お兄さん許して!何でもしますから!
はは、なんの冗談だ────
あの時、俺は正直にそう思った。
人が戦うには余りにも強大過ぎる敵。
そんな奴等とたった三人の少女が……
俺の知人が戦っていたのだから。
────思えば、あの時だった。
俺が、■■■■■の力を手にしたのは。
そして、この時からだった。
■■が無くなっていったのは。
そして、この時はまだ……自分の使っている力の■■が
■■を■うという事に気付きもしなかった────
なんだかんだ、ありはしたものの
昼休みも終わろうとしていた。
「にしても、衛宮は羨ましいよ」
「どうしたんだよ、急に?」
ふと、一緒にぼーっとしていた友人がボヤいた。
「いやだって、あの我が校で憧れの的である
鷲尾さんと隣の席ってだけでも羨ましいのに
乃木さんや三ノ輪さんとも知り合いときた。
こりゃもう呪うしかないなって」
「物騒だなおい!?それは俺に言わず大赦の人達に言えよ!?」
物騒な事を言い出す友人に思わず口元を引き攣らせた。
好きでこうなったわけではない。
親が大赦で共働きである俺の家系。そこそこ位も高いらしい。
ただ、忙しいらしく殆ど家に帰ってきたことはない。
おかげで、広い和風の屋敷を持て余している程だ。
なのでお屋敷は親戚に当たる安芸先生……
俺は安芸ねえと昔から呼んでいた、
彼女とほぼ2人暮らしという現状である。
そして、安芸ねえが……たしか現在の勇者?を見守る役目らしい。
ただ、教師という立場上。目を離す機会が多い為
俺が見ておいてくれ。と頼まれた結果、こんな事になったのである。
好きでなったわけじゃないんだ。本当に。
いや、そりゃ役得だけども。
まあ、俺が彼女達と知り合いなのは
ある意味お役目のお陰なのである。
それでも銀とは結構昔から仲が良かったりするが。
そんな風に何気なく過去を振り返っていたら
ふと、風が止み、音が消えた────
「…………え?
────止まってる?」
周囲を見渡すと、自分以外の生徒が動いていなかった。
まるで、時が止まったように────
いや、違う。実際に時が止まっている。
なんとなくだが、そう感じた。
「どうなってるんだ……これ……」
困惑していた俺の耳に鈴の音が入ってきた。
「鈴……?どこから……」
その直後、俺の視界を光が、花びらが、遮った────
「────ッ!」
そして、目を開けた時、俺の視界には
「は────?」
色とりどりの樹木の根があった────
「な、なんでさ────!?」
俺がこう叫んでしまったのは多分間違いじゃない。
うん、間違いじゃないと信じたいなぁ……。
────
とりあえず、状況整理だ。
時が止まって、鈴の音が聞こえて、光が視界を遮ったら
目の前は辺り一面カラフルな木の根っこ
うん、訳分かんねぇ。
そんでもって大橋だけが残ってるのは此処から見て分かった。
なんで数km離れた場所にある大橋が見えるのかは……
もう突っ込まない方が良いかこれ。
建物なんもねぇし。
と、大橋の方を見つめると
何やら巨大な異形が迫ってきているのが見えた。
「水が上に行ってる……なんだよあれ……」
間違いなく、触れてはならないものだ。
人の手には余る怪物だと理解した。
だが、そこに……赤と青と紫のナニカが怪物のもとに跳んでいった。
いや、ナニカじゃない。あれは見覚えのある顔だった。
人であの顔は……
「まさか────」
嫌な予感がした。
どうか間違いであってくれと────
「どうして、アイツらが……!?」
────
士郎が駆け付けてくる一方で
鷲尾須美、乃木園子、三ノ輪銀の三人が
巨大な異形、世界を殺す存在、バーテックスと戦っていた。
「水のせいで……矢が思ったように……!!」
いや、正確に言うのであれば苦戦していた。
「あぁもう!決定打が全然ない!!どうする鷲尾さん!」
「いきなり私に言われても────!?」
銀の言葉に焦る様子の須美。
その時、ふと……信じられないモノを見た。
「どうして……どうして、衛宮くんが居るの!?」
なぜなら、そこには本来居ない、
いや居てはいけない筈の人間が居たのだから。
「嘘だろ……!?」
「なんでえみやんが此処に〜!?」
「やっぱり……見間違いじゃなかった……どうして……」
四人がそれぞれの反応を見せる。
一人は有り得ないモノを見たように
一人は嘘であって欲しいと願うように────
「悪い、鷲尾さん!」
「あ……三ノ輪さん!?」
銀が須美達を置いて、士郎のもとに走っていく。
「士郎!なんでお前が此処に居るんだよ!?」
「銀!?……アレはなんなんだよ!?
お前らのそれはなんなんだ!?」
「あーもう!一々説明できるか!
