衛宮士郎は正義の味方である   作:星ノ瀬 竜牙

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今回は説明回も兼ねております。

少しだけ、彼の状態も分かる……かも……?


第二十一話 正体は────

「その子、懐いてるんですねー」

 

「えへへ、名前は牛鬼って言うんだよ」

 

私の頭の上に乗っかっている精霊、牛鬼を樹ちゃんは見る。

 

「可愛いですねぇ……」

 

「ビーフジャーキーが好きなんだよね!」

 

「牛なのに!?」

 

最初は驚くよね。私もビーフジャーキーを食べた時は

え!?ってなったもん。

 

「さてと……皆、元気そうで良かった。

昨日の事について、説明して……いく前に────」

 

風先輩はチラリと窓側にもたれかかっているあの人に目を向ける。

 

「……なるほど、たしかに私から言った方が良いか」

 

「えっと……わざわざ来てくれてありがとうございます!」

 

「なに、自分で言った事だ。来るのは当たり前だろう?」

 

「いやー、まさか屋上に行ったら本当に居るとは思わなかったわ……」

 

「……疑っていたのか、君は」

 

ジト目で風先輩を見つめていた。

 

「うっ……だって、普通はみんな、絶対居ないって思うじゃない!

よって、私は悪くなーい!」

 

「ごめんなさい……お姉ちゃんが……」

 

「いや、気にしてはいないよ。

そう思ってしまうのも無理はないと思うからね」

 

彼は、肩を竦めて苦笑いをしていた。

 

「……ゴホン!で、まずはなんだけど。

アンタは何故戦えるのか聞いて良い?」

 

「……それに関しては君らと変わらんと思うがな」

 

「は?どういう事よ、それ」

 

私達と変わらない?

それって……勇者ってことなのかな……

 

「こういう事だ」

 

彼は、ズボンのポケットから画面が真っ暗なスマホを取り出す。

そのスマホの裏には大赦のマークがあって……

 

「ええっ!?それ私達と同じ大赦製のスマホじゃない!?

アンタ何処で手に入れたのよ!?」

 

風先輩は驚いた様子で彼が手にしたスマホを見る。

……私達と同じスマホ。じゃあやっぱり勇者なんだ。

 

「さて、どうだったか。生憎、覚えていないのでね(・・・・・・・・・)

 

?どうしてだろう。今の言葉に違和感があった。

 

「はぁ?覚えてないって……まあ良いわ

それで、何処まで知ってるの?」

 

「知らない事は知らないし、知っている事は知っている」

 

「アンタねぇ……」

 

「フッ、冗談だ。君よりは知っていると思うよ。犬吠埼(いぬぼうさき) (ふう)

まぁ……奴らの名前は覚えていないんだが(・・・・・・・・・)

 

まただ、また少しだけ違和感があった。

 

「アンタ、いつの間に私の名前を!?

……さては、私のストーカー!?」

 

「……はぁ」

 

「ちょ!?なんでそこで溜め息吐くのよ!?」

 

「お姉ちゃん……黒板……」

 

「黒板?……あ」

 

風先輩は、しまった。という顔をした。

私達の名前はそこで確認できる。

部員の名前を、黒板に書いているからだ。

 

「と、当然分かってたわよ!?あえて試しただけだから!」

 

「……やれやれ、声が震えているぞ。犬吠埼姉」

 

「うぅ……なんかコイツに勝てる気がしないわ……」

 

「さて、それで?次は何を答えれば良い?」

 

「んん!そうね……じゃあ、名前と年齢ぐらいは良いでしょ?」

 

「そうだな……まあ、出来る範囲で答えるとしようか」

 

風先輩の言葉に頷き、彼は答える。

 

「……エミヤ。

年齢は……さて、13なのか14なのかか……はたまた15か」

 

「ふざけてるの?」

 

「いや、心底真剣だが?」

 

「いやどうみても巫山戯てるでしょうが!

何処の世界に名字と曖昧な年齢を答える男が居るのよ!?

