衛宮士郎は正義の味方である   作:星ノ瀬 竜牙

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多分、日常回はこれとあと1回だけ。

……あと3話ぐらいでわすゆ編は完結すると思います。

でも、MHWやるから遅くなります((


第15話 掛け替えのない日々

「なぁなぁ、士郎!それってイメチェン!?」

 

「いや……そういうわけでもないんだが……」

 

「でもかっこいいじゃん、オッドアイといい髪色といい」

 

「やめろバカ、黒歴史を増やす気か」

 

何気ない会話を同級の男子としている士郎くんを見つめる。

……幸いなのは、彼の容姿が変わっても、

同級の皆がすぐに馴染んでくれたことだろう。

 

「ねえ、鷲尾さん。聞いた?

錬鉄の英雄が教科書に載るんだって」

 

「錬鉄の英雄が……?」

 

「そうなの!彼の生き様を多くの人に学んで欲しいからってだって────」

 

錬鉄の英雄。今は聞きたくない言葉だ……。

昔の私なら、喜んでいただろう。

だけど……その錬鉄の英雄が理由で

士郎くんが苦しんでいると知ってしまった

私は……快く思えなかった。

 

ふと、士郎くんの方を見ると……銀が士郎くんのもとに居た。

……なにかあるのかしら?

少し、聞き耳を立てる。

 

「お、三ノ輪……士郎になんか用があるのか?」

 

「えっと……ちょっとな……」

 

「……どうした、銀?」

 

銀は少し、悩んでから覚悟を決めたような表情をして……

 

「士郎、付き合ってくれるか」

 

「え」

 

……え?

 

「「「「…………え」」」」

 

空気が凍る。

……時間が止まる。

 

「「「「えええええええ!?」」」」

 

「はぅ!?」

 

「ぎ、銀、な、ななな何を!?」

 

「え……あ!?

……い、いやそういう訳じゃなくて────!?」

 

銀は、自分が何を言ったのか気付いたらしく

顔を真っ赤にして慌てていた。

……そのっちは私達の叫び声で目を覚ましたみたいだ。

……触れないでおくべきだと思った。

 

────────

 

「はぁああああ────!」

 

斧を躱し、銀の腕を掴んで組み伏せる。

 

「踏み込み方がまだまだ甘い」

 

「うぐぁ!?」

 

「そこっ!」

 

「隙を狙うのは良い判断だが……

もっと先を予測しないとこうなるぞ?」

 

飛んできた矢を手で掴み取る。

 

「嘘……きゃっ!?」

 

信じられないと言った様子の隙をついて、組み伏せる。

 

「二人目」

 

「えぇえええい!」

 

「良い筋だ。だが、遅い。

的確に狙えてはいるが……相手が自分より早い場合

それでは対処されてしまう。こんな風にな」

 

槍の柄を握って、投げ飛ばす。

 

「わわわっ!?」

 

「それをもっと早く振れるようになった方が良いかもしれんな」

 

何をしているかと言われれば単純だ。

須美、銀、園子の三人の特訓に付き合っている。

 

「うへぇ……やっぱり強すぎるだろ……士郎……」

 

「文字通り手も足も出なかったわね……」

 

「……う〜ん……自信はあったんだけどなぁ」

 

倒れ伏している三人を見て苦笑する。

 

「私は強くないさ。

その筋の達人と戦えば間違いなく敗北する。

此処は、経験の差に近いな。まぁ……私のは真似事に過ぎんがね。

それに、まだまだ伸び代はある。これからだな。君達が化けるのは」

 

「皮肉かよ……」

 

「本心からの賞賛だが?」

 

そう、此処はやはり……彼の経験が私の中にある分

私と彼女達では大きな差がつくのだ。

 

「でも……銀がいきなりあんな事を言うのは驚いたわ……」

 

「いや……あれは悪かったって……言葉足らずでごめん」

 

「なにかあったの〜?」

 

「「ナ、ナンデモナイデス……」」

 

……うん、園子が知ったらそれはそれで厄介そうなので

知らないでおいてもらいたい。

 

この特訓はそう、言わずもがな。

銀が頼んできたのだ。……言葉足らずで勘違いしかけたが。

 

「さて、特訓も終わりだ。

……そういえば、今日は祭りがあったな」

 

視線を向けると

安芸ねえは意図を察したのかコクリと頷いた。

 

よし、許可は貰ったな。

 

────────

 

「いやーでも、安芸先生が

許可出してくれるなんてビックリだなぁ」

 

「そうだねえ」

 

正直に言えば意外だった。

普段厳しいあの先生が許可を出してくれるとは思わなくて……

 

「今日は御役目の事を忘れてリラックスしましょ」

 

