衛宮士郎は正義の味方である   作:星ノ瀬 竜牙

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のわゆの上巻読んでから、下巻を少しだけ試し読みしたんですけど、
少し複雑な心境で読むハメになりました。

あの暴動が起きた場所が地元というか……
今住んでる場所なので、なんとも言えませんでしたね。

誰かの日記で妹を殺されたとか書いてあったのが
いつも通っているあの地下街で起きた事だと想像すると少しだけぞっとします。

何処とは言いませんが、のわゆを買った人ならわかるはず……。

ちなみに私の実家は香川です(どうでも良い)


第二十二話 ろうたける思い。或いは固い絆

「三体同時に来たか……モテ過ぎでしょ」

 

目の前に存在する、三体のバーテックスを見て風は顔を顰める。

だが、私には……何故か妙な既視感があって────

 

「あの三体……」

 

「ん?見覚えあるの?」

 

「ああ……とはいえ曖昧なものだがな。

……今回の輩が厄介だという事だけは頭に入れておくといい」

 

「ははぁ……オーケー、注意しとくわ」

 

風はそう言って大剣を構えた。

 

「彼女も巻き込まれるのか……」

 

「……そうみたいね。

こっちの事、少しは考えてくれても良いとは思うんだけどねぇ

神樹様もさ」

 

東郷美森が、樹海化に巻き込まれているのを見て

少し、複雑な顔をしてしまう。

戦いを望まない少女を此処に居させるのは好ましいとは思えない。

 

だが……

 

「そこは、人と神の価値観の違いもあるだろうな。

規模や年齢なども月とスッポンレベルでの差がある分……仕方ないのかもしれん」

 

「……まあそこは、追々大赦の方で聞いてみるわ」

 

「それが賢明な判断だな」

 

今後の事を話していると、友奈が駆け寄ってくる

 

「お待たせしました!結城友奈、到着です!」

 

「よし、揃ったわね。

とりあえず……あの遠くにいる青いヤツは放っておいて

先に近い二体を倒すわよ!」

 

「あっ!?」

 

その時、青いバーテックス。射手座(サジタリウス)

二つある口のうち、上の口から巨大な一本の針を飛ばしてくる。

 

まずい────

 

「やっば────!?」

 

「熾天覆う七つの円環!」

 

直撃コースだった、風を庇う形でアイアスを展開し

針を防ぐ。

 

「大丈夫か、風!」

 

「サンキュー……助かったわ、エミヤ」

 

「気にするな。とはいえ……四枚持っていかれるとはな……

……ッ、まだ来るぞ!」

 

下の顔がある口から、無数の光の針を飛ばしてくる。

 

「いっぱい来たああああ!?」

 

「全員散開して!!」

 

光の針を避けながら各自がバラバラの方向に散って行く。

 

「撃ってくる奴をなんとかしないと────!」

 

友奈はそう言い、射手座を狙いに走るが……

 

「まずい────!?」

 

「友奈さん、後ろです!!」

 

赤色のバーテックス。蟹座(キャンサー)

盾のようなものを展開して、光の針を反射させ跳ね返してくる────

 

「うぇ!?あわわわわわわ!?」

 

「あの状況下で捌けるとは……」

 

だが、友奈も迫ってきた光の針を

拳で自分に当たるであろう針だけを綺麗に捌いたのだ。

 

「ほっ……っ!?」

 

しかし、安心したのも束の間……

黄色のバーテックス。蠍座(スコーピオン)が尾の尖端にある針で友奈を刺す。

 

「友奈さん!?」

 

彼女の精霊である牛鬼が友奈をバリアで守るものの、

その後、落下していく友奈を更に尾で薙ぎ払う

 

「きゃあああ!?」

 

「くそっ────!!」

 

私は、友奈の方へと走るが……

 

「……ッ!やはり遠距離が居るのは厄介極まりないな!!」

 

射手座の針を蟹座が上手く反射させて、

こちらと風達にも飛ばしてきたのだ。

 

「こうなったら、弓で────!」

 

黒い洋弓を投影しようとするが……

 

「まずい────エミヤ!避けなさい!」

 

「しまっ────ぐああああ!?」

 

射手座が巨大な針を再び撃ち出し、

それに気付けなかった私は直撃し、勢いよく吹き飛ばされる。

 

