今回、本編登場のバーテックスを先行登場させましたが……
本格的に戦うのは本編なのでかなり簡潔にしています
「それでも、元の世界に戻りたい────?」
「オレは……戻る。戻らないとダメだ。
此処で、立ち止まるわけにはいかない」
そうだ、此処で立ち止まったらダメだ。
……それこそ、今までの多くの犠牲を無駄死にとする行為だ。
それだけはできない。
……私が
そして、もし……
「この先が地獄だと言うなら……オレが全部背負うだけだ」
それは、最初から変わらない。
地獄を歩むのは、私だけで充分だ。
「それは違うよ、士郎くん!」
「友奈?」
友奈が私の言葉を否定する。
「私達は、みんなで勇者なんだよ。
だから、士郎くんが抱え込むのは絶対違う!
もし、この先が地獄だとしても……みんなで頑張ればきっと乗り越えられる!
赤信号、みんなで渡れば怖くない!だよ!」
「────」
ガツンと殴られたような衝撃があった。
……ああ、まったく……何処まで、君は
呆れてしまう。だけど、それ以上に言いたいことがあった。
「……友奈、赤信号うんぬんかんぬんは違うと思う」
「あれ!?」
「……たしかに、違うと思うわ。友奈ちゃん」
「……そうね」
「あれれ!?」
「………はぁ」
「あはは……」
「あれぇっ!?」
全員がそれに関しては同意見だったらしい。
交通ルールは正しくしっかり守ろうな。うん。
「うぅ……しっかり決めたはずなのに……」
「でもまあ、友奈の言う事も確かね。
士郎1人に抱え込ませるわけには行かないわ。
私は勇者部部長で、アンタの先輩なんだから
ちょっとは頼りなさいってこと」
「風……」
「ふん……まあ、アンタは1人で突っ走りそうよね。
大赦の勇者として、単独行動は絶対阻止してやるわ
あ、あくまで監視とかの為だからね!」
「わ、私も同じです!
衛宮先輩1人で抱え込むのは違うと思います。
みんなで、勇者部なんですから!」
「衛宮くん」
東郷がこちらを見つめる。
……言葉にしなくとも、彼女が言いたい事はわかる。
「全く、何処までお人好しなのか……
どうやら、これが彼女達の答えらしいぞ?」
「そうみたいだね……みんな凄いなぁ〜……
……うん、分かった。じゃあ────」
「だったら────」
「「────その覚悟を見せて」」
二人の少女の言葉と共に、樹海が激しく揺れる
「………!」
そして、揺れが収まった後。私達の目の前に居たのは……
「なに……あれ……?」
「……こんなのアリ?」
それは、獅子座、或いは水瓶座、或いは天秤座、或いは牡牛座。
何処までもおぞましく、禍々しく
その存在を見せつけるバーテックスが君臨していた。
ソレは星が集った姿。
「今までのバーテックスとは全然違う……!」
「違うどころの騒ぎじゃないわよ、あれ……」
「あ……ああ……」
誰もが息を呑む。
勝てるのか。そんな疑問が湧いてしまう。
……ただ、それでも。
体が恐怖で震えても。動かなくても。
「……諦めるわけにはいかない」
そうだ、諦めるわけにはいかない。
屈してしまえば、そこで終わる。
────舐めるなよ。この程度の地獄。もう味わった。
故に屈しはせず。ただ、ヤツに立ち向かう────
「よーし、みんな!勇者部五箇条だ!
ひとつ!挨拶はきちんと!」
オキザリスの少女が叫ぶ。
「え!?あ、はい!
ひとぉーつ!なるべく、諦めない!」
山桜の少女が答える。
「ひとつ。よく寝て、よく食べる。
これ、風先輩が言うべきでは……?」
蕣の少女が言う。
「ひ、ひとーつ!悩んだら相談!」
鳴子百合の少女が勇気を振り絞って叫ぶ。
「ふん……これ、最初は嫌いだったけど……
ひとつ!なせば大抵なんとかなる!」
皐の少女が、
仕方なさそうに、何処か嬉しそうに答える。
「よーしみんな!よく言った!
