衛宮士郎は正義の味方である   作:星ノ瀬 竜牙

15 / 40
あけおめ&ことよろでございます。(激遅新年挨拶)

今年)初投稿です。

勇者の章の終了までにわすゆ編は終わらせようと思ってたのにこれだよ。
これも全部MHWとEDFとかその他諸々が悪いんだ……(責任転嫁)

勇者の章は最高でした……
おかげでプロットと設定も纏まりましたぞ。

のわゆ買ったし……前日譚も書かなきゃ(使命感)


1/18日、文章を追加しました。


第10話 幸運E

……目が覚めてしまった。

あの後、結局士郎くんの家でお泊まりする事になり

夕食後、どんちゃん騒ぎして疲れてぐっすり寝てしまったのだが……

 

深夜に目は冴えてしまった。

 

「あれ……士郎くん……?」

 

そして、よく見ると……布団から士郎くんが居なくなっていた。

────何処に行ったのだろうか。

襖を開けて、士郎くんを探しに行こうとすると

寝ている二人の寝言が耳に入ってきた。

 

「Zzz……ガオー……偉いぞマイブラザ……うへへ……」

 

「わぁ……サンチョが……骸骨のお面着けてるぅ……スピー……」

 

「銀はともかく……そのっちは

いったいどんな夢を見ているのかしら……」

 

相変わらず読めない娘だと思った。

枕が髑髏の仮面を着けてる絵面は……なんだかシュールね……。

 

「……って、そうじゃなくて……士郎くんを探さなきゃ」

 

そっと襖を閉めて部屋を出た。

そして、直ぐに士郎くんは見つかった。

 

……いつもの縁側にぼーっと空を見上げて座っていた。

何をしているのだろうか……。

私は少し気になって、士郎くんに話し掛けた。

 

「士郎くん、こんな所で座ってると風邪を引くわよ?」

 

────────

 

ぼーっと縁側で月を見上げる。

……綺麗な月だ。

そういえば……あの時もこんな月だったな

 

「士郎くん、こんな所で座ってると風邪を引くわよ?」

 

ふと、後ろから聞き覚えのある声が耳に入った。

────そういえば、オレの家に宿泊してたんだったな。

 

「……起こしちゃったか、須美?」

 

「いいえ、たまたま目が覚めちゃったのよ。

そしたら士郎くんが布団に居なかったから

何処に行ったのか気になっちゃって……」

 

「あー……悪いな、居なくなってて……

……銀と園子は?」

 

少し、申し訳なく思って謝罪した。

 

そして、他の二人はどうなのか気になって、須美に聞いてみる。

 

「ぐっすりよ。……そのっちは相変わらず変な夢を見てるみたいだけど」

 

「またか……というか、変な夢って認識はあったんだな……」

 

「興が乗って国防仮面ってやったけど……

アレは元々そのっちの夢だったし……」

 

「そういやそうだな……」

 

互いに顔を見合わせて、クスッと笑ってしまった。

相変わらず園子には色々と振り回され、苦労させられてしまうな……

 

「それはそうと、士郎くん。

布団に戻らないと!夏の夜は冷え込むのよ?」

 

「分かってるよ……なんだか此処が懐かしくてな……

つい感傷に浸っちゃったんだよ」

 

「懐かしい……?」

 

「あぁ……なんだか懐かしいんだ。

昔、此処に座って誰かの夢を聞いた気がする」

 

「夢?」

 

「あぁ、夢だ。将来の……な」

 

須美は、不思議そうにこちらを見つめる。

そうだ、此処で夢を聞いたんだ────

 

「『僕はね……正義の味方になりたかったんだ』……か」

 

「……それが士郎くんの聞いた夢?」

 

「あぁ……オレの聞いた『夢』だ」

 

「正義の味方……御国を守る人かしら?」

 

……そんな生易しいモノじゃない。

彼が目指したのは……誰にも到達できないモノだ。

 

「……万人の正義の味方……らしい」

 

「……それは不可能よ、士郎くん。

正義と悪は表裏一体よ。自分が正義だと思っても……

他人からすれば悪である事は良くある事だわ」

 

「────ッ……ああ、分かってる。

分かってるよ……それぐらい……

それにヒーローは期間限定で……時期が過ぎれば名乗るのが難しくなる……

そんな事……もっと早くに……ってずっと思ってた。教えてくれたのになぁ……」

 

