詩人の詩   作:117

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投稿から一月が経ちました。
平均して二日に一話投稿している計算になりますが、これもひとえに読んで頂いている皆様のおかげです。

一週間に一話以上を目的に、これからも頑張っていきたいと思っています。どうかお付き合いをよろしくお願いいたします。


015話

 

 翌朝。

 エクレアが倒したフォルネウス兵を引きずって、三人はバンガード市長の下に行き、昨夜の戦いと得た情報、そして事情を話す。

 自身をキャプテンと名乗る初老の男性は、連続殺人鬼の正体とその奥にいる四魔貴族を知り頭を抱えて叫んだ。

「フォルネウスが相手じゃと!? どうやってバンガードを守ったらいいのじゃ!?」

「手段ならある」

 淡々と告げる詩人に視線を向けるキャプテン。

「…あるのかの? それはどんな?」

「まずは金だ。約束の1000オーラム、頂こうか」

 それは公言していたことである。キャプテンはためらうことなく1000オーラムを取り出して詩人に渡す。

 中身を確認するでもなく懐にしまった詩人は一晩で考えた作戦の概要を、具体的な内容を知らせることなく告げた。

「まず、バンガードをとりあえず守る作戦に1000オーラム。それからフォルネウスと戦う作戦に2000オーラム。それに俺たちが加わることに一万オーラムだ。もちろん、諸経費は全部そちら持ちだぞ」

「う、うぐ…」

 相当な出費にキャプテンの顔色が変わる。全部合わせると15000オーラムは楽に越えるだろう。それは決して安くない出費になる。

 だが今までバンガード軍が対処できなかった問題を、あっさりと解明してしまったのがこの三人だ。そして相手がフォルネウスであるというならばむしろ安いとも言える。

 一瞬の躊躇いを挟んで、キャプテンは力強く頷く。

「あい分かった。だが、作戦提示は前金で払うが一万オーラムは全ての脅威が排除できたら払う。そして聞いた作戦を実行するかどうかは私が決める。それでいいかの?」

「上出来だよ、キャプテン」

 笑って握手を交わす二人。エクレアはそれをぽけーと見ていて、エレンは詩人のタフさに呆れている。

「それで、バンガードを守る作戦とは?」

「バンガードを動かす」

 訳が分からないとばかりに頭をひねるキャプテンだが、次の詩人の言葉に顔色が変わった。

「仮にもキャプテンと名乗ってるんだ、知らないとは言わせない。バンガードは聖王詩にある通りに船として機能する。

 …違うか?」

「そ、それは…」

「誤魔化している場合じゃないぞ。ここで否定してもフォルネウスが攻撃の手を休めることはない。

 フォルネウスが恐れているのは海底宮に乗り込まれること。その手段であるバンガードは常に危険に晒される。攻めるしか手はないんだよ」

「…確かに。バンガードに伝わる古文書には、バンガードは船として機能したと書いてある。そしてその具体的な起動手順もまた載っていたのは確かじゃ。

 だが、それは聖王様の時代の話だ。実際に動いた場面を儂が見たこともない。それを確信的に言うお前さんは何者じゃ?」

 詩人の正体を問う言葉だが、本人は飄々としたもの。返す言葉には重みが無く、本当かどうかわからない。

「ランスにある聖王家の書物には実に様々な情報が残っていた。俺は聖王家や他にも色々と伝手があってね。詩を歌うには事欠かない情報を仕入れられるのさ」

「では、バンガードを動かすのに足りないものも分かっているのかの?」

「一つはオリハルコーン製の術増幅装置、それはフルブライト家に譲られたとあったな。これは俺がなんとかする。

 もう一つは聖王三傑のヴァッサールに匹敵する玄武術師。こちらは市長を頼りたい」

 さらさらと本来は知るはずのない情報を語り、対処の分担まで口にする詩人。

 あり得えない事を知っている、そしてその出処が怪しければ信じる事は難しい。聖王家の書物を読んだと言うが、それだけでここまではっきり言葉にするだろうか。少なくともキャプテンならできない、虚言でない根拠が必要だ。

 それをはっきりと言うこの男は信用できない。だが、提示されている情報は正しい。ある程度は乗らざるを得ない。

「だが、こちらが準備を整える際にもフォルネウスは仕掛けてくるじゃろう?