それでこそ、讃州中学勇者部だ!」
「五箇条だと私の分がないな……」
六人だと必然と言えないわけである。
少し寂しい。
「え?じゃあ、行き詰まったらうどん……言う?」
「いや、なんでさ」
というか、それ追加する気か……
「まあ、そこは後々検討するとして……
みんな、覚悟は良いわね?」
「もちろんです!」
「……勇者部の興廃は、この一戦にあります!」
「行こう、お姉ちゃん!」
「ほら、さっさと号令出しなさいよっ」
「当然、もとより覚悟は出来ている」
「……よし、それじゃあ……勇者部、出現!
バーテックスを倒して、必ず元の世界に戻るわよ!!」
「「「「「了解ッ!!」」」」」
この世界での、最後の戦いの幕が上がる────
スタークラスターが火の玉を撃ち出してくる────
「火の玉って……配管工じゃないんだから!!」
「配管工よりも凄いと思うよ、お姉ちゃん!?」
風の言葉に樹は避けながら、ツッコミを入れる。
「獅子座か……」
そう、この攻撃は知っている。獅子座のバーテックスの攻撃だ。
最強であり、最もアレに近い存在。
バーテックス達の司令塔とも言える存在の力だ。
「なら、遠距離から……!」
東郷はそう言い、狙い撃とうとするが
「わわっ、風!?」
「ッ……まともに体制を整えられない……!」
スタークラスターが強風を起こし、こちらの動きを封じてくる。
東郷の持つ、狙撃銃は反動がある。
故に、しっかりと体制を整えなければ撃つ自分が危険なのだ。
「チッ……こうなれば……!」
洋弓と赤原猟犬を構える。
狙うのは……ヤツの……!
「────赤原猟犬ッ」
赤原猟犬をスタークラスターに向けて放つ。
「壊れた幻想────!」
スタークラスターに赤原猟犬が直撃すると
同時に起爆させて、怯ませる。
強風が止んだ今────
「
「言われなくても────」
「分かってるわよッ!!」
二人は左右の角に斬り込む。……だが、
「コイツ……!」
「なんちゅう硬さしてんのよ……ッ!?」
罅すら、入れることが出来なかった。
否、罅は入った。
……ヤツの角にではなく、夏凜の刀と風の大剣にだが。
「マズイッ……!」
スタークラスターが何かを放とうとしているが分かった。
その何かは分からない。だが、危険だと本能で理解して────
「衛宮先輩!?」
「わわっ、士郎くん!?」
「衛宮くん、なにを────!?」
三人を抱えるという荒業で、スタークラスターから距離を置く。
その瞬間、先程まで私達が居た場所に見て分かるほど、高圧の水を撃つスタークラスター。
「樹海が……!?」
「木の根っこが……切れちゃった……!?」
「高圧洗浄機よりも、水圧は高いか……!」
水で切れるということは、それほど水圧が高いということ。
────タイミングが後少し遅ければ、
あの樹海の根と同じ事になっていたかもしれないのか……
「っ!士郎くん、あれ!!」
「なっ────!?」
油断した、そうだ。ヤツは獅子座の力を持つ。
────小型の太陽をヤツが作れないはずが無い。
「クッ……!」
「士郎くん……!?」
友奈達を、遠くへ投げ飛ばす。
ヤツの火球を喰らわせない為に。
「熾天覆う七つの円環────!!」
七枚の花弁を展開して、火球を抑え込む。
最初から、防げるとは思っていない。
だが、防がねば……全員共倒れだ────
それだけはさせられない────!
「うぉおおおおおおおおおお────!!」
割れる、砕ける。
一気に六枚の花弁が砕け散る。
最後の一枚は最も頑丈だ。だが、それでもヤツの攻撃には……
知ったことか、
防げ、防げ、防ぎ切れ、防ぎ切れ、防ぎ切れ────
七枚目に罅が入る。
トロイア戦争における、最強の盾でもダメなのか……!?
