今回は少しづつ時間を早めていこうと思います
では、第32話始めます
...ッヒ...ヒッ...
自分から放たれる音は、文字には書けなさそうな擬音語を出している
15分も遅く家を出たせいでこうなってしまったのだ
マイナス分をプラスマイナスゼロにするには、どこかでプラス分得る必要があった
普段の2倍以上の速さで走ったのだ
目を見開き、大量の汗を流しつつ、呼吸のリズムを乱しつつ、脚が焼けると思うくらいに全力で走った
その結果、なんとか間にあっ...ってなかったのだ
全力すぎて、途中で聞こえたかどうか忘れていたが、自分が校門に着いた時には、もう門が閉まっていた
流されていたはずなのだ、チャイムが
始業時間を知らせる最終警告が
朝の会という、担任による抜き打ちチェックが行われる確認の音に
(クソッ...間に合わなかったか...)
自分の息はまだまだ整うことを知らず、心の中で呟いた
自分の心に呟いた気持ちも、何も伝えられていなかった
自分の心臓は、火を掛けている鍋底のように熱く、沸騰していた
身体全身の体温を全て集められている錯覚に陥るほどの強調力
その全てを、自分のあらゆる感覚が絡み取っている
心拍数の上昇により、内部から聞こえる悲鳴の音
口の中に感じる、血の混じったような唾液の味
手から伝わる、痙攣しそうなほど動いてしまう振動
異常を感じる、酸っぱい刺激臭
色々なものが、このままだと死んでしまうという、警鐘を鳴らし続けている
それなのに、自分の身体を動かそうとできなかった
ひとつだけ、自分の異常を感じ取れない感覚があった
滲んで見える白のコンクリート
私の視界だけが、外的要因を感じていた
4つの意見が一致している中、一つの反乱分子
そいつも、過半数以上の主張に無理矢理動かされているが、その状況でもなお、抵抗し始める
身体のしんどさにより、頭が下がっている
その状態でも、自分自身を見ることはできないのだ
見えたとしても、それは自分の外面で、自分の内面は不可能なのだ
だからこそ、唯一物事を客観的に見ることができる感覚なのだ
身体から吹き出す汗に目の焦点が狂わせられる
だが、見える色に今日は色々な共通点を見出していた
写真の白
布団の白
ノートの白
今日が始まって、1時間も経っていないのにこの数
そして、その白達は全て自分を前に進ませてくれたのだ
だから、この状態でも進もうと思えたのだ
顔の汗を右腕で拭き、視界を戻す
滲んだSTOPマスが、澄んだSTARTマスに変わる
はっきり見えた出発点を見据えてから、自分は顔を上げた
5月の暑さを超える今日の天気に負けないように、校舎の窓が複数空いている
はっきりとは見えないが、黒い輪郭が窓の中央に映っていた
そいつらは、自分の方を向かずに、前を見ていた
もう朝の会が始まっていることを確信し、学校への進入路をゆっくり開けた
...遅刻なんて人生で初めての経験だった
今までの自分は、朝礼の15分くらい前には着いて、一人物静かに座っているだけだった
クラスメイト達がだんだんと教室に入っていく風景を流して見る
最初の静寂からの喧騒への移り変わり
それすらも感じることなく、自分一人だけの世界を作っていた
この世界には五感なんてものが存在しないに等しい
自分で作った無の空間に、悟りを毎日作っていた
だが、今日は違う
遅刻して初めてわかったことがあった
教室の後ろのドアを開けた途端、8割ほどのクラスメイトが、自分の方を振り返る
この異様な光景を流し見ることなんて出来なかった
そして、初めてクラスメイトの顔をしっかり見たような気がする
見えた顔は20程度だったが、その全てが違うのだ
一つ一つに個性があり、様々な
その像の一つに、喜多見良子もいた
知らない人に混じって入った、既知の像
だけど、そこにいるのは全て他人なのだ
全てが黒の亡霊ではなく、全てが色のある人間に見えるのだ
そして、人の視線を気にしつつ席に座った
そこから、担任による尋問が始める
「お前が遅刻なんて珍しいな。なんかあったのか?」
担任が朝の会に話していることを、真面目に聞いた
これも初体験なのだ
況してや、自分のことを題材にした言動なんて今までなかった
それも、怒られるわけではなく心配する内容だった
...こういう時にどう返そうか、まだ明確な答えを出せない
この前、喜多見良子が私に質問してきた時もこんな感じだった
答えを出せず仕舞いで、そのまま曖昧な返答をする
逃げに徹する行動をしてきた
