記憶の片隅にある天国   作:パフさん♪

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第4話では「夢」でハロハピの大体のメンバーの名前と容姿がわかったところまでです!

今回ハロハピ側に変化があります!

では第5話始めます!


第5話 夢と現実の狭間

目を醒ました

そこはいつもと変わらない一人部屋で、また今日も「現実」で何も始まらない1日の始まりだった

 

「ふぁぁ....」

 

少し欠伸をしながら腕を伸ばして体を起こした

今日は特に寒い

今日の最高気温が平年より下回り2月下旬までの寒さになっていた

窓には水滴が付いており、外の世界はどれだけ冷たいかが行かなくてもわかってしまうほどだった

 

自分は押入れからセーターを取り出し制服の上から被った

すごく暖かい雰囲気に包まれた、人に包まれる感覚ってこういう感なのかとふと思い始めた

 

朝食を済ませ今日も癒しの時間である通学路で「夢」の断片を思い返した

 

「えっと...弦巻こころ...花音...北沢はぐみ...ピンクグマ...」

 

記憶の断片を一人でぶつぶつと言って歩く様は側から見たら完全に不審者だ

ただ自分にはこの時間が必要で、また今度「夢」の世界に行けた時に唯一使える「情報」である為である

 

そして記憶の断片の整理が終わった頃いつのまにか教室についてた

 

 

そこからの授業は本当につまらなかった

S V O C だの

サイコロ2個の確率だの

v=at だの

時差の計算...

こんなもの将来の何に役立つのかとつくづく思ってしまった

自分は本当に勉強が嫌いだ、ただ成績はいい

それは勉強を遊びだと思っていた時期があったからだ

 

小学校高学年の時は放課後何もすることはなかった

サッカーで遊ぼうと誘う友達

仲良く下校の約束をする幼馴染

塾へ行く為走って帰る受験生

 

そんな理想はなくただ一人、何もすることがなく教科書を読んで放課後を過ごしていた

速く帰ったところでおじさんおばさんは家にいないのでただ暇な時間を家で過ごす意味がないと思っていたからである

 

この習慣が今でも付いている

5分休みの間大体は教科書を読んでいる

その5分の退屈を紛らわせる為だけの行為だ

 

それをし続けた結果が成績につながっている

そんなのは無駄であって本当に大切なのは「大切なものを失った時にどう行動するか」だと自分は思っている

 

 

辺りはもう夜に近づき、太陽が赤く大きく見えて自分の体をオレンジに染めている

担任が「そろそろ最終下校だぞ?戸締りお願いな?」

と言いつつ鍵を教卓の上に置いて去って言った

 

担任も自分がよく最終下校まで残っていることを知っているので自分に戸締りを任せに来ることが多い

担任は部活動の顧問で放課後すぐに教室を出てしまう

なので最後まで残っている自分を見て何かホッとしているのかもしれない

 

自分は今日も戸締りを任せられ、教室の鍵を掛け、職員室に向かう

 

職員室に入ると担任がすごい笑顔で「おおっありがとう!」と言って来た

私は何も言わずに頭を下げた

その顔を見たのはこれで何度目かわからなかったが、今日の担任の笑顔はなぜか小っ恥ずかしく感じた

 

(「夢」の世界の父さんそっくりだ...)

そのことを思い出して少々小走りをしながら学校を出た

 

 

(笑顔って不思議だ)

帰路に付いている自分の顔を笑顔にしようと頬を緩めようとした

...でもできない...「現実」ではやっぱりできない...

笑顔がいかに難しいのか知っている

その笑顔の意味も昔に知ってしまった...

 

 

家に帰ると自分はいつも通りカップ麺を用意して食べ始めた、そして「夢」で買った北沢精肉店のコロッケが冷蔵庫に入ってはいなかったことは気づかなかった

あともう一つ、だんだんと「夢」と「現実」の空間のねじれにまだ気がつかなかった

 

 

 

1日が終わり次の日になるとそこはいつもの「夢」の世界だった...

それは心の何処かで少し期待していたのかもしれない...

 

 

 

私は目覚めた、もう3回目ともなると慣れるものだ

今日は父さんがいない、母さんと二人きりだ

そんな経験はしたことがなかったから新鮮に思える

私は私服に着替えてリビングへ向かった

 

「おはようございます...」

 

私の挨拶は家族間で交わすような軽いものではなく固くなってしまった

母さんは少し不思議そうな顔をして

 

「あらっ?おはよう」

 

と返してくれた、そう言って私を一瞬見てまた止めいていた掃除の続きをし始めた

掃除機の無駄に大きい煩い音が流れ続けている

私は朝ごはんを食べている

 

(平和だ...)