理解していた。心の奥底ではずっと理解していたのだろう。

そんなこと当たり前だと。

 

「士郎くん……?」

 

「後悔してたのかもな……

ずっと正義の味方になろうとして……

小を切り捨て大を救い続けていたからこそ……」

 

「…………正しい選択かもしれないけど。

それはきっと……いつか後悔すると思うわ。

……昔の日本を知れば理解出来る事だけど────」

 

須美は何処か重々しく、語った。

歴史に詳しくなると……

そういう事も理解出来るようになるものか。

 

「……だな」

 

「そういえば……士郎くん。『錬鉄の英雄』って知ってるかしら?」

 

「あぁ、アレか。よく知ってるよ

オレ達には知らされたが……西暦の勇者と共に戦った英雄だったそうだな。

それがどうかしたのか?」

 

「士郎くんの話を聞いていたら、それを思い出しちゃって……」

 

「────そういう事か」

 

『錬鉄の英雄』

それは、歴史のワンページに刻まれた無銘の英雄の物語。

人を選ぶ作品だが、それでも根強い人気があるのは彼の目指した夢が理由だろう。

 

その英雄がどんな力を使っていたのかは不明だが

西暦時代の英雄らしい。

紅い外套、白髪の髪に褐色の肌。

そのどれもが……あの男と共通していた。

そして何よりもその英雄が目指していたものが、あの男を連想させた。

 

錬鉄の英雄は、正義の味方を目指していた。

 

きっと……いや、ほぼ確信している。

錬鉄の英雄とはあの男なのだろう。

物好きも居るものだ。無銘の英雄の物語を書物として書くのだから。

 

「「……………」」

 

会話が途切れた。

……凄く気まずい。

 

「そ、そういえば……士郎くんって大赦だと

そのっちと近い家柄になるのよね?」

 

「……あ、ああ。

……西暦の終わりに戸籍の襲名で出来た家柄らしいけどな」

 

そう、そこが特殊なのがオレの家柄だ。

戸籍を丸ごと変えるなんて無茶、普通は通じない。

 

「戸籍……どうして戸籍を襲名したのかしら?」

 

「……詳しくは知らないが、

『衛宮』という姓には神聖な意味があるらしい」

 

「そうなの……?」

 

「ああ、それで『士郎』って名前にも神聖な意味があるってさ。

こっちは乃木家で言う『若葉』、上里家で言う『ひなた』に近い意味らしい」

 

「西暦の勇者様の名前……それに近い意味……

士郎くんは神樹様に選ばれたのかしら……だから樹海に……」

 

「さぁな……そこまではオレも分からん」

 

そう、神聖な意味がある。とは聞いていたが

オレがどうしてあの男の力を使えるのか、

勇者でもなかったのに樹海化に巻き込まれたのか。

それは不明なままである。

大赦の人もその原因を調べているそうだ。

 

「まぁ……今は考えても仕方ないだろ。

……そろそろ戻るか。いい加減寒くなってきたし」

 

「そういえばそうね……なんだか肌寒いわ……」

 

須美とオレは少し冷えた身体を温めるように、

少しだけくっついて、寝室にしている和室に戻った。

 

ちょっと恥ずかしかったのは内緒である。

そして、須美が少し顔を赤くしていたのは

きっと寒かったからだと思いたい。

 

────────

 

ある日の放課後

 

「ありがとね、黒板係のお仕事手伝ってもらって」

 

「いいっていいって。保健係は普段楽してるし。

須美の並ばせ係はビシバシだけド……」

 

オレ達の脳内でいつもの須美とついでにラッパの音楽が流れた。

 

『朝礼に向かいます。私語をした者にはお灸を据えます!!』

 

………こわい。

 

「お灸ってワード滅多に聞かないよなぁ……」

 

「うちの学校は軍校かよ……」

 

思わず頭を抱えてしまう。

 

「御役目には常に全力投球よ」

 

「全力過ぎるのはどうなんだよおい……」

 

「とくに!士郎くんは学級委員なのだし、

もっとしっかりすべきだと思うわ!」

 

「うげ、余計な事言って飛び火した!?

