今回は一気に日にちを飛ばしますので、ゆっくりと読んでください
それでは第33話始めます
全てが噛み合わなかった日からもう2、3日が経った
この数日間なにも変化は起きず、もう一人の自分になれる事もなくなっている
というよりは、そんなことを考えてる余裕がなかったという方が正しい
もう直ぐテスト週間が近づいているのが原因だ
多くの授業で先生による、急ピッチでの板書書きが行われている
教師の早口な指導を、自分は必死になってノートに刻み続ける作業に追われている
休み時間はというと、窓の外を見上げ、雲の動きを観察していた
流れゆく雲に大きさも速さも全てが違っていた
その記録を自分は無駄に記憶の中に刷り込ませていた
放課後になると、自分はゆっくりと自宅へ赴く作業をするだけであった
これが1週間前なら音楽室に行って、喜多見良子と音楽先生による三者会談が始まるはずなのだが、今週はできそうにない
なぜなら、音楽室は最終下校まで貸し切りになっているからだ
吹奏楽部による、地域行事への出演による最終調整を行なっているらしい
その舞台で、新米生徒によるお披露目楽曲をする予定だそうだ
まだ1ヶ月と少々しか経っていない1年生を主役に据えているとなると、そこに自分みたいな部外者が安易に侵入するわけにはいかないのだ
学校内では多くの指令が出ており、各々の生徒が対策に追われているのだ
そんな中、自分はというと1ヶ月前の堕落した習慣へと戻ってしまっていたのだった
帰宅し
夕飯を食し
風呂に入り
テスト勉強をし
寝る
こんな小学生の書いた夏休みの日記通りの生活になっていた
それは、夢と出会う前の自分と瓜二つの理だった
しかし、自分にとっての1日1日は次第に変化していくのであった
喜多見良子から受け取ったあの日に近づいていた
その日にもしかしたら目標が達成できるという淡い期待を持ちながら
そう、土曜日に自分達はドラムを直しに行くのだ
前日の金曜日、自分は妙に気になり続けた
授業中には、ノートの端にドラムの絵を描いたり、何故か『世界を笑顔に』と書いてしまった
休み時間には、教室のクラスメイトをさりげなくチラチラと見てしまったり、隣の席の机に焦点を当ててしまっていた
その際、喜多見良子は自分の視線にわざと入ってきた
机に顔を寝伏せ
頬を机に当てながら
自分にだけにしか見えない笑顔を作っていた
その笑顔に、自分は何も返さず目線の逸らさなかった
むず痒さを感じることなく、小さな隙間の時間を潰していた
そんな落ち着きのない1日を過ごした後、今日最後のチャイム
いつもはチャイムと同時に帰り支度を始めるのだが、今日はクラスの喧騒の音を聞きたくなってじっと座っていた
そこに喜多見良子が近づいてきた
直接彼女を見たわけではなく、彼女の気配を右側から感じたのだ
そして頬を弱い風が撫でていき、頬を放射された熱を微かに感じた
「また明日、8時に校門前でね」
そう囁かれた
自分はその約束に小さく
「おう」
と返した
その間、一切横を見なかった
その一言の口の動き以外の動きを殺して、30秒静止する
瞬きすらをせずにいると、目が乾いていく
目の渇きが限界になった時、自分は瞬きと同時に顔を右に曲げた
もうそこには彼女はいなかった
(何故だ...何故か緊張する)
自分は布団の中で天井を見続けていた
目が全くといって閉じてくれない
それどころか、身体が硬くなってしまっている
足が張って、手先まで金属になったかのように動かせられない
まるで金縛りにあったかのような感覚に陥っている
自分は緊張しているなんて何年ぶりだろうか?
考えてみると、幼稚園の時の遠足のことを思い出した
あの時は、隣町までの電車を乗っての遠征ぐらいのもので、高校生になった今では行こうと思えばいつだっていける距離だ
それでも当時の自分には楽しみであったのだ
それは純粋無垢な子供だった証拠だろう
そう、明日に希望しかなかったのだ
それが数年ぶりに感じてしまった
そのこそばゆい感触に、不純で邪心に満ちた大人に近い存在には毒に近いものなのかもしれない
拒否反応が体外に発信されているのかもしれない
自分は唯一動かされる首を左右にブンブン振り、頭がフラフラする感覚を無理矢理作り出し、どうにか寝ようとした
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チュンチュン
目を開けると、日差しが入ってきた
気がつくともう朝になっていた
少し霞んでる視界の中、目覚まし時計を探した
セットしていないはずなのだが、現在は6:50
この時間に起きて身支度して集合場所に行ったとしても30分ほど前に着いてしまうだろう
でも、この前遅刻した前例があるので今日は早く行こう
自分は久々に布団をベランダに持っていき、竿にかけた
それから、軽いご飯を食べてから出掛けた
「おはよう!」
「うおっ!?」
30分も早く着いたはずだ
絶対に早く着いたはずだ
咄嗟に腕時計を見ても、まだ7:30だ
なのに何故
何故ここにいるんだ
喜多見良子
一番乗りだと思ってゆっくりと校門に近付いたと思っていたら、校門前で何かが揺れているのを目にした
その揺れている物を確認する為に、少し早歩きで向かい始めた
そして見えたのだ
喜多見良子がこちらに向かって笑顔で手を振っていたのだ
その上でまだ20mほど離れているのに、彼女の挨拶の声が聞こえてきた
少しビックリして、小さな声が漏れた
多分こちらの声は聞こえてないと思われるが...
