衛宮士郎は正義の味方である   作:星ノ瀬 竜牙

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今日友奈ちゃんの中の人。照井春佳さんの誕生日じゃん!と思い出し慌てて書きました。

今回、本編登場のバーテックスを先行登場させましたが……
本格的に戦うのは本編なのでかなり簡潔にしています


第三十三話 樹海の記憶 E.S√ EP.6

「それでも、元の世界に戻りたい────?」

 

「オレは……戻る。戻らないとダメだ。

此処で、立ち止まるわけにはいかない」

 

そうだ、此処で立ち止まったらダメだ。

……それこそ、今までの多くの犠牲を無駄死にとする行為だ。

それだけはできない。

……私がエミヤ()である限り、今までの犠牲を無駄にはさせない。

 

そして、もし……

 

「この先が地獄だと言うなら……オレが全部背負うだけだ」

 

それは、最初から変わらない。

地獄を歩むのは、私だけで充分だ。

 

「それは違うよ、士郎くん!」

 

「友奈?」

 

友奈が私の言葉を否定する。

 

「私達は、みんなで勇者なんだよ。

だから、士郎くんが抱え込むのは絶対違う!

もし、この先が地獄だとしても……みんなで頑張ればきっと乗り越えられる!

赤信号、みんなで渡れば怖くない!だよ!」

 

「────」

 

ガツンと殴られたような衝撃があった。

……ああ、まったく……何処まで、君は似ているのか(・・・・・・)

 

呆れてしまう。だけど、それ以上に言いたいことがあった。

 

「……友奈、赤信号うんぬんかんぬんは違うと思う」

 

「あれ!?」

 

「……たしかに、違うと思うわ。友奈ちゃん」

 

「……そうね」

 

「あれれ!?」

 

「………はぁ」

 

「あはは……」

 

「あれぇっ!?」

 

全員がそれに関しては同意見だったらしい。

交通ルールは正しくしっかり守ろうな。うん。

 

「うぅ……しっかり決めたはずなのに……」

 

「でもまあ、友奈の言う事も確かね。

士郎1人に抱え込ませるわけには行かないわ。

私は勇者部部長で、アンタの先輩なんだから

ちょっとは頼りなさいってこと」

 

「風……」

 

「ふん……まあ、アンタは1人で突っ走りそうよね。

大赦の勇者として、単独行動は絶対阻止してやるわ

あ、あくまで監視とかの為だからね!」

 

「わ、私も同じです!

衛宮先輩1人で抱え込むのは違うと思います。

みんなで、勇者部なんですから!」

 

「衛宮くん」

 

東郷がこちらを見つめる。

……言葉にしなくとも、彼女が言いたい事はわかる。

 

「全く、何処までお人好しなのか……

どうやら、これが彼女達の答えらしいぞ?」

 

「そうみたいだね……みんな凄いなぁ〜……

……うん、分かった。じゃあ────」

 

「だったら────」

 

「「────その覚悟を見せて」」

 

二人の少女の言葉と共に、樹海が激しく揺れる

 

「………!」

 

そして、揺れが収まった後。私達の目の前に居たのは……

 

「なに……あれ……?」

 

「……こんなのアリ?」

 

それは、獅子座、或いは水瓶座、或いは天秤座、或いは牡牛座。

何処までもおぞましく、禍々しく

その存在を見せつけるバーテックスが君臨していた。

 

ソレは星が集った姿。星の集団の悪夢(スタークラスター・ナイトメア)

 

「今までのバーテックスとは全然違う……!」

 

「違うどころの騒ぎじゃないわよ、あれ……」

 

「あ……ああ……」

 

誰もが息を呑む。

勝てるのか。そんな疑問が湧いてしまう。

 

……ただ、それでも。

体が恐怖で震えても。動かなくても。

 

「……諦めるわけにはいかない」

 

そうだ、諦めるわけにはいかない。

彼女(園子)の言葉が事実ならば、ここで屈してはいけない。

 

屈してしまえば、そこで終わる。

────舐めるなよ。この程度の地獄。もう味わった。

 

故に屈しはせず。ただ、ヤツに立ち向かう────

 

「よーし、みんな!勇者部五箇条だ!

ひとつ!挨拶はきちんと!

 

オキザリスの少女が叫ぶ。

 

「え!?あ、はい!

ひとぉーつ!なるべく、諦めない!

 

山桜の少女が答える。

 

「ひとつ。よく寝て、よく食べる。

これ、風先輩が言うべきでは……?

 

蕣の少女が言う。

 

「ひ、ひとーつ!悩んだら相談!

 

鳴子百合の少女が勇気を振り絞って叫ぶ。

 

「ふん……これ、最初は嫌いだったけど……

ひとつ!なせば大抵なんとかなる!