というか、好きでやったわけじゃないし……

なんかクラスの大半から推薦された結果こうなってるだけだからな!?」

 

「────流石は神樹館のオカンね」

 

「またの名を歩く親切マシーン」

 

「うるせー」

 

余計なお世話である。

というか、オレの視界に困ってる人が入ってくるのが悪い。

よって、オレは悪くねぇ!

 

「とか言いつつ、ちゃんと助ける辺り捻くれてるよなぁ」

 

……だって、放っておけないし。

 

「えみやんってそういうの見ちゃうと無視できない人だもんね〜♪」

 

……くそぅ、否定できん。

 

「そういえば、御役目と言ったら

四体目のバーテックスが来ないね?」

 

「もうすぐ遠足なんだよなぁ……その時は来ないで欲しいね」

 

「銀。人それをフラグと言うんだぞ」

 

「あ……って、物騒なこと言うのやめろって士郎!?」

 

いやだって、こういうのって願えば願う程……そうなるし。

フリってヤツ。

かつてのトリオ芸人の押すなよ!絶対押すなよ!!みたいなヤツでしょ。

 

「その遠足なのだけど……街を離れて大丈夫なのかしら?」

 

「勇者になれば大橋まであっという間だし大丈夫だよ♪

……来て欲しくはないけどね」

 

あ、二本目が建った。

 

「えー、二本目のフラグが建ちましたが、

いかがお過ごしでしょうか。オレは幸先不安です」

 

「だから士郎、物騒な事言うなって……

それに、考え過ぎてちゃ何も出来なくなるぞ?」

 

「一理あるわ……」

 

「前回のな……」

 

オレがボソリと呟くと須美はうっ……と苦い表情をする。

園子の臨機応変の策のおかげでなんとかなって一安心ではあったが。

 

「まあ、何かあってもこの勇者様がなんとかするから!」

 

「わぁ、ミノさんかっこいい!!」

 

「人それをフr「そりゃもう良いって!?」……チッ」

 

「舌打ち!?揶揄ってただろ!?」

 

「ハッハッハッハッハ」

 

「目を逸らして笑うな!絶対、揶揄ってただけだろおお!?」

 

銀がオレの身体をポカポカと叩いてくる。

はっはっは、そんな攻撃痛くも痒くm……ちょっと痛い。

 

「アイタタ……ちょっ!?銀、お前軽く本気で叩いてきてるだろ!?

痛ッ!?痛いって!?アダダダダ!?」

 

「………フフッ。そうね。私達四人なら大丈夫よね。

分かった、ありがとう!」

 

……そうだ。きっと。大丈夫。

 

何があっても、オレが守る。

例え、この身を犠牲にしようと────。

 

────

 

「はぅ〜……手の豆がチクチク痛いぃ〜……今日の鍛錬大変だなぁ……」

 

園子の手には見ただけでも痛そうな豆があった。

────オレはそもそも剣の為なってはいない。

というより、慣れた持ち方をしてるからだろう。

 

「槍の握り方を変えてみるとか?」

 

「先生が変えてもどうにもならないって……」

 

「握り方じゃなくて、持ち方……

槍の構え方を変えてみるってのも良いかもしれないぞ?」

 

「「構え方?」」

 

「あーっとだな……」

 

架空の槍を握って、オレは構える。

見慣れた相手の槍の握り方だ。

 

「私の構え方と少し違うね〜」

 

「ああ、ちなみにこれだと……勢いよく突けるし……

投擲なんかもしやすいな。後振るのも楽だ」

 

スッと、架空の槍をイメージしながら

あの相手の使い方を真似て、振るう

 

「おー……今度参考にしてみるよ〜」

 

「ま、オレの知る中じゃ槍の達人の使い方だし……無理しないようにな」

 

「えへへ〜……♪」

 

オレは苦笑しながら、園子の頭を撫でる。

……流石にこれを参考にすると大変な事になる気もするのである。

 

なにせ因縁の相手で

神話的には主役級の英雄の槍の使い方だしなぁ……

 

と、そこに園子の机に三冊の辞書らしきものが置かれた。

 

え────なにこれ────?

 

「三人にはこれを渡しておくわ!」

 

「す、須美サン!?なんスカ……コレは!?」

 

「見ての通り、遠足の栞よ!」

 

……栞らしい。ウッソだろお前!?

なんだこの分厚さ!?辞書が可愛く見えるレベルだぞおい!?

