そんなわけで番外編。
タイトル通り神樹館メンバーのバレンタインの番外編です。
時系列は、本編スタートの少し前となります。
甘いお話を届けれたら幸いです。
……くめゆキャラ一人入れてるけど、口調とか合ってるか不安。
……これで合ってたよね?
時は遡り、神世紀298年、2月14日。
この日は、世界中の女性が慌ただしい日になり……
世界中の男性がそわそわする日でもある。
そしてこれはそんな日でも
平凡で、それでいて少しだけいつもと違う彼のお話。
────────
「え、チョコ?」
「は、はい!士郎さんに渡したくて!」
「……俺で良いのか?」
「士郎さんに渡したいんです!これ、受け取って下さい!」
「あ、ああ……ありがとう」
「で、では失礼しましゅ!!」
あっという間に走り去っていく四年生の女の子。
────これで、もう十人目である。
チョコをくれるのはありがたいが……
増え過ぎるのも問題ではある。と個人的には思っている。
過剰摂取は体に悪いしなぁ……
「……士郎。居た」
うぅむ、と唸っていると見覚えのある少女が
こちらにトコトコとやって来る。
「……ん?ああ、しずくか。どうした?」
無愛想、というよりは感情表現が乏しい少女。
同級生であり、何度かクラスが一緒になったこともある。
彼女にはちょっとした秘密があったりするのだが……まあそれは今度にでも。
「……チョコ、貰ったの?」
手提げ袋に入っているラッピングされた箱を見ながら
しずくはそう聞いてくる。
「ああ、これで十人目だ……参ったなぁ……
そんなわざわざ義理チョコをくれなくても良いんだが……」
「多分、義理チョコじゃない。と……思う」
「え?どういう事だよ?」
「……士郎、やっぱり鈍感」
「なんでそうなるんだよ……?」
分かるように説明して欲しいものだ。
……いつも、上手いことはぐらかされている気がする。
「……ん、これ」
「え?……これは?」
しずくから一つ。箱を手渡される。
「言わなくても、分かる……今日はバレンタイン。
女の子が渡すのは一つだけ……」
「いや……そうなんだが……良いのか?」
「士郎、いつも私を助けてくれた。
だから……その御礼」
少し恥ずかしそうに、しずくは箱を押し付けてくる。
「御礼って……大したことはしてないだろ?
あまり他人の家庭事情には首突っ込めないし……
それに、今だって────」
「別に、大丈夫」
「大丈夫って……」
「……此処で、士郎が話し相手になってくれるだけで楽しいから」
「んなっ!?」
はっきりとそう告げてくるしずくに顔を赤くしてしまう
「……照れてる?」
「照れてないッ!」
「じゃあ、受け取って……」
「……はぁ……分かったよ。ありがとう、しずく」
グイグイと押し付けてくる箱を観念して受け取る。
……普段は物静かなのに、
俺と話す時だけグイグイ来るよなぁ……しずくって。
「ん、……一応言っておく、義理じゃない」
「え、今なんて────?」
「それじゃ……」
「……俺の聞き間違いだよな?」
トテトテと、離れていくしずくを見つめながら
俺はそう思う。義理じゃないって言ってた気がするけど……聞き間違いだよな?
しばらく、うーむ……と唸る事になるのは仕方ないことだと思う。
────────
「うぉ!?士郎さん、なんすかこのチョコの量は!?」
銀が驚いた様子で俺の机の上に
どっさりとあるチョコの山を見つめてくる
「……全部貰ったやつだ、義理チョコ。
いつも助けてくれる御礼らしい」
「……にしては多くないか?」
「そりゃ同級生だけじゃなくて
下級生とかからも貰ってるしなぁ……」
「うひゃーそりゃまた……」
言葉に嘘偽りはない。
六年生の先輩や、四年生などの後輩からも貰ってしまったのは事実だ。
「問題はこれをどう処理するかってのもあるが……
お返しなんだよな……」
「お返しって……まさか全員分作る気か!?」
「……そのつもりなんだが?」
「いやいやいやいや!?流石に無理があるって!」
銀は全力で否定してくる。
……そこまで否定されると傷付くんだが。
「銀ちゃん、分からないよー?