とにかく!士郎は何処か隠れてろ!!」
銀のその言葉は、自分にとって一番聞きたくない言葉だった。
「それは嫌だ!」
「なんでだよ!?」
「女の子に戦わせて、
黙って見てるなんてできるか!」
「あー、なんでこんな時に、士郎は頑固者なんだよ!!」
そんな風に怒鳴られるが、俺は嫌だった。
此処で引いたら、後悔してしまうと思ったから。
その時、銀の後ろに水の塊が接近している事に気付いた。
「ミノさん!後ろ!!」
「しまっ……!?」
園子の言葉に銀は後ろを向くが間に合わない。
……だったら、俺がどうするべきかなんて分かりきっている。
「銀────!」
「士郎、何を────ッ!?」
銀を俺は突き飛ばす。
目の前には既に水塊が迫っていた。
あぁ────俺は此処で死ぬのか────
そうなんとなくだが理解できた。
死の間際は焦る、冷静、虚無。などといろんな説があるが
どうやら俺は……冷静なタイプらしい。
はは────
まあ、助けて死ねるなら……まだ良いのかな────
ふと、声が聞こえた気がした。
……それで良いのかって?
仕方ないじゃないか、だってもうどうしようもないんだから────
あぁ、だって此処からどうやって生き残れる?
そんな事、不可能じゃないか────
答え?そんなもの俺には────
成すべき事……
その時、俺は意図せず、一つの言葉を口にした。
「
その時、静電気のような痛みが全身に走り
嘔吐感と異物を無理矢理起こしたような感覚があった。
だが、それでも思考は
……水塊が遅く動いてるように見えた。
「今、俺は何を────」
水塊を避ける為に
後ろに跳んだ感覚だけは残っていた。
樹の根を蹴って、後ろに跳んだのだけは理解出来た。
だが────
「……どうやってこんなに後ろに跳んだんだ、俺」
「衛宮くん……?」
常人じゃ考えられない程跳んでいたのだ。具体的には10m程。
前を見ると、再び水の塊が接近してきていた。
どうする────避けているだけじゃ────
その時、紅い外套が見えた気がした。
「え?」
荒野に立ち尽くす、
紅い外套を纏った白髪の男の背中が目の前に見えた。
そうだ────この男の背中を知っている────
この男の結末も知っている────
この男の在り方も、総て知っている────
そうだ、この男は────
「えみやん!」
「ッ────!」
園子の言葉でさっき見えたモノが全て消え、先程の景色に戻る。
しまった、幻覚に気を取られ過ぎたか────!?
再び水塊が目の前に迫ってきていた。
ッ……避けてばかりじゃキリがない。どうする。
あぁ、そうか……なら……やるしかない────
「
自分のその言葉に合わせて、
脳内で無数の剣が現れ、一つの夫婦剣に至った。
「ハァッ────!!」
そして、俺は……水塊を斬り裂いていた。
「士郎……それ……?」
「衛宮くん……」
「ふぉおお……えみやんカッコイイ!」
「え────?」
手元を見ると、白と黒の夫婦剣を俺は両手に握り締めていた。
「これは……
太極図の模様が刻まれた二本の剣の名が頭に過ぎった。
「ガッ────!?」
その剣を握っていた白髪の男……その風景が目に映ると同時に
何かが砕け、崩れる音が聞こえた────
「────今のは」
「士郎!」
「銀か……」
「なんだよそれ!!そんなの有るなら最初っから言えよー!
士郎が死んじゃうかと思ったんだぞ!?」
何処か拗ねたように、叫ぶ銀に苦笑してしまう。
「すまないな、銀。
いや、まぁ……オレ自身、
こんな力があったとは思わなかったんだが……
それに、さっきの────」
「えみやん、かっこよかったよー!!」
「うぉ!?……いきなり抱き着くのはやめろと
言わなかったか、園子?」
急に抱き着いてきた園子の頭を撫でる。
撫でられてか、顔がニヤける園子。
ふむ、このなんとも言えない背徳感はなんだろうか。
────なるほど、これが保護欲か。
「えへへ〜」
「ふむ、聞いてないなこれは」
「撫でてるからだと思うぞー」
呆れたようなジト目でこちらを見つめてくる銀。
そうか、オレのせいか……オレのせいなのか?
なんだか昔からこんな感じだったような気が……
「って、そんな事してる場合じゃなああああああい!!」
「わわわっ!?」
「うわ!?」
「おおう!?」
鷲尾の叫び声に全員が正気に戻る。
ビックリした……。
「全く、三人とも……まだ敵は────!」
そういえばそうだった……すっかり抜けていた。
「……で、どうするべきだ。これ」
「どうって……どうする?」
「うーん、総攻撃ぃ?」
「無茶ぶりも良いとこね……」
……良い意見なしか。
いや、待てよ……?
「総攻撃……意外と良い案かもしれん」
「え!?」
オレの言葉に驚いたように鷲尾が視線をこちらにやる。
「……その、言っちゃ悪いかもしれんが
……まだ三人は連携をやった事がないんだろ?」
「あー……たしかに、まだしてないんだよなぁ……」
銀が困ったように苦笑する。
やっぱりか……ちょっと見た感じだったが……
まだ互いの状況把握が上手いようには思えなかった。
「つまり、互いの力量がまだ把握できてないわけだ。
……そんな状況で作戦を練っても上手く行く可能性は低い」
「なるほど、たしかに言われてみればそうね……」
鷲尾はオレの意見に一理あると思ったのか頷く。
……やっぱり理解が早いのは鷲尾か。
「だったらいっその事、
攻撃の手を休めずにダメージを与え続けるべきだろう」
「おー、猛攻撃だね!」
「そういう事だ。
それだけやれば、相手は撤退を余儀なくされるというものさ
さて、オレの意見に乗ってくれるか?」
ニヤリと笑ったオレを見て
三人はコクリと頷くのだった────
次回、本格的戦闘
だけど戦闘描写上手く書ける気がしない……