「かはっ!?」

 

そして吹き飛ばされ、

樹海の根に勢いよく叩き付けられ

空気を一気に口から吐き出してしまう

 

「……ぐ……まずっ……たな。

……どうせなら……衝撃も、抑えて欲しいもの……だが」

 

酒呑童子が貼ったバリアのおかげで致命傷は防げるが

衝撃までは抑えることができないのだ。

 

贅沢は言えないが……もう少し、どうにか出来ないのだろうか……

 

「まずい……友奈……!」

 

蠍座に何度もバリアを突き刺され、

身動きが取れない状態になっている友奈を見て焦る。

どうすれば良い……どうすれば挽回できる……!?

 

「やめろ……友奈ちゃんを……友奈ちゃんを────」

 

「いじめるなああああああああ!!」

 

その時大声で叫ぶ、東郷の声が聞こえた────

 

「まずい……東郷に気付いて────!?」

 

蠍座は、その声に気付いたのか

東郷に向けて尻尾を突き刺そうとするが……

 

それを、卵のような精霊がバリアを展開して防ぐ。

 

「私……いつも、友奈ちゃんに守ってもらってた……」

 

「東郷さん……?」

 

「だから……だから次は私が勇者になって────

友奈ちゃんを守る!!

 

勇者システムは東郷のその思いに答えるように起動して……

 

「……綺麗」

 

(あさがお)……」

 

青い蕣を思わせる勇者の装束を着込んだ東郷が立っていた。

 

「ッ────!?」

 

その時、自分の頭にノイズがかかる。

青く、空に咲く蕣。そして……その前には────

 

「……今のは?」

 

見覚えがないはずなのに、

少しだけ懐かしいような悲しい感覚に襲われた。

 

東郷は片手銃を取り出す。

そして先程バリアを貼った精霊とは違う、

狸の精霊が横に浮いていた

 

「もう友奈ちゃんには手出しさせない────!」

 

もう一度突き刺そうとしてきた蠍座の尾の針を

東郷は的確に撃ち抜いた。

 

東郷は再び武器を持ち替え、二丁拳銃を手に持つ

同時に狸の精霊が消え、鬼火のような精霊が現れる。

 

「凄い東郷さん……これなら……!」

 

銃弾を連続して撃ち込み、確実に蠍座の動きを封じる。

 

「友奈!」

 

「エミヤさん?」

 

「アイツを、赤色のバーテックスまで飛ばせるか?」

 

「────分かりました、やってみます!」

 

友奈は私の言葉に頷いて────

 

────────

 

「ああ、もう!執拗い男は嫌いなのよ!」

 

「モテる人っぽいこと言ってないで

なんとかしようよお姉ちゃん!」

 

たしかに、この状況はまずい……

とはいえ、あれだけ撃たれるとどうすれば良いか……

 

そう考え込んでいると、

バーテックスがバーテックスの上に降ってきた。

降ってきた────

 

「うそ!?」

 

「ええ!?」

 

困惑しながらも、今がチャンスと見て

私と樹は上まで跳ぶ。

 

「よっと、海老運んできましたー!」

 

「いや、蠍でしょ」

 

「「どっちでも良いから(どっちでも良いだろ)……」」

 

友奈の言葉に返した私に向かって、

エミヤと樹が呆れた様子で苦笑いする。

名前は星座から取られてるらしいから

蠍だという事は言っておくべきじゃないだろうか。

 

「あ……」

 

友奈とエミヤに続くように、見覚えのある顔がやって来る────

 

「東郷先輩!!」

 

「遠くの敵は、私が狙撃します!」

 

「東郷……戦ってくれるの?」

 

「………!」

 

私の問いに、東郷は頷いて……

それが少し私には嬉しかった。

 

「援護は任せてください!」

 

「……分かった!手前の奴らをさっさと片付けるわよ!!