「お、おはようございます」
「おはよう!君が最後だね!」
「えっ...?」
しっかりと校門前で話し始めた
そんなことよりも、今なんて言いました?
自分が最後だって???
腕時計が壊れたのかな???
不思議そうな自分を見たのか、彼女が理由を返した
「先生は音楽室のドラムを車に入れる作業があってねー。私はそれのお手伝い!流石に先生一人じゃ、あの大きなドラム部品は運べないしね!」
「あっそうなんですか...」
それはなんだか申し訳ないことをさせてしまった
自分に伝わってきたのは集合時間と場所だけだった
だから集合時間より前にこんな作業をしていることは初耳だったのだ
もし、このことを聞いていたら率先して参加していただろう
勿論だとも、なぜなら自分がこの企画の提案者なのだから
「それで...作業の方は終わったんですか?」
「粗方ね。あとは君が来るのを待っているだけだったからね。ああっごめんね!?先生に言われたんだ。今まで君が提案したことに乗ってきただけだったから、今回は私達二人で先にやっていかないとねって言われてね。もうすぐ先生の作業も終わるだろうから、ここで待っとこうか?」
「...そうだったんですね。それじゃあゆっくり待っときますね」
少し煮え切れない気分だった
自分からしたら仲間外れにされたような感覚だったのだが、他者側の考え方としては自分の行動が仲間外れにしていたんだと思い返されてしまった
そう、これは自分自身だけの目標じゃなくてみんなの目標なんだ
自分勝手に行動するべきではないのだ
この気持ちを肝に銘じながら、自分達は校門前で待った
じっと校舎をぼんやり眺めてる自分と対照的に、喜多見良子は鼻歌混じりにうろうろしている
二つの明暗がよくわかる構図であった
それから10分ほどたっただろうか?
大きな車に乗った音楽の先生が校門前に現れた
「おーい、二人とも揃ったね」
「はい!今さっき来たばかりです!」
「そうかそうか、わざわざ休日に来てもらって申し訳ないね」
と、先生と喜多見良子の二人による会話が始まった
にしては、少し変だ
喜多見良子は嘘をついている
おかしな話だ、嘘をつく理由なんてないはずなのに
そう思っていると隣から小さな声で囁かれた
「先生にはね、今言ったことは内緒にしてね...?」
自分は小さく縦に首を振った
先生は大人だからこうなるのか
しかし、生徒に気を使われているのはどうなんだろうか?
そんなことはあと数年後嫌でも感じることになるだろうから深くは詮索する必要はなさそうだ
「これで全員ですかね?」
「そうみたいだね。それじゃあ出発しようか」
「はーい!」
そんな軽いやりとりをして、自分達は車に乗り込んだ
車に乗るのも何年ぶりだろうか?