 

何か「夢」の世界と「現実」の世界では居心地に変化があると私は思った

 

母さんがいる家とひとりぼっちの家

父さんがいる家とひとりぼっちの家

笑顔を出せる空間と出せない空間

夕食がある食卓とあまりない食卓

 

ざっくりと考えてみて結構多い、そう考えていると

 

「今日は私服ということはどっか遊びに行くの?友達と遊園地とか?」

 

と母が掃除を終えて聞いて来た

その顔は少し期待を込めて少し安心したような顔だ

私は大抵、家では寝巻きのままだ

用事のある時しか私服を着ない

私服に着替えた理由なんてなかった

ただ母さんの顔を見てしまってこう応えた

 

「うん、友達と遊びに行ってくる...」

 

嘘をついてしまった、生まれて初めて母さんについた嘘だ

それを聴いて、母さんは「うん、行ってらっしゃい!」とウキウキしてスキップしながら私の寝室の布団を外に干しに行った

 

私は少しの罪悪感と共に家を出た

 

 

友達なんていない、それはこちらでも同じなことである

ただ気になる人たちがいる

この世界で初めて聞いた『音楽』を奏でる人達だ

弦巻こころと花音

この二人だ

初めて聞いた時は曲とは言えないほど質素な曲だった

ただ、その曲に私は引き込まれてしまっているのを今に思った

 

(もう一度...会えるかな...)

 

あの二人に今度会ったら少し話しかけてみよう

そう考えて一人行くあてもなく歩いていると、そこには大きな学校があった

 

「花咲川...女子学園...?」

 

私はなぜか聞いたことがある名前にその場で立ち止まってしまった

どこで聞いたのか忘れてしまったが、体が勝手に花咲川女子学園の方へ引っ張られたように動き始める

しかし、その引っ張っている糸を切るかのように一人に男性が大きな声で

 

「君!ここは女子校で生徒と先生と保護者、それと入園提示書がある人しか入れないんだぞ!」

 

そう言ってきた、私はその言葉が殆ど耳に入らなかった

その言葉を聞いて尚も足が止まらない

それどころか動きが早くなってしまう

それを見てさっきの警備員が私を取り押さえてきた

 

「君!?だから関係者以外は立ち入り禁止だと行っただろ!?もしかしてうちの学園の生徒をストーカーしているのか!?」

 

その言葉も私には効果がなかった

そこから先の記憶はない

 

気がつくと私は警備員に羽交い締めにされていた

周りの生徒達は私から逃げるように走って学校の中に入って行く

そしてようやく今の私は大変な間違いをしたことを理解した

 

「すみません...私の旧友がここにいると聞いたものでして...」

 

と嘘の弁解をした

 

「少々信用ならなんな、大体その友達に会うならここで待っていれば会えるだろ、何故この学校に入ってまで捜索しようとした?」

 

最もな正論だ、私はこの正論に対抗する曲論を考えてこういった

 

「すみません...少々ここの学園に用事がありまして、私は〇〇という高校の生徒会をしていまして、今日は合同でイベントをする会議をするために来ました...そこでそのついでと言うのは少し強引かもしれませんが旧友に会いに来たのです

入園提示書は昨日の夕方にここの生徒会長との談話で急遽決まったので持っていなかっただけなのです

すみません勘違いさせるような行為に至ってしまって...」

 

すごく強引な主張だった

こんなにもよく平気で嘘を並べられるなと自虐めいた顔に一瞬なりかけたが堪えた

 

「そうか、今回は見逃すが今後もしこう言うことが起きたら今度はあなたの学校に苦情を入れますからね?

じゃあ行きなさい」

 

そう言って警備員の人は私を解放してくれた

警備員は学校の内情をよく知らないので、今回の手が通用したがもう2度目はないだろうと思い、今度はどうやって侵入するかを考えつつ逃げるように学園に入った

 

 

校門の警備員室から見えない中庭へと逃げ走った

この学園に入ったはいいが何かするわけではない

校舎には入れないし誰かあてがある訳でもない

ただその場所でここに来た理由を考えていた

 

(確か...この学校の名前を聞いたのは...)

 

そう考えているとハイテンションな花咲川女子生徒が

 

「ねぇねぇ!今日合同演劇発表会見に行く!?」

「行く行く〜!こんなビックイベント逃せないって!なんてったてあの......」

「「薫様ぁぁぁ〜〜〜!!!」」

 

とそこまでが聞こえたと思ったら生徒は蹌踉めき始めた

私は助けに行こうか迷ったが、それよりも気になることを思い出した

 

(薫様.........はっ!?)

