意識不明
「私はこれからどう生きれば……クソッ!」
地に拳を打ち付ける、が、痛みはない。裂けた皮膚が視認できない速度で瞬く間に再生し、元通りになる。
少女は顔を上げ、変わり果てた故郷に目を向ける。
荒廃した都市。風化し、わずかに残ったアスファルト。死に絶えた人々の骨。
そのすべてが終焉を感じるような、否。
人類は一人を除いて滅んだ。
ここにたたずんでいる少女は紛れもなく最後の人類であり、地球上最後の陸上生物でもある。
そして太陽系最後の知的生命体なのだ。
「もう誰もいない。なのに、どうして、どうして死ねないの!」
銃声が響く。
こめかみに押し付けられた銃口は壊れ、歪んでいる。弾は潰れ、血が付着したまま地面に落ちた。
少女のこめかみに傷は一つもない。
「永遠の命なんていらない。私を早く殺せよ!地球!」
少女は太陽系最後の知的生命体になったことで太陽系八惑星の加護を受け、不老不死の存在になってしまった。この先、太陽系がなくなるまでに地球人以外の知的生命が現れることがないことを未来予知で知った太陽が八惑星に命令を下し、少女に加護を与えたのだ。
「ふざけるな!私だけが生きていて何になるというのか!」
『――そう怒らないでくれ。僕たちも協議しているんだ』
「協議?そんなことをしている暇があるのならさっさとこの忌々しい呪いを解け!」
『呪いじゃない。君たち人類の言うところの加護ってやつさ』
「減らず口を!」
飄々とした態度で現れたのは地球の意思体。
八惑星の長でもある。
『君は最後の一人なんだよ……っと、結果が出たようだね』
「結果だと?」
『ああ、どうやら私たちは君を強くしないといけないらしい』
強く、強くしないと。とはいったい何のことだろう。
「……は?」
少女は戸惑った。
『太陽が下した決断は君を地球の過去、未来において最強の存在に至らせ、並行世界の人類を救うこと。だそうだ。まあ君自身は人間の中では凡人の域をでないが、そこは我々、星の力でどうにかしよう』
『重ねて悪いが、君の肉体を強化、魂の一時保存を行う。期間は人間の時間にして十億年程度だ』
「人類を救う? 強化? それに十億年!? お前は何を言ってるんだ。そもそも十億年なんて耐えられないぞ!」
『君の拒否など知ったことではない。それと保存してる間は寝ている時と同じだ。君からすれば一瞬のできごとだろうさ』
人が星にあらがうことはできない。また、星は人を理解できない。
『じゃあ始めようか』
「待て! まだ話は、というか認めてないぞ!」
『また十億年後に会おうね』
少女の意識は問答無用で刈り取られた。
地球君「」
少女「ハイエースかな?」
太陽君「地球君はせいはんz」
地球君「ヤメロォ!!」