 その間の守りはどうするつもりじゃ?」

「…いや、それはバンガード軍の役割だろ?」

「情けない話じゃが、我が軍は今回の騒動の原因はつかめなかった。バンガード軍だけでは不安なのは確かじゃ。

 そちらにも助力願えないかの?」

 キャプテンの言葉に、ふむと考える詩人。一理ある。

 そしてフルブライト商会の本拠地であるウィルミントンには自分が行かなくてはならないこと、そして話すだろう内容。昨晩見たフォルネウス軍の実力とエレン・エクレアの実力。

 全てを鑑みて結論を下す。

「エレン、エクレア。お前たちはここでバンガードを守って貰えるか?」

「いいわよ」

「まっかせて!」

 軽く頷くエレンに、ガッツボーズで応えるエクレア。

「死ぬくらいならウィルミントンまで逃げて来い。生きていればなんとかなるものさ。

 じゃあ俺はフルブライト商会に交渉しに行く。キャプテン、約束の3000オーラムはこいつらに払っておいてやってくれ」

 そう言い残すと、詩人は素早く席を立った。時間を無駄にはできないと、その姿は雄弁に語っていた。

 実際、早く海底宮のフォルネウスを叩かない限り、バンガードは攻撃される一方なのだ。時間はこちらに全く味方しない。

「さて。あたしたちはバンガードの指揮下に入るわ。死なない限り頑張るから、よろしくね」

 エレンはにこやかに挨拶をする。

 だが、その胸中には熱い想いがたぎっていた。昨晩対峙した赤いモンスターはフォルネウス将と言っていた。ならば普通に考えてフォルネウスはもっと強い。エレンの目的はそのフォルネウスなのだから、あれくらい圧倒できなくてはならない。それを考えるならば、実戦の機会であるバンガード防衛戦は格好の機会と言えるだろう。

 この死戦を超えて更に強くなる。気は逸っていた。

「んっ、んっ…っと」

 軽いストレッチをするエクレアは対照的で、気負いは一切ない。戦い、最善を尽くす。それだけしか考えていない。

 そしてもしもの場合は――逃げる。エクレアは詩人の言葉に忠実に従おうとしていた。

 別に命をかける義理もない。死にそうならば逃げたいし、詩人もそうしろと言っていた。そこにためらいは一切ない。

 しかし。例えば絶体絶命の場面にエレンが残されて、エクレアに逃亡の選択肢があったらどうするか。そこまでは彼女は考えていない。戦いは体を動かせばいいというものではなく、戦況の想定や誘導なども含まれる。

 頭を使うということを、まだエクレアは覚えていない。

 

 数日後。

 ウィルミントン、西部最大の都市といっていいだろう。かつて聖王が拠点とした街であり、その歴史はやはり古い。だがそれは寂れた印象を与えずに、伝統ある温かい風景が広がる街だった。

 そこに詩人が辿り着く。活気ある町を潜り抜けて、ウィルミントンで一番の屋敷へと足を向ける。目的とする人物はフルブライト23世。フルブライト商会の主であり、その商会が完全に実権を握っているウィルミントンの主と言える人物。この街並みは彼の人格の一端を現しているといっていいだろう。

 それが全てでないことは、上に立つものとして必要な冷酷さがあることは、詩人はもちろん知っている。それがないと為政者としてやっていけないので思うところがあるどころか、むしろ頼もしく思っている。だが、その伝統にとらわれる思考もどうかとも思っている。死食が起こってからは特に状況の推移が激しい。伝統を優先する思考が原因で後手に回ってドフォーレ商会などの風下に立っており、最近はイマイチとの評判もある。