「わっしーも気合い充分だしね〜♪」

 

スマホを須美に向けて園子は言う。

 

「こ、これは親に着せられたのよ……!」

 

「大和撫子だよなぁ、須美って」

 

様になってる浴衣を見ながら私はそんな感想を述べる。

ちなみに言っておくと、私も園子や須美と一緒で浴衣だ。

白い生地に紅い牡丹の花が彩られた浴衣だ。

 

「うんうん、似合うよわっしー♪

お人形さんみたいだよ♪クルクル回ってみて♪」

 

うんうん……本当に似合ってるよなぁ……須美。

 

「恥ずかしいわ……」

 

「良いから良いから〜♪」

 

「こ、こうかしら……?」

 

須美は一回転する。ほんと様になってるなぁ。

 

「おーノリノリじゃん!」

 

「シャッターチーャンス!!」

 

私と園子はパシャリと須美の写真を撮る

 

「もう、撮影は禁止よ!!」

 

「えー……待ち受けにしようと思ったのになぁ♪」

 

「恥ずかしいからやめて……!」

 

「今もわっしーが待ち受けだよ?」

 

「へ?」

 

こちらにスマホを見せる

そこには須美がうどんを食べてる写真があって……

 

「ちょっと……恥ずかしいから消して……!」

 

「えー、私の携帯だもん私の自由だよ〜♪」

 

「もう!じゃあ私もそのっちを待ち受けにするわよ!」

 

仕返しとばかりに須美は言うが

嬉しそうに顔を輝かせる園子。

 

「わぁ♪私で良いの〜?」

 

「そこは恥ずかしがらないのね……」

 

「園子だしなぁ……」

 

私は苦笑いする。

うん、園子だし……で納得できるのも大概ではあると思うけど。

 

「そういえば……ミノさんの待ち受けはなんなの?」

 

「え!?……えーっと……お、弟」

 

「ミノさんらしいね〜」

 

「そうね、銀らしいわ」

 

「だ、だろ〜。あははは……」

 

言えるわけがない……

士郎の寝顔を待ち受けにしてるなんて言えるわけない……

……これも士郎の寝顔が可愛かったのが悪いんだ。うん。

 

────────

 

「お、来たか」

 

須美、園子、銀の三人を見つけ、手を振る。

こちらに気付いたようで、駆け寄ってくる。

 

「やっほー、えみやん」

 

「待たせてごめんなさい」

 

「いや、そんなに待ってないし問題はないぞ?」

 

……銀から視線を感じる。

いったいなんだというんだ……

 

「私の顔に何かついているか?」

 

「あ……いや……須美と一緒で様になってるなぁ……って」

 

「む、そうか?

適当に引っ張ってきた浴衣だし……

髪色とこの肌のせいで……似合ってるとは思わんのだが」

 

適度に髪を弄ってそう告げる。

事実、待っている間にやたらと視線を集めていたしな。

おそらく……肌と髪のせいだろうが。

 

「うーん……なんて言うんだろ……

その異質さが異様に映える理由っていう感じだろうか」

 

「そうね……西暦で例えるなら……

海外の人が着物を着た時に様になってる感じかしら」

 

「……そういうものか?」

 

首を傾げる。

確かに……昔の人の中には

異質さがむしろ映えさせていたというのはあったらしいが……。

 

「そういうものだよ〜えみやん。ねね、写真良いかな?」

 

「……唐突だな。まぁ構わんが」

 

「やったっ♪じゃあ皆で撮るよ〜」

 

園子はスマホを上にやり空いた片手でピースサインを作る。

 

「ちょ、いきなりかよ!?」

 

「全く……そのっちは……仕方ないわね」

 

「やれやれ……」

 

銀は慌てつつ、

私と須美は溜め息を吐きつつ園子の横に並ぶ。

 

「行くよ〜?ハイ、チーズ♪」

 

パシャリ。と撮った音が鳴った。

 

「おぉーバッチリだよ〜♪

これを待ち受けにしておこーっと」

 

「……唐突ね」

 

「まぁ……個人の写真より……

みんなで撮ったヤツの方が良いでしょ。

あ、園子。私にも送ってくれ」

 

「うん、後で送るね〜」

 

「サンキュ!」

 

ワイワイキャッキャと盛り上がる三人を見て

少し頬が緩む。

 

「……さて、そろそろ……屋台を巡るか?」

 

「だなっ♪」

 

「そうね。花火の前にはこれをしないとっ」

 

「やった!屋台巡りだ〜!」

 

こうして、私達は屋台を巡る旅に出る事にした。

 

────────

 

屋台巡りは結構波瀾万丈だった。

園子がたくさん食べ物を買ったり

園子が店ごと買いたいと牛串の店主に言って

須美と銀が無理矢理引き離して私が謝罪したり

 