男なんて、年齢鯖読みしなくて良いでしょうが!?」

 

「……私は望まれたままに答えただけなんだがな」

 

先程の違和感の正体が、分かった気がする。

……もしかして……この人は。

 

「あの!風先輩……!」

 

「ん?どったの友奈?」

 

「その……もしかしてなんですけど……

……記憶がない(・・・・・)んじゃないですか?」

 

「……え?」

 

風先輩はキョトンとするけど、

男の人……エミヤさんは目を丸くしてこちらを見つめてきて……

 

「……驚いた。ぼやかしていたとはいえ、

こうもあっさり気付かれるとはね……君は確か……」

 

「あ、はい!讃州中学二年!結城(ゆうき) 友奈(ゆうな)です!」

 

「友奈……か。

……あぁ、良い名だな。君に似合っている」

 

「え!?そ、そうですかね?」

 

懐かしそうにしながらも、

そんなふうに言ってくれるエミヤさんに照れてしまう。

 

「えっと……ほんとに記憶ないの?」

 

「ああ、悲しい事にね。

二年前より……つまりは、298年以前の記憶は殆ど無いに等しい。

覚えているのは、このエミヤという名前ぐらいだ。

年齢に至っては自分でもハッキリしていない」

 

淡々と、他人事のようにエミヤさんは告げる。

まるで全然気にしていないように。

二年前……たしか東郷さんも……

それより以前の記憶が抜け落ちてるって……

 

「マジで記憶がないってわけね……」

 

「ああ、とはいえ……一般常識はある程度覚えていると思うぞ。

……何処までの範囲かは分からんがね」

 

「バーテックス……ああ、あの怪物達の事なんだけど

アイツらになにかされたのかしら?」

 

「さてな、そこも分からん。

覚えているのはヤツら……バーテックスだったか。

それを倒さねばならん事と……

そうだな、花が咲くのを防ぐ……ことだったか」

 

「花が咲く?どういう事よ」

 

「さて、私にもさっぱりだ。

青と赤と紫の花だというのは分かっているんだがね……

それに戦っていた理由は

最早、本能的な強迫観念からくるものだった」

 

エミヤさんはそう告げて、肩を竦める。

その時、横で東郷さんが手を挙げる。

 

「あの……エミヤさん……」

 

「……君は……ああ、私があの時」

 

「はい、東郷(とうごう) 美森(みもり)と言います。

あの時はありがとうございます。

それで……その……」

 

……東郷さんが何を言いたいのか分かった。

 

「エミヤさん、東郷さんも……少し前の記憶がないんです。

それで……見覚えとかはないですか?」

 

「そういうことか…………ふむ……」

 

少し、エミヤさんは考え込むが……

しばらくして首を横に振る

 

「いや、すまない。君とは会った覚えがない

……君のような綺麗な女性なら、覚えているはずなんだが。

力になれなくてすまないな」

 

「いえ、私の方こそ、不躾な質問をしてすいません……」

 

「気にするな。

とはいえ……会った。という可能性は充分にある。

君と私の存在しない記憶の中の何処かで。の話になるかもしれんが。

もし、それが分かれば君も私も少しだけ思い出せる可能性があるのは事実だからね」

 

エミヤさんはそう東郷さんを安心させるように笑った。

 

「んー……思ったんだけどサ。

エミヤ。アンタのスマホ。どうなってるの?」

 

「……生憎、バッテリー切れでね。何も出来ないのさ」

 

「あー、もしかしてその外套のままなのってそれが原因?」

 

「ああ。解除も出来ないようだったからね。ずっとこの服さ」

 

「……じゃあさ、大赦で直してもらうのはどうかしら?」

 

あ……そっか。

壊れているなら、直せば良いし……それに直ったら。

 

「なるほど……直せれば

私の個人情報が見つかるかもしれんな」

 

「でしょ?」

 

「だが、これが私の持っていた私物でない可能性もあるぞ?」

 

「だから、そこを詳しく調べてもらうってことよ。

直すついでにね。後で良いからそれ、私に渡しなさい。

大赦の方に手続きしてあげるワ」

 

「……素直に礼は言わせてもらおう。犬吠埼姉」

 

「風で良いわよ。

犬吠埼だと樹と被っちゃうし……わざわざ姉をつけるのも面倒でしょ?」

 