 

「や……栞っていうか……六法全書?」

 

「データ版は三人の端末に送っておいたわ!」

 

「やだ、奥さん用意周到……」

 

「こ、これ……わざわざ作ったンスカ!?」

 

重そうに銀は栞(?)を抱える。

いやまぁ……六法全書の分厚さ超えてるぞコイツぅ……

 

「張り切って、夜更かししてしまって……

予定より随分量が増えたわ!」

 

「自慢して言う事ではないからなそれ!?」

 

「わっしーは凝り性さんと言うか、のめり込むタイプだよね♪」

 

「将来、須美の旦那のなる人は幸せだけど色々大変そうだな!」

 

「未来の名も知らぬ須美の旦那に黙祷しておこう……」

 

「なんでそういう話になるのよ?」

 

少し、ムスッとした顔で須美は見つめてくる。

 

「この三ノ輪 銀のような男が居ればなあ……」

 

「!?」

 

「わぁ……お似合いの二人だね〜♪」

 

……お似合いなのだろうか?

 

「それとも〜?……須美さんは士郎みたいな殿方の方が好みかなぁ?」

 

「なななな、にゃにを!?」

 

「待て、なんでそう言う話になる。

……そもそも、須美とオレじゃ不釣り合いにも程があるだろう。

オレより良いヤツなんて探せば普通に居るだろうし」

 

「「「………」」」

 

「おい、なんだそのジト目は。

オレが何か悪いこと言ったみたいなジト目やめろよ!?」

 

……なんか悪いことオレ言いましたか!?

 

「前途多難だなぁ……」

 

「だねぇ……」

 

「………。と、ともかく!

この栞を活用して、遠足の済ませておきましょう!

……遅れるとお灸よ?」

 

ヒエッ。というかこの前のお祓い棒といい

そういうの何処から取り出してるんだよお前!?

 

「そういうの何処で売ってるの?」

 

「イネス」

 

イネス って すげー !(GB並感)

 

「ナーイスイネース!イェーイ!」

 

「い、いぇーい……?」

 

「yeah!!」

 

須美と銀はハイタッチをする。

 

さて、問題は……

 

「これどうやって持って帰ろうか?」

 

「「「…………」」」

 

……案なしかよ。

というか須美さんや。考えてなかったのかよ。

 

「……私の車で、ミノさんの家と、えみやんの家まで運ぶ〜?」

 

「「ウッス!お世話になります園子様!!」」

 

銀とオレは、園子に深々と頭を下げるのだった。

流石お嬢様……ありがとう……園子……!

 

────────

 

「シートよし、栞は置いといて……うん、こんなもんかね」

 

準備は一通り終わらせた。

よし、これなら問題ないかな。

 

ピロリとスマホに着信が入る。

チャットの方か。スマホのチャットを見る。

 

三ノ輪 銀『遠足の用意がおわりましたわ』

 

乃木 園子『まぁ奥様、私もですわ\(・ω・ )』

 

鷲尾 須美『ビニール袋も要りましてよ』

 

『こちらも終わりましたぞ。奥様方』衛宮 士郎

 

三ノ輪 銀『お疲れ様ですわ』

 

乃木 園子『お疲れ様ですわ、セバスチャン』

 

『え?』衛宮 士郎

 

鷲尾 須美『え』

 

三ノ輪 銀『ふぁ!?』

 

乃木 園子『?』

 

乃木 園子『えー違うのー?』

 

『違うわ!?』衛宮 士郎

 

乃木 園子『ふふーん。じゃあ、無理矢理セバスチャンにしてやるぜ〜』

 

『うわ!?何をするやめ』衛宮 士郎

 

『くぁwせdrftgyふじこlp』衛宮 士郎

 

三ノ輪 銀『あ、やられた』

 

鷲尾 須美『やられたわね』

 

『園子お嬢様には勝てなかったよ……』衛宮 士郎

 

三ノ輪 銀『即オチ2コマ』

 

……相変わらず、皆ノリが良いなぁ。

オレもノリノリでやった身ではあるけど。

 

さてと、そろそろ明日に備えて寝るかぁ……

安芸ねえもぐっすり寝てるし。

 

『そろそろ寝る。おやすみー』衛宮 士郎

 

乃木 園子『おやす〜♪』

 

三ノ輪 銀『すみー』

 

鷲尾 須美『呼んだかしら?』

 

