記憶の片隅にある天国   作:パフさん♪

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前回は帰り道での喜多見良子と二人での下校風景でした

さて今回は、その日の夜と翌日の朝です

では、第31話始めます



第31話 希望からの裏切り

あれから自分は、下校路の冷たい空気を感じることなく家に帰った

家の中は案の定寒く、ここが本当に室内なのかがわからなくなる

ただ、ここはいつもの私物が散乱している自分の第2の活動拠点であることは、火を見るよりも明らかだった

 

日曜日の記憶は飛んでいたが、確かに自分は生きていたのだ

今日が月曜日で、今日もしっかり生きている

つまり、その二日間の寝間着や料理皿、干してから畳んでない衣服などが、無造作に配置されている

 

自分はこの寒い場所を整理しながら、今日の全てを思い返す

思い返そうとすると思い返す

今日何度思い返したんだろうと

思い返しすぎて、数えようと思わないほど思い返した

「思い返す」という単語が何故か無限に湧き上がる

 

(クソッ...疲れが回ってるんだ...)

 

そう言わざるを得ない

頭の中では今日のいろんな描写が次々に映し出される

 

何気ない通学路

何気ない教室

喜多見良子の笑顔

クラスメイトの表情

教室から見た夕焼け

誰もいない薄暗い廊下

吹奏楽部員数人の大きな荷物

喜多見良子の制服姿

自分で買った新しいドラムスティック

先生の残念そうな顔

新しくなったスネアドラム

ポラロイドカメラに

コルクボード

フェルト

月光と街灯に照らし出された喜多見良子

間近に見える喜多見良子の笑顔

走り去っていく喜多見良子

見知らぬ人の姿

 

この全てが1秒感覚にフラッシュされていく

どんどんと変わっては、すぐに消えていく

生まれたものが消える

それもランダムに

 

ただ、自分の移り変わる記憶の中に強く焼きついたものがある

2つの写真だ

 

二人と三人

生徒と先生

友達同士

 

合わせて五人のうち、二人以外は暖かさが伝わるような顔をしている

他二つは正直どうでもいい

この写真二枚の向日葵は忘れないだろう

いや、忘れたくない

 

色々考えているうちに自分の意識は遠のいていった

向日葵の笑顔を焼き付けながら

新しくできた友達を思いながら...

 

そして、夢の中で出会った大切な人のことを投影しながら

自分は、まだ見えない写真を創り出した

 

喜多見良子と私と弦巻こころ

 

この三人が仲良く笑っている姿を

三人が向日葵になることを

三人がみんな生きている写真を

世界を笑顔にして、誰かを嬉しくさせる、そんな人になれるように

自分も変わりたいと強く思う

 

 

生まれ変わった自分で思いっきり言ってやるんだ

 

「今日はみんなで困った人を助けに行こう!」

 

この言葉をこころと良子に

 

 

目も霞んで、頭が重くなり、瞼を閉じ欠けている

全てを回想しきった後、自分の今日の物語はエンドロールを迎えた

切れゆくフィルムに最後の言葉を添えた

 

(...こんな日に...こころに会えればいいな...)

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

...

......

眩しい...

 

その眩しさに、自分は目を少しづつ開け始める

横になった世界が寝惚け眼に移り始める

働かない頭を最大限使いながら、手を動かした

 

(おかしい...)

 

普段は寝相が綺麗な方で、布団から頭以外の部位が出ることは滅多にない

だが今日は違った

なにか手に触れているのだ

それが何か?

それがわかるほどの脳がない

こうなれば取れる行動は限られてる

自分はその謎の物体を力強く握りしめた

 

グシャッ

 

虫が潰れたような小さな音が布団の中から咽び泣いた

その音に少しの動揺を感じ、自分の頭は完全に回路が繋がった

目を大きく見開き、布団を思いっきり蹴飛ばす

蹴飛ばした際に作られた風が、全身を震えさせようとしていた

布団が舞い、自分は上半身を起こした

 

(...なんだこれ...どうしてこんなところに...)

