今回は割と難産でした。
樹海の記憶編の締めなのに、こんな有様ですまない……
次回から本編に戻ります。
「………やったわね」
「倒したんだ、私達……!」
私が、黄金の剣で御霊を斬る。
────それが、この世界の終わりだ。
「あっ!皆さん、あれ……!」
樹が指差す方向。
そこには乃木 園子と名乗った少女と
三ノ輪 銀と名乗った少女が立っていた。
「多分無理だと思ったんだけど……
勇者部って、凄いんだね〜……」
「……これが勇者部の力ってやつらしい」
「……でも、なんか安心したな。
私達じゃ無理だったけど……
きっと、須美達になら……士郎の事も……」
「そうだね〜……わっしーも、えみやんも……きっと……」
「え……?」
……その言葉の意味はわからなかった。
だが、何故か胸の奥が締め付けられるような感覚があって……
「……そのリボンは?」
園子が、東郷の着けているリボンを見る。
「これは……とても大切なものなの。
そう、とても……」
「とても……大事……
うん、そっか……うん。ありがとね、わっしー……」
そうか、東郷のソレは────
「このリボンの事……知っているの……?」
東郷は尋ねようとする
だが、それを拒むように世界が白く染まっていく。
「わわっ!?なに!?」
「これ……世界が消えてるの……!?」
「……大丈夫だよ。みんな、元の世界に帰るだけだから」
世界が消えていく。
元の世界に戻る……それは、彼女達とは会えなくなるということで────
「園子、銀────!!」
伝えなければいけないことがある。
そうオレの中の何かが告げていて────
「え?」
「今は会えなくても……絶対に会いに行く!」
「……士郎」
「その時は────」
「うん……待ってるよ。えみやん。ずっと────」
二人の少女が涙を浮かべて、笑った。
────それは、ここに来て、初めて彼女達が見せた笑みで。
「ああ……約束だ……!」
それ以上にとても、懐かしい笑顔だった────
「こんにちはー!」
「こんにちは」
「……遅くなったな」
友奈が部室のドアを開けて、東郷と入る。
それに続く形で私も入っていく。
「おう!お疲れ〜!」
「こんにちは」
「遅いわよ、三人とも」
「おー、夏凜ちゃん、すっかり勇者部の一員って感じだねー!」
「べ、別にそんなんじゃないわよ!?」
夏凜は友奈の言葉に恥ずかしそうに頬を赤く染める。
「ふふん、夏凜さんはね。
私と樹よりも先に部室に来てたのよ。
つまり一番乗りよ。新入部員として、いい心がけだわ」
「なっ………バッ……!?
あ、あんた達が来るの遅いだけでしょ!?」
「ほー……」
「衛宮、何よその生暖かい目は!?」
「いや、べつに?」
そう、なんでもない。
微笑ましく思ったりはしていない。決して。
「それはそうと、今日は何します?」
「公園清掃のお手伝いですよね?
掃除道具の準備はできてますよ!」
「さっすが我が妹!」
そうか、今日は公園清掃か。
「ふむ……」
「あ、士郎は本気出さないでよ」
「何故だ!」
「あんたがやると私達の出番ないでしょ」
「…………」
ぐうの音も出ない正論だった。
つい、掃除には本気になり過ぎてしまうというか……
厄介なものだ。
「まあ、それはそれとして。
文化祭の事もぼちぼち考えていかないとね〜」
「演劇ですよね!楽しみだなぁ〜!」
そう、演劇。
夏凜の誕生日を祝った時に友奈が考えていた事を
風が急遽採用した形でそれをすることになったのだ。
「…………」
「……どうしたの、東郷さん?」
東郷の難しい表情に友奈は気付く。
「あ………ううん、なんでもないの。
ただ……昨日ね、変な夢を見て────」
「変な夢?」
「いつも通り、皆で勇者として戦う夢。
思いやりと、勇気に溢れていて……
でもどこか、寂しくて悲しい……そんな夢」
「それって……」
「ちょうど今朝、私と樹と士郎も、
そんな感じの夢を見たって話をしたのよね……」
ただ、少しだけ私には懐かしい夢だった。
「私も、見たわ……
何であんた達と同じ夢を見なきゃいけないんだか……」
「東郷さんも、皆も見たんだ……
いつもみたいにとっても楽しくて……でも、とっても悲しい夢……」
悲しいけれど、懐かしい夢。
────ああ、覚えている。彼女達の事も。
「みんなで同じ夢を見るなんて不思議な事もあるもんね」
「……きっと、それだけ勇者部の結束が固いってことですよ!
ねっ!東郷さん!」
「ふふ……友奈ちゃんらしいわね。でも、きっとそう」
「そうですよ、絶対!」
「くぅぅ〜!さすが勇者部!
新入部員の勇者部にかける気持ちもよく分かったわ!」
「……ちょっと待って。私は何も言ってないわよ」
「私達と同じ夢を見たって時点で貴女は正真正銘、勇者部の仲間よ!
部長、感動した!」
「………………!!」
恥ずかしそうに頬を赤く染める夏凜。
「あっ!夏凜ちゃんがまた真っ赤に!!」
「な、ななな、なってないわよ!?」
恥ずかしがっている夏凜を見て、クスリと笑う。
「ちょっと!何笑ってんのよ!?」
「「「「あはははは!」」」」
「あんた達までええ!!」
あぁ……そうだ。例え、この先が地獄だとしても。
きっと彼女達なら乗り越えられる。そうオレは信じてる。
「………!」
ふと、ズボンのポケットに手を入れると
そこに何かが入っていて、それを取り出す。
「……これは」
握った手の中には紫の花びらと赤い花びらがあった。
「ん?士郎、どうかしたの、それ?」
「それって、睡蓮の花びらと牡丹の花びらだよね?」
風と友奈が私の手を覗き込む。
────ああ、そうだ。ずっとここにある。
忘れてしまっても、心に残ったものはある。
「……ハハッ、どうも、大切なものを貰ってしまったらしい」
「大切なもの?」
「ああ……大切なものだ」
ああ、分かってる。
『■■■■』
『■■』
いつか絶対に、会いに行く。約束だ。
だから、少しだけ……待っててくれ────
少女が寝ている。何処かわからぬ場所で祀られている。
「うん、いつまでも待ってるよ」
笑って、彼女はそう口にした────
また少し投稿が遅れるかもしれませんがご了承ください……