祖父母の家では、どこにも連れて行ってもらった記憶がない
そう考えれば、もう10数年ぶりなのかも知れない
もしそれくらい小さな頃の自分だったら、窓の外に食いついて、流れていく風景に興味津々だろうが、今はそんな恥ずかしいことはできない
それどころか、隣には同級生の女子がいるだ
否が応でもこの状態で冷静に保つことはできない
意識しないように窓の外を見るのも良いかも知れないが、女子は喜多見良子なのだ
あの自分が教室に話しかけてきた強靭な持ち主
下手な噂ゴトのタネなんて作ってしまったらどこまで広がるのか分からない
しかも、彼女の頭には常識が通じないと感づいている
この行為が勘違いされる可能性が高い
こんな無茶な考察をしている間に、大事なことを思い出せた
自分は、後ろを見た
そこにはしっかりと封がされているドラム達が並んでいた
その姿を見て少し安堵し、今考えていたことが全て吹っ飛んだ
自分が自分勝手だと思っていたことなんてどうでもいいことで
自分達はチームであるということを再認識させられた
皆、一様にこのドラムに期待しているのである
そして最高のゴールを目指している
そこに協力なくしてたどり着くことはできない
だから、先生達は自分の為に動いたんだと思えた
自分に負担ばかりかけていることを自負して、先生が出来ることをしてくれたんだ
そう思うと、自分の今までやってきたことがとても誇らしく思えた
自分達は乗った方舟は、最終地点に向けて再度漕ぎ始められたのだ
今度は3人揃って
オールを息を合わせて漕ぐ
最後の関所を通過させるために
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「着いたよ、ここが友人の工房だ」
先生の案内により、自分はドアを開けた
車で約20分、目的の地についたようだ
そこはいかにも工場らしき場所
ただ、住宅地に急に現れた異妙な建築物であった
閑静な住宅地の中にある、喧騒そうに見える工場はまるで
音楽室の中にある、壊れたドラムそっくりだった
車から外に出て最初に背伸びをした
ンーという声が漏れた
その背伸びがとても心地いい
今日のような清々しい太陽光に背伸びはこんなにも合うのとは知っていたが、いつも教室の中で外ではなかった
外でする背伸びはとてもいいものだ
って、ここは人前だった事に気がついたのは
小さく聞こえたクスクス声だった
「まぁ...これはこれは、ようこそおいでくださった。それで、あんたが持ってきたドラムっていうやつはどれだ?」
そう...今日の探し求めていた重要人...この楽器修理の専門家が目の前にいたのだ
まさかの第三者の登場に、驚きと恥ずかしさが込み上げてきたが、グッと堪えて最初に言うべきことを堂々と言った
「あの、今日はよろしくお願いします!」
と言い切り、頭を深く勢いよく下げた
絶対にしておかないといけない礼儀
自分は依頼人ではなくて、初顔合わせな存在なのだ
そんな人が無礼な態度をとってしまうと、もしかしたら門前払いされてしまうかも知れない
そんなことをしたら自分の戦犯のせいで、皆に迷惑をかけてしまう
それだけは絶対に避けないといけない
その為に、自分は深々とお辞儀をした
「おう!よろしくな!私の友人の頼みだったらいつでも受ける気だったしな!しかも、そこの生徒さんの依頼とあったら、大歓迎さ!
君のところの学校の吹奏楽はとても聞いていて心地いいからな!」
「ほほっ、そりゃ私の教えがいいからさ」
「やっぱ、あんたはそう言うよな!流石だぜ!」
(やった、初めて第一印象で良い印象を与えられた!)
今まで失敗続きだった
瀬田薫然り
喜多見良子然り
松原花音然り
いつも言葉に詰まっていた
それが、自分の挨拶が上手く行ったのはとても良かった
これが次は女性の前で、急に訪れた時でもできるになりたい
少し鈍い足音が遠ざかっていくのが聞こえ、その場から車の後ろに積んであるドラムの所に向かったと確信して、自分は頭を上げた
その時の自分の顔は想像するのは容易い
何故なら、また同じくクスクス声が聞こえたからだ
隣には、喜多見良子がいた
多分...少々ニヤけた顔をしていたのだろう...
横に顔を動かさず、もう一度頭を下げてしまった
今度は手を膝につき、
足すらも曲げてしまった
「それじゃあ、私は友人と工房の中を見てくるよ」
「それじゃあ、自分はどうしたらいいんですか?」
「君達はスタジオに行っててくれ。君達のやるべきことは彼女に伝えてある」
「はーい!私に任せておきなさい!」
「よし。じゃあ行ってくる」
「気をつけてくださいね」
車に積んだドラムセットを運ぶのに10分ほどかかった
自分と喜多見良子、先生と先生の友人
この4人で10分もかかったのだ
成人男性二人に高校生の男女
戦力的に申し分ないのにだ
さぞかし、朝の積み込みは大変だっただろう...
帰りはしっかりとケアしよう
「それで、良子さんは何を頼まれてるの?」
「ふふん、君の言った達成課目ってなんだったけ?」
「ええっと...ドラムを直すことでしたっけ?」
「うーん、半分だけ正解」
「あれ...?」
これで半分...?何か忘れてた?
ドラムを修理する他に何があったんだろう
確か...ドラムの...音が...
「わからない?じゃあ、答えは...「待ってください!」」
と、咄嗟に強い口調になってしまった
喉まで答えが出かかっている
なのに、答えがあやふやなのだ
そう...音が...音楽が...奏でて...あっ!!