 差し置いてこの活気なのだから、才能は人一倍あるとは思ってもいるのだが。

 とめどない思考とは裏腹に、詩人は最短でこの街一番の屋敷を目にする。一番大きいのでなく、一番格式があるその屋敷はフルブライト23世が拠点としている館。聖王が逗留したとの話もあり、その部屋は一種の聖域として扱われてる程だという。

(そこら辺はどうでもいいのだけれど、な)

 ためらいなく屋敷に入る。フルブライト23世の執務室もあるこの屋敷は当然ながら商館としての役割も持っている。玄関は控えめに重厚に飾り付けられおり、来客に備えて常に2名以上の使用人が何らかの名目で控えている。詩人が入った時も2名のメイドが掃除をしており、1人の執事が通りがかったところだった。

 執事は予定にない来客に一瞬いぶかしむも、それが誰だか分かった途端に慇懃に対応する。

「これは詩人様。ようこそお越しくださいました」

「フルブライトは?」

「すぐに呼んでまいります」

 執事をぞんざいに扱う詩人だが、その返答に疑問を覚える。

 フルブライト23世はフルブライト商会のトップだ。仕事は山のようにあり、時間は買いたい程に忙しい。不定期に訪れる詩人は、最上級の扱いを受けているとはいえ、面会に時間がかかることも珍しくない。明日お越し下さいという事もザラにあり、所用のためウィルミントンを離れておりますと言われたことも少なくない。

 それが即座に会うとは珍しいと、どうでもいい驚きを覚えながら詩人は一番の応接室に案内される。その場所で珍しいお茶をご馳走された。

「これはコーヒーと申しまして、南国の豆で淹れたお茶でございます」

 真っ黒い液体。粘性はないが、普段なかなかお目にかかれない色が注がれたカップを、詩人はたやすく傾けて喉を潤す。

「苦いな」

「苦手でしょうか? よろしければ紅茶をご用意いたしますが」

「いや、悪くない」

 詩人はフルブライトのこういうところが苦手だ。新作の出来具合を特上の客にだけ振舞って反応を試す。体のいいテストプレイヤーだ。ここで好評を得たものは広くて良い商品になることも多いが、反面大外れもある。詩人としては実験台にされるのもゴメンだが、商才やその他多く詩人が持たざるものをフルブライトは持っている。もちろんフルブライトが持っていないものも詩人は多く持っているのが、それだけに隙を見せる訳にはいかない。お茶くらいゆっくり飲みたいものだとため息をつくしかない。

 とりあえず当たり障りのない返答をしながらもコーヒーを嗜む詩人だが、それを楽しむ時間はあまりなかった。間もない、と表現できる時間で応接室にこの館の主が姿を現す。

「早かったな」

「いや。こちらこそ迅速に行動してもらって感謝しているよ」

 部屋に入ってきたのは金髪の優男。お洒落にきめた服装で優雅にソファーに座り、即座に用意されたコーヒーを一口飲む。この男こそが世界最高峰の一人、フルブライト23世その人に他ならない。

「うん、このコーヒーは悪くない。君はどう思う?」

「売れるだろうな、腕次第で」

 つっけんどんな詩人の言葉にもにっこりとした笑みを崩さないフルブライト。この甘い笑みは何人もの人間をたぶらかしてきた彼の武器だと、詩人はよく知っている。

 しかし先程の言葉には違和感があった。場合によっては有利に働かせるそれだが、詩人は自分の有利にはあまり興味はなく率直に聞く。不利には聡く、相手の弱点には誠実をもって対応するのは詩人のやり方である。戦闘で弱点の誠実な対応とは抉る以外にはないが、こういう場では存外に詩人はお人好しなのである。

「迅速な対応とはなんだ?」

「ん? 聞いていないのかい?」

「さっぱりだ」

 フルブライトもこういった詩人の対応には慣れており、誠実に相対する。嵌める事は比較的簡単な詩人だが、報復は倍返しだ。それを身をもって知っているフルブライトは正直に話をする。この男は真っすぐに対応した方が利益が多いのだ。