三ノ輪 銀『呼んでねぇよ』

 

『呼んでねぇよ』衛宮 士郎

 

鷲尾 須美『二人揃って言わなくても良いじゃない……』

 

乃木 園子『わっしー……ヨシヨシ(。´・ω・)ノ゙』

 

鷲尾 須美『うう……そのっちの優しさが心に染みるわ……』

 

三ノ輪 銀『そこまでか!?』

 

乃木 園子『わっしーは時々面白いけど滑っちゃうと台無しだよね〜♪』

 

鷲尾 須美『まさかの追い討ち!?……ごふっ』

 

三ノ輪 銀『あ、須美が死んだ』

 

『この人でなし!』衛宮 士郎

 

尚、しばらくチャットは終わらなかったのである。

あるあるだよね。

 

 

 

────────

 

 

 

 

 

「ゴホッ……ゴホッ……」

 

「37.6℃……夏風邪ね。今日は休みなさい。士郎」

 

「……ち、ちくしょう……よりによって……

ゴホッ……遠足当日に……ゴホッ……ゲホッ……」

 

……夏風邪である。

笑えない……前日まで普通だったのになんで……当日で……

 

「私の方から連絡は入れておくから……残念だけど、体調優先よ」

 

「くそぅ……六年生最後の遠足が……ゲッホ……

なんでさ……ゲホッ」

 

「気持ちは分かるけど、ゆっくり休む事。良いわね?」

 

「わかってる……安芸ねえこそ……ぴーまん……

焼きそばでちゃんとたべろよ……」

 

「うっ……善処します……」

 

「それ……出来ない人の……げほっ……げほっ……」

 

……どうやら、神様。というか

神樹様はオレに遠足に行くなと言っているらしい。

 

ちくしょう……なんでさ……

 

 

────────

 

 

士郎が夏風邪で布団で寝込んで数時間程後────

 

昼食で焼きそばを作った

須美、園子、銀の三人は木の椅子に座って焼きそばを口に運ぶ。

 

「くぅ……!美味い!最高!!カブト味だな!!」

 

「んぐ!?焼いてないから!!?」

 

先ほどの園子の状態を思い出し、須美は慌てた様子で否定する。

それもそのはず、焼きそばの調理中に

園子はカブトムシを身体中に纏っていたのだ。

それも大量に。黒光りするGにしか見えない程に。

それを見た後ではそんな事を言われると、

慌ててしまうものである。

 

「ん〜、美味しいよ〜♪」

 

「園子はもっと良い肉を食べてるんじゃないのか?」

 

「このお肉の方が美味しいよ〜?」

 

園子は銀の言葉に不思議そうに首を傾げながら、

焼きそばの入った皿を見つめる。

 

「皆で食べてるからじゃない?」

 

「おぉ〜!」

 

須美の返しに、それだ。と言わんばかりに目を輝かせる園子。

その時、銀が気付いてハンカチを取り出し園子の口についていたソースを拭き取る。

 

「園子、口についてるぞー」

 

「ありがとう、ミノさん♪」

 

園子は嬉しそうにお礼を言う。

 

「はぁ……」

 

「い、忙しいテンションだな……」

 

「わっしーも、ミノさんも、えみやんもお料理出来るのに……

私は出来ないから……ふと恥ずかしくなったんだよ〜……」

 

落ち込んだ様子で理由を述べる園子。

 

「焼きそばぐらい園子も作れるさ!」

 

「意外なのは士郎くんよね……」

 

「それは否定できないな……

しかも挙句の果てに掃除洗濯も得意だし」

 

士郎がエプロンとバンダナを着用し、

箒を構えたり、フライパンを手に持っている姿を三人は安易に想像できた。

 

「改めて考えると士郎の家事スキルとんでもないよなぁ……」

 

「そうね……この前の宿泊で発揮してくれたし……」

 

そう、三人が士郎の家に泊まった時、士郎が三人の分も料理を作ったのだ。

親戚である安芸先生でなければ士郎の両親が作ったわけでもなく。

士郎自身が作ったのだ。

……あの男、やはりオカンである。

 

「じゃあさ!今度の日曜日に皆で教えて!」

 

「「良いけど?」……お、ハモった♪」

 

園子の提案に銀と須美は揃って了承した。

 

「士郎も誘うべきだよなぁ……」

 

「料理に関しては厳しそうだけど大丈夫かしら?」

 

「有り得そうだな……」

 

『ふっ、オレを満足させたければ(ry』

 

須美の言葉で

銀の脳裏に料理人の鬼と化した士郎が浮かんだのであった。

 

その姿を須美と園子も思い浮かべたのか

クスクスと笑う。

 

「ところで……先生!ピーマン残してない?」

 

「ギクゥ!?

