衛宮士郎は正義の味方である   作:星ノ瀬 竜牙

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お待たせしました。

今回は割と難産でした。

樹海の記憶編の締めなのに、こんな有様ですまない……


次回から本編に戻ります。


第三十四話 樹海の記憶 衛宮 士郎√ Episode:Final

「………やったわね」

 

「倒したんだ、私達……!」

 

私が、黄金の剣で御霊を斬る。

────それが、この世界の終わりだ。

 

「あっ!皆さん、あれ……!」

 

樹が指差す方向。

そこには乃木 園子と名乗った少女と

三ノ輪 銀と名乗った少女が立っていた。

 

「多分無理だと思ったんだけど……

勇者部って、凄いんだね〜……」

 

「……これが勇者部の力ってやつらしい」

 

「……でも、なんか安心したな。

私達じゃ無理だったけど……

きっと、須美達になら……士郎の事も……」

 

「そうだね〜……わっしーも、えみやんも……きっと……」

 

「え……?」

 

……その言葉の意味はわからなかった。

だが、何故か胸の奥が締め付けられるような感覚があって……

 

「……そのリボンは?」

 

園子が、東郷の着けているリボンを見る。

 

「これは……とても大切なものなの。

そう、とても……」

 

「とても……大事……

うん、そっか……うん。ありがとね、わっしー……」

 

そうか、東郷のソレは────

 

「このリボンの事……知っているの……?」

 

東郷は尋ねようとする

だが、それを拒むように世界が白く染まっていく。

 

「わわっ!?なに!?」

 

「これ……世界が消えてるの……!?」

 

「……大丈夫だよ。みんな、元の世界に帰るだけだから」

 

世界が消えていく。

元の世界に戻る……それは、彼女達とは会えなくなるということで────

 

「園子、銀────!!」

 

伝えなければいけないことがある。

そうオレの中の何かが告げていて────

 

「え?」

 

「今は会えなくても……絶対に会いに行く!」

 

「……士郎」

 

「その時は────」

 

「うん……待ってるよ。えみやん。ずっと────」

 

二人の少女が涙を浮かべて、笑った。

────それは、ここに来て、初めて彼女達が見せた笑みで。

 

「ああ……約束だ……!」

 

それ以上にとても、懐かしい笑顔だった────

 

 

────────

 

「こんにちはー!」

 

「こんにちは」

 

「……遅くなったな」

 

友奈が部室のドアを開けて、東郷と入る。

それに続く形で私も入っていく。

 

「おう!お疲れ〜!」

 

「こんにちは」

 

「遅いわよ、三人とも」

 

「おー、夏凜ちゃん、すっかり勇者部の一員って感じだねー!」

 

「べ、別にそんなんじゃないわよ!?」

 

夏凜は友奈の言葉に恥ずかしそうに頬を赤く染める。

 

「ふふん、夏凜さんはね。

私と樹よりも先に部室に来てたのよ。

つまり一番乗りよ。新入部員として、いい心がけだわ」

 

「なっ………バッ……!?

あ、あんた達が来るの遅いだけでしょ!?」

 

「ほー……」

 

「衛宮、何よその生暖かい目は!?」

 

「いや、べつに?」

 

そう、なんでもない。

微笑ましく思ったりはしていない。決して。

 

「それはそうと、今日は何します?」

 

「公園清掃のお手伝いですよね?

掃除道具の準備はできてますよ!」

 

「さっすが我が妹!」

 

そうか、今日は公園清掃か。

 

「ふむ……」

 

「あ、士郎は本気出さないでよ」

 

「何故だ!」

 

「あんたがやると私達の出番ないでしょ」

 

「…………」

 

ぐうの音も出ない正論だった。

つい、掃除には本気になり過ぎてしまうというか……

厄介なものだ。

 

「まあ、それはそれとして。

文化祭の事もぼちぼち考えていかないとね〜」

 

「演劇ですよね!楽しみだなぁ〜!」

 

そう、演劇。

夏凜の誕生日を祝った時に友奈が考えていた事を

風が急遽採用した形でそれをすることになったのだ。

 

「…………」

 

「……どうしたの、東郷さん?」

 

東郷の難しい表情に友奈は気付く。

 

「あ………ううん、なんでもないの。

ただ……昨日ね、変な夢を見て────」

 

「変な夢?」

 

「いつも通り、皆で勇者として戦う夢。

思いやりと、勇気に溢れていて……

でもどこか、寂しくて悲しい……そんな夢」

 

「それって……」

 

「ちょうど今朝、私と樹と士郎も、

そんな感じの夢を見たって話をしたのよね……」

 

ただ、少しだけ私には懐かしい夢だった。

 

「私も、見たわ……

何であんた達と同じ夢を見なきゃいけないんだか……」

 

「東郷さんも、皆も見たんだ……

いつもみたいにとっても楽しくて……でも、とっても悲しい夢……」

 

悲しいけれど、懐かしい夢。

────ああ、覚えている。彼女達の事も。

 

「みんなで同じ夢を見るなんて不思議な事もあるもんね」

 

「……きっと、それだけ勇者部の結束が固いってことですよ!

ねっ!東郷さん!」

 

「ふふ……友奈ちゃんらしいわね。でも、きっとそう」

 

「そうですよ、絶対!」

 

「くぅぅ〜!さすが勇者部!

新入部員の勇者部にかける気持ちもよく分かったわ!」

 

「……ちょっと待って。私は何も言ってないわよ」

 

「私達と同じ夢を見たって時点で貴女は正真正銘、勇者部の仲間よ!

部長、感動した!」

 

「………………!!」

 

恥ずかしそうに頬を赤く染める夏凜。

 

「あっ!夏凜ちゃんがまた真っ赤に!!」

 

「な、ななな、なってないわよ!?」

 

恥ずかしがっている夏凜を見て、クスリと笑う。

 

「ちょっと!何笑ってんのよ!?」

 

「「「「あはははは!」」」」

 

「あんた達までええ!!」

 

 

あぁ……そうだ。例え、この先が地獄だとしても。

きっと彼女達なら乗り越えられる。そうオレは信じてる。

 

「………!」

 

ふと、ズボンのポケットに手を入れると

そこに何かが入っていて、それを取り出す。

 

「……これは」

 

握った手の中には紫の花びら赤い花びらがあった。

 

「ん?士郎、どうかしたの、それ?」

 

「それって、睡蓮の花びらと牡丹の花びらだよね?」

 

風と友奈が私の手を覗き込む。

 

────ああ、そうだ。ずっとここにある。

忘れてしまっても、心に残ったものはある。

 

「……ハハッ、どうも、大切なものを貰ってしまったらしい」

 

「大切なもの?」

 

「ああ……大切なものだ」

 

ああ、分かってる。

 

『■■■■』

 

『■■』

 

いつか絶対に、会いに行く。約束だ。

 

 

だから、少しだけ……待っててくれ────

 

────────

 

少女が寝ている。何処かわからぬ場所で祀られている。

 

「うん、いつまでも待ってるよ」

 

笑って、彼女はそう口にした────

 

 

 

樹海の記憶編

 

~完~




また少し投稿が遅れるかもしれませんがご了承ください……

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