記憶の片隅にある天国   作:パフさん♪

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前回はバンドの雑誌を手にとって、夢の世界に入ったところまででした

夢の世界にあらわれた一人の救世主とは?(もうわかるかと思いますけど)

そしてどうやってその人を引き出すか?

それでは第15話始めます


第15話 私の要求

「おはよう」

 

その声に私は目を醒ました

 

夢の世界に来てから初めての早朝

まだ時間は5:00過ぎだった

外は薄暗く、街灯がまだ点いていた

 

私の部屋には、いつ入って来たかわからないが母さんがいた

 

「あらっ?早いわね。今日は学校の日直の日なの?それにしても早いわね」

 

と、母さんは私の洗濯済みの服を衣装ケースに入れながらそう質問を述べていた

 

「んー...ただ目が覚めた」

 

と簡潔に返すと

 

「そうなの?それじゃあ二度寝しないように着替えなさい。」

 

母さんは私が普段からよくする行動を防止しようと助言してくれた

...たまにそれで遅刻しそうになる...

 

「あと、それと......はい、これ」

 

母さんは私に畳んでいた衣服の塔の1番上から手に取って、私に差し出して来た

 

「これも洗濯しといたわよ。アンタ、ちゃんと返しなさいよ?」

 

それは昨日借りた花音のタオルだった

私が楽器運びを終えた時に汗拭き用に貸してくれたタオル

別に汚れたものを拭いたわけではないので見た目では昨日と全く同じだ

だが、このタオルは昨日借りた時に仄かに漂っていたいい匂いがしていた

この家で使っている洗剤が、花音の家で使っているのと一緒なのかもしれない

 

「ありがとう」

 

そう言って私はタオルを受け取った

そのタオルを割れ物を扱うかのように丁寧に学校カバンに入れた

その姿を見ていた母さんは少し「ふふっ」と息を漏らしていた

 

「アンタ...彼女ができたからって、そんなにマゴマゴしなくてもいいのにねぇ...」

 

「だから!違うって言ったじゃん!もう...めんどくさいなぁ...」

 

母さんの冗談に私はムキになって答えた

母さんがこう言ってくることはなんとなくわかっていたが、いざ言われると少し恥ずかしく思ってしまった

そして素の私になっていた

 

心の中で燻っていた感情が口から昇り出て言った

面倒くさいと言ったが少し嬉しかった

 

 

パジャマを脱いで制服を着てリビングに向かった

 

「おー。ちゃんと行く準備できた?

じゃあお母さん今からご飯作るから少し待ってて」

 

リビングには母さんがいた

まぁそれは当たり前である、父さんは料理が全くできないことは知っている

まして、父さんは出張中でこの家にいない

私はどうかというとご飯と目玉焼きくらいしか作れない

私がもし朝ごはんを作れるんだったらあんなずさんな食生活を送っていないだろう

なので母さん以外に朝ごはん作りは無理なのである

 

「いいよ。今日は手伝うからさ」

 

と珍しく家事をすることを宣言した

母さんの家事を手伝うことなんて今まで一度もない経験

そしてこれからもできない経験

 

もし、この記憶が消えたとしても今だけ...

 

 

今だけは浸っていたい...

 

「そう?じゃあお味噌汁作るのお願いしてもいい?あとは味噌入れたら完成だからね。味噌は冷蔵庫にあるから」

 

母さんは私の宣言をサラッと受け取り、私に料理を作らせる

味噌を入れるだけの料理

料理というか工程というか

すごく簡単なお手伝い

味噌を溶かすぐらいなら私にだってできる

 

 

「...出来た」

 

私が作ったお味噌汁は少し濃い茶色になっていた

味噌を入れているときは全く気づけなかったけど、入れ終わってから少し入れすぎた気がする

 

母さんの料理も終わって今はお茶碗やお皿に盛り付けてテーブルに置き始める

 

 

「「いただきます」」

 

二人の声が部屋を包み込んだ

献立はご飯、お味噌汁、卵焼き、お浸し、それにアジの開き

なんとも和風な一般的であった

 

私はなるべく自分が作ったお味噌汁を食べないように避けていた

そのお味噌汁は私が作り、見た目から塩辛そうに見えていたから

そうしていると向かい側に座っている母さんが私の考えを察したのか

 

「このお味噌汁アンタが作ったんだよね?いただきます」

 

とわざわざ注意を向かせるように言い、お椀を口につけた

 

「すこし塩辛いけど...初心者にしてはまぁよく出来たほうじゃないかな?」

 

感想を聞いていないのに

母さんは私の作ったお味噌汁を少し苦言を呈しつつ褒めてくれた

すこし嬉しかったがどうせお世辞だろう

そう思って私もお味噌汁を恐る恐る飲んで見た

 

「...おいしい...」

 

すこし塩辛かったけど美味しかった

私が作った美味しい始めて料理

母さんがダシを取っていたのか凄くコクがあるお味噌汁になっていた

母さんが言っていた感想がお世辞ではないことを認識できた

 

母さんとの楽しい時間はいつの間にか終わっていた

 

 

今はまだ7:00

登校時間まで約1時間ほどある

1時間の間少し暇になった私は教科書を読もうと鞄に入れた教科書を取り出す

そして漸くタオルを見た時に

この世界でしたいことを思い出した

 

 

そうだ、花音にドラムを教えてもらわなきゃ

 

 

なぜ今まで気づかなかったのか

多分料理を作ることと母さんとの時間を過ごせたことで精一杯だったからであろう

私はタオルを握って

鞄を放り出して

扉を強く押して

廊下を急いで走る

 

気持ちが先走ってしまっていた

しばらくして気持ちが一気に消えてしまった

 

(あっ...花音の連絡先知らない...)