 

真っ先に見えたのは布団の端に置かれた生徒手帳だった

今年の春に作ったばかりの新品

校章が金色に光り、鬼灯のような赤を纏った高校生の証が、そこにあった

 

なのに、その生徒手帳は曲がっていた

表面はそこまで大きく湾曲しているわけではなく、中のページが一部膨らんでいた

普通にはありえないことなのだが、何故こうなったのか

その考えが、布団の上に置かれた生徒手帳では分からなかった

まるで、白紙の上に赤鉛筆で一つ丸が作れられたダイイングメッセージを見ているような気分だった

 

こんな自分みたいな探偵がいたら、確実に事件は迷宮入りするだろう

物的証拠を触ろうとせず、ただただ見つめているだけ

これで解決できれば、警察なんていらないのだ

と、そんな無駄なことを考えているうちにもう一つの手掛かりを見て見ることにした

 

 

事件は一瞬で解決した

 

 

先程まで死んでいるように寝ていた人は、グシャグシャになったある物を握り締めていた

手を恐る恐る開かせると、自分の身体から冷たい汗と血の気が抜けるように、このまま本当の死体になってしまうのではないのか、と思うほど動転した

 

自分が手の中に隠した証拠は、昨日の帰り道に撮った1枚のカメラフィルムだった

 

その写真には、自分の希望をいっぱい詰め込んだ宝物といってもいい代物だ

だが、その大切な品がこんな惨めな姿に変えてしまっていたのだ

その犯人は、自分だけ

最初は被害者みたいな見た目をしていた自分が、実は犯人

こいつにはなんらかの実刑を与えてやりたい

 

(やばいやばい、早く広げなくては)

 

数秒間の沈黙の後、自分は焦りながら手の中の写真を布団の上に置いた

布団の上に置いたことで、全ての面が光を浴びた

ちり紙と同じようになってしまった物は、何故か表面に印刷されている面となっている

謎が増えてしまった

だが、そんなことに気が回らないほど、自分は冷静ではなかった

 

冷や汗が顔から流れ、首元が熱い

身体の至る所がいろんな体温に変化していた

それを上回るように、胸から聞こえる心拍数の上昇が、私の脳に刻み込む

口から何か吐きそうだ

 

いや、今はそんなことどうでもいい

自分は全てを考え込まないように、耳に打ち込ませ、布団から勢いよく飛び上がる

 

すぐさま二本足で立ち、早速テープを探しにリビングに駆け込んだ

 

 

 

何分かが経過した

あれからまだ寝室には戻ってない

リビングにテープを探して徘徊している

一人暮らしのリビングだから、物が少ないはずなのに全く見つからない

終いには、見つからないことにイライラし始めて、違うものを地面に投げ捨てている

 

この空間は今はもうリビングではなく、物置小屋か、ゴミ屋敷と化していたいた

当然、そんなことに気づく余地もなくひたすらに目的のブツを探していた

 

狭い物置小屋を全てひっくり返した結果、テープなんて見つからなかった

この際、テープの代わりになる代替品でもいいと考えたのだが、のりもガムテープも接着剤もない

こんなに漁ってもないのだから、絶対におかしい

 

(馬鹿だ

こんな自分はほんと馬鹿だ

こいうことを見越して、必要最低限以外のものを買っておく必要があっただろうに...

なんで、自分は持ってきてないだよ

お前のせいで、こんな大変な思いしないといけないんだぞ

そもそも、お前が写真を握り込んでいなければこんなことにならずに済んだだろ

お前にはいつもうんざりさせられる

こんなことばっかりしてるから何もできずに終わるんだよ)

 

全てを試した結果、何もできなくなった自分自身を嘲笑った

こんな自分が本当に嫌いだ

嘲笑っている自分も

失態を犯す自分も

そして、何もしない自分も

 

こんな大散乱している空間で、自分は膝をついて天井を見上げた

ただただ真っ白な天井

何も書かれていない天井

全てが無の天井

 

こうやって、いつも自分自身を嫌になった時は上を見つめるのだ

そして、自分はこう思い始める

 

(...こんな何もないことが一番いいんだろうな...)