「ふむ、たしかに……ではフウと。

……ああ。なるほど、良い名だな」

 

「お、私の名前のセンスが分かるなんて……中々やるじゃない!」

 

「君の活発さに(かぜ)という文字はよく似合う。

だが、そよ風。という人にとって心地よい風が存在する事も考えると……

なるほど、他者を気遣う優しさを持っているからこそ

フウという名前なのかもしれないな。

私は素敵な名前だと思うよ」

 

「そ、そうかしら……?」

 

風先輩の顔が赤くなっていくのがこちらからだと凄く分かる。

 

「ああ、君に合っている」

 

「うぅ……恥ずかしいわね……」

 

「凄い……お姉ちゃんの顔が赤くなってる……」

 

「えっと、樹ちゃん……やっぱり珍しいの?」

 

「はい、普段は褒められても平然としてる事が多いんですけど……

ここまで赤くなるのって珍しいかもしれません」

 

「ほぇー……」

 

風先輩の意外な一面を見れた私達だった。

 

「ああもう!アンタの事はだいたい分かったから

今度はこっちの説明するわよ!ちゃんと聞きなさい!良いわね!?」

 

「「は、はいっ!」」

 

風先輩が大声で、そう告げてきて私達はぎゅっと畏まる。

 

「アンタもよ、エミヤ!!」

 

「私もか?」

 

「戦う上でアイツらの事知っておいて損は無いでしょ!」

 

「ふむ、それもそうか……」

 

エミヤさんも、風先輩の説明を私達と聞くことになった。

 

「えっと……戦い方はアプリに説明テキストがあるから……

今は、何故戦うのかって話をしていくわね」

 

風先輩はそう言って、黒板のよくわからない絵を指刺す。

 

「コイツはさっきも言ったけど、バーテックス

人類の敵が、あっち側から壁を越えて十二体攻めて来ることが

神樹様のお告げで分かったわけで……」

 

「あ、それこの前の敵だったんだ……」

 

「き、奇抜なデザインをよく表した絵だよね!?」

 

上手くフォローを入れることが出来たか不安だったけど

風先輩の説明に耳を傾ける。

 

「目的は神樹様の破壊。以前にも襲ってきたらしいんだけど

その時は頑張って追い返すのが精一杯だったみたい」

 

「追い返す……か」

 

あれ?じゃあエミヤさんは……何処で戦っていたんだろう?

侵入を許してしまった。って言ってたけど……

 

「そこで大赦が作ったのは、

神樹様の力を借りて勇者と呼ばれる姿に変身するシステム

人智を超えた力に対抗するにはこちらも人智を超えた力ってわけね」

 

「眼には眼を歯には歯を。の理論か」

 

「そういうことよ」

 

「その絵、私達だったんだ……」

 

大赦の文字の下にある、赤丸で囲まれた人らしき絵が

四人分書かれていたことから

多分樹ちゃんの言う通りなんだろう。

 

「げ、現代アートってやつだよ!」

 

「ん"ん"っ!……注意事項として、樹海が何かしらの形でダメージを受けると

その分、日常に戻った時に何かの災いとなって現れると言われてるわ」

 

「あ……」

 

心当たりがあった。

同級生の子が言っていた事。

 

隣町で交通事故があったという内容だ────

 

「派手に破壊されて大惨事。なんてならないように

私達勇者部が頑張らないと……」

 

「その勇者部も、

先輩が意図的に集めた人達だった。というわけですよね?」

 

「……うん、そうだよ適正値が高い人は分かってたから」

 

風先輩は申し訳なさそうに、東郷さんの質問に答える。

 

「私は……神樹様を御祀りしている大赦から使命を受けてるの。

この地域の担当として……」

 

「知らなかった……」

 

「黙っててごめんね……」

 

樹ちゃんの言葉に風先輩は謝罪する。

 

「……次は敵……いつ来るんですか?」

 

私は不安になって風先輩に聞いてみた。

 

「明日かもしれないし……一週間後かもしれない。

そう遠くはない筈よ……」

 

……いつ襲撃が来るかわからないって事なんだと理解させられた。

 

「なんでもっと早く……

勇者部の本当の意味を教えてくれなかったんですか?