「世界中の支店に依頼を出したのだがね。君宛の号令809だ。知らずに来たのなら、即座に撤回する指示を出そう」

「俺は俺の頼みがあってきただけだ」

「承知した。こちらも用があったのだが、とりあえずそちらの話を聞こうか」

「フルブライト家宝の一つ、オリハルコーン製のイルカ像を譲ってもらいたい」

 にこやかな笑みを浮かべたまま、フルブライトは心で首を傾げる。家宝というだけでも穏やかではないが、譲ってもらいたいというのは更に波乱を想像させる。

「言っている意味がよく分からない。そもそもオリハルコーンというだけでも高価だ。それが我が家にあると何故知っている?」

「聖王家の書物にあった。バンガードを動かした聖王三傑のヴァッサール、彼が術増幅装置に使ったオリハルコーン製のイルカ像をフルブライトに譲り、バンガードを封じたと。更にバンガードにもフルブライトにオリハルコーンを高値で買い取ってもらい、その資金を元に町の開発資金に充てたとの話もあった。総合すると、聖王縁のオリハルコーン製イルカ像がフルブライト家にある可能性が高い」

「ふむ。私は見た事も聞いた事もないが…我がフルブライト家はご存知の通りに歴史が長い。私が知らない歴史も家宝もあるだろう。

 私にとってオリハルコーンのイルカ像など、重さ以上の価値がない。場合によっては譲っても構わないのだが…」

「分かっている。お前の要件を言え」

 詩人の要件は伝えた。次はフルブライトの要求を聞く番だ。

「フルブライトの良き同盟者であるラザイエフ家から要請があった。末娘であるタチアナ嬢が家出をして行方不明になったと。できれば早急に安全を確保したい」

「その娘の特徴は?」

 詩人が乗り気になったのを感じ取り、フルブライトは的確に娘の特徴を告げる。

「紅髪で14歳。幼い頃から武芸を嗜ませた、ラザイエフ家曰く世間知らずだそうだ」

「……」

「くまのぬいぐるみを模したバッグを身に付けているとの話で、それが特徴と言えば特徴だが。私に言わせれば装飾品などはあてにするべきではないと思うのだが――」

「もういい、もういい……」

 淡々と、世界に一人だけを探す難しさに顔を顔をしかめるフルブライトだが、詩人に言わせれば別の意味で顔をしかめざるを得ない。

 言われた人物に心当たりがありすぎる。

「もういい、とは?」

「そいつは俺が保護している……」

 あまりといえばあまりの言葉に、フルブライトは目を丸くした。

「本当か?」

「当たり前だ。その娘、菓子が好きだろう?」

「…甘いものが好き、とは聞いたが?」

「エクレアと名乗っているぞ、その娘」

 いや、それはちょっとと言いたげなフルブライト。気持ちは詩人も一緒だ。一緒だが、事実は変わらない。

「確認するが、歳は14で間違いないんだな? 15歳ではなく」

「あ、ああ。ラザイエフからも少し時期がずれたら死食で死んでいたかも知れないと胸をなでおろしたと聞いた。間違いなく14歳だ」

 その言葉に詩人は心の中で深く、深くため息をついた。あの年頃の娘、家との不和、偽名。場合によっては宿命の子ではないかとも思っていたのだが、どうやらそういった訳では全くないらしい。全く別口の信頼できる筋から確認がとれてしまった。自分勝手に肩透かしをくらった詩人である。

「で。その娘をどうすればいいんだ?」

「……」

 言葉をためらうフルブライトを意外に思う詩人。家出娘の所在が分かったならば、即座に家に帰せと言われると思ったのだがそういう訳ではないらしい。

「できればそのまま君に面倒をみて貰いたい」

「は?」

「タチアナ嬢は実家に強い不満を持っていたと聞いている。できれば家に帰して欲しいとの話も聞いているが…ご令嬢は酷く家を嫌っているとの話も聞いている。そんな状況で無理にご令嬢を帰省させても酷だろう。最悪、再び家出をしかねない」