 

その瞬間、二日目のことを思い出した

駅前の広場でこんな感じの光景を見ているのである

その時も「キャー!!!」という歓声と共に「薫様ぁ...」と数人が言って倒れていた、それは「現実」の世界では記憶として残っていないことだった

 

また違う生徒がやって来た

こちらに全速力で走ってくる二人組だ

金髪の子が水色の髪の子を無理やり引っ張っている...あっ!?

 

私はとっさに隠れてしまった

(弦巻こころと花音!?)

学園に入るまでは話しかけて見たいと言ったが今は動くことができない

そればかりか本当にストーカーと同じ行為になってしまった

ただ今の私はここで生徒に話しかけたりしたら最悪警察に連行される

それだけは阻止したかった

 

「ギターといえば、バンドの華っ!!......って、昨日読んだ本に書いてあったわ。だからあたし、すっごく目立つ人をいれたいの。」

 

こころはそう言っているのが聞こえた

そういえば駅前の時はギターがいなかったなと思っていると

 

「め、目立つ人......ですか?」

 

と花音が言う

引っ込み思案なんだろうすごくおどおどとしている

多分駅の時も強引にこころによって連れられたんだろうなそう感じていた

 

「そう、目立って、すっごい注目されて、有名人で、バンドの顔!になりそうな人、花音は知らない?」

 

相当な無茶振りだな

というか最終的に有名人を連れて来いっていうことだが花音はそんな人と知り合いがいるのだろうか...?

 

「う、うーん」

 

それはそういう反応にもなる

普通はそんな有名人と知り合いだという人なんていない

ましてはまだ高校生だ、そんな人にいるといえば幼馴染か親関連ぐらいしかないはずだろう

 

「演劇発表会、やっと来たね〜!このポスターの瀬田薫、写真で見てもかっこいい〜っ。どこからどう見ても王子様っ、だよね」

 

中庭を歩く他の二人組の会話が聞こえて来た

ほうほう...フルネームは「瀬田薫」というんだな...

 

「彼女のいる羽丘女子学園の体育館でやるんでしょ?薫さまのファンで、入りきらなそうで心配......あたし授業が終わったもう、走って行く!」

 

なんでこんな盛り上がってるんだ?この二人組は?

そんなに薫の演劇がすごいのか?

それは見て見たい......だが今はこころたちの方が先決だ

 

「「瀬田......薫......?」」

 

こころと花音は二人揃ってその名前を呼んだ

花音は知っているようでこう説明をした

 

「演劇発表会......さっき友達が言っていました......今日の放課後にある、すごい......人気のあるイベントだって......」

 

話の所々で妙な間があって聞き辛かったがここの生徒は薫の演劇が好きなようだ

まぁ倒れる人が続出している点でなんとなくは分かるが...

 

「ーーーうん、すっごくいいっ。すっごくいいわ!花音、私決めた。あの瀬田薫を、あたしのバンドのギターにする!」

 

おい...なかなかの無茶振りだ...

しかも薫はギターができるとは一言も言っていない

こころは何か抜けているものがあるのか?

 

「ふぇっ!?で、でも、2人は会ったこと、あるんですか?」

 

まぁ普通の人ならそうなるだろうなぁ...

そもそもそんな有名人が簡単に会ってくれなさそうである花音は常識的な人だと改めて感じた

 

とそこまで聞いていた時に花咲川の先生が私のことを見つけたらしく「おい!君!そこで何やっている!」と怒鳴るような声が聞こえて来た

私服で中庭に隠れている男子高校生なんてどっからどう見ても不審者だ

私はその声に驚きながらも校門の方へ走った

 

幸いなことにこころと花音は気づいていない

ただ最後に聞こえた

 

「演劇発表会っていうのを、見に行くわよ!」

 

という元気なこころの声がすごく印象に残った

 

 

なんとか逃げ切れたがもうここには入ることは出来ないと確信して少し落胆した

せっかくこころと花音に話しかけるチャンスを得ながら逃げてしまった自分が悔しい...

 

 

そう思いながら私は放課後、羽丘女子学園で行われる合同演劇発表会に行くためにどうやって侵入するかを性懲りも無く考えていた

 

 

そして私は変化していったのだ

 

 

 




本当は薫さんに会うまで書きたかったんですがね...
今回もなかなか長々書いてしまったのでここで切ります

因みに大体の方は分かっているとは思いますが、1人称が

「自分」・・・現実
「私」 ・・・夢

です。もしもそれがわからなかったという方はもう一度よく読んでいただければ理解できると思います!

あとこの段階で変化が分かって来た人がいたらコメントで書いてください
その人は私の小説を隅々まで読んでいる方なので何かお礼をしたいです!

では次の話もハロハピ回なので気長に待ってください!

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