記憶の片隅にある天国   作:パフさん♪

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前回は三人の関係を説明したところまででした

さて、今回は前回語られていなかったあの人が出て来ます
そして、今回はとても長いです

では第25話始めます


第25話 クロと花音

「花音さん、今日もありがとうございました」

 

時が過ぎるのは早い

特に楽しい時間であれば尚更だ

今日も隣に花音と一緒に帰っている

 

「ク、クロさんもいつも私の...教えるの...苦手なのに........その......ご、ごめんなさい......」

 

「か、花音さん!?大丈夫ですか!?と、言うかなぜ謝ってるんですか!?」

 

私の感謝の気持ちに対して、花音は謝って来た

花音は何か勘違いをしているのではないか?

分からないこっちまでも何故か焦ってしまった

 

 

「だ、だって...クロさん......とても大変そうで......」

 

「えっ?何がですか?」

 

全然思い当たる点が見つからない

大変なことなんて一個もない

私が考えている時間に花音は少し息を吸い、気持ちを落ち着かせたのか、急に私に覗き込んできた

 

 

「クロさん!」

 

「は、はい!?」

 

「た....たまには......わ、わたしの......ことも....みて........ください.......」

 

「........えっ...?」

 

か細く聞こえた言葉に、私は聞き返すことしか出来なかった

私の反応を聞いていた花音は真っ赤になりながら、私から目を背けた

花音にとって、この言葉は相当勇気がいる行動だったのだろう

 

(とか、状況説明している場合じゃないだろ!?

えっ...?花音が私に何を言って来た!?

私を見て欲しいって?

えっ...花音は私をどう見てるんだ!?

てか、そもそも花音、それは告h(ry...

い、いかん....落ち着け...落ち着け...)

 

 

「......で、花音さん....?」

 

「...な、なんですか....?」

 

「そ....その....」

 

話が続かない

どう切り出していいのか分からない

言葉に重みがあるせいで、言葉の取捨選択の全てが捨てる一択になっている気がする

だが、私からこの状態を解決しないと先は進めない

花音は未だに私の方を向いてくれない

それどころか、だんだんと私から距離を置いて来ているようにみえる

 

(もう、自棄だ!いわなきゃ!)

 

私はここで恥ずかしくなってもいいと言う覚悟を持って花音に再度尋ねた

 

 

「ど、どうしてそんなこと聞くんですか?」

 

この禁句を言ってしまったからには、もう後になんか引けない

デリカシーがないとか、女心が分かっていないとか、そんなこと思われても仕方ない

さっきの私が言った覚悟とは「嫌われる」覚悟だった

 

 

「.............」

 

花音の口から言葉は出なかった

私の覚悟は無駄になってしまいそうな空気が漂っていた

 

(お願いだ、花音。早く花音から話を出してくれ)

 

と、諦めずに心の中で願っていた

私からではなく、花音からというのが1番重要なことである

なぜなら、私が聞こえた言葉を復唱するだけならば、花音はこれまでとの私の接し方に変化が生まれる可能性があると考えたからだ

変化はいい方向ではなく、悪い方向になりそうで

花音が私にこれから話しかけてくれないように思えた

 

 

花音の呟きから、無言の時間が5分続く

300秒という時間は数字から見ると、そう長くは感じない

だが、私にとっての5分は1時間程にまで感じる

そして、今日二度目の長い5分を体験している

どちらも二度と忘れることができない切迫した時間を、私は過ごしている

 

 

そして、漸く花音が話し始めてくれた

 

 

「......ごめんなさい......」

 

「...いや、大丈夫」

 

「...さ、さっきの話はね......その......クロさんが......こ、こころちゃんと楽しそうに......見えたから......」

 

「.......そうか」

 

「......それでね.....とても......羨ましいなって...思っちゃって...」

 

「........」

 

花音は.....とても正直者だと私は思った

花音は、気持ちの原因をしっかりと話している

とても勇気がいる行動で、大切なこと

誰の力も借りずに、言える......

 

...そう、私にはできない事

花音は私にはない何かを持っている

そう考えていると...なんだか....

 

心に棘が刺さる

棘は私の正常心を蝕み、死んでいく

そうしているうちにも花音は話を続けている

 

 

「ご、ごめんなさい!クロさんを困らせるつもりはないです!」

 

[ごめん、君の家親いないから遊べないや]

[君は、成績はいいんだけどね....友達は出来ているか?]

[なんだったら、先生のことお父さんって呼んでもいいんだぞ?]

[何か困っていることはないの?いつだって、私は君の味方だよ?]

