた為だと。

 

 精霊の存在は、勇者を生かしてお役目に縛り付ける為のものだという事も。

 

 本来なら勇者に教える事は禁止だが、実際に目の当たりにされてしまっているのだ。納得の行く説明を受けなければ、二人とて納得はしないだろう。

 

「そんな……!! 大赦は、どうしてそれを私達に隠して……!!」

 

「教えられなかったのよ。残酷過ぎてね……無理かも知れないけど、どうか……どうか……大赦や先生を……恨まないで」

 

 前を向いたまま、振り返らずに瑠璃が話を続ける。須美はまだ言いたい事はあったが、語る瑠璃の声が僅かだが震えているのに気付いて押し黙った。

 

「そして……あなた達に見せたいもう一つのものが……この先にある」

 

 四国とその向こう側を隔てる壁の側に来ると、瑠璃は躊躇いなくその先に進んで、そしてその姿は空間に沈むように消えてしまった。

 

「せ、先々代……!!」

 

 壁を越えてはいけないと教えられている須美は躊躇ったが……しかし再び園子と目線を合わせて、覚悟を決めた。瑠璃は目的や意味の無い事をする人では断じてない。何かの考えが、きっとあるのだ。

 

「行こう、わっしー」

 

「そのっち……」

 

「いざとなったら、一緒に怒られるから」

 

「う、うん……」

 

 そこではまだ、簡単に考えていた。

 

 そうして、瑠璃がそうしたように空間に投影された幻を越えて……

 

 二人とも、言葉を失った。

 

 そこに在ったのは、滅びという言葉を具現化したような世界。

 

 闇の空と、マグマが蠢いて炎が立ち上る地獄。

 

「……外の世界はウィルスではなく……天の神々の力で滅ぼされたのよ……人間に味方する地の神々は、集まって四国に宇宙規模の防御結界を張った……その内側が、私達の世界……」

 

「そんな……」

 

「そして、あれを見なさい」

 

 瑠璃が指差した先では、小型のバーテックスが互いに互いを喰い合って一カ所に集まって、何体かの巨大な個体へと変貌しつつあった。そしてそのフォルムには、須美も園子も見覚えがあった。

 

「あれって……私達が追い返した……」

 

「さっき、先々代が倒したのも……!!」

 

 総勢12体の大型バーテックスが、再生の途上にあった。

 

「今まで戦ったバーテックスは、全て生きているわ。奴らは例え跡形も無く消滅しても、星屑と呼ばれる最下級のバーテックスが集結して、黄道十二宮をモチーフとした結界を突破出来る個体を再生するの。そうして、追い返しても倒してもまた攻めてくる……このままでは、それほど時を置かずして再度の侵攻が始まるでしょうね……」

 

「そんな……じゃあ、私達のお役目は……終わらないって事ですか……? 体の機能を、失いながら……戦い続けて……そんな……そんな生き地獄……!!」

 

「わっしー……」

 

 がっくりと、膝を付いた須美が震える声で呟いた。園子が、その肩に手を置く。

 

「大丈夫よ。あなた達が、戦う事は無い。少なくとも今しばらくは」

 

 無感情な声で、瑠璃が言った。須美と園子が、顔を上げる。

 

「私が、ここに残るから」

 

「……天、さん……?」

 

「先々代……?」

 

 瑠璃が何を言っているのか分からなくて、呆然とした表情で二人は聞き返した。

 

「知っての通り、神樹様は防御に全ての力を注げば、恵みの力が弱くなってしまうから結界に敢えて一カ所弱い所を作り、バーテックスを通している。いわばここは結界の穴……『死』が這い出る門のようなもの……これより、私の満開をここに展開して、その門を閉ざす」

 

 数秒の時間を置いて、漸く二人は全てを理解した。血相を変えて、食ってかかってくる。

 

「ま、待ってください先々代!! いくらあなたでも、そんな事したら……」

 

「そうだよ、天さん!! それにどうして、天さんだけがそんな事……」

 

「これは、私にしか出来ない事よ。結界の外で、長時間戦い続ける事が出来る力を持った勇者は、私一人。そして、今現在も私達の戦闘データを解析して、大赦では勇者システムの改良が進められている……それが半年でも、三ヶ月でも……時を稼ぐ事には、大きな意味があるわ」

 

 こんな時でも、瑠璃の表情は動かない。仮面のようだ。

 

「……っ、じゃあ、私も一緒に行くよ、天さん!! こんな所に、天さんを一人で残してなんて……!!」

 

「駄目よそのっち、あなたは乃木家の次期当主として、果たすべきお役目がある筈……先々代、私がお供します!!」

 

「ぼんやりしてる私より、しっかり者のわっしーの方が、戻るべきだよ!! 天さん、私を一緒に……」

 

「戻るのは、二人共よ。あなた達にはあなた達にしか出来ない事がある」

 

 静かで無感情な声で、しかし有無を言わさぬ強さで瑠璃が言い切った。

 

