記憶の片隅にある天国   作:パフさん♪

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前回は主人公「クロ」がメンバーと話せるようになったところまで書きました

さて今回は対等な関係になってからはじめての話し合いです!

それでは第11話始めます


第11話 ここにいる理由

「バンドでぜったい、世界を笑顔にする......!」

 

はぐみは「世界を笑顔に」する事を考えている

 

 

「音楽で......世界を、笑顔に......!」

 

薫もまた「世界を笑顔に」する事を考えているのか?

 

 

「ーーう〜ん。......でもどうやって?」

 

そしてこのザマである

はぐみと薫、そしてこころが同時に言う

3人寄っても知恵は増えなかった

行き当たりばったり過ぎませんかね...

 

 

私がみんなに受け入れられてからもう1時間近く経っている

その間私も含めた6人でどうやって「世界を笑顔に」するかずっと考えている

私が何か提案を出せていないので文句は言えないが、流石に目標が漠然としすぎているので答えが見つからない

 

始まったのは答えがわからない問いと、もどかしさだった

 

 

「大丈夫?」

 

と美咲が問いかけてきた

できれば大丈夫と言いたい

だけど言えるような状況ではない

 

 

「でも......難しいです......どうすれば......」

 

花音も相当悩んでいるようである

 

 

「ただ歌えばいいのかしら?

ただ楽器を弾けばいいのかしら?

なんだかちょっと、違う気がするわ」

 

こころも考えている

歌えばいいとか、楽器を弾くだけでは解決しない目標

そして何よりもこころの笑顔が少し曇りかかっているように見えていた

 

(まずい...一回流れを変えないと...)

 

そう私は感じ取った

このまま考え続けていたらずっとこのまま止まり続けて、今日の行動が無駄になってしまうように感じて

そしてなによりも

 

みんなの曇った顔が見たくなくて

 

 

「あの...みんなで歌いながら笑顔で色んなところを回るのはどうですか...?」

 

私が出した苦し紛れの結論

その答えは全く高校生らしくない、これをやっているのは幼稚園児くらいだ

ただ、その行為で笑顔になる人は少なからず1人はいるはずだ

まず私がそうでありたい

 

「うーん......」

 

みんな私の答えに誰も何も返せない

相当考え込んで私の意見が聞こえなかったのか?

それとも、私の意見が幼稚すぎて馬鹿みたいに見られているのか

はたまた、私の意見が採用されてその方向性で答えを見つけ出そうとしてるのか

色々な事柄が想像できる

 

そしてそのほとんどが悪い事しか出なかった

 

「あっ、はぐみわかった!はぐみがギターを弾きながら変な顔とかしたらどう?みんな笑うんじゃないかな!?」

 

はぐみは私の意見を引用して新しい意見を紹介した

それを聞いて少し安堵感と共に胸を撫で下ろした

ただ、私の意見の引用で変えて欲しくなかった部分が変えられてしまった

 

「笑顔」が「変な顔」に

 

文句は言えない

そもそもそんな権利はない

なんせ私が作った偽りの答え

ただ少し入っていた「希望」が消されてしまった

そして誰にも言えずにいた

 

 

「は、はぐみさんの担当楽器は、ギターじゃなくてベースだよっ」

 

花音...ツッコミを入れるところはそこですか....

だが、花音の一言で私の意見に対しての綻びを見つけてしまった

 

楽器を演奏すること

 

私は楽器を演奏する技術はない

なので、すっかり忘れてしまっていた

このメンバーはバンドを始めるために集まっているのだと

そのことはこころの「楽器を弾く」という言葉を思い出したら分かることだ

だが私には気づけなかった

 

私と5人には溝があることに

 

 

「あっ。そうだったっけ?

ていうか「さん」とか要らないよっ」

 

「え、えっと......じゃあ、はぐみ......ちゃん?」

 

はぐみと花音の間でやり取りをしている

そこに私は関係ないのだが、少し心が温かくなった気がした

その感覚は今までない感覚、そして初めて感じた温かさ

 

 

「とてもいい案だけれど、すまない......私には不可能だ。私には何をしても美しくなってしまう運命が......」

 

「そうなの?薫の運命って大変なのね!」

 

「......!?こころ......!君は.......ああ、なんてことだ。君は今、私の運命を理解してくれたのか!!