そうやって、諦めかけた時────
「ぉおおおおおおお────ッ!!」
大きな山桜が横で咲き誇った────
「友奈……!?」
白い装束、巨大な二本の手腕。
────それは、何処か神々しさがあって
「満開……」
「あれが……?」
「綺麗……」
桜の花びらが空を舞う。
それを、少女達は見上げていて────
「士郎くんが頑張ってくれたんだ……!私も、頑張る────!!」
友奈は二本の巨大な手腕で火球を受け止める。
「うぉおおおりゃああああああ────ッ!!」
「火球を投げ飛ばした……!?」
そう、友奈は巨大な手腕を使って火球を空に向かって投げ飛ばしたのだ。
……出鱈目にも程がある。いや……神の力だからこそできるのか。
「……全く、部長を差し置いてパワーアップしてるんじゃないっての!」
「……負けられないッ!」
大きなオキザリスと皐の花が咲き誇る。
「……行くわよッ!」
「一花、咲かせてあげるわッ!!」
それは、犬吠埼風の満開。三好夏凜の満開。
風は白い装束、そして……通常時より鋭利に、
そしてより巨大になった大剣を持つ。
夏凜は白い装束。そして四本の赤い手腕に、
それぞれ刀を持った。阿修羅を連想させる満開だった。
風と夏凜は、もう一度スタークラスターに斬り込む。
「「喰らいなさい────ッ!!」」
今度は確実に角を斬り落とした────
だが、それでスタークラスターは怯むことはなく────
「……もう、やらせませんッ!」
鳴子百合が咲き誇る。
────樹は、背に浮かぶ鳴子百合の花から
緑色のワイヤーを飛ばし、
スタークラスターの風を起こす天秤部分を縛り付けた。
「樹……!」
「東郷先輩!衛宮先輩!」
樹の叫びで我に返る。
────そうだ、ボーッとはしていられない。
「私が活路を開くわ、衛宮くんは────!」
蕣が咲き誇り、
八つの砲塔が存在する戦艦に乗る東郷。
「アイツにトドメを!撃ちぃ方始めぇ!」
東郷は八つの砲身から、光弾を射出する。
その全てがスタークラスターに直撃する。
「……全員、封印開始!!」
「「「「了解!」」」」
風の合図で封印の儀を行う。
そうして、スタークラスターから紫色の御霊が出現する。
好機は今。
御霊を一撃で葬る剣を投影する……!
────該当する剣は無数にある。
ならば、オレはこの剣を選ぶ……!
それは、黄金の剣。
星を束ねる聖剣。いや……それを格落ちさせたモノ。
「この光は、永久に届かぬ王の剣────」
「士郎くん、いっけええええええ!」
手にその剣を持つ。
────禁じ手の中の禁じ手。
神造兵器。それを投影できるレベルにまで
格落ちさせたこの剣の
「
それを御霊に振るおうとした時、声が聞こえた────
『……そう。みんな。本当に勇者なんだね〜』
少女の声が聞こえた。
『今戦ったバーテックスは、あなた達の記憶にはなかったはず。
アレは、私達の記憶から、みんなの夢に送り込んだ幻影。
ちょっとだけ、アレンジしちゃったけどね〜』
アレンジというのは恐らく、合体させた事だろう。
……彼女ならば、そんなアレンジができる。というのはなんとなくだが理解していた。
『怖かったでしょ?』
────勿論、怖かったさ。
『強かったでしょ?』
────ああ、強かったさ。
『でも、それさえもみんなは乗り越えちゃうんだね……』
少し、悲しそうに彼女は言う。
『その御霊を壊せば、この夢は終わる』
『でも、元の世界は私達見せた幻影なんかより、
もっともっと怖くて辛い』
……知っている。
それでも、彼女達は、オレはその道を行くと決めた。
『それでも戻るなら、私達から止める言葉はないかな。
……強いんだね、みんな』
強くはないさ。きっと、みんな。
……勇気の出し方なんだと思ってる。
怖くても、踏み出す勇気が大切なんだと。
『そうか……うん、私も……園子も。
みんなが辛い目に遭わないよう、祈ってる』
「……ありがとう」
御霊を斬る。
その時に、彼女達に感謝の言葉を告げる。
……乃木 園子も三ノ輪 銀も。
誰かの為を思える優しい勇者なのだ。
覚えてなくとも、それは理解できる。
だからこそ……いつの日か、きっと────
一応、補足。園子が見せている夢の中での出来事になるので
満開の代償はないです。
次回、樹海の記憶編は最終回かな。