 

と、瞑想(迷走)する

これが自分の癖

お父さんが死んでから、何度もやってきた逃避行動

天井を見て、何も考えず

天井を見て、自分と照らし合わせ

天井を見て、何時間も動かない

 

何もしないという快楽から逃げることができないのだ

 

(ああっ...このまま何もなく終わればいいのに...)

 

...ここまで来ると抜け出すのはほぼほぼ不可能なのだ

あとは時間が解決してくれる

数時間も経てば、元に戻れるだろう

 

だが、今日は違った

 

天井を見ている目に映る

 

 

何もない色が、自分を思い返させた

先程までいた寝室の布団の色と同じであることを

 

そして、授業中に使うノートの色も白だということを

 

 

(...あっ!そうだ...!)

 

自分は、気がついたのだ

気がついた瞬間、自分の膝に全体重をかけて、お尻を下げた

そして、正座の状態から、浮き上がるほど跳躍した

その時、思いっきり膝を擦ったが、そんなことは気にならなかった

不完全な着地とは言えない、着地をして足首も痛いが、しったこっちゃない

 

自分は頭を全力で左右に三回振り、全速力で寝室に戻った

 

 

 

ドタドタドタ

 

うるさい足音が、廊下を響かせる

響かせている音源は寝室の前で止まり、壊れるんじゃないかという勢いで扉が開いた

 

 

ガッチャアアアアンンン!!!

 

 

凄い音が部屋中を叩いた

全ての勢いを壁で吸収して出来た音は、ビルの解体現場のような音を出した

その音のうるささに、近隣住民からの苦情が来てもおかしくないのだが、その時はその時だ

いや、今は何も考えるな

その時はその時だ

いくらでも対処法はあるんだ

 

苦情が来たら、後々謝ればいい

リビングのゴミも、あとで片付ければいい

自分の愚かなミスも、その分以上の良い行いをしていけばいい

宝物も、飾っておけばいい

メソメソするのは後回しだ

 

今は、今しかできないことをやらないといけなんだ!

今やるべきは...

 

宝物を一生無くさないように、直すだけなんだ!

 

(よし!)

 

寝室に入って真っ先に、私の頬を両手で叩いた

 

バッチィィィンン!!!

 

この音も高々と轟かせた

強烈な張り手を自分自身にお見舞いした

意味は、二つあるのだ

気合いを入れるという意味と

罪人に対しての刑

 

二つとも絶大な効果を発揮させられる

頬が真っ赤になって、ヒリヒリする痛みがあるかもしれないが、それを忘れさせれるほど気持ちが変わっていた

 

 

自分は、布団の近くにあった学生鞄を開けた

ファスナーを壊すわけにはいかないので、一気に開けずゆっくりと

開ききった

その中は、教科書とノートと念願のブツがあった

 

(よし!これだ!)

 

鞄の中から、取り出す

自分は、筆箱を取り出した

そして、カバンを同じくファスナーで開けると、ようやく見つけた

 

テープ

ここに入れてあったのだ

しかも、スティックのりも接着剤も入ってある

こういうところに、自分は用意していたんだ

まさに、灯台下暗しだ

 

テープを見つけた瞬間、自分の心は透き通るように楽になった

これのために必死になってやってきたのだ

報われて本当に良かった

 

だけど、これで終わりじゃない

このテープを使うのが本題なのだ

 

 

テープを手に取り、写真を広げる

クシャクシャになった宝物が平たくなっていく

そして、自分は信じられない光景を見たのだ

 

写真の全貌が明らかになった

この裏を向いている写真は、どこにもヒビが入っていなかったのだ

あるのは、握った時に付いたと思われる皺だけ

アレっ?という気持ちを抱きながら、写真を表向けた

 

表面にも、何も傷がなかった

破れてないし、印刷面が滲んでいるわけでもなかった

二人の表情は鮮明に写っていた

 

 

それを見た瞬間、自分の体が右へ傾いた

ガクッとくる落胆の気持ちのせいで、そのまま布団に倒れこんだ

目を閉じて、今の気持ちを心の中で叫んだ

 

(なんなんだよ...もう...今までのがなんだったんだよ...)