……園子しか問題起こしてないな。

 

そして今は……

 

「むむ……ちょこざいな……」

 

園子が射的で一番大きな品である、巨大な鶏置物を狙っていた。

 

……こういうのは、

たしか当たっても倒れないようなモノだった気がするのだが

私のうろ覚えだろうか。

 

「あ、おい園子……それは……」

 

財布の紐を緩め、園子は親に渡されたであろう

野口英世の束を店主に渡す。

……福沢諭吉一枚分とはいかんが樋口一葉一枚分はあるよな。それ。

 

店主も苦笑いしながら、その札束を受け取る。

 

射的用の銃の音が何十発と鳴り響く。

 

「なんてこったい……」

 

物の見事に、当たっても倒れず

ラスト一発となってしまった。

 

「だからやめておけと……」

 

「あはは……」

 

「お小遣いが溶けたわね……」

 

私は溜め息を吐き、須美と銀は苦笑いする。

 

「園子、アレが欲しいのか?」

 

「うん……1等の鳥さん」

 

「なるほど……なら、園子。少し構えてみろ」

 

「う、うん……どうするのえみやん?」

 

私は園子の横に体を寄せて、

園子と一緒に銃を持つ。

 

「……須美」

 

「!……分かったわ」

 

言葉の意図を理解してくれたらしく、須美も園子の横に立つ

 

「そのっち、まずは落ち着いて、狙いを鶏に定めて」

 

「……うん」

 

「あの大きいのを取るなら……

当たった時に大きく品が動くようにするべきだ」

 

冷静に判断しながら、狙う場所を探す。

……上手く倒すなら……やはり頭か。

 

「狙うのは頭だ。……大丈夫。的は動かないから力を抜け。

射的の距離からして……減速や山なりにコルクが飛ぶ事はない」

 

肩を叩いて、リラックスさせる。

 

「……うん」

 

「そのっち。深呼吸……調整は私がするから」

 

「吸って……吐いて……吸って……吐いて……」

 

「タイミングは私が教える……信じて撃て」

 

「分かったよ……えみやん……!」

 

園子はゆっくりと銃口を鶏の置物の頭に向け、深呼吸する。

 

「……空気が士郎達のところだけ違うな」

 

銀が何か呟いたが……置いておく。

……呼吸のタイミングを園子に合わせる。

 

……まだ。

まだだ。

 

……銃口が少しだけ揺らめく。

…まだ撃つな。

 

そして、置物の頭と銃口が重なる。

 

「今────」

 

「ッ!」

 

パン!とコルクが撃ち出され、

置物の頭に直撃しその衝撃で置物が揺れる。

 

「後は気合いで……!」

 

「気合い〜!」

 

「き、気合い……?」

 

「なんだあの手の動き……」

 

よく分からない手の動きを須美と園子がする。

……自分だけしないのもアレなのでとりあえず真似てやってみる。

 

すると……置物は、倒れて……下に落ちた。

 

「……わぁい!やったああああ!」

 

「なんてこった……こんなのコルク玉で倒せる訳ないのに……!」

 

店主もさすがに驚愕していた。

……だろうな。それはさすがに想定していなかったか。

 

「それはどういう意味ですか?」

 

「え!?あぁ、いや……

……はいよ、持っていきな。お嬢ちゃん」

 

「わぁ……わっしー、えみやん。ありがとう♪」

 

「狙撃は得意分野だから♪

でも、引き金を引いたのはそのっちだから……

それはそのっちの物ね」

 

「だな。……あくまでサポートしただけだからな。私達は」

 

「うっひょー♪やったぜ!Fooooooo!」

 

園子は嬉しそうに置物を抱えるが……

 

店主に見せて……

 

「これを、そこにあるヤツと交換してください♪」

 

小さな猫のアクセサリー四つと交換するように頼んだのだった。

 

────────

 

時間は過ぎ、そろそろ花火が始まる頃だった。

 

「此処からならよく見れるわ。穴場よ!」

 

「下調べはバッチリだねぇ〜」

 

「過去のブログから特定したのよ」

 

「抜け目ないな……さすが須美……」

 

えっへん。と胸を張る須美に私と園子と銀は苦笑いしてしまう。

さすがと言うべきだな……

六法全書を軽く超える分厚さの栞を作るだけはあるか。

 

「あ……」

 

花火は打ち上がり、周りからは歓声が上がる。

 

「綺麗だなぁ……」

 

「……そうだな」

 

花火に見蕩れてしまう。

久しぶりに見たけど……打ち上げ花火は良いものだ。

 