「で?」

「私が請けた要請はタチアナ嬢の安全。ならばそれを最優先に考えた時、君に身柄を預けるのが最善ではないかと考えたまでだ」

「……戦場に絶対はない。保障は俺の命しかできないんだ。タチアナ嬢の安全を求められても困る」

「分かっている。その上で最大限の配慮をお願いできないだろうか。対価としてイルカ像に関する全てをお渡ししよう」

 詩人は考える。エクレアは確かな武の才能がある。詩人の保護下にある限り、死ぬ可能性は低い。

 もちろん低いというだけで零ではない。例えばこの瞬間、フォルネウス兵に殺されている可能性もなくはない。だが、ただ世界をさまようよりも低い可能性ではあるだろう。鍛えればエレンと一緒に四魔貴族の影を撃退できる人材、無下に扱わなくていいというなら詩人としても越した話はない。

「…請け負おう」

「商談成立だな。約束通り、イルカ像に関する事は全て話そう。

 ちなみに預けられていたタチアナ嬢の経費5万オーラムだが、手数料としてこちらが受け取ろう。ラザイエフ家にはタチアナ嬢を最高の腕利きに娘を預けたと伝えれば問題ないだろうな」

 フルブライトの強かさに詩人は苦笑する。詩人はフルブライトの信用を買い、フルブライトは詩人にタチアナを売って5万オーラムを得た。詩人の対価はイルカ像であり、普通に考えて骨董品くらいの価値しかないものである。フルブライトには安く、詩人には高い。それが5万オーラムで折り合いがついたのだからWin-Winの関係といっていいだろう。

「喰えない男だ」

「誉め言葉だな。商人はそうでなくてはやってられないよ。

 …何かあったら私に伝えてくれ。ラザイエフ家には上手く伝えよう」

 ふん、と荒く鼻息をつく詩人。これだから商人は信用できないのだと。

 話は終わったと立ち去ろうと腰をあげかけた詩人だが、わざとらしいタイミングでフルブライトが声をかける。

「そう言えばアバロン宛に手紙が届いていたな。差出人はレオナルド武器工房からだったか」

「…それを早く言え」

「聞かないお前が悪い」

 さらりと言い、フルブライトは一通の手紙を取り出す。

 その場で破り、中を検める詩人。

「……なあ、フルブライト」

「なんだい?」

「この辺りでの神王教団の活動はどうなっている?」

「神王教団?

 たまに信徒になりたい者がウィルミントンからピドナなりリブロフなりに行く程度だが…」

「こちらで神王教団の活動は活発でないのだな?」

「ああ」

 手紙にある。

 身分を偽った神王教団の信徒がバンガードに観光目的で来訪したと。…キナ臭いものしか感じない。聖王遺物を狙う輩が神王教団である可能性が高くなった。

 一方で違和感もある。神王教団は、魔王と聖王を超える神王を崇めると聞いている。そんな団体がその遺物を集めるだろうか? もちろん神王を探す目的で聖王遺物を集めるということもなくはないだろうが…違和感はぬぐえない。

 端的に言って怪しい。考え込む詩人にフルブライトは世間話のように割り込んでくる。

「このコーヒーだが、君もよく知るトーマス・ベント君が南方から仕入れてきてくれてたのだよ。興味があるならその話もしようと思うのだが。

 ああ、もちろんコーヒーが必要だったり、興味があるところを見つけたら連絡してくれたまえ。誠心誠意をもって融通するとも。そうだ、いくらかお土産に持たせよう」

 世界を闊歩する詩人は、見方を変えれば最高の広報役だ。それを最大限に使おうとするフルブライトには苦笑するしかないだろう。

 また、詩人としてもフルブライトからの情報は金を支払っても手に入れたいものだ。限定的ながら得られるとするならば、茶飲みに付き合うのも悪くはない。これはただの世間話なのだから、詩人が問うこともなければフルブライトが押し付けることもない。

 ただただ、フルブライトの語る話が応接室に響くのだった。

 

 

 

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