 

今の状態に似ている、過去の記憶に残っているトラウマが甦る

一つ一つの言葉が一斉に聞こえ、一人一人の顔が頭の中に浮かび上がる

その顔には表情が映らない、彼らの顔には一生消えることのないドス黒い墨が塗られている

 

こいつらは、私を裏切った

こいつらは、最低だ

こいつらは、人間じゃない

こいつらは、悪、癌、屑.......

 

私の中に出てくるトラウマで、そこに本来居るはずの花音の声は聞こえていない

頭の中は膨大な情報によってジャックされ、正常に働いていない

 

そして、遂に私は暴走してしまった

 

 

(やめろ....やめろ....やめろ...やめろ......

やめろ!!!!)

(消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ!!!!)

(死ね!!!死ね!!!!死ね!!!!死ね!!!!!)

 

 

「うわあああああああああああああああ!!!!!!!!!」

 

花音の前で奇声を叫んだ

陰の部分が露わになり、止めることができない

今、出来ることは全て掃き出すことぐらいで他は何もできない

体が尽き果てるか、出し切るまで終わらない闘い

そんな事が人前で滅多には起きないが、今日にあった色々な事があって緊張の糸が途切れた瞬間に魔が差してしまったのだ

 

息ができなくなり、苦しく

全身から汗が吹き出し、寒く

汗が血に変わった様に思うほど、熱く

足が動かなく重力に負け、重く

全ての関節が悲鳴をあげるほど、痛く

 

全霊全身が異常事態を引き起こしている

命が削れ、今にも死んでしまうのではないかと思ってしまうほど辛い

ただ、為すすべがない

 

(ああああああああああああああ!!!!!!!)

 

狂った歯車が正確に動かない様に、私の心臓がおかしく動く

心臓が外に出て、全世界に聞こえて居るかの様な錯覚に陥る

身体が壊れていく.........

 

 

絶望の頂点に立つ寸前に一つの違和感を感じ取る事ができた

もうほとんど感じ取る事ができないはずの脳が通した違和感

その違和感は少しずつ坂を下るきっかけを与えてくれたのだった

 

身体の異常が薄れていく

だんだんと制限が溶けていき、音が変わっていく

過去から現在に置き換わって

 

そして、私が聞いた言葉に少し楽になれた

 

 

「...クロさん!....クロさん!....クロさん!!」

 

必死に私の名前を呼んでくれていた人がいた

これまでに悪魔の箱が開けられた後に聞こえる音はなく、また逆戻りしたこともあるのだが

今は、人の声に落ち着きを持っていく

 

そして、次に感じたのは温もりと水滴

冷たいのと温かいのが混じり合っている

2つが完全に混じり合った時、私は目の前にいる像に焦点が合ってくる

 

 

そこには大粒の涙を流しながら

私を抱きしめながら

必死に揺すっている人がいた

 

そして悟ったのだ

私は今、この人の前で倒れたこと

それと、この人にとって私の存在が不必要ではなかったこと

...私がいる事を証明してくれた

 

 

 

それから先は大変だった

花音は私が動いた事を分かると、より大きく泣いてしまった

その上、何故か力を強めて私をより密着させて来たのだった

私が声を出せるようになると、花音は私から離れ、急に恥ずかしくなったのか鞄で顔を隠していた

 

それから10分くらい経ったのだろうか?

倒れる前と同じような状況に陥っている

このままだとさっきと同じ過去を繰り返しそうだ

 

 

私は

花音に

私自身の

意志を

伝えた

 

 

「ごめんなさい、花音さん!」

 

「......ふぇ?」

 

急に声を掛けられた花音は私に顔を合わせてくれた

花音の眼は真っ赤に腫れ、顔には涙の跡があり、とても悲しそうだった

私は、花音にこんな顔をさせたくなかった

 

 

「これまで、何の為に花音さんを呼んでいたのか忘れかけてました。私は、花音さんにドラムを教えてもらうことが目的です。だけど....練習中はいつもこころに振り回されて......」

 

回りくどい

だけど、私が今できる限界

 

 

「こころは、私と花音さんと練習できることが楽しくて、周りが見えてなくて...って、私が言える立場じゃないんですけど...」

 

今はこころの事を言いたいんじゃない

言え!私!逃げるな!私!