しかし、今は相手が先生なのだ
先生に返す言葉が曖昧だと、どんどん追求され続ける恐れがある
誤魔化せば誤魔化した分だけ、後々後悔する
大人というもの達は融通が効かない
そうなった以上、真面目に答えるしかない
そう思って、自分は小さな声で話した
「あの...学校に持っていくものがどこにあるかわからなくて...家中探していたら...遅刻しちゃいました...」
先生がギリギリ聞こえるくらいの声を出した
それはまるで、親に叱られてる時の萎縮した子供のようだ
少し濁した言い方だが、真実を話した
それにもかかわらず、何故か嘘っぽく感じるのは何故だろう
前述のイメージがそうさせているのかもしれない
そんなことを考えていると、担任はこんな声を聞き取ってくれたのか
「そうか。忘れ物をしてしまうのもダメだが、遅刻するのもダメだぞ。まぁ、1回目の遅刻だから、私も軽い注意だけで済ます。では、出席も取り終わったので、あとは好きに......」
と、担任も納得してくれたようだ
自分の返答に、担任はなにも不思議には思わなかったようだ
そうして、自分は席に座り直した
気がつくと、先程まで自分のことを見ている人達は、既に全員前を向いており、担任の話を聞いていた
一瞬感じた個人達は、みんな他人に戻っていた
席に座った自分は、少しの違和感を感じつつ澄み切った青い空と校門を眺めていた
キンコーカンコーン...キンコーカンコーン
朝の会が終わって、1限目までの休み時間
担任の先生がいなくなって束の間の休息
クラス内は、急にザワザワし始めていく
次の授業の先生が来るまでに皆好きな行動を取る
何時もなら何事もなく、机やカバンの中から教科書やノートを出す
そこから、ボーっと黒板を眺めるだけ
それが何故か今日は、クラスメイトの個々の動向が気になっていた
第三者の一挙手一等足を軽く見てみたいという気持ちになっていた
鞄に触れることをせず、顔をあらゆる方向へと回す
一人一人を注視するのではなく、流し見程度で済ます
それだけでも、また感じることが今までと違っていた
まず、このクラスにはこんなにも人がいることに驚いた
今までは、自分以外を背景としてしか見ていなかった
その為、遠くの方で微かに動いている程度という認識しかなかったのだ
それが、興味を持って見ると不思議なことに、自分がいる空間にはこんなにも多くの人がいることを認識し始めたのだ
個々の行動は様々で、全てが同じ行動を示してはいなかった
トイレに向かう者
クラスメイト同士で2、3人集まっている者
一人読書をしている者
ドア付近で屯っている男子生徒
休み時間にお茶を飲む人
黒板の文字を消す人
この5分という短い時間の中で、皆それぞれの人生を歩んでいるのだ
その人達は、自分とはまた違った生き方をしている
そんな考え方を今まで出来なかった
だけど少し、自分が自分である意味がボヤけながらに見えた気がした
そんな浮いた不審人物がクラスの端にいる
こんな人に話しかける人は早々いないはずなのだ
だが、常識が通用しない人が隣にいるのだ
そう...金色に光る髪に、天真爛漫な笑顔で...
「ねぇ、聞いてるの?」
「は、はい!?」
聞こえてきた声に少し驚いてしまった
初めて話しかけられた時は背中が飛び上がりそうになるような驚き方だったが、それからはやはり成長しているようだ
自分は声がする方に首を回した
声の主やはり喜多見良子だ
自分の方を見て、腕を自分の机の上まで伸ばしていた
表情は真顔で、少し目が鋭かった
この顔から推定するに、何回か呼んでいたようだ
いつも自分はしっかりと対応できてない
毎回、喜多見良子から話しかけられているのだ
そして大抵驚かされている
まぁ、急に話しかけてくるのが隣人の個性というところなのだろう
そろそろ驚かないように常に心構えをしていた方が良さそうだ
そんなことを推測していると、また向こうから話し始めてしまったのだ
「ねー、君が遅刻なんてどうしたの?何時もなら私よりも早くついてるのにー?」
(いやいや、さっき担任に答えてたでしょ)
「さっきも言った通り、忘れ物があったから探してただけですよ」
「うーん?私はそうだとは思わないなー」
(えっ!?どうしてそう思うんだ?)
「いやいや、自分にだって忘れてしまうこともありますよ...」
「でもねー君の顔、なんだかすごい汗だくでー、それからなんだか頬のあたりに白い線がうっすら見えるんだけどなー?」
(えっ?頬の白い線?)
