記憶の片隅にある天国   作:パフさん♪

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前回は作戦会議の終了まででした

さて、今回からやっと現実編です

それでは第13話始めます


新たな目標
第13話 未来へ繋ぐ音


長い夢

長いはずの夢が一瞬で消える

 

自分が目を覚ました

自分にとっては2度目の同じ日が始まった

現実の世界では1日だが私にとっては2日目

普段の自分はここで文句の一つでも言うだろう

 

ただ一つ違う

私の中で残った数少ない記憶

『世界を笑顔に』そして、楽器を運んだこと

残っていて欲しかった記憶だったのかもしれない

ただあまり思い出せそうにはなかった

 

いつものように何も変化のない行動

自分は学校に行く準備をしている

黒いスーツに身を包み

家を出た

 

 

いつも夢の世界から還って来た時に限り、記憶を整理する時間がやってきた

学校に行くまでの短い時間で、残った記憶の欠片を繋ぎ合わせる

 

最初に『世界を笑顔に』する

これは記憶を紡ぐ必要はなさそうだ

言葉通りの意味でこころが言った

その言葉に自分は乗っかった

 

そして私は楽器を運んだ

それはみんなが自分を認めてくれたこと

みんなを助けたいという気持ちの表れだった

 

起きて直ぐに出てきた記憶は2つだった

だが、今の時間だけで多くの事を思い出せた

人の記憶というのは面白い

 

 

と、そこまで思い出した頃にはもう教室だった

 

 

相変わらず授業は楽しくない

出来ればこのまま教室を抜け出して、もう一度寝ていたい、そう思った

ただ、今はそれをする事を躊躇った

 

次の授業が音楽だったからだ

普段なら音楽の授業が待ち遠しとは思わない

逆に鬱陶しいと思うくらいに面倒くさい

夢であった5人を助けたい、その気持ちが今の自分をも動かしているのかもしれない

 

 

授業終わりのチャイムが鳴り、号令が掛けられる

 

「ありがとうございました」

 

と、クラスメイトの声が聞こえて

自分はその言葉が終わるかどうかの時にはもう音楽の準備を済ませ、いち早く教室を出た

 

ここから音楽室までは遠くはないが少し早歩きになる

ここでもし走っていたらすれ違う教師達に声を掛けられ止められてしまう

走らず急げる方法として出たのがこれだ

 

授業が始める7分前ほどで音楽室に着いた

もちろん誰も来ていない

音楽の先生もいない

自分は音楽室をキョロキョロし始めた

 

空はいつのまにか晴天から黒い雲が出始め、大雨になっていた

 

 

...見つけた

使い古されたドラム

 

何年間も生徒によって叩き続けられ、ボロボロになりながらまだ現役のドラム

夢で見た花音のドラムはすごく綺麗に手入れされていた

二つのドラムを比べてしまうのは野暮かも知れないが花音のドラムの方が断然いい

 

ただ、このドラムを見ていると自分の様な感じがして

見捨てたくなかった

 

よくよく見るとドラムは太鼓が5つにシンバル(?)の片側が3個に棒が2本で構成されていることがわかる

昨日運んだ花音のドラムと同じ構成だった

もしも構成が違うのであったらドラムとは何かわからなかった

 

と、突然後ろから声を掛けられた

 

 

「君、ドラムに興味あるのか?」

 

その言葉に私は飛び上がってしまった

前屈みの身体が爪先立ちするほどビックリした

その仕草に声の主は笑いながら

 

「はっはっは!!君がそんなに魅入るなんて珍しい」

 

と言われた

その言葉に少しの憤りを感じつつ振り返った

 

その声の主は音楽の先生だった

 

 

「せ、先生!驚かさないでくださいよ...」

 

「ごめんごめん。いやぁ、君から話しかけられるなんて明日は豹が降ってくるかな?」

 

「先生...その『ひょう』ってもしかしなくても動物の方ですよね...」

 

「ははっ、バレたか」

 

音楽の先生はいつも明るい人でよくジョークを挟んで会話してくる

なのでさっきの『ひょう』が『雹』ではなく『豹』という事はある程度察せたのだ

そして先生はどんな時でも生徒のことを『君』という

なんでも名前を覚えるのが苦手だと公言していた

 

 

「ふむふむ...このドラムは私が赴任する前からある、結構年季が入ってる。

確か10年ぐらい使われているらしいよ。昔はよく生徒が休み時間とか練習しに来てたんだけど...今じゃこの有様、誰も演奏してはいない...」

 

先生は少し寂しそうに話してくれた

このドラムは現役とは言ったが、そこら中が痛んでおり、今はどんな音がなるかもわからない

昔、このドラムの音は生徒によって奏でられ、先生の心を笑顔にしていたのだろうか?