 

今まで、頑張って探した努力も虚しく、何も心配はいらなかったのだ

そもそも、その写真がいつから破れていると錯覚してしまったんだろうか

早とちりもいいところである

今度からはしっかりと、確認してから行動しよう

 

杞憂に終わった騒動が一段落ついてから、疲れがドッとこみ上げた

身体が鉄のように重い

今になって、足首も膝も頬も痛い

もうこのまま寝ていたい...

 

 

世の中は不公平だ

このまま、ゆっくり休息を取らせてくれてもいいものなのだが、うまくいかないものなのだ

自分には、もう一つ確認していなかったことがある

 

 

おやすみと、心の中で呟いて寝ようとしたが、やることを忘れていた

さっきの写真を大事に飾っておかないと、またこんな騒動が起きるかもしれないと

もう、こんな想いはこりごりだ

 

自分は目を開いた

目にだんだんと写ってきたのは、倒れた時に目の前にあったもの

必然的に、真っ先に目に入るものが...

 

 

「ち、遅刻だぁああああ!?」

 

そう...目覚まし時計に...

昨日の夜、目覚ましをセットするのを忘れていた

そのせいで、アラームが鳴らなかったのですっかり忘れていた

朝起きた時が、いつもの習慣で同じ時間だったとしたら...

この一連の騒動のせいで確実に数十分遅れているのは必然なのだ

いつもの家を出る時間からもう15分も遅れていた

 

自分は、思わず大きな声で叫んでしまった

 

そこからは怒涛の如く動き回った

皺くちゃの写真を机の上に置き、

写真が飛ばないように上に重しを置き、

寝間着を脱ぎ、

制服を着て、

今日の時間割の教科書類を学生鞄に入れ、

家を飛び出した

 

家を出る前に見た、元リビングの光景は名状しがたい空間であった

その空間に、わざと大きく息を吐き、見ないようにした

 

グゥーとお腹の異常を知らせる音とともに、靴の踵を踏みそうなところを、走りながら踵を靴の中にしまう

 

忙しない状態で、遅刻しそうな状態で、そんな余裕がないはずなのに

思わず、笑みがこぼれた

こんな最悪の一日の始まり方をしたのに、なぜかとても誇らしかったのだ

 

皐月の朝の空の下、一人の男子が全力で走っている

目から顎まで出来た、塩の痕跡を残しながら

口元は綻んでいた

 

 




...予定では3日くらい後まで書くつもりだったんですけどね!!!
そんな気持ちは1週間前に吹き飛びました((

というわけで、前夜と翌朝でした!
サブタイ通り、希望と少しの絶望の両極面を書いてみました!
書けば書くほど、どんどんアイディアが閃いてきたので、いい対比ができたと個人的には思っています
(読者様方はどうなのかはわかりません...)
もし、良かったら感想ください!!!


バンドリでは、今日からMorfonicaイベントですね!
この小説書き終わったらイベントやっていにたいです!
そして、全イベはハロハピ!!
私は野球好きなので、ハロハピ×ソフトボールの組み合わせは本当に嬉しかったです!
特に、あかりちゃんが出てきてくれたのが嬉しかったです!
元気になってくれて良かったよぉおおお!!!
今回のハロハピキャラは本当に好きなので、はぐみも薫さんも美咲も欲しかったです!
(なお、ガチャは爆死)

最後にこの小説をお気に入り登録していただいた
「セレウスローサ 様」

本当にありがとうございます!
小説もだんだんと中盤が終わろうとしていまして
あと数話で、現実パートを終了させようと思っています。
そして、みなさん待望(?)の夢パートに入ろうと思っています!
できるだけ早く書きますので、みなさんも楽しみに待ってくださいね!
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