「わかりました!未来へ繋ぐ音!」
「そう正解!」
(よし、思い出せた!)
漸く思い出せた
出かかってて、最後まで出なかったもう一つの目標
そういえば、言い出しっぺは自分だったな...
にしても、恥ずかしいこと言ったな自分...
そして、周りのことを見すぎて自分のことを忘れかけていた
緊張しすぎているのは間違えないようだ
「だからね、先生から朝に君と私にミッションを課されたんだ。そこのスタジオに大量の楽譜があるんだって」
「楽譜ですか?」
「んでね、その楽譜っていうのは歌謡曲から童謡、合唱曲、洋楽、管弦楽...いろいろあるみたいなんだ」
「ふむふむ...」
「その楽譜を二人で見て、演奏できそうなものを探して欲しいんだって」
「えっ...?難易度高くないですか...?」
「でも、先生は、
「君たち二人なら大丈夫だから!大船に乗った気で頑張れ」
って言ってきたから、なんとかなるでしょ」
「ちょっと待ってください!自分は楽譜とか読めないんですよ!?だからどれが簡単とか難しいとかわからないですよ!?」
「だから私が付けられたのかな?私は音楽得意だから楽譜読みなんてお手の物よ?だからほら一緒にね?じゃあ、行こう!!」
「ちょ、ちょっと...!?」
自分の意見は、すぐに彼女に解決させられた
でも、最後に反論くらいしてもいいでしょうに!?
無理矢理切り上げられて、そそくさと行こうとしないで!
「ほらっ、なんでそんなところで止まってるの?ほらっ行くよ!!」
ギュッ
「ひゃわぁん!?」
変な声が出た
(だって、彼女が急に手を握ってきたから
びっくりした
というか、何故あなたはすぐにそんな行動取れるんですか!
不思議で仕方ないですよ!
でも...なんだか...すこし落ち着く...)
自分の気持ちの中には恥ずかしさも確かにあった
だが、それ以上に確かな温かさがあった
何も怖くない
全てを許してくれそうなそんな温もり
彼女の中にこころの姿を見た気がした
そんな気持ちに浸っていると、彼女の足が動き走り始めた
自分はその動きに合わせないといけなくなってしまった
しかし、その動きには無理な動きはなくて、自ら同調していくように感じた
まるで、両足が縛られた競争から、息の合った二人三脚のようだった
そして、自分の眼には彼女の後ろ姿がはっきり映っていた
その景色はこの前のことを思い返させた
初めて彼女に触れられたあの日の夜と同じ景色
だけど、二つは似ているようで違っていた
前の夜に見た彼女の後ろ姿は、嬉しそうだったが寂しそうだった
今の彼女の後ろ姿は、嬉しそうで生き生きとしていた
勘違いかもしれないが、今の彼女からは私を引っ張っていこうという気持ちが伝わった気がした
それなら、前の時の彼女の気持ちはどうだったのだろう?
辛いことだっただろうが、最後は笑っていた
その笑顔は曇りのない笑顔だった
だけど、気がついてないだけで何か隠しているのかもしれない
辛い思いをしているのなら、自分みたいにはなって欲しくない
彼女が自分と同じ思いになっていたら、今度は私が支えてあげる
私が友達を助けてあげる
そして、彼女がこころの底から幸せで、一番最高な笑顔に変えてあげよう
この信念を抱いた
自分の表情は、少し柔らかくなったが、すぐに少し強張った
これからやることは、自分の為の事
自分の為に自分に合う楽譜を探さないといけない
膨大な数の音楽の中から、自分が一番伝えたい曲を奏でる
そう、これは自分の根本を見直すきっかけになるのだ
これが一番重要になる
そう考えると全く悠長にしている暇はない
これからは戦の開戦なのだ
今日がとても長い1日になることを確信した
お待たせいたしました!!!
本当に申し訳ない...気がついたら8月中旬になりました
現実パートは今回で最終回にする予定が、書いてるうちに10000文字超える気がしたので分割させました
ということで、これを投稿したら早速次の話を書かないとですね...w
バンドリでは、3週間前くらいにハロハピイベやってましたね
案の定、花音⭐︎4は当たりませんでした...
だけど、こころの誕生日ガチャで一番最初のイベントの花見こころが当たって発狂しかけましたw
あのこころ可愛いんですよ...マジで
そして、この小説を登録してくださった
「カルボン35 様」
本当にありがとうございます!
こんな激遅投稿者で本当に申し訳ない...
投稿ペースが全く安定してませんが、しっかりと完結させますのでこれからも応援のほどよろしくお願いします!
それでは、次の話も楽しみ待ってください!