 

皐の少女が、

仕方なさそうに、何処か嬉しそうに答える。

 

「よーしみんな!よく言った!

それでこそ、讃州中学勇者部だ!」

 

「五箇条だと私の分がないな……」

 

六人だと必然と言えないわけである。

少し寂しい。

 

「え?じゃあ、行き詰まったらうどん……言う?」

 

「いや、なんでさ」

 

というか、それ追加する気か……

 

「まあ、そこは後々検討するとして……

みんな、覚悟は良いわね?」

 

「もちろんです!」

 

「……勇者部の興廃は、この一戦にあります!」

 

「行こう、お姉ちゃん!」

 

「ほら、さっさと号令出しなさいよっ」

 

「当然、もとより覚悟は出来ている」

 

「……よし、それじゃあ……勇者部、出現!

バーテックスを倒して、必ず元の世界に戻るわよ!!」

 

「「「「「了解ッ!!」」」」」

 

この世界での、最後の戦いの幕が上がる────

 

────────

 

スタークラスターが火の玉を撃ち出してくる────

 

「火の玉って……配管工じゃないんだから!!」

 

「配管工よりも凄いと思うよ、お姉ちゃん!?」

 

風の言葉に樹は避けながら、ツッコミを入れる。

 

「獅子座か……」

 

そう、この攻撃は知っている。獅子座のバーテックスの攻撃だ。

最強であり、最もアレに近い存在。

 

バーテックス達の司令塔とも言える存在の力だ。

 

「なら、遠距離から……!」

 

東郷はそう言い、狙い撃とうとするが

 

「わわっ、風!?」

 

「ッ……まともに体制を整えられない……!」

 

スタークラスターが強風を起こし、こちらの動きを封じてくる。

東郷の持つ、狙撃銃は反動がある。

故に、しっかりと体制を整えなければ撃つ自分が危険なのだ。

 

「チッ……こうなれば……!」

 

洋弓と赤原猟犬を構える。

狙うのは……ヤツの……!

 

「────赤原猟犬ッ」

 

赤原猟犬をスタークラスターに向けて放つ。

 

「壊れた幻想────!」

 

スタークラスターに赤原猟犬が直撃すると

同時に起爆させて、怯ませる。

強風が止んだ今────

 

夏凜(・・)!風!!」

 

「言われなくても────」

 

「分かってるわよッ!!」

 

二人は左右の角に斬り込む。……だが、

 

「コイツ……!」

 

「なんちゅう硬さしてんのよ……ッ!?」

 

罅すら、入れることが出来なかった。

否、罅は入った。

……ヤツの角にではなく、夏凜の刀と風の大剣にだが。

 

「マズイッ……!」

 

スタークラスターが何かを放とうとしているが分かった。

その何かは分からない。だが、危険だと本能で理解して────

 

「衛宮先輩!?」

 

「わわっ、士郎くん!?」

 

「衛宮くん、なにを────!?」

 

三人を抱えるという荒業で、スタークラスターから距離を置く。

その瞬間、先程まで私達が居た場所に見て分かるほど、高圧の水を撃つスタークラスター。

 

「樹海が……!?」

 

「木の根っこが……切れちゃった……!?」

 

「高圧洗浄機よりも、水圧は高いか……!」

 

水で切れるということは、それほど水圧が高いということ。

────タイミングが後少し遅ければ、

あの樹海の根と同じ事になっていたかもしれないのか……

 

「っ!士郎くん、あれ!!」

 

「なっ────!?」

 

油断した、そうだ。ヤツは獅子座の力を持つ。

────小型の太陽をヤツが作れないはずが無い。

 

「クッ……!」

 

「士郎くん……!?」

 

友奈達を、遠くへ投げ飛ばす。

ヤツの火球を喰らわせない為に。

 

「熾天覆う七つの円環────!!」

 

七枚の花弁を展開して、火球を抑え込む。

最初から、防げるとは思っていない。

だが、防がねば……全員共倒れだ────

 

それだけはさせられない────!

 

「うぉおおおおおおおおおお────!!」

 

割れる、砕ける。

一気に六枚の花弁が砕け散る。

最後の一枚は最も頑丈だ。だが、それでもヤツの攻撃には……

 

知ったことか、

 

防げ、防げ、防ぎ切れ、防ぎ切れ、防ぎ切れ────

 

七枚目に罅が入る。

トロイア戦争における、最強の盾でもダメなのか……!?

