真名
少女は焦っていた。
黒い人型の化物に燃え盛る街の一角に追い込まれていたからだ。
「何なの、何なのよこいつら!? なんだって私ばっかりがこんな目に遭わなくちゃいけないの!?」
混乱し、正常な判断ができなくなってしまった少女はそれでも抵抗すべく、黒弾を化物に浴びせる。
「もうイヤ、来て、誰でもいいから助けてよ!」
化物は少女の慟哭を無視し、槍を突き出す。
「ヒッ!」
少女の顔が絶望に歪む。もはや絶対絶命。矛先は心臓へ向かっている。
(――――誰か! 助けて!)
少女はギュッと瞼を閉じた。
……。
…………。
………………。
が、いつまで経っても激痛は襲ってこなかった。そっと瞼を開ける。
「――――敵は屠ったぞ。マスター」
居たのは銀髪の美女であった。
「へ?」
「辺りの敵は全て駆逐済みだ。しばらくは安全だろう」
「え、えと、私がマスターって……」
今度は違う意味で動揺する少女。助かった嬉しさやマスターと呼ばれる驚きに脳がオーバーヒートしてしまっている。
「ああ、これは状況理解をしていないパターンか」
こほん、と美女はわざとらしく咳払いする。
「――――サーヴァント・アーチャー、召喚に応じ参上した。私は君のサーヴァントだ」
「私が、マスター……」
「そうだ」
「マスター、私がマスターなのね!」
「う、うむ」
嬉しそうに飛び跳ねる少女を見て毒気を抜かれるアーチャー。そんなアーチャーをよそに少女は「YES!」だの「やった!」だのと言ってガッツポーズしている。
「! マスター、サーヴァントを感知した。これは……エクストラクラスか」
「舞い上がってる場合じゃなかったわね。アーチャー、臨戦体勢へ。私は後方支援に徹するわ」
「了解した」
弓を顕現させ、矢をつがえる。気配を殺し、視力を引き上げる。
(来たようだ。……あれは盾か? それに横にいるオレンジ色の髪色の少女はマスターのようだが)
(アーチャー、何か見えた?)
(ああ、大きな盾を持った少女のサーヴァントとオレンジ色の髪の少女だ)
(オレンジ色の髪? まさか!)
「ちょ、待て! マスター!」
「アーチャー、あの子たちは敵じゃないわ! カルデアの、私の仲間よ!」
◇◇◇◇◇
「先輩! 何か、来ます!」
「え、また敵!?」
「この気配はサーヴァント。でもシャドウではないようです。それにあれは……所長です!」
「所長ってオルガマリー・アニメーションとかいう人?」
「いえ先輩、オルガマリー・アニムスフィアです」
盾のサーヴァント、マシュ・キリエライト。そのマスターであるオレンジ色の髪の少女、藤丸立花。
二人の元へ銀髪の少女、カルデアの所長であるオルガマリー・アニムスフィアが走り寄ってきた。
「マシュ! 生きていたのね! ってその姿、まさか成功したの!?」
「はい、死の間際にある英霊が……」
そこからオルガマリーにマシュ、立花は現在のカルデアの状況を全て説明した。
あの爆発で多くの職員が犠牲になったこと。マスター候補が立花を除いて瀕死になっていること。現場の統括をロマニがしていること。
「立花、ほんとうにマシュに乱暴していないの?」
「してないってば、てかアタシは女子だよ!? そんなことするわけないじゃん!」
「はあ、まあいいでしょう。それよりロマニ、さっき言ったことは全て事実なのよね?」
「もちろん事実さ。こんな時に嘘を吐く理由なんてないからね」
「そうなのね……私の、カルデアが……」
今まで若いながらも頑張って積み上げ、築いたものを一瞬で破壊され、さらに人理は焼却されてしまっている。
あまりの状況に項垂れるオルガマリー。だが、そんな彼女の肩に手を置く者がいた。
「そう気を落とすな。所長なのだろう? ならば今君が為すべきことはなんだ。少なくともここで項垂れ、気落ちすることではないはずだ」
「安心しろ。私がついている。君は堂々と皆に指示をだせばいい」
「アーチャー……」
(そうだ、私はマスターになったのよ。本来適正がなかったはずが、こうして形となって存在してくれている。それになんだか、他人のような気がしないし)
「ふう、そうね。私はカルデア所長のオルガマリー・アニムスフィアよ。この程度の困難、乗り越えて当然」
「ふっ、調子が出てきたな。マスター」
先ほどとは見違えて目を輝かせるオルガマリーにアーチャーは微笑む。
「ええ、私には現場を纏める責任がある。だからまずはアーチャー、貴女の真名を教えて」
「む、そうきたか」
アーチャーは少し考え、首肯。一拍おいて、口を開いた。
「――――私の真名はアルコア、断絶のアルコアだ」
キャラ崩壊タグ入れてとずまりすとこ。