衛宮君ならやってのけそうじゃない?」
「……いや、まあそりゃそうだけど……兎に角!
ダメなもんはダメだ!こんなに貰ってるのに、
お返しの分だけでどんだけ費用かけるつもりだよ!?
軽く野口英世は二枚ぐらい飛ぶぞ!?」
「……それを言われると痛いな」
1000円札が二枚飛ぶのは割と痛い。
……だけど、貰ったからには返したいしなぁ。
「兎に角だ!返すなよ!?良いな!?」
「なんでそこまで……理由があるのか?」
「うっ……いやそれはだな……」
「なんだよ?」
銀は言い淀む。
……言い淀むってことはやっぱりなにかあるよな。
そう疑い始めた時、横の席の同級生が口を開く。
「衛宮君、銀ちゃんはねー
衛宮君が沢山チョコを貰ってるのに嫉────」
「わあああああ!?わああああああ!!
言うなって馬鹿ー!?」
「し……?」
……その次に何かあるのだろうか。
銀も顔を真っ赤にしているが……
もしや風邪か!?
「うひゃう!?し、しししし士郎!?
なんでおでこくっつけるんだよ!?」
「……うん、平熱だな。
え?ああいや……顔が赤かったし熱があるのかなって……」
「ねぇよ!士郎の馬鹿!!」
「えぇ……?」
ふくれっ面になって、銀は自分の席に戻る。
……いったいなんだったんだ?
「衛宮君って、罪作りな男に将来なりそうだよねー」
「俺が?……いやいや、それこそ有り得ないって」
「そうかなー?絶対大人になったら、
プレイボーイだと思うなぁ、私」
「そんな言葉何処から覚えてくるんだよ。お前……」
「お兄ちゃんのベットの下からだけど?」
「聞きたくなかったよ……そんな他所様の家庭事情……」
将来絶対、コイツはからかい上手になると思った。
────────
「はーい、えみやん。私からのプレゼントだよ〜♪」
「……こりゃまた、随分と大きな」
他のチョコよりも二回り程
大きなラッピングされた箱を園子から手渡される。
「えへへー、手作りだよ〜
召使いさん達に危ないからやめなさい〜って言われたけど
無理言って作らせてもらったんだ〜♪」
「そりゃまた……召使いさん達の苦労が目に浮かぶな……」
「いっぱい作ったから、ちゃんと食べて明日、感想教えてね〜」
「ああ、わかった……って明日までに完食しろと!?」
「え〜、出来ないの〜!?」
「いやいや……それは流石に無理が……
ただでさえ沢山貰ってるのに……」
「……ダメ?」
「うぐっ……」
上目遣いで見てくるのは卑怯だと思った。
……くそ、普通に可愛いし、断り辛い!
「……分かりました、善処します」
「わぁ〜い、やった〜!」
……結局、俺が折れて渋々ではあるが了承するのだった。
食べ切れるかな……チョコ……。
「えみやん、私は本気だからね〜」
「え」
「じゃあね!SeeYou〜!」
……なんだか、外堀を少し埋められた気がしたのは
俺の気の所為だろうか。
────────
「衛宮くん、ちょっと良いですか?」
帰る準備をしていると、鷲尾が声を掛けてくる。
「鷲尾か、どうしたんだ?」
「……その……特に、用事があるわけじゃないのだけど
……これ!」
そう言って、鷲尾がラッピングされた箱を渡してくる
「……これは?」
「ひ、日頃の御礼です!
た、他意はないですよ!?ないですからね!?」
「お、おう……」
そこまで念を押されるとなんだか畏まってしまうんだが……。、
「えっと……ちょこというのを作ったのは今回が初めてなので……
口に合うか分からないのだけど……食べてくれると嬉しいわ」
恥ずかしそうにそう告げる鷲尾。
調理実習で上手いとは知ってたけど……チョコを作るのは初めてなのか。
意外だった。
「……ああ、ありがとう。鷲尾。家で食べさせてもらうよ」
「……!……はっ!?