友奈ちゃんも樹ちゃんも……死ぬかもしれなかったんですよ?」

 

「………っ、ごめん。

でも……勇者の適正が高くても、

どのチームが神樹様に選ばれるは……敵が来るまで分からないのよ。

むしろ……変身しないで済む確率の方がよっぽど高くて」

 

「何十分の一か……はたまた何分の一か。

だが……たしかに、確率だけで見ると選ばれる確率は低いだろうな。

もっとも……、仕組まれていなければの話だが

 

「そっか、各地で同じような勇者候補生が……居るんですね」

 

私は不安そうな表情をしている

東郷さんを気にかけながら、そう答える。

 

「うん……人類存亡の一大事だからね……」

 

「こんな大事なこと……ずっと黙っていたんですか……」

 

「……東郷」

 

東郷さんが勇者部の部室から出ていってしまって……

 

「行くといい。友奈。君が行くのが一番良いだろう」

 

「はい!……私、行ってきます!」

 

どうすれば良いか迷っていたら、

エミヤさんが背中を押してくれて……私はすぐに東郷さんを追いかけた。

 

────────

 

吹奏楽部が練習しているらしく、楽器の音が聞こえる。

 

「はぁ……」

 

その音を聞きながら、私は溜め息を吐いてしまう。

 

そっと、紙パックのお茶が渡される。

それを渡してきたのは他でもない……

 

「友奈ちゃん?」

 

「はい、東郷さん。私の奢り!」

 

いきなり言われて少し困惑してしまう。

 

「え、でも……そんな理由なんて────」

 

「あるよ?だって、さっき東郷さん。

私の為に怒ってくれたから……」

 

ないと言おうとすると、

友奈ちゃんが遮ってそんなふうに言ってくれる。

 

「だから、ありがとね。東郷さん♪」

 

笑ってお礼を言ってくる友奈ちゃんが

少し私には羨ましくも思えて────

 

「あぁ……なんだか友奈ちゃんが眩しい」

 

「え?どうして?」

 

不思議そうに友奈ちゃんが聞いてくる。

……そして、自然と理由が口から出ていた。

 

「えっとね……私、昨日ずっともやもやしてたんだ……

このまま変身出来なかったら、

私は勇者部の足で纏いになるんじゃないかって」

 

今もずっとそう思っている。

事実、あの時エミヤさんが居なかったら……そう思うとぞっとした。

 

自分が死んでいたかもしれない。

それで友奈ちゃんや皆が……苦しんだかもしれない。

 

そう思うと怖くて仕方なかった。

 

「そんな事ないよ、東郷さん!」

 

「だからさっき怒ったのも、

そのもやもやを先輩にぶつけてたところもあって……」

 

ただの八つ当たりだったのかもしれない。

風先輩は優しい人だ。

だから、黙っている事が一番辛かったのはきっと風先輩で……。

 

「私、悪い事言っちゃったな……」

 

「東郷さん……」

 

……でも、私が一番気にしているのは

 

「友奈ちゃんは皆の危機に変身したのに……」

 

「ん?」

 

「御国が大変な時なのに……」

 

「と、東郷さん?」

 

「私は……私は勇者どころか……敵 前 逃 亡 ……」

 

それが一番、大和魂を持つものとして恥ずべきことだった。

 

「おーい、東郷さーん……?」

 

「風先輩の仲間集めだって、国や大赦の命令でやっていた事だろうに……

はぁ……私はなんて────」

 

「わあああ!わあああ!?

そうやって暗くなってたら駄目だよおお!?

じゃ、じゃあ私のお気に入りを見せてあげるね!

これ見たら凄く楽しくなるよ!」

 

友奈ちゃんはそう言って、赤いメモ帳を取り出す。

……あれはたしか、押し花を集めているメモ帳

 

「じゃじゃーん!きのこの押し花!