この世にそんな人がいるとは思わなかった......君は私と......同じ魂をもった運命の相手だ!!」

 

「あら。ありがとう!」

 

一体何をやっているのか

もしここで目隠しをされてこの会話を他の人が聞いたら十中八九恋人と答えるだろう

それは本当に恋の告白みたいに聞こえていた

薫が王子様、こころはお姫様って言ったところか

 

そして1番大事な事を忘れてきている

 

「世界を笑顔に」する答えを出すこと

それから今はどんどん遠ざかっている

私がしたかったのはどんよりとした空気を変えること、それは成功した

ただ、そのせいでみんな目的を忘れてしまっている

結局私のしたことは無駄だったのか...

 

また私の心に暗い影が差し掛かりかけた...その時

 

 

「でもなんの理由もなしに、ここにいる人なんていないわよ。

こうして揃っている時点で、もうあたしたちは何か理由が出来ていると思わない?」

 

私はいつもこころに助けられている

影から見ていた時も、同じ空間にいる時も

そして今日、私の中で1つの小さな目標ができた

 

こころ達を助けたい

 

ここにいる理由

私の決して曲げたくない意志

心の中で「こころ」達を思い続ける

それは簡単だけど難しい

でも、絶対に成し遂げたい気持ち

 

周りのみんなも私と同じだったのかもしれない

1人1人こころについてきた理由がある

それは何だったのか、思い返しているのだろうか?

3人の顔が真剣になり深く考え込んでいる

だけど美咲だけは呆れたような顔をしている

「キグルミの人」としか認知してもらっていない美咲

それはこころによって巻き込まれた被害者

私がもしも同じ立場であったらすぐにここから逃げ出す

 

...美咲は逃げない

もしかしたら彼女なりの決意があるのか?

それともここにいて他の人を笑い者にしたいのか?

はたまたここに興味を持ってしまってこの先を見たいのか?

答えは美咲しかわからない

もしも、美咲が逃げなかったらいつか聞いてみよう

 

私に似ていると感じる少女に

私の本心を

 

 

「私......いつも人に言われるがままだったけど......そんな私でも......ここにいる理由......が?でも私......みんなと一緒に、ちゃんとできるか......」

 

花音はここにいる理由をまだ見つけてないらしい

彼女の性格上、見つけるまで時間がかかりそうだ

それでもいつかは彼女自身の理由が見つかるのかもしれない

 

「花音さん、そんなに真面目に考えなくても大丈夫だよ?疲れるだけだから」

 

「そ、そうなんですか......?」

 

花音の言葉に返したのはやはり美咲だ

そしてその言葉に流されそうになるのも花音っぽい

 

 

「はぐみも......ずっとずっと『戦って』きたから......強いとか、負けないとか以外にも、理由があるものがあるって、今知った......」

 

はぐみもまた、ここにいる理由を話し始めた

彼女は何かスポーツをしているのだろうか?

はぐみはいつも楽しくスポーツをやっているのだろう

ただその答えはすごく哲学的で誰も答えを出せないかもしれない

私も今答えを言えなかった

 

 

「シェイクスピアも言っている。

天の力でなくてはと思うことを、人がやってのけることもある。

そうだ!喜劇を演じるというのは......」

 

続いて薫が理由を話し...訂正よくわからない話をし始めた

私は文学に精通しているわけではない、ましては洋楽の小説なんて読んだことがない

薫の話が続きそうだ

なんとしても阻止しなきゃ

 

 

「ちょ、ちょっと待ってっ。またバンドから離れてます〜っ!」

 

花音のお陰で薫の話は止まった

ありがとう花音

あとそろそろしっかりとバンドで出来ることをもう一度言う必要がありそうだ

私はない頭を振り絞っていると

 

 

「う〜ん?やっぱりとにかく、出会った人にあたし達と一緒に笑顔になろう!って言えばいいんじゃないかしら?」

 

こころが回答を出してくれた

多分今まで出てきた中では1番まともな解決案だった

それなら簡単だし、何よりも私でも参加できる

そしてみんなと一緒にいればそのうち笑顔で入れるようになるかもしれない

 

 

「いやあなた、その作戦、校内でことごとく失敗してたからね?」

 

美咲のツッコミが入る

そして気付かされる

こころは普段からこういう性格であるのは容易に想像がついた

そしてそれをみた一般人からしたら少し距離を取ろうとするのが妥当である

こころはやはり無謀なことばっかしているのだろうか?

 

 

「そうなの?『結構ですあはは』って笑ってくれる人がほとんどだったわよ?」

 

「それ失敗してるんだよ!?自覚なかったんだ!?」

 

本人がこの様子じゃずっと気づかないのも無理はないか...