自分はその言葉に全く身に覚えがなかった
学校に行くまでの間、鏡を見ていない
なので、今どんな顔をしているか自分自身で確認することはできないのだ
ただ、そう言われるっていうことは確実に何かついていると確信する
不思議そうに人差し指を頬につけ、中指を顎に乗せたポーズで右上を見ている喜多見良子を尻目に、彼女の隙をついて頬をなぞった
なぞった指の腹を見てみると、確かになにかの白い結晶が付着していた
これが何の結晶かわかるまでにはそんなに時間はかからなかった
つまり、これは汗なのだ
厳密にいうと塩化ナトリウム
汗が汗腺から染み出し、頬を伝って流れ、蒸発し、固まった痕跡
ここに行き着くのは、高校生にもなった知識なら余裕に到達する
だが、妙なところがある
それなら、遅刻しそうになって全速力で走った時に汗は出ているはずだ
なのに、何故頬に残る汗が一本だけあるのか
校門に着いた時には、目が霞むくらいの大量の汗を掻いていた
その汗は今も、自分の制服の上部分を軽く濡らしている
濡れた部分の妙にむず痒い感覚があるということは、完全に汗が乾ききっていることはないだろう
それも朝の澄み切った晴天だとしても、校門からまだ20分も経っていない
教室は窓しか空いていない
クーラーや扇風機はつけていないのだ
ということは、これは汗の結晶ではないと結論付けできる
そうなると、これは何の跡なのか
またそこから考えないといけなくなってしまった
頬に残る跡...
白い線...
あっ...!
そこまで考えると、自分は咄嗟に右腕を頬に近づけ、そのまま顔を強く拭った
出来るだけ多くの証拠を消せるように
喜多見良子に気づかれないように
この証拠の原因が喜多見良子だと悟られないように
頼む...!気づくなよ...!
その一心で、出来るだけ早く隠滅を図った
「...やっぱり、その跡って...ってあれ?消えちゃった?」
「ん?どうしました?」
「あれ?さっきまで付いてたと思ったんだけどなぁ...」
(よし、気づかれてない...のか...?)
証拠は綺麗に消えたようだ
上の空を見ていた喜多見良子が、自分の顔をもう一度見ている
彼女の表情からすると、まだ不思議そうな顔をしている
だが、今と後では少し違うところがあった
彼女の顔が少し近づいてきたのだ
ずいっと自分の視界から大きくなる
口を軽く結んで、
目を軽く細めて、
頬が少し膨らんで...
あれ...?喜多見良子ってこんな顔だったのか
色々な部分が間近に迫っている
こんなに詳細に彼女の顔のパーツを見るの初めてだ
その全てが新鮮で、その全てが独特なものだった
「ちょっとそのままにしててね」
この言葉を最後に冷静ではいられなかった
目の前の子供は興味津々に、もっと自分との距離を詰めてきた
視界から顎、口、耳が消えていく
今見えるのは目だけになった
(ちょちょちょ!?!?待って待って!?近い近い!!!)
...こんなの自分の計算にはなかった
相手にこんな迫力で近づけられたことなんてない
(やめて...すっごく恥ずかしい
何でこんなに近いの!?
いやほんとダメだって!!
目の前に文字通り目だけしか見えないよ!!
Face to Faceだよ!!
いやもういいですか!?
逃げていいですか!?
ちょっと!?目を見開かないで!
目すごく綺麗!すごく透き通ってる!
目の前にいる人って誰だっけ!?
そうだ、良子さんだ!?
ということは...女の子!?
いやいや不味いでしょ!?この状況!!
ひゃっ!?良子さんの匂いがしてきた!?
なんかの花の匂い...?いい匂い...
ひゅぃ!?頬になんか息かかったよ!?ダメだよ!!
もうやめて...!?恥ずかしくて...耳まで熱くなってきたから...!?
死んじゃう!!死んじゃうって!!
早く終わって...)