ちゃ、ちゃんと食べるわよ!?苦手だけど……」

 

慌てながら、声と肩を震わせながら言ってくる安芸先生。

その様子に思わず、奇妙な目で見てしまう三人だった。

 

「前世でピーマンに何かされたのかな?」

 

「そうね……というより……銀、よく知ってたわね?」

 

「あー……士郎が体調崩したって連絡グループに入れた後に、個人チャの方で

『安芸ねえが焼きそばにある

ピーマンを残すかもしれないから、ちゃんと見といてくれ』って……」

 

そう言いながら、銀はスマホを取り出し

士郎との個人チャットの内容を見せる。

 

「ほんとね……」

 

「そういう時は、食べるとピーマンの精霊が

夜中に会いに来てくれると思うと楽しいですよ〜♪」

 

「そ、それはユニークな考えね……あ、ありがとう……

ス、スムーズに……食べられるわ……」

 

笑みを引き攣らせ安芸先生はお礼を言う。

園子は可愛らしいイメージの精霊を思い浮かべていたのだが……

安芸先生は怖いイメージの精霊を思い浮かべていた。

食べないと殺す!と言わんばかりのイメージの精霊を。

 

「先生に褒められたわね。そのっち♪」

 

「ご褒美にアスレチック制覇のベルは園子が鳴らしなよ!」

 

「ベル〜?」

 

 

「アスレチック!全面クリア〜♪」

 

「成し遂げたわね!」

 

カンカンカン。とベルの音が鳴り響いた。

 

────

 

「なぁ、須美!私達の街ってあっちか?」

 

「ええ、合ってるわ」

 

公園の端から景色を眺めつつ、

銀はイネスと大橋を探す。

 

「大橋やイネスは流石に見えないなぁ……」

 

「ミノさんは本当にイネスが好きだね〜♪」

 

「イネスは良いよー!なんたって────」

 

「中に公民館まであるんだから。でしょ?」

 

銀の言葉に続く形で須美が答える。

何度の聞いたからか、即座に答えれたようだ。

 

「へへ、当ったり〜♪」

 

「私も分かったよ〜♪」

 

「もうパターン読まれてきたかー……」

 

少し嬉しそうに銀は笑う。

 

「わぁ……私も読まれてる?」

 

園子がそう聞くと、須美と銀は

明後日の方向を遠い目で見ながら答える。

 

「そのっちは……読めない」

 

「ほえ?」

 

「きっと……いつまでも読めない」

 

「はぅ!?

……それはそれで寂しいよ〜!?」

 

落ち込む園子。

 

「大丈夫。流石に今の反応ぐらいまでなら分かるから!」

 

「ほんと!?やったぜ!Fooooooooooo!!」

 

「そっからの跳ね具合が予測不可能だ……」

 

「流石そのっちね……士郎くんの苦労が分かる気がするわ」

 

ハイテンションでそこらを跳びまくる園子に

思わず顔を引き攣らせる須美と銀だった。

後、このテンションに付き合っていた

士郎の苦労具合もある程度理解出来たらしい。

 

「ちなみに、須美については取扱説明書が

書けるぐらいに詳しくなったぞ?」

 

「あら、最初のページにはなんて書いてあるのかしら?」

 

「『結構大変な品物ですのでくれぐれもご注意ください』」

 

「め……面倒くさい人みたいな言われ方ね……

でも納得してしまう自分が居るわ……」

 

はぁ……と溜め息を吐きながらも納得してしまった須美だった。

 

「いーじゃん。奥行きがあって。

私のなんて新聞のチラシ並にペラいぞー?」

 

「そんな事ないわよ。分かりやすくはあるけど書く事はいっぱいあるわ」

 

「そ、そうか……?」

 

須美の言葉に

恥ずかしそうに頬を赤らめて座り込む

 

「これからも色々な一面を暴いて行こうと思うの♪」

 

「うへぇ……お手柔らかに頼むよ……」

 