 

そうやって、諦めかけた時────

 

「ぉおおおおおおお────ッ!!」

 

大きな山桜が横で咲き誇った────

 

「友奈……!?」

 

白い装束、巨大な二本の手腕。

────それは、何処か神々しさがあって

 

「満開……」

 

「あれが……?」

 

「綺麗……」

 

桜の花びらが空を舞う。

それを、少女達は見上げていて────

 

「士郎くんが頑張ってくれたんだ……!私も、頑張る────!!」

 

友奈は二本の巨大な手腕で火球を受け止める。

 

「うぉおおおりゃああああああ────ッ!!」

 

「火球を投げ飛ばした……!?」

 

そう、友奈は巨大な手腕を使って火球を空に向かって投げ飛ばしたのだ。

……出鱈目にも程がある。いや……神の力だからこそできるのか。

 

「……全く、部長を差し置いてパワーアップしてるんじゃないっての!」

 

「……負けられないッ!」

 

大きなオキザリスと皐の花が咲き誇る。

 

「……行くわよッ!」

 

「一花、咲かせてあげるわッ!!」

 

それは、犬吠埼風の満開。三好夏凜の満開。

風は白い装束、そして……通常時より鋭利に、

そしてより巨大になった大剣を持つ。

夏凜は白い装束。そして四本の赤い手腕に、

それぞれ刀を持った。阿修羅を連想させる満開だった。

 

風と夏凜は、もう一度スタークラスターに斬り込む。

 

「「喰らいなさい────ッ!!」」

 

今度は確実に角を斬り落とした────

だが、それでスタークラスターは怯むことはなく────

 

「……もう、やらせませんッ!」

 

鳴子百合が咲き誇る。

────樹は、背に浮かぶ鳴子百合の花から

緑色のワイヤーを飛ばし、

スタークラスターの風を起こす天秤部分を縛り付けた。

 

「樹……!」

 

「東郷先輩!衛宮先輩!」

 

樹の叫びで我に返る。

────そうだ、ボーッとはしていられない。

 

「私が活路を開くわ、衛宮くんは────!」

 

蕣が咲き誇り、

八つの砲塔が存在する戦艦に乗る東郷。

 

「アイツにトドメを!撃ちぃ方始めぇ!」

 

東郷は八つの砲身から、光弾を射出する。

その全てがスタークラスターに直撃する。

 

「……全員、封印開始!!」

 

「「「「了解!」」」」

 

風の合図で封印の儀を行う。

そうして、スタークラスターから紫色の御霊が出現する。

 

好機は今。

御霊を一撃で葬る剣を投影する……!

 

────該当する剣は無数にある。

ならば、オレはこの剣を選ぶ……!

 

それは、黄金の剣。

星を束ねる聖剣。いや……それを格落ちさせたモノ。

 

「この光は、永久に届かぬ王の剣────」

 

「士郎くん、いっけええええええ!」

 

手にその剣を持つ。

────禁じ手の中の禁じ手。

神造兵器。それを投影できるレベルにまで

格落ちさせたこの剣の真名()は────

 

永久に遥か黄金の剣(エクスカリバー・イマージュ)

 

それを御霊に振るおうとした時、声が聞こえた────

 

『……そう。みんな。本当に勇者なんだね〜』

 

少女の声が聞こえた。

 

『今戦ったバーテックスは、あなた達の記憶にはなかったはず。

アレは、私達の記憶から、みんなの夢に送り込んだ幻影。

ちょっとだけ、アレンジしちゃったけどね〜』

 

アレンジというのは恐らく、合体させた事だろう。

……彼女ならば、そんなアレンジができる。というのはなんとなくだが理解していた。

 

『怖かったでしょ?』

 

────勿論、怖かったさ。

 

『強かったでしょ?』

 

────ああ、強かったさ。

 

『でも、それさえもみんなは乗り越えちゃうんだね……』

 

少し、悲しそうに彼女は言う。

 

『その御霊を壊せば、この夢は終わる』

 

『でも、元の世界は私達見せた幻影なんかより、

もっともっと怖くて辛い』

 

……知っている。

それでも、彼女達は、オレはその道を行くと決めた。

 

『それでも戻るなら、私達から止める言葉はないかな。

……強いんだね、みんな』

 

強くはないさ。きっと、みんな。

……勇気の出し方なんだと思ってる。

 

怖くても、踏み出す勇気が大切なんだと。

 

『そうか……うん、私も……園子も。

みんなが辛い目に遭わないよう、祈ってる』

 

彼女()は少し悲しそうに笑った。

 

「……ありがとう」

 

御霊を斬る。

その時に、彼女達に感謝の言葉を告げる。

 

……乃木 園子も三ノ輪 銀も。

誰かの為を思える優しい勇者なのだ。

 

覚えてなくとも、それは理解できる。

だからこそ……いつの日か、きっと────




一応、補足。園子が見せている夢の中での出来事になるので
満開の代償はないです。

次回、樹海の記憶編は最終回かな。
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