 

今はそれができない

つまりは笑顔を失ったのかも知れない

そう思うとどんどんこのドラムをほっとけない気がして

自分の口が勝手に動き始めた

 

 

「先生、自分....このドラムが奏でる音が聞いてみたいです」

 

それは自分が言った中で

はじめての嘘偽りのない気持ち

私の主張

そして「この世界」でのスタート地点

 

 

先生は少し驚きながら自分の言葉を聴いていた

そして数秒の間を置いて

 

 

「ありがとう...。でも...私ではどうにもできない...。私はドラムをやったことがない。だからこれを直せないんだよ...。」

 

先生は私をまっすぐみて応えた

だが、先生の言葉は後半になるにつれ震えが増してきていた

もしかしたら先生の手元が震えているのかも知れない

先生自身の不甲斐なさを自虐しているのかも知れない

 

それはなんだか昔の私をみているようで

辛かった

もしもこれが昔の自分だったら逃げていていたのだろう

 

 

だが、今は違う

先程言った自分の言葉はどこかに引っかかったわけではなくすんなりと言えた自分の言葉

 

 

だから今回も逃げずに出せる言葉

 

 

「先生!自分がこのドラムを直すので、それと少しは叩ける様になるので!先生に昔の音をもう一度聴かせます!」

 

自分はここで大きな過ちをしてしまった

まず一つ目は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

それは先生と同じだからあまり変わらないかも知れない

なんならドラムのことについて調べればいいだけだ

 

それよりも問題なのが2つ目

 

ドラムの弾き方を教えてくれる人がいないこと

 

こっちは本を読んだだけではわからない

本を読んで出来るような感覚に陥るだけで実際にやるのとは全く別物になる

その上、自分には情報源となるものが本しかない

携帯電話やPCを持っていない自分は動画を見ながら練習なんて出来ないのだ

 

 

「本当か!君!で、でもドラムやったことあるのか!?」

 

「いいえ、ありません。ただ、最近ドラムを運ぶ機会がありまして。その時にドラムに興味を持って色々やってみたいのです」

 

先生の無言が続く

無理もない

自分に期待を抱いたすぐ後に未経験者と言われたら少しは戸惑うだろう

しかし、先生は分かっているのだ

 

自分以外に頼れる人がいないことを

 

 

「やってくれるか?頼む、私が過去に聞いた美しい音を聞かせてくれ」

 

と深々と自分にお辞儀をしながら応えた

先生の身体は昔の私みたいに小動物の様に見えた

 

 

「先生、頭上げてください。後、一つだけ訂正させてください。

過去の音ではなく『未来の音』を奏でるんですよ。

自分が奏でる音は昔にも無かったもっと美しい音を奏でてみせます」

 

と言い切ってしまった

と同時に何故ここまで啖呵を切って言ってしまったのか後悔と恥ずかしいさが込み上げてきた

ただもう逃げられない

 

この言葉は自分が逃げない様に言った言葉

こころ達によって変えられた自分の言葉

そして、自分が『世界を笑顔に』する為の言葉

 

この会話の中にこれだけ多くの意味を持たせながら自分は動いた

 

 

先生の顔は見えなかったが軽く頭が上下に動いていた

自分はここで顔が見えなかった方が良かったのだと感じつつ、自分の席に座った

 

これから始まる授業に自分は積極的に受ける姿勢を先生に見せたかった

 

先生は自分のその姿をみて

笑顔になっていた

ジョークを言っている先生の笑顔ではなく

 

心の底から出てきた笑顔

その笑顔はこころの笑顔によく似ていた

 

 

もうすぐで予鈴が鳴る

そしてクラスメイトが音楽室に集まり始めている

もうその時にはいつもの先生に戻っていた

自分に見せた笑顔を知っているのは私だけだと思うと少し優越感に浸っていた

 

授業が始まった

先生がピアノを弾いている

それに生徒が歌声を合わせる

曲は明るい曲なのだがピアノの音は少し悲しそうだった

それは先生の不安なのか自分への不安なのかはわからない

それに気がついたのは自分だけだと思うと先程とは違う感情が出てきていた

 

 

 

花音、美咲、薫、はぐみ、こころ...それと自分

6人で決めた『世界を笑顔に』という目標

 

 

その目標を最初にし始めたのが私だと思うと責任感が出てきていた

 

 

そして、いつかは5人が何かに躓いた時に自分が助けになれる様に

 

 

授業が終わり音楽室を出て行く

そこでみた空は今日1番の透き通る様な青い蒼い空が広がっていた




現実part1でした

新キャラが出ましたけど今後、主人公との関わりが重要となるキャラです!
名前は出す予定はないです

そして主人公に現れる心情の変化に書いてる私が感動しかけてますw(おい作者)

さて、話を変えますけどバンドリで新カバー曲「恋は渾沌の隷也」が配信されましたね!

やっていて本当に楽しい譜面です!
フルコンもできました!
\(・ω・\)SAN値!(/・ω・)/ピンチ!
\(・ω・\)SAN値!(/・ω・)/ピンチ!
\(・ω・\)SAN値!(/・ω・)/ピンチ!

(やりすぎて腕が痛くなる模様)


では次の話も楽しみに待っててください!


追伸:今日までの1ヶ月分を再投稿させてもらいました
理由は簡単で私の不手際によって誤ってこの小説を消してしまいました...(徹夜後の小説編集が悪かった...)

なのでまた1からの出発となります
お気に入り登録をしていただいた皆様には大変なご迷惑をおかけしてしまったことに謝罪いたします...

そしてまたこの小説をお気に入り登録していただいた方々がおられましたら本当に恐縮です...

これからも頑張りますので応援よろしくお願いします


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