 

私にとって連絡できるのは家にある固定電話か手紙しかなくて

花音の家の住所や電話番号なんか知るわけがなかった

昨日、この世界でしたことは軽い名前紹介くらいだった

他の情報は一切聞いていない

 

 

...どうしよう...

 

バンドメンバー5人のうち花音の連絡先を知っている人に聞く...それは無理

 

もう一度花咲川女子学園に突撃することも考えたがもうこの方法は通用しないだろう

 

そうなったら弦巻家に行って黒服の人に事情を話して次の日に花音に来てもらう...これも却下、できれば今日中に会いたい

 

色々考えていたがどれもしっくりくる案が一つも思いつかなかった

悩めば悩むほどぬかるみにハマっていく感覚に飲み込まれていく

 

(もう、諦めて明日に来てもらおう...)

 

そう思ってもう一度自分の部屋に戻ろうと踵を返す

その時、視線がある一点に止まった

 

家の固定電話に

 

昨日、私の家に電話がかかって来たことを母さんが言っていた

その相手が弦巻家だ

内容は「今後、息子様をお借りしてもよろしいですか?」

母さんはそれを聞いて二つ返事でOKしたらしい

電話が掛かって来た時間は私が楽器を運んでいる時

 

本来なら私が知らない内容だが昨日の寝る前に母さんが私に伝えていた

今の今まで思い出せなかったがまさか使える情報になるとは思ってもいなかった

 

私は急いで固定電話を操作をし始めた

履歴の最新から電話番号を探す

昨日かかって来た見慣れない電話番号

そして見つけた「弦巻さん」という名前を

あんな適当に了承しつつ、ちゃんと電話番号登録してるあたりしっかりしている

私はディスプレイに映った弦巻の文字を見ながら祈るように受話器を取った

 

 

プルルルルプルルルルプルルルル

 

長いコール音が耳に響き渡る

それと同時に私の上がっていく心拍音も身体に響き渡っていた

 

(頼む......出てくれ...!)

 

ガチャ

 

「はい、弦巻ですが。どちら様でしょうか?」

 

よかった、出てくれた!

しかもこころの声ではなく黒服の方の声であった

こころに言ったらもっとややこしくなって返って面倒になりそうだ

私は少し息を吐き、少し間をおいて要件を話し始めた

 

「あの、クロですが。頼みたいことがあります。お時間よろしいですか?」

 

「はい、大丈夫です」

 

私が黒服の方々にしてほしい要件を思いついた順にどんどんと言っていった

それを聞いていた黒服の方は何も言わずにずっと大人しく聞いている様子だった

多分私の興奮した言い分をメモしてくれているのだろう

そういうことを確信して私はずっとこうして話し続けて5分後

 

全てを話し切った

 

「...できますか?」

 

「はい、これくらいのことでしたら私達にお任せてください」

 

「ありがとうございます。では失礼します」

 

受話器を置いた

「よしっ」と小さく呟いて鞄のある自分の部屋に向かっていった

 

まだ登校時間30分以上前だったが家で何をする気にもなれなかったのでなるべく早く家を出よう

 

私は鞄を担いで玄関の靴を履く

そして、家を出る前に母さんが私に

 

「さっきはどうしたの?あんなに必死に電話して...やっぱりかのじ」

「違うって言ってるでしょ!」

 

少々食い気味に強く言った

さっきの様子が見られていたのかと思うと少し恥ずかしい

 

「まぁ、頑張って来な」

 

と母さんが後押ししてくれた

母さんの笑顔

私も自然にいつもなら言わない言葉を言って家を去った

 

「いってきまーす!」

 

その声は私が無くしていた過去の声

親がいた頃に言った時と同じように元気な挨拶

 

 

「よし!今日も一日頑張ろう!」

 

 

 

 

私はいつもより早足で学校へ向かった

 




投稿遅くなってしまって申し訳ありません!
最近少々忙しくて小説に手をつけられませんでした

そして今回はドラムのことを聞くための準備の会でした

次の話からとある子の回になります
さて、誰になるのかわかるかな?(うん、まぁ分かるでしょうが)

バンドリでは新イベ始まりましたね
私はガチャで☆3ひまり当てました!
めっちゃ可愛いです!惚れちゃいそうです!(だけど花音ちゃん1番!)

それでは次の話も楽しみに待っててください!

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