自分の中で逐一、実況をし始める
制御ができない、感じるものを羅列するだけの状態
何も出来ずに、留まり続けるだけなのだ
「んー...やっぱりなんも付いてなかった...私の勘違いだったかー...」
「は...はやく...はなれ...」
「ごめんごめん、ちょっと気になっちゃって」
漸く彼女から解放された
彼女の接近から、彼女の離反までの数秒間が数時間に感じてしまうほどの地獄を味わらせられた
この間に、自分の身体は登校時の異常事態を遥かに超える、体温上昇を感じ取っていた
頭に大量の熱が籠り、手から汗が出る
頭が少しボーッとなり、手を無作為に動かし続ける
これが今できる精一杯だった
通常意識に戻るまで何秒掛かったかわからないが、戻った頃にもなると、自分の視界には彼女の胸あたりまで映っていた
やっと試練の時間をやり終えたのだ
そして、彼女の表情を捉えることができたのだ
いつものような笑顔がやはりあった
目を細め、口が少し綻んだ笑顔が
彼女の顔から少々の迷惑をかけたことが伝わってきて、なんとなく申し訳なくなってしまった
自分にとっての彼女の存在が大切なことだと、今一度感じた瞬間だったのだ
「あっ!それでね!君への伝言があるんだ!」
そういう彼女の顔は、もういつもの無邪気な笑顔に戻っていた
「伝言ってなんですか?」
「昨日の夜にね、音楽の先生から連絡かかってきたんだ!それをね、君に伝えて欲しいんだって!」
「先生から...?一体なんでしょうかね...?」
「んーっと...今週の土曜日に3人でスネアドラム直してくれた人の家に行こうって言ってたよー。なんでも、一気にやり切ったほうがいいって先生言ってたからね!」
「おー!!じゃあ、一気に目標達成できるんですね!!」
「まだ完全に治るかは、ちゃんと見てもらわないとわからないって言ってたけどねー。部品調達とかは向こうの人が出来るだけしておくって」
「本当に先生にも、そのお知り合いの方にも感謝ですね!今週の土曜日ですね!」
「そうだね!じゃあ後で先生に伝えておくねー!君もちゃんと来るって」
「はい!お願いします!」
「私もちゃんといくよー!先生が君の連絡先知らな...「おーい!授業始めるぞー!席に着けー!」
「あっ、1限目の先生来ましたね、じゃあ後はよろしくお願いします」
自分達の会話の最中に、先生が教室に入って来た
気がつくと、もう5分休みは終わっていたようだ
チャイムは気づかぬうちになっていたのだろう
自分から話を切り上げ、黒板の方へと向き直した
先生が教卓の上に教科書を置こうとしてるのを見て、自分の席の上に教科書がないことに気づいた
慌てて、鞄の中から教科書とノート、筆記用具を取り出した
授業が始まった
いつも通りのつまらない授業
板書の内容をノートに書き写していくだけの単純作業に追われていた
ノートの文字を書いているこの時はいつもと同じはずだったのだが、一つ忘れていることがあった
それを思い出させられたのは、書き間違え時に使った消しゴムだった
[白]という要素に今日はずっと振り回されている
この[白]は、テープの手掛かりが見つかった物
テープは、写真に使う予定だった物
写真は、喜多見良子が映った物
喜多見良子は、さっき面と向き合っ...
...っ!?
急に、その時の彼女の事を思い返してしまった
あの時は、自分の事で一杯一杯だった
だから、気づかなかったのだ
それに気づいてしまったのだ
急激な焦りに、また汗を掻いてしまった
今度は頭から熱が逃げていくような感覚に陥り、冷たい汗が頬を伝った
誰か見ていないか、また辺りを見回した
だが、自分の方を見ている人は誰もいなかった
当然だ、今は授業中で、教室の隅の犯人を見ている人なんているわけがない
現場はその時に確認しないと消えてしまうのだ
自分は消しゴムを睨みつけて、授業中ずっと焦りと恥ずかしさで、猫のように縮こまって授業を受け続けた
今日だけは、[白]を呪ってやると思いながら
お待たせ致しました!!
理由としては、4、5月の精神面がズタボロだったところにあります
私の小説は、自分の精神面を投影している所が多いです
なので、現実パートの主人公(自分)と夢パートの主人公(私)の性格が違う理由となっています
最近の話では、現実パートの主人公はポジティブになって来てます
そいういう話を書くに至って、私(書き手)がとてもネガティブ思考が強い時に書いた小説は、全てがネガティブになってしまう恐れがあるのです
従って、書き手側の精神面が良くなってから書こうと思っていました
結果としては2ヶ月もかかっちゃいました...
本当に申し訳ございませんでした...
ガルパではついに『RAS』登場しましたね!!
RASが増えて7バンドと大所帯となって、私自身とっても嬉しいです!
いきなり星4 チュチュが当たってとっても嬉しかったです!(RASの推しがチュチュ)
次回、現実パートが終わる予定です
ですが、もしかしたら2話分かかるかも知れませんが...(予定は未定)
そして、1、2週間以内に書こうと思います!
それでは、次の話も楽しみに待ってください!