全員、散開!」

 

「「OK!」」「承知した」

 

「不意の攻撃には充分気を付けて!」

 

「「はい!」」

 

東郷の言葉に樹と友奈ははっきりと返事をして……

 

「私の時より……返事が良い……」

 

「…………」

 

少し落ち込んだ私の肩をポンと叩いてから

エミヤは二人の後を追った。

 

「って、女の子が落ち込んでいるんだから

励ますぐらいしなさいよ!!?」

 

遅れをとってはいけないと、私も三人の後を追うのだった。

 

────────

 

「一気に封印したいどころだけど……」

 

一気に二体封印するということは、

それだけ多くパワー残量を減らすという事だ。

三体居る中で、一気に減るのはまずい。

 

なら────

 

「風、黄色の方は任せてくれないか?」

 

「え?でも、アンタ封印の儀────」

 

「真似事なら出来る。なに、私にはちょっとした裏技もある。

それに……あれには少々借りがあってね(・・・・・・・)

 

そう、干将・莫耶を利用すればおそらく封印は出来るだろう。

そして……アイツには少々借りがあるのも事実だ。

 

「……分かった。その言葉信じるわよ。

友奈!樹!赤い方封印するわよ!黄色はエミヤに任せる!」

 

「「はい(うん)!」」

 

「礼を言う、風」

 

素直に感謝するほかなかった。

 

「別に良いわよ。けど……失敗しないでよ!」

 

「当然だ。……もう少し早く君みたいな子に会えていたら

私も惚れていただろうな」

 

「んなっ!?ちょ、ちょっと!?」

 

顔を赤くした風。

少しだけ意地の悪い笑みを私は浮かべて

私は蠍座の方へ向かって行った。

 

干将・莫耶のオリジナルは『怪異に対し絶大な威力を発揮する対魔の剣』だ。

アレらが神に産み出されたものであれ、

人にとって邪悪なモノであるならば多少なりとも効果はある。

 

現にそれは、投影品である

こちらの干将・莫耶でダメージを与えれた事で証明できている

 

そして、これはかつての私の手で

魔除けの文句が刻まれている。

それにより巫術器具として使うこともできるという代物だ。

 

ならばこそ、封印の儀に近い事は可能だろう。

質は劣る、故に二本だけでは不可能。

 

では?

 

単純だ。

数を増やせば良い。

 

ならば、やり方は一つ────

 

「ハァッ────!」

 

手に持っていた干将・莫耶に魔力を込めて蠍座に向けて投げる。

 

鶴翼(しんぎ)欠落ヲ不ラズ(むけつにしてばんじゃく)

心技(ちから) 泰山ニ至リ(やまをぬき)

 

投げた二本が蠍座の背後に回ったのを確認して、

新たに二本、干将・莫耶を投影しそれを再び投げる。

 

心技(つるぎ) 黄河ヲ渡ル(みずをわかつ)

唯名(せいめい) 別天ニ納メ(りきゅうにとどき)

 

四本の干将・莫耶が蠍座に突き刺さった事を確認して、

最後に魔術で強化し

鋭利で巨大になった干将・莫耶のオーバーエッジを投影する。

 

そして、その投影した二本を手に持ち、跳び上がった後

 

両雄(われら) 共ニ命ヲ別ツ(ともにてんをいだかず)

 

鶴翼三連・封印ノ型(かくよくさんれん)────!

 

全力を以て蠍座に向かって叩き付ける────

 

これは、言わばアレンジした型だ。

本来は斬り込む技だが、ヤツらの巨体にそれは通じない。

言わば、封印の為に生み出した……オレ(・・)のみが使える技────

 

オーバーエッジの干将・莫耶が突き刺さると同時に、

蠍座の足が抱えていた丸い器のようなものから御霊が出現する。

 

「ほんとに出た!?どうやったのよ!?」

 

「単純だ!言ってしまえば

コイツは質は劣るが対魔の剣!

質が劣化しているなら、

それを数で押せば良い、それだけの事さ!!」

 

「滅茶苦茶だけど理にかなってるわね!!」

 

「お姉ちゃん!こっちも出たよ!」

 

そして、同じタイミングで蟹座からも御霊が出現した。

 

「私、行きます!」

 

友奈が蟹座の御霊を壊しに行くが────

 

「あれっ?

フッ────……あれぇ!?