えへへ、凄いでしょ!とうもろこしのもあるよ?」

 

励ましてくれているというのは分かっている。

けど……それが少し私には辛くて……

 

「……うん、綺麗だね」

 

「気を遣わせてしまった……!?」

 

友奈ちゃん。心の声が漏れてるよ……。

そう言いたくなった。

 

「え、ええっと……一番、結城友奈!一発ギャグ行きます!!

牛鬼ごめんね……!

 

友奈ちゃんは精霊の牛鬼を服に押し込んで……

 

「ねぇ見て、私のバストまるでホルスタイン────」

 

……牛鬼を胸の部分に持っていってそんなネタをする友奈ちゃん。

 

「私の為に、こんなネタを……」

 

「わぁあああ!?逆効果ああああ!?」

 

服の中にいる、牛鬼をどうにかしようとする友奈ちゃんを見て

疑問に思った事を口にしてしまう。

 

「ねえ、友奈ちゃんは……大事な事を隠されて怒ってないの?」

 

「ぉおおおお……お?

……うーん、そりゃ驚きはしたけど……でも嬉しいよ?

だって、適正のおかげで風先輩や樹ちゃんと会えたんだから!」

 

「────この適正のおかげ?」

 

「うん!」

 

友奈ちゃんのその言葉で少し、もやもやが晴れた気がした。

 

「友奈ちゃんも知ってると思うけど……

私は中学に入る前に事故で足が全く動かなくなって……

記憶も少し飛んじゃって……学校生活を送るのが怖かったけど……

それでも、友奈ちゃんが居たから不安が消えて

勇者部に誘われてから……学校がもっと楽しくなって……

そう考えると、適正に感謝だね」

 

「これからも楽しいよ!

ちょっと大変なミッションが増えただけで!」

 

友奈ちゃんは私の手を握って、そう告げる。

あぁ……なんだ、こんな簡単な事だったんだ。

 

「うん……そっか……そうだね!」

 

「あ……えへへ!」

 

私が笑ったのを見て、友奈ちゃんも笑っていた。

 

────────

 

部室にて樹くんと風が悩ましい表情でいる

 

樹くんはタロットカードで占いを始め、

風は東郷への、謝罪をどうするか考えていた。

 

「如何にしてお姉ちゃんと東郷先輩が仲直りするか……」

 

「えっとぉ……説明足りなくてごめんねっ☆

……軽すぎて、もっと怒っちゃうかな?

本当に、ごめんなさい!!

……これもダメよね……困った!……どうやって仲直りしよう」

 

「普段通りの謝り方で良いんじゃないか?」

 

「え?」

 

「誠意を見せようとするのは良いが、彼女のような質には

気を遣わせてしまうだけだ。

……となれば、いつものように謝れば良いだけだと思うが?」

 

私の言葉が意外だったのか、風は目を丸くしてこちらを見る。

 

「……そっか、ごめんなさいね。

アンタにまで気を遣わせちゃって」

 

「気にするな。

これでも……困っている他人(ひと)を放っておけない質の人間でね」

 

申し訳なさそうにする風に、こちらは肩を竦め苦笑するのだった。

 

「樹の占いはどうなったの?」

 

「今結果が出るよー……えい!」

 

樹くんが最初に捲ったカードは

『THE LOVERS.』つまりは『恋人』のカードの正位置だった。

 

意味は確か……楽しい、無邪気、甘いムード。

幸運がやってくる。

 

だったか……

 

「お、なんかモテそうな絵じゃない!

他のは?」

 

「えっとね……あれ?」

 

樹くんが捲った『吊るされた男』のカードを

机に置こうとした時、異変が起きた。

 

置いたはずのカードが、途中で制止していたのだ。

 

それはつまり────

 

風達のスマホから警報が流れる。

 

風の精霊、(おそらくは)犬神が風のスマホを持ってくる。

スマホには『樹海化警報』と書かれていて────

 

「まさかの連日……!?」

 

「やれやれ……運がないな。私も」

 

干将・莫耶を投影しながら、私は溜め息を吐く。

 

────世界が塗り変わっていく感覚が私の体を支配した────




今回は敢えて、東郷さんの心象で彼の事はあまり触れませんでした。
これを伏線と捉えるかどうかは……皆様のご自由に────
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