前はいつ見たんだっけ。

そうだ、爺さんと────

 

っ……違う。それは()の記憶じゃない

 

少し溜め息を吐いてしまう。

その横で、須美が喋り出す。

 

「ありがとう、そのっち。これ」

 

「うん、皆でお揃いなんよ〜」

 

「なるほど、それでか」

 

そう、猫のアクセサリーはお揃いのものだった。

マフラーのようなものをした白黒の虎猫だ。

 

マフラーの色は赤、青、紫の三色だ

 

「……まぁそれは構わんのだが……何故私の猫だけ不貞腐れたような顔」

 

そして、私の猫だけが何故か不貞腐れたような顔の猫だった。

……なんでも、一番歳上という設定らしい。

 

「いーじゃん。士郎っぽいぞ?」

 

「そうね。士郎くんらしいと思うわ」

 

「……納得がいかん」

 

銀と須美の言葉に顔を顰める。

……この不貞腐れた顔の何処が私と似ているのだろうか。

小一時間程、園子達に問い詰めたかった。

 

しばらく、打ち上がる花火を四人で見つめる。

……言うべきか。少しだけ、緊張する。

 

「………………あり、がと……う」

 

「「え?」」「へ?」

 

「……きっと……私は須美や園子、銀が居てくれないと戦えなかった

……ずっと、怖かったんだ。失う事が。……守れない事が」

 

「士郎くん……」

 

「それが嫌で……必死に足掻いて、足掻いて……

その結果、こんな有様なわけだが……」

 

すっかり変わってしまった自分の身体を思い出し苦笑する。

 

「オレはきっと……一人でも居なかったら戦えなかった

だから……ありがとう。……私を、見つけてくれて。

オレを知ってくれて……俺と友達になってくれてありがとう」

 

「お礼なんて、こっちが言いたいぐらいだよ」

 

「うんうん、えみやんがいつも支えてくれて……

信じてくれたから、私はリーダーとしてがんばれたんよ〜?」

 

「そうね……士郎くんが居なかったら……

もっと大変な事になっていたかもしれないもの。

……特に、この前の銀」

 

「あぅ……ごめんって……もうあんな無茶はしないから……」

 

「……ハハ」

 

少し、顔が綻んで笑みが零れる。

そうか……意外と……私も慕われていたんだな。

 

「士郎くんもよ?

もうあんな無茶はしないで……」

 

「うぐっ……気を付ける……」

 

目を逸らすと、ギュッと須美が抱き着いてくる。

 

「おい……須美……?」

 

「もう一度約束して……士郎くん……無茶はしないって……」

 

……その身体は、手は、声は震えていた。

 

「……須美。……ああ、分かってる。

約束だ。……無茶はしない」

 

割れ物を扱うようにそっと、抱き締める。

 

「……士郎くんって温かいのね」

 

「それは当然だろう。私だって生きているんだぞ?」

 

「フフッ……そうね」

 

クスリと互いに微笑む。

 

「むぅ……えい」

 

「あ、ミノさん狡い〜。私も〜!」

 

「うぉ!?銀、園子もなにを……!?」

 

それを快く思わなかったのか、銀と園子も抱き着いてくる。

……そんなに気に障るようなことをしたか!?

 

「……須美だけずりーぞ。私だって士郎に抱き着きたいのに」

 

「私も〜。わっしー、独り占めはダメだよ〜?」

 

「そ、そのっち……銀も……」

 

「仕方ないな……と言いたいが……」

 

さすがに真夏にこれは辛い……

くっ……女性特有の柔らかい包み込んでくれるような良い香りと

三人の体温が重なって……

軽めの拷問だぞこれは……!

 

「……これ、いつまで続ける気か聞いて良いか?」

 

「んー……私達が満足するまでかな〜」

 

「異議なーし」

 

「そのっちの意見に賛成ね」

 

「────なんでさ」

 

しばらくこの拷問は続くようだ。

……というより、花火見ないで良いのか?

 

────────

 

「はい、データ受け取りました。確認中です。

……彼女達ですか?

……ええ、私の判断で休暇を与えています。

先の戦いでのメンタルダメージがかなり大きかった様子でしたので……

……はい。それでは……失礼します」

 

携帯の電源を切り、PCに送られてきたデータを確認する。

 

「これ以上……勇者に損失を出さない為の新システム……

……っ!?なに、これ……こんな物が実装されたら……!」

 

息を呑んでしまう。

……こんな、おぞましいモノを実装するというのか。

 

……武器や技の強化は幾らでも出来る。

だけど、心の強さには限界がある……あの子達を……もうこれ以上……

 

────────

 

最後の戦いは……刻一刻と近付いていた────




────最後の時は、あっという間にやってくる。
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