「あなた達は四国に戻り、耐えて、力を付けて……次の戦いが始まった時、次代の勇者を導き、共に戦わねばならない……私と一緒に来るよりも……ずっと、ずっと大変な戦いだけど……これは、あなた達にしか出来ないの」

 

「先々代……」

 

「天さん……」

 

「……それにあなた達、もしかして私が死ぬつもりでここに残ると勘違いしてるんじゃないの?」

 

 呆れたように、瑠璃が呟いた。

 

「「え……」」

 

 いつの間にか、滂沱として涙が伝っていた顔を二人は上げる。

 

「私は、生きる為に。命を守る為にここに残るのよ」

 

 勇者は、みんな今までずっとそうしてきた。

 

 希望というバトンを次代に渡して、その、本当の命をずっとずっと受け継いで守ってきた。

 

 初代勇者の乃木若葉達から始まって全ての勇者がそうしてきた。瑠璃の先輩も命を捨てて瑠璃を守った。瑠璃に、自分が受け継いでいた希望を託して。

 

 同じように瑠璃も今、受け継いだものを次の勇者に渡す時が来たのだ。須美と園子、次代の勇者二人こそが瑠璃の生きた証。二人が生きている限り、瑠璃もまた、二人の中で生き続けられる。

 

 だから、迷いを振り切って戦える。

 

「行ってきます……また、ね」

 

 その言葉を最後に、瑠璃は二人に背を向けて、地獄となった世界へと歩き始めた。

 

 さよならとは、言わなかった。

 

 もう、二人は瑠璃を止めなかった。

 

「はい、また……行ってらっしゃい、先々代……」

 

「待ってるよ、天さん……いつまでも、何時でも待ってるから……!! だから……いつでも帰ってきて!! 約束だよ!!」

 

 嗚咽を漏らしながら、精一杯の声で送り出す。

 

 二人の声に、瑠璃はもう振り返らなかった。歩みを進めながら、片手を挙げて応じる。

 

 精霊・巴御前が最後まで二人へと手を振って……そして、瑠璃の元へ飛んでいった。

 

「「う、うわあああああああっ……!!」」

 

 堪えきれなくなって、大泣きする須美と園子。

 

 瑠璃の満開が展開されて、発動の余波で二人を結界の内側へと弾き飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

「……最初から、こうするつもりだったんですね」

 

 城塞神殿最深部の、王の宮。

 

 だだっ広い空間の最奥に、玉座に腰掛けた瑠璃が頬杖付いて足を組んでふんぞり返っている。

 

 掛けられた声は、銀の姿に戻った巴御前のものだった。

 

「……何のことかしら?」

 

「アタシ相手にとぼけなくても良いですよ。先輩は、最初からここに残るつもりだったんでしょう?」

 

 と、銀。

 

 彼女の推理は、当たっていた。

 

 軍勢を使わずに前衛に出たのは、最もバーテックス相手に攻撃と防御を行う位置に立って、自分だけ満開ゲージを早く溜める為だった。須美が感じていた違和感の正体はこれだった。ただ勝つ為だけではなく、他に狙いがあったのだ。

 

 瑠璃の狙いは、満開や散華の秘密を伝えた上でこれからまだまだ強くなる須美と園子を可能な限り無傷の状態で四国に帰し、勇者システムが改良される為の時間を稼ぐ事にあった。

 

 今回、ほぼ全ての物事が彼女の思惑通りに進んだ事になる。

 

 後は、残された仕事だが……

 

「勇者システムについての研究成果は全て私のパソコンに保存してあって、パスワードは安芸先生に渡した遺言状に書いてある……勇者システムの開発・研究については、残されたデータを使って、大赦のスタッフが十分にその任を果たしてくれるでしょう」

 

 ならば残った瑠璃の役割は、勇者として戦う事だ。

 

 そしてその時間も、後二年程で終わる。それを過ぎれば、彼女は力を失い、戦えなくなる。

 

「その二年間を、どう有効に使うか考えたけど……恐らくは、これが最も効率的でしょう」

 

 ぱちん。

 

 指を弾く。

 

 王の宮の壁・床・天井が全てスクリーンとなって、全方位の光景を映し出す。

 

 背後には神樹の結界、前方には地獄と化した滅びの世界と、数限りない敵。

 

「見なさい、銀……周りが敵だらけ。こうして見ると、壮観ですらあるわね」

 

 絶望的という言葉がこれほどしっくり来るシチュエーションもそうはあるまい。

 

「でも、アタシが居ますよ。先輩」

 

「!」

 

 それを聞いた瑠璃はぽかん、と目を見開いて……ややあって銀の頭に手を置いた。

 

「そう、そうだったわね……」

 

「えへへ……」

 

「では、始めましょうか」

 

 瑠璃の意志を引き金として城塞神殿の火砲が火を噴いて、幾十万の星屑を薙ぎ払った。

 

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