コホン!……それじゃあ、衛宮君。また明日」
少し、鷲尾の顔が輝いた気がしたが気の所為だろう。
「ああ、また明日な。鷲尾」
「ええ。……義理じゃない事って……伝えるべきなのかしら?」
「ん?なんか言ったか、鷲尾?」
「な、なんでもないわよっ!?」
「あ、おい!」
顔を赤くして、鷲尾は走り去っていく。
……鞄忘れてるけど、良いのか……鷲尾。
ちなみにその後、恥ずかしそうにしながら
鞄を取りに戻って来た鷲尾が居た事は……
本人の名誉の為に黙っておくことにした。
────────
「しかし……この山、本当にどうするべきか……」
自宅に持って帰ってきた大量のチョコを見て考え込む。
……ざっと見るだけで三十はあるんだよなぁ。
しかも……1個だけやたらと目立つぐらい大きいし……
言わずもがな、園子のである。
「とりあえず、冷蔵庫に入れておくか……
溶けたら申し訳ないし……」
ポリポリと頭を掻いてから
入りそうな分だけ、冷蔵庫に入れる事にした。
そして、チョコを入れている時に
インターホンが鳴る。
「はーい、今出ます!」
誰だろうか。と思いながら、玄関を開ける。
すると、そこには銀が居て────
ピシャンと、玄関を閉めた。
「はて……俺の幻覚だろうか……銀が居たような────?」
「ってなんで閉めるんだよ!?」
「わぁっ!?やっぱり幻覚じゃなかった!?」
勢いよく玄関を開けて不機嫌そうな表情で銀が怒鳴ってきた。
どうやら、幻覚ではなかったらしい。
△
「それで……何の用だ?」
「あ……えーっとだな……その……」
モジモジしながら、顔を赤くして言い淀む銀。
具合でも悪いのか……?
まさか……
「トイレか?」
「違うわいっ!士郎の馬鹿!」
「あ痛ッ!?」
思いっきり脳天にチョップをかまされた。
「痛っつぅ………」
「おっし、言うぞ……渡すぞ……!
士郎!」
頭を摩っていると、銀が大声で名前を呼ぶ。
「いてて……なんだよ?」
「こ、これ!バレンタインのチョコ!私の手作り!!」
銀がそう言って、
チョコの入ったハート型のラッピングされた箱を手渡してくる。
「ぎ……ぎ……」
「ぎ?」
「義理だかんな!」
「お、おう?」
それは、わざわざ言う事だろうか……
「って、ああ違う!今のなし!ノーカンで!」
「いやノーカンって……」
「え、えっとだな……その上手く出来てるか分からないから
あんま期待はするなよ!
……あーその……じゃあな!」
「あ、おい!」
一目散に去っていく銀を見て、ポカンとしてしまう。
結局何が言いたかったんだろうか……
「……どうせここまで来たなら、上がって行けばよかったのに。
お茶とか淹れるつもりだったんだが……」
貰ったハート型の箱のラッピングを外し、蓋を開ける。
そこには、ハート型のチョコと一緒に赤い菊の花が添えられていて────
「言いたい事があるなら、言ってくれれば良いんだがな……」
乙女心とは難しい。
そう思いながら、ハート型のチョコを齧るが……
「うげえええ!?にっが!?
苦ッ!?なにこれ!?カカオ95%のやつ!?
銀のやつ……カカオの分量間違えて作ったな……」
とてつもないほどの苦さだった。
ほぼカカオなのでは。と思うほどに。
嫌がらせか。と思ってしまうほどに。
「うげえ……これ完食出来るかな……」
他のチョコより、これを食べきる事が出来るかが不安になった。
ちなみに全くの余談だが、後日。
銀にチョコの作り方を教えるハメになったのは言うまでもない。
こんな苦い思いは、今回だけで満足だよ……。
これを見て、本編が辛くなったなら……私の計画通り。
私の策にはまったな!愚か者め!(愉悦スマイル)
銀ちゃんは最初あまり料理とか出来なかったんじゃないかなって思ってる。
この小説では士郎に手取り足取り教えて貰って上手くなったって感じの妄想してます((