私が思った通り一般人は苦笑して去っている

もしかしたら本当に答えがないのかもしれない

 

 

「でも、せっかくバンドをつくったんだから、今までと違う事がしたいわ。そうじゃなきゃ、楽しくないものっ。

相手に楽しくなってもらうには、まずあたしたちが楽しくなくっちゃ!!」

 

「うんわかる!!はぐみ、こころちゃんの考えすっごく好きっ!ね。こころんって呼んでもいい?」

 

「いいわよ!......それにしても、なかなか出てこないわね。あたしたちの『楽しいこと』」

 

「うーん。バンドって難しい〜......」

 

こころの意見に私は賛同したい

それははぐみも多分、他のみんなも同じなんだろうと思う

ただ、答えが出ない

そのままもう1時間半以上経っている

みんなの顔から見える疲れが大分と溜まってきている

 

こころ達を助けるという気持ちが空回りして私の思考が長く抜けない負の迷路に迷いこませた

いつもの私ならここで迷い続けて、最後には出口を探すのを諦める

そしてその場で座り込み何も動かない

時が過ぎて消えていく私を見て嘲笑い朽ちる

 

それではダメなことはわかっている

この世界で手に入れた小さな1歩

それによって1度は開かれた無限の可能性

今こそもう一度出さなきゃいけない

私が私を嫌いになる前に....!!!

 

その祈りが届いたのか一人の救世主が動いた

 

 

「いや、ねぇ。だからさ。悩む前にまだ楽器ももってないよね?」

 

「ーー楽器!!それだ、演奏!!!!」

 

救世主は美咲だった

その単純で初歩的なことを忘れていたようだ

美咲の発言を聞くまで忘れていたのだ

もしかしたら花音なら楽器が必要なことに、薄々気づいていたのだろうか?

 

確実に言えることは薫、こころ、はぐみは全く気が付いてなかったことだ

私もどちらかといえば花音側と言いたかった

ただ今嘘をついても無駄で意味がない

素直にいうと3人と同じだった

 

つくづく私は馬鹿だと苦笑した

嘲笑わなかったのは幸いだったのかもしれない

 

 

「やっとわかってくれましたか」

 

美咲はそう言って目を閉じた

美咲はずっとこの事に気付いていたのだろうか?

いや、最初から知っていたのだろう

そして本当に困った時になってから言うと思っていたのだろうと

美咲は被害者だ

だからこそ、口を出してこれ以上巻き込まれたくはない

だけどみんなが困っているのを助けたいと

 

私の中の美咲はこうであると勝手に決めつけている

それは無意識に私の心中が美咲に投影しているのかもしれない

 

 

「そうだわ!じゃあ早速楽器を......」

 

「こころさま。ギター・ベース・ドラム。すべて整えております。こちらの部屋に運ばせましょう。

それとクロ様をお貸ししてもよろしいですか?」

 

ここは本当になんでも有るのか...

普通はバンドセットなんて家に置いてないはず...だけどここはお屋敷でお金持ちなのだろう、なんでも出来そうだ

 

黒服の人は私の名前を呼んだ

本名を知っているはずなのに私のことを「クロ」と呼んだ

黒服の人も私を歓迎しているのだ

 

これからはこころ達を守る使用人の一員として、そしてこころ達をサポートするバンドのメンバーとして

 

「クロ」として私を認めたのだ

 

 

「クロ、いってらっしゃい!」

「王子様、出番だ」

「クロ、頑張ってね!」

「クロさん......なんなら手伝いましょうか......?」

「クロさん、あまり無理はしないようにしてくださいね?」

 

みんなが私を押しているそう思えた

私はみんなの応援に応えて

 

「ああっ、みんなのために運んでくるよ

大丈夫、私だけで運ぶから」

 

始めて他人から期待されている

そう思うとなんだか恥ずかしく、言った後直ぐにみんなに背を向けた

今私の顔は恥ずかしさで顔が火照り始めているのだろう

体温が上がる感覚が込み上げる

まだまだ身体と心が慣れてない証拠

今はそれでもいい

 

いつかはみんなに顔を合わせて言ってみたい

そして、私がみんなを助けたい

皆が笑顔になるその日を見届けたいー!

 

 

1時間半は短い時間だ

でも書き換えると

5400秒と長い時間に変わる

 

逆も同じように

過去の私がいつか未来の私に変わる

その時わたしには何が起きるのか?

 

 

 

 

 

いつか来る目標達成に向けて私は黒服の元へと向かった

みんなとスタートする為に

 




長い割に内容がない!
今回は単調で読んでてつまらないかもしれませんがこの話は今後の展開に大事な部分なので詳しく書きました!

お気に入り登録者が15人突破しました!こんな多くの方々が見ていただいてる事に感謝いたします!

それでは次の話も楽しみ待ってください!

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