更に恥ずかしそうに顔を赤らめる。

 

「実は私ね。初めはミノさんが苦手だったんだ〜」

 

「いきなりなんだよー!?」

 

「私も同じよ」

 

「おぉおい!?」

 

園子と須美の意外な告白に慌てる銀。

今まで接してきて、苦手だったと言われてしまえば

誰であれ慌てるだろう

 

「ほら、スポーツ出来て、明るくて……

なんだか種族が違う気がして……

でも、話してみるとこんなに良い人なんだもん

わっしーも良いキャラだし♪」

 

「私はキャラ!?」

 

「あははは!なるほどねー。

たしかに話してみないと分からないよなぁ……こういうのは。

私と士郎なんて特にそれだったし」

 

「あら、そうなの?意外ね。

士郎くんとは元から仲が良いと思ってたわ」

 

銀と士郎の意外な関係に驚く須美。

 

「はは、まさか!それこそ最初は嫉妬から始まったしなー」

 

「嫉妬から〜?」

 

「ああ、ほら……私と士郎って意外とキャラ被ってるじゃん?」

 

「まあたしかにそうね……」

 

普段のやり取りから見ても明らかではあるが

波長が似たり寄ったりなのだ。

だからこそ意気投合する事が多く、二人は仲が良い。

そんなふうに須美と園子からは見えていた。

 

「それで……まあ、士郎も士郎でクラスの人気者だったんだよ。昔からさ。

人柄も良いし、料理もできるし……運動神経抜群だし、勉強もそこそこ出来るし。

……あの頃はほんと士郎に嫉妬して……ライバル視してよく突っかかってたなぁ

士郎からしたら絶対迷惑だった筈なのに……

突っかかる度にそれに付き合ってくれてたんだよ……

今思い出すと凄い苦労してたんだろうな……士郎」

 

申し訳なさそうな表情をして銀はボヤく。

知らなかった事実を知り、須美と園子は顔を見合わせて驚いた。

 

「じゃあ、ミノさんとえみやんが仲良くなった切っ掛けってなんだったの〜?」

 

「んー……切っ掛けかぁ……些細な事だったなぁ……

私が挑んだ勝負が結構無茶な事で……大怪我しそうになったんだよ。

それを士郎が身体張って助けてくれて……そっからかなぁ……

まぁ……恥ずかしい話……

それで惹かれたっていうより……惚れたんだと思う

『こんな迷惑かけてた私でも助けてくれるんだ』……って

王子様みたいな感覚だったのかも……」

 

照れくさそうに頬を掻いて銀は笑う。

 

「なんだか素敵ね。士郎くんと銀の仲良くなった切っ掛け。

……ちょっと妬けちゃうわ」

 

「だね〜……羨ましいな〜」

 

「恥ずかしい……忘れてくれぇ……」

 

顔を真っ赤にして蹲る銀だった。

 

「うぅ……と、とにかく!

これからも……ダチ公として、よろしく!」

 

「こちらこそ〜♪」

 

「ええ!」

 

三人はしっかりと手を取り合うのだった。

 

「しっかし……士郎にも見せたかったな……この景色」

 

「しょうがないわよ……夏風邪だもの……」

 

「昨日は平気そうだったから、驚いたよね〜」

 

「……そこが風邪の怖いところだよな

……前日まで元気だったのにいきなり体調を崩すって」

 

改めて、風邪の恐ろしさを再確認する三人であった。

ちなみにこの時、

『余計なお世話だ』と寝言で士郎が呟いていたとかなんとか……。

 

「そうね…………

ん?もしかして……この前の夜に……?」

 

須美は士郎が体調を崩す原因らしきものに心当たりがあるのか

顔を顰めるのだった。

 

────そして、言わずもがな。

須美の予想通り……先日の夏の夜に

外に出ていたのが士郎が夏風邪になった原因であったのは全くの余談である。




次回予告────

「銀を……お願い……」


「大丈夫だよ。後はオレが頑張るさ────」

「どうして……」


「生憎、まだ吐き気も頭痛も目眩も酷いもんさ」

「士郎!!」


「とんでもない貧乏くじをオレも引かされたものだな」

I am the bone of my sword────


「任せろって、爺さんの夢は────」

So as I pray────


第11話

■■の剣■(Unlimited■■■■■Works)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。