 

 

「...花音さん!!私は、貴方がとても大切です!」

 

「ふぇっ!?」

 

...言ってしまった...なんて思ったが、後悔はない

そんなことよりも、目の前にいる花音の顔が今まで以上に紅くなり、身体が飛び上がったように見えた

 

 

「花音さんをこころの家に呼んだのは私だって聞きましたか?」

 

「...うん.......こ、こころちゃんから...聞いたよ....」

 

「あの時、朝起きて花音さんの連絡先を探してたんだ」

 

「ふぇ?」

 

「でも、知るわけない。だって、まだ会った次の日だったし...だけど、こころの家の連絡先を知っていたから、黒服の人に頼んで、花音さんに連絡してもらいました」

 

「...そ、そうだったですか?」

 

「で、連絡してから......その日の授業中、花音さんに伝わったかな?ってずっと考えてて...途中、昼休みにこころの家に電話してたんです。花音さんに伝わったか聞きたくて」

 

「...うん...」

 

「だけど、電話には誰も出なくて......私...だんだん具合が悪くなって.......」

 

「...!?クロさん、大丈夫ですか?」

 

「結局、放課後になって、校門にリムジンが止まっているのを見るまで続いてたんだ。だけど、これでも終わらない。最後に、花音さんがOKしてくれるか怖かった...」

 

「...わ、わたし?」

 

「花音さんが目の前にいて、断れるのが怖くて、声がでなくて....で、やっと出た言葉は直球すぎて、花音さんを困らせちゃって......」

 

「...その、私こそあの時はびっくりしちゃって...」

 

あの時のように身体中に異変を感じる

まだ何かを恐れ、逃げたい気持ちに駆られる

だが、口元はしっかりと動き、声だけが私を進ませていた

 

 

「でも、花音さんは私にドラムを教えてくれる事を嫌だと言わなかった。私は、一言くらい文句を言われると思っていた。それどころか、私を......と...もだち....って......言って.......」

 

あれっ...?なんで、私は言葉に詰まっているんだ...?なんで、こんなに気持ちがいいんだ...?なんで、私は泣いているんだ?

 

 

「...く、クロさn「うわぁあああーーーーーんん!!!」

 

ダムが決壊したかの様に涙が止まらない

そして、声も抑えられなかった

今までの花音に対しての思いの全てが解放され、恐れがなくなっていく

 

人前で泣いたのはこれで2回目

初めてこころの前で泣いた時、何故こんなにも清々しい気持ちになれるんだろうか?と、考えたことがある

その答えが全て分かったような気がした

 

 

 

泣くことは打ち明ける事だから

泣くことは変わる事だから

泣くことは生まれ変われる事だから

 

泣くことは生きる事だから

 

私は生きている

この時、この場所で

その証明に泣くことができるのだ

生まれて直ぐに出来る事が泣く事

それは、この世界に生まれた事を世界に響かせるための事

 

私の涙は生まれ変わる為の副産物で

涙は大地へと帰る

全て繋がる長い輪

 

 

泣いた

二度泣いた

つまり、二度生まれ変わったのだ

過去の私の一部が、今の私の一部に変わり

新しく生まれた事もある

友達という存在に私は気づいた

 

 

 

泣いている私に、そっと花音さんは寄り添ってくれた

倒れた時に抱きしめるのではなく、軽く私の手の上に、掌を乗せる

私にはそれだけでとても幸せだった

花音と私の体温がお互いに行き来する

その熱い感覚を脳裏に焼き込んでいく

 

花音、ありがとう

 

この言葉と一緒に

 

 

我ながら、本当に恥ずかしい

道端で倒れて、泣いて

もう、辺りは真っ暗だった

先程までの熱は、夜の冷たい風によって冷やされ、平温に戻っていく

思考が戻ってくると今日の事を忘れたくて仕方ない

 

だけど、忘れたくない

私が必死に作った今日が現実にならなくても

夢の中だけでも覚えておきたいのだ

 

 

「クロさん、私達は友達です!」

 

「はい!」

 

私達にとっての友達の証

この前と同じように

 

私達は、お互いの手を握り合った




待たしてしまって申し訳ございませんでした!!!

前回、直ぐ投稿できますと言ってから早2週間程...
最初は、花音と少しだけ恋愛系な感じで執筆していましたが、途中から変わっていき

結果、こうなりました(気がつくと区切りを見失いかけています...)
(まぁ、花音は私の1番好きなキャラなので仕方ない!!)


執筆の件はさておき、
バンドリでは遂に難易度29が登場しちゃいましたね!
「六兆年と一夜物語」はとてもいい曲なのでいっぱいやっています
そして、まだ一度しかクリアーできてないです...(なお、クリアーした時のMISS数33....あの曲難しすぎる...)

「Poppin'Party」に続き、「Roselia」も第2章きたので、早く「ハロー、ハッピーワールド!」にも第2章を首を長くして待ちたいと思います


毎度ながら、この小説をお気に入り登録をしていただいた

「カイリーン 様」
「arisutoria 様」
「夜月乃 様」

本当にありがとうございます!

「夜月乃 様」には、その他
誤字報告、高評価もいただきました。
感謝しきれません!

これからも、精一杯頑張りますので応援よろしくお願いします!

それでは、次の話も楽しみに待っててください!
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