このっ!……この御霊、絶妙に避けてくるよ!?」

 

ひらりひらりと、絶妙なタイミングで攻撃を躱す。

 

「だったら……交代して友奈!」

 

友奈と入れ替わり、風が大剣で斬り込む。

だが、それすらも躱す。しかし、風は余裕そうに笑って────

 

「点の攻撃をひらりと躱すなら……!」

 

精霊によって、大剣を更に巨大に変貌させ……

 

「面の攻撃でぇええ……!

 

押し潰うううううすっ!!

 

大剣をバットように使い、御霊を上に飛ばし、

その上から巨大になった大剣の平らな面で叩き潰した────

 

「ふふん、ひとぉつっ!」

 

その時、彼女の服の足にある花の模様が光った気がした────

 

「よし、次はこいつ────」

 

蠍座の御霊に視線を向ける。

その時、御霊に異変が起こり……

 

「な、なんか増えたああ!?」

 

「向こうも数か……!?」

 

舌を打つ、御霊を壊すためには

一点に集中した時を狙わないと壊せない────

 

「数が多いなら……!」

 

樹くんが蔦に巻かれているような腕輪を右腕に出現させ

ワイヤーを射出する。

 

ワイヤーは、増えた御霊を雁字搦めにして────

 

纏めて、えええええええい!!

────えいっ!」

 

キツく縛られた御霊は一つ一つワイヤーで切り裂かれていき、

最後の一つも粉々に切り裂かれた。

 

その時、樹くんのうなじにある花の模様が風同様光った────

 

あれは……何処かで……?

 

「ふぅ……」

 

「ナイス樹!あと一つ!!」

 

……射手座を睨みつける。

今は東郷が狙撃で抑えてくれているが……

 

『風先輩、部室では言い過ぎました。……ごめんなさい』

 

「東郷……」

 

『精一杯援護します!』

 

「心強いわ、東郷!私の方こそ────」

 

風が謝罪しようとした時、射手座の中心部分に

東郷が撃った弾丸が正確に直撃し爆発が起こる。

 

「ほぇ〜……」「ひぇぇ〜……」

 

「えっと……ほんとごめんなさい……はい……」

 

友奈と樹は驚いた様子で射手座を見つめ、

風は電話越しに頭をペコペコと何度も下げて謝罪していた。

 

ただ、少し私には違和感があった。

 

「あれだけ大きければ当たる可能性は高い……

だが、ここまで精密に、バラツキがなく撃てるものか……?」

 

まるで、東郷が戦いを経験していたかのように、

銃を握った事があるように思えた。

 

それが、違和感を増長させたと同時に。

何故か懐かしさを感じさせた────

 

「よし、封印開始!!」

 

撃ち抜かれ、射手座が怯んだ隙を狙い

封印の儀を始めるが……

 

射手座の口から出た御霊は高速で射手座の周囲を廻り始める。

 

「この御霊……」

 

「早いッ!?」

 

「……枯れ始めてる……まずいか?」

 

動きが掴めない……だったら。

 

「風!スマホを貸せ!」

 

「え!?良いけど、何する気よ!?」

 

「四の五のは後だ!」

 

「ああ、もう!分かったわよ!変な所弄らないでよ!?」

 

風はスマホをこちらに渡す。

私は借りたスマホで東郷と連絡を取る。

 

「東郷、聞こえるか」

 

『エミヤさん?』

 

「ああ、今は風のスマホを借りている

……アイツの御霊を狙い撃てるか?」

 

『……動きが早いので正確に狙えるかは』

 

「可能では、あるんだな?」

 

『はい────』

 

彼女は、はっきりと断言した。

それを聞いて、即座に勝った。と確信してニヤリと笑う。

 

「フッ……なら、アレの動きを一瞬だけ止めたら良いんだな?」

 

『できるなら……でも……』

 

「なら、それは私がやろう」

 

『────!』

 

電話越しでも驚いた事が分かる。

 

「……安心しろ、狙った獲物は外さん主義でね。

君は、止まった隙を狙い撃て」

 

『……分かりました。お願いします』

 

「……ああ」

 

『不思議です。エミヤさんと話すと、少しだけ懐かしさを感じます』

 

「……私もだ。

案外、失った記憶の何処かで会っていたのかもしれないな」

 

『フフッ、そうかもしれませんね。

……ご武運を。信じています』

 

「任せたまえ」

 

通話を切り、風にスマホを投げ返す

 

「わっ!?ちょっと、私のスマホなんだから大切に扱いなさいよ!?」

 

「スマホは自分の物なら仕舞えるだろうに」

 

「あ……」

 

忘れていたのか、少しだけ拍子抜けした声を風は漏らす。

 

「やれやれ……」

 

溜め息を吐いて、即座に黒い洋弓を投影しながら

ある程度の距離を置く。

 

……狙う必要はない。撃ち抜く必要もない。

ならば、螺旋の剣も呪いの朱槍も不要。

 

故に、投影すべき剣は一つのみ。

 

「投影、開始────」

 

歪な黒い剣を投影する。

そして、その剣を洋弓に添え弦を引き絞る。

 

「狙う必要はない……特徴は覚えたな?

────赤原を行け、の猟犬」

 

弦を手から離し、剣を撃ち出すと同時に

その剣の真名()を口にする。

 

赤原猟犬(フルンティング)

 

猟犬は素早く動く御霊を追いかけ、直撃する。

 

「当たった!」

 

だが、これでは壊れない。

────ああ、そうだ。私は本命じゃない。

 

本命は、彼女だ────

 

「まさか、東郷先輩!?」

 

「撃ち抜いた!?あの一瞬の隙で!?」

 

銃弾が、一瞬だけ動きが鈍った御霊を貫く。

 

御霊は徐々に、動きが遅くなり……消滅した。

 

「……片付いたな」

 

それぞれが己の獲物を仕舞う。

 

「アンタ、弓も出来たのね」

 

「どちらかといえば、こちらの方が本職だよ。

剣は近距離相手の対処に使っているだけさ」

 

「アレを見せられた後じゃ信じられないわよ、それ」

 

風は苦笑いをして、そう告げてくる。

だが自分にとっては事実でしかないので肩を竦めるしかなかった。

 

────────

 

「東郷さんかっこよかったなぁ!ドキッとしちゃった!」

 

「でも、本当に助かったわ。東郷。

えっと……それで……」

 

「覚悟はできました。私も……勇者として頑張ります!」

 

「東郷!ありがとう!一緒に国防に励もう!」

 

「国防……!はい!!」

 

仲直りした二人を見て、クスリと微笑んだ。

 

「良かったですね。仲直りできたみたいで」

 

「そうだな、樹くん」

 

「樹で良いですよ、エミヤさん」

 

「良いのか?」

 

「はい!また助けてもらっちゃったのに、

他人行儀なのもなんだか嫌ですから……」

 

少し恥ずかしそうに、樹くん。いや……樹はそう告げる。

 

「おお!樹が自ら!?これは撮っておかないと────」

 

「お姉ちゃん!?撮らないでよ!?」

 

樹と風のやり取りを見て、東郷と友奈と私は笑う。

 

「そういえば、友奈ちゃん。課題は?」

 

「あっ!?課題明日までだった!?

アプリの説明テキストばっかり読んでて……」

 

「そこは守らないから、頑張ってね?」

 

「そんなぁ〜!?」

 

「……うぅ……はい

勇者部五箇条!一つ!なるべく諦めない!」

 

そんな友奈の言葉に

やれやれ、と肩を竦めるのだった。

 

────────

 

「へ?」

 

「嘘……!?」

 

私と東郷さんは目を疑う。

だって、此処に居るはずのない人が……黒板の前に立っていて────

 

「今日から、転入する事になった衛宮 士郎だ。

迷惑をかけるかもしれないが、よろしく頼む」

 

「衛宮くんは、少し前に大きな事故にあったショックで

過去の記憶が幾つか無くなっているらしいので、

あまり過去の事は聞かないようにしてあげてくださいね。

席は……そうね、東郷さん。車椅子の子の横で良いかしら?」

 

「構いません」

 

「じゃあ、席について。

朝のホームルームを始めますよー!」

 

エミヤさん……じゃなくて、

衛宮くんが東郷さんの横に用意された席にまで歩いて……

 

「まぁ、色々聞きたい事があるだろうが……後でな?」

 

苦笑して、私や東郷さんに小声でそう告げた。

 

今日は私達にとって忘れられない日になった────




ろうたける思い。

菊の花言葉。

固い絆。

蕣の花言葉。


